■頚城/権現岳東壁「ジェードル左スラブ(仮称)」(登攀)

2010.9.18
鮎島、山崎、大部(=山登魂)
 長年、残していた課題の不動川上流部をとうとう片付ける予定だったが、朝起きて水量を確認してみると…。めちゃめちゃ増水しておりますデス。たまたま、通りかかった粟倉のおじさんに「昨日、雨降りました?」と聞けば、「あー、も・の・す・ご・く、降ったで!」と絶望的に回答された…。ガビーン。
 山崎さんと7時に合流するや否や、「不動川、あかんです。転戦しましょう!」と懇願してしまった。山崎さんも当初は半信半疑な感じだったが、日本海に流入する全ての川の水量が、一目瞭然なほど多く、これを見るとあきらめてくれ、転戦することにした。
 転戦先は権現岳東壁。まず、登山大系にも載っていないマイナー壁だが、私は、イカズ谷のあと柵口集落から見た権現岳東壁のデカさに魅了されていたわけで、前々から行きたかったところである。当然資料なんて昔の岳人の「未踏の岩壁シリーズ」ぐらいしかなく、なかなかワクワクである。


ルート

1P目を登る大部

上部スラブ

上部スラブ

上部スラブ
 糸魚川から能生まで移動。能生川の水量も半端じゃないほど多い。
 資料には、「山城屋にいけば、権現岳東壁までのアプローチからなにまで懇切丁寧に教えてくれる」とあるが、それはすでに40年前の資料。山城屋自体があるか疑わしかったが、あった。でも、それだけ。何度か迷いながらも、自力で東壁に向かう道を探し当て(たいへんわかりづらいが柵口温泉に柵口地区の詳細な地図がある)、舗装された道をじりじり上がる。権現岳東壁の勇姿を拝みながら、車を上へ上へ走らせると、権現岳東壁取り付きが、「もう目の前」という距離の舗装された広場に到着…。なんだここ…。アプローチめちゃめちゃ近いじゃん。東京ではありえないほど近い。でも、ルート具合がよ〜くわかるので、観察。なるほどね。

 誰も来ないだろうと思って、のんびり準備していたら、車が上がってくる音がした。こんなところにくるんだな〜と思っていたら、東京のほうのナンバーだ。曰く、万年雪を見に来たらしい…。万年雪、、、、あー、確かにある。チンケだけれど。それを写真に写し、彼らは帰っていった。うーむ、万年雪よりこのデカイ壁の方がよほど写真的にはいいと思うんだけれど…。
 いやー、壁はデカい。上部は明らかに寝ているが、下部は結構な傾斜だ。登れるんかいなー、もろそうだし。

 あまりにも近いアプローチのため、鮎島は、クライミングシューズでそのまま取り付きへ。オーブにいたっては、なぜか便所サンダルである。本人は、「取付きから、サンダルを駐車地に向かって投げればいいじゃないですか?」と、そのアイディアがナイスだと思っているらしいが、投げても駐車地まで届くわけもなく、ゴーロ帯のどっかへ行ったのだった…。このことが、後悔させることになる。

 さて、下部岩壁。資料では顕著なジェードルの右側のスラブを登っているが、壁に近づいてみると、逆の左側に短い間隔でボルトが見つけられる。べつに、ルートにこだわりなんかまったくないので、迷わず左側のビレイ点へ。
 ボルト沿いに行くことにし、じゃんけんに勝った順でリードすることになる。


1P目(山崎、X、35m)
 ビレイ点からバンドを5m左上し、草付スラブを10mあがるとビレイ点がある。本来はここでピッチを切るようだ。(ここまでW級)
 が、山崎さんは、15mじゃ物足りないらしく、そのまま登っていく。しかし、ここからがけっこう悪い。残置ボルトは直登しているが、明らかにそっちは小ハング。そのため、山崎さんは右から避けるように登り、左へトラバースしていった。こうするとW+のムーブだが、ピンはなく、10mくらいのランナウト。「脆そう、でも硬い」岩質でのランナウトはいやらしいっす。相変わらずのブレイブハートだぜっっっ!なお、ボルト沿いはフォロー直上したオーブによると、5.8〜5.9はあるとのこと。お疲れ様でした。
 ビレイ点は年代モノのボルト3本。

