谷川岳堅墨岩αルンゼ(岩登り)

■谷川岳堅墨岩αルンゼ(登攀)

2010.10.9
鮎島仁助朗、大部(山登魂)
 堅墨岩。その中でもなんといってもK2。“ケイツー”はボクの憧れなのだ!
 っえ名前だけ??いやいやいや、谷川岳の岩場は一ノ倉だけではない。いろいろな風景を見てみたいと願う自分にとっては、堅墨岩はいつでも、谷川岳を彩る風景の一つとしてフレッシュな課題で、今年の無雪期の課題としてリストアップさせていただいた。
 しかし、半日コースであるゆえ、なか行く機会ができなかったが、午後から雨というここにいくには抜群のシチュエーションになり、くわえて、直前ではあるが、オーブも捕まえて、堅墨岩に行く機会ができた。


堅墨岩全景(左側ルンゼは滝沢、右側ルンゼがαルンゼ)

アプローチ

核心部を登る大部
 やはり、ロープウェイでゲートが閉ざされて、一ノ倉沢出合までいけないので、湯檜曽川右岸林道をたどってマチガ沢出合まで車で行き、そこの広場にテントを張る。
 しかし、朝3時過ぎから雨がぽつぽつきはじめやがった…。
 起床の5時でも雨がポツポツ。それでも、さほど降っていないので、最悪αルンゼに転進することにし、まだ暗さが残る5時半に出発。

 新道をガンガン飛ばし20分で芝倉沢の出合。そこから旧道に息を切らしながら急坂を上る。旧道を登り、一箇所クネクネを上がってすぐが、堅墨沢の出合となる。
 しかし、この出合が、本当ににショボイんだなぁー。意識しなければ、簡単に通り過ぎてしまう。最初は、疑ってしまったが、どこをどうみても、これに間違いないのが哀しい。

 雨も降っているし、出合がショボイし、果てしなくやめたくなる衝動に駆られる。なんだか、伊予ヶ岳のときみたいな感じだ…。
 しょうがなく、今回も私がやる気を見せようと、先頭を切ってヤブをこいで、沢筋をたどっていく。水も流れておらず、藪に覆われたショボ沢をたどり、何個か脆い小滝を越えていくとガレに出た。そこに出ると、一瞬ガスが晴れ、悪魔の指のような五つの峰、すなわち堅墨岩が見渡せた。うー、なかなか、でも、K2…。K3の方が見栄えがするんですけど…。
 次第に、顕著な二俣になり、左の簡単なスラブを登ると、またヤブ沢になり、やがてガレとなる。このガレに“型は新しいが、さびてて使い物にならずオーブも拾わないアイススクリュー”と、蛇の抜け殻もある。オーブが、「蛇の抜け殻って、「佐川急便のふんどし」と同じで縁起がいいんですよね。」というが、なるほど、幸先はよさそうだ。視界も晴れてきた
 但し、途中まで、まったく水が流れていない。一ノ倉と同じだろう!と思って、水を汲んでこなかったのが、後悔させる。しかし、カールボーデンまでくると、ようやくチョロチョロながら、水が流れるようになったので一安心。ここで休憩する。

 このカールボーデンは、すこぶる心地の良いスラブだっ。ガスの切れ間から見える景色には紅葉も少し混じり、なかなか良い風情をかもし出している。
 そして、その奥に聳える堅墨岩。なるほど、でかい。特に滝沢の迫力がすごい。しかし、当初の目標K2稜…。どれ??わからん。一方のαルンゼ。カールボーデンから見る限り、傾斜が強く、悪そうな感じで見栄えがよろしい。
 というわけで、目標を「バリエーションルートからのK2登頂」へと変更し、αルンゼにすることでオーブと共通認識とした。

 あー。共通認識と言えば、「今年のヤマトの無雪期で一番すごい山行はなんだったか?」の問題についても、一致の見解が出た。
 「そりゃー、あのウツボギ沢しかないよな〜」と。
 長嶋さんは、我々二人のHEROです!!。まじ、RESPECTっすよ〜。今年のMVP候補の筆頭ですね。

 さて、カールボーデンをすたこら登ると、横に5個リングボルトが連打されていたりして、意味がないボルトがある。ここでクライミングシューズに履き替え、αルンゼへと入っていく。
 最初は、傾斜が緩いフェースでノーロープ。ただし、濡れており、かつガバが一切ないので、案外悪い。そのままノーロープで、ルンゼに入り、けっこう悪い草付を30m登っていくと、さらに悪くなってきたので、ボルト一本打たれたところからロープを出すことにした。
 じゃんけんに勝ったオーブからリード。

1P(大部、40m、X)
 濡れた草付をスムーズに登っていき、20mで洞穴。そこでピッチをきるのかと思いきや、ロープを伸ばしていく。ビレイしている側としては「なんだよ、そこでピッチきれよ〜」と思うが、そう思う理由は「お、オレの、見せ場を奪いやがって…」というよりは、「寒い〜〜〜。早く、動きたいんだけど…。」というのが本音だったりする。そう。風が"びゅんびゅーうん"と吹きつけ、さらには霧雨も降ってきて、めちゃくちゃ寒い。久々に山は嵐です。そんな中、オーブは洞穴の左壁を悪そうに登っていって、ようやくビレイ解除。
 フォローしはじめると、やばっ。ふくらはぎが攣った…。寒い中、ビレイしてたからなぁ…。高橋さん、ゴルジュじゃなくても、「足攣り君の季節」がやってきましたよ★。
 そんなことより、出だしからちょっと悪いです。濡れていて、フラットソールがすべる!。草付きも、すべる滑る。怖ぇー。また途中から突っ張りで登っていくが、これもスタンスが滑る。しかも、残置もない!。支点が取れない中、よくオーブ、リードしたなぁ。フォローでよかった。ここまで体感はW級。
 さて洞穴。登山体系では右から登ると簡単でV級で、左から登ると悪くW級とある。でも、右のルート??そんなラインまったく見えないんですけど…。というわけで、オーブも左から登っている。フォローもここを登るしかないが、これが、本当に悪いんだな♪濡れていて、フリクション利かないし、傾斜もあるし、ガバないし…。激ワルの部類です。残置が少なからずあるとはいえ、オーブ、よく登ったなぁー。「フォローでよかった♪」と思うが、それでもかなり悪い。「落ちるかもっ!」という心の叫びを体言しつつも、RCCを踏んだりインチキ連発したのち、最後は、チムニー登りでズリズリゆっくり上がると、核心部は越えた。あとは、滑りそうな草付きをごまかして登って、ビレイ点へ。ビレイ点は、リングとオーブが打った軟鉄ハーケン。
 聞くと、オーブも核心部でA0してしまったとのこと。あぁ、ワルかