■明星山P6南壁「直上ルート」(登攀)

2010.9.19
山崎、鮎島、大部(=山登魂)
 「糸魚川周辺クライミングツアー」にいつの間にか趣旨が変わった今回の山行2日目。
 私のたっての希望で権現岳東壁に初日に行かせてもらったが、2日目は山崎さんの強い希望で明星山に行くことになった。
 しかし、今シーズンは、小滝集落からヒスイ峡までの道は工事のため通行止めで、高浪の池を経由しなければならない。すげぇ、遠回りだなぁー。


直上ルート全体概念図

1P目を登る山崎さん

3P目を登る大部
 朝6時におきて準備するが、蚊がめちゃめちゃ多い〜。勘弁してくれ。

 売店前の駐車地に移動すると、車が2台しか止まっていない。そして、壁に取り付いているパーティは見えない。秋口になると、大渋滞すると言う話だが、まだまだシーズンには早いらしい。オー、ラッキィ。
 誰もいないなら、せっかくだから、左岩稜でも登りますか?と言う感じで、ヤブヤブした踏み跡を下ると、今まさに、左岩稜に取り付こうとしているパーティがいた。岩に慣れているパーティなら2番手でもいいかな…と思ったけれど…うーむ、遅いかも。
 うちら、ノーパン3人組は、べつに、左岩稜にこだわっているわけではないので、次に登りやすそうな直上ルートに行くことにした。

 左岩稜取り付きから80m下流に向かい、木の生えたところをちろっと登り、そこから登攀スタート。正面壁ルートのボルトがわかりやすい。
 じゃんけんに勝った順ということで、山崎→鮎島→オーブのローテーションで登る。なお、荷物は2つにまとめ、トップは空荷で登るシステムである。


1P目(山崎、X+、25m)
 出だしから悪い。スラブを登り、さらにレッジから左へ移るところが悪い!!激悪でした。濡れているし!フォローではA0しまくりでしたが、山崎さんはフリーで越えていった…。でも、けっこう、ピンはあるよ。ハーケンだけど。初っ端からこれだと、先がおもいやられる。

2P目(鮎島、X‐、15m)
 出だしから、明らかにブッ立っている…!あやうく、「オーブ、リード代わってくれ」と声が出掛かったが、何とかしのいで取り付くと、案の定、傾斜が強い。それでもオールガバだぜっっ!スタンスもあるぜ!支点間隔も短いぜっ!へへーんだ!…だけれど、15m左上したら疲れてしまった!いいところにボルトがあるのでピッチをきる。なお、途中でA0してしまったことは内緒なのだ。このピッチは見栄えがしてかつ体感グレーディングが低い、いわゆる「おいしいピッチ」だった。

3P目(大部、5.9、25m)
 「5mくらいのランナウト」は、ペツルとハーケンが打たれているので、そんなことはないが、小ハングなので思い切りが必要だし、それを越えても、上のペツルにクリップするところが意外と悪い。フォローの体感では1ピッチ目の方が悪かった感じがするのだが…。オーブちゃん、ナイスリードでした。草付を右にトラバースして、凹角を登り、ボルトが3本あるところまで。

4P目(山崎、W‐、40m)
 あまり覚えていないが、洞穴のちょっと上ぐらいまで。ボルトが3本あるところまで。

5P目(鮎島、V+、40m)
 簡単なところを選んで登る。ロープが重くなってきたので、ピトン3本打たれているところで切る。

6P目(大部、V、25m)
 簡単なところを選んで登り、樹林に突入。しかし、コノヤロー、ロープが重くなってくる前にピッチ切りやがった(怒)。「ロープ半分」と言うたろうにっっ(怒×2)。

7P目(山崎、V+、50m)
 最初はロープいらないんじゃないか?と思うような樹林、しかし、その上に意外といやらしいところがあったりする。それでもWはなかったと思う。ギリギリいっぱいまで伸ばした木まで。鮎&オーブはすでにバテバテである。

8P目(鮎島、V‐、20m)
 もう少し安定したところまで行こうということで、ロープを伸ばすと、20mぐらいで左岩稜にぶち当たったので、ここで終了とする。雨も降ってきた。すぐやんだけど。
 なお、ここでのロープアップで、鮎島の右手上腕に痙攣が…。クライミング不足が露呈する結果に。情けなや…。