2P目(大部、V+、50m)
 スラブを10m弱直上し、ハング。ハングは潅木を伝って右から回り込むように登ると、緩傾斜帯になる。ロープいっぱいまで伸ばした潅木まで。なお、山崎さんはフォローでハングを直登していた(5.8ぐらい?)。


 この上もずっとスラブが続いている果てしなく続いているが、傾斜が緩いのでロープをしまう。部分部分V級程度のところが出てくるが、概してU級ぐらいの快適なスラブだ。一番すっきりしているところ、一番ずっとスラブが続いているところを目指して、延々と登る。いやー、疲れる。あぢー。たまらず、途中、休憩をいれてしまう。
 休憩後も、なおもスラブを登る…。あー、停めた車が小さくみえる。スラブ王を目指すのなら、ここは最高だ。最高の階段状スラブを満喫できるだ。あまり草付も気にならない。ただし、飽きる…。すげぇ長い。オーブは完全に単調なスラブ登りに飽きた顔をしている…。あぢー。


 気分的には500mぐらいノーロープで登るとようやく源頭の雰囲気で、最後は草付を5分弱こぐと、登山道に飛び出した…。
 登山道を左側に登ると、5分弱で権現岳の山頂。ラヂオと鈴のオヤジに記念写真をとってもらい、下山。
 しかし、この下山道が、ハイグレードハイキングそのもの。めちゃめちゃ傾斜強い!途中、「胎内潜り」なる、大岩の間をぬけるようにしたり、おもしろいが、一般道にしてはとても厳しい。FIXバリバリっす。オーブの沢靴はすべるらしく、めちゃめちゃ派手にこけていた。蜘蛛の巣の多さとで閉口するが、実は3人ともノーパンであることが判明し、なんだか一体感が出てきた。
 登山口から駐車地まではこれまた車道があるので、それをたどれば30分で到着(けっこう登らされるよ)。オーブ曰く、「上部スラブよりも下山の一般道の方が怖かった」とのこと。それもそうだな。駐車地に戻る車道から見ると、傾斜的には、登山道の方が傾斜が強いように見えるしね。


 あー、それから事件です。
 オーブの便所サンダルが一個、見つかりませんでした。ゴーロ帯のどこかに消えてなくなったようです!…もっとも、予想通りだったので、同情するつもりもない。自業自得やね。が、片方、裸足でコンビ二入って、「ガリガリ君」を買ったり、ダンボールでサンダルを自作するのはやめてください。もはや「硬派な山岳会」を通り越していますぜ。
 内容は、下部2ピッチだけロープを使い、あとはノーロープという感じで、技術的にはたいしたことはないといえばないけど、とってもデカく、見栄えはすごいです。見栄え重視なら、これ以上ありません!
 また、「なんだコレ?」というアプローチの近さは笑っちゃいます。翌日に行った明星山のアプローチも短いが、ここはさらに短い。僕が今まで行ったマルチピッチの岩場の中では、車からの距離は最短です。駐車地広場までの道は迷うけれど、そこに着きさえすれば、地図とかトポとかいらないので、「いざ」というときは最適ですね。正直、これだけのために、わざわざ来るもんでもない…とは思うけれど、今回みたいに、転進する先としてはナイスではないでしょうか?!岩ももろくはなかった・・と思うし。

 というわけで、今回は、じゃんけんで負けたため、私のリード部分がなく、見せ場はなかったけれど、6年間温存していた課題をまた一つ片付けることができたので大満足です!
 付き合ってくださった、山崎さん、オーブ氏、ありがとうございました。

2010.9.21 鮎島 筆


【記録】
9月18日(土)晴
 駐車地0830、取付き0845、権現岳1230、駐車地1430

【使用装備】
ダブルロープ50m×2、通常岩装備
※意外と残置ボルトがしっかりあるので支点(カム、ハーケン)は一切使用しなかったが、いざというときのためには???…。



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