 大岩から、普通はワンピッチロープを出すらしいが、リッジをノーロープで。でも、一箇所、怖かったなー(V+級くらい?)。ロープを出してもよかったが、山崎さん、先にスタコラ行っちゃったしな。
 そこから歩いて下れる下降路があるらしいが、けっこう解りづらく、何箇所か、迷った。まぁ、でも、次はわかるでしょう、きっと。
 水不足などもあり、バテバテになりながら、やっとのことで小滝川まで下った。アー長かった。


 と、これから左岩稜に取り付こうとしているパーティがいる。時間は14時半。遅くね?それでも、時間があるので、山崎さんと寝転びながら(オーブは本当に眠っていた)、眺めてみた。
 すると、1ピッチ目の登り方を見るだけでも、「只者じゃない!」という登り方をしており、魅せられる。
 っで、2ピッチ目(正規の3ピッチ目)。普通はアブミで越えるところ(V・A1)のところだが、よくよく見れば、アブミを持ってないではないか…。っということはっ!やるか、フリーウィル。グレーディングは5.12a!!!…。うぅぅ…マジで、やるんか??
 注視………。
 あっけなく(それでも力が入ったが)、フリーで何もなさそうなのっぺりとしたうすっ被りのラインを登っていった…!!。
 やるなー、思わず拍手。いいものをタダで見せてもらった。しかし、このかた、名のあるクライマーに違いないと思ったら、下りてきた駐車地で正体がわかった。やっぱり、超一流クライマーのお方だった。
 妙に納得してしまったが、さらに聞けば、「Jade」(9P、5.11a)というルートを登った後の「おかわり」とのこと…。うげー、すげー。5.12aを軽々と登る実力もさることながら、9ピッチを登りきったあとに、さらにあの5.12aを登れるだけの余裕があるとは…。一本登っただけで、ヘロヘロになっているうちら(但し、山崎さんを除く)とは、天と地ほどのレベルの差だね。超一流の実力を思い知らされた。
 直上ルートは、なかなかいいルート、と思いますよ。車道から見ると、直線的なライン取りだし、下部3ピッチは、見た目も難しそうに見えます(実際に難しい)。それにフリーでいける(僕はA0連発だったけど…)し、それに、なにより、難しいピッチが前半に集中しているというのがいいですね☆☆。あー、後半で、X級ピッチがあったらヤバかったす。ロープをたくし上げるだけで腕が攣った今のボクには、フリースピリッツはとてもムリッす。一まず体力が必要ということが、よ〜くわかりました。
 オーブは「先週の唐沢山の15本が生きましたヨ、治田さんに感謝、感謝です」と謙虚発言していたが、その割にはバテてたな…。でも、筋肉痛が出ないのはさすがだ。
 一方の山崎さんは、すこぶる元気で、「翌日も、左岩稜、行くぞ」と意気込んでいたが、こっちの身には体が痛くてまったく登れる気がしない。「えー、行くならM男と2人でいってくださいよ…」と泣きを入れてしまった。

 …すいません、ゲロしますっ!ぼく、心の中で、本気で「雨フレー雨フレー」と祈っていたのです。でも、本当に夜半から雨が降るとは思わなかったなー。宗教でもはじめようかなー。いえいえ、山崎さん、ごめんっっ。
 というわけで、僕の祈りが通じ、雨に恵まれ、翌日は濡れ濡れになった壁を一瞥し、そそくさと撤収。結局、翌日は、刺身と温泉だけやって、それぞれの場所へ帰ったのだった。
 でも、山崎さん、「フリーウィルのところだけは濡れてへんなー」とボソッと言うのはやめてください。まぁ、どっちにしたってM男を生贄に出すだけですけど。

 毎度、ありがとうございました。

2010.9.21 鮎島 筆


【記録】
9月19日(日)晴のち曇
 取付き0830、大岩1300

【使用装備】
ダブルロープ50m×2、エイリアン少々
※キャメロットは不要
※残置が多くハーケン・ハンマーも不要
※核心3ピッチ目はパーティの実力ではアブミになるかも。



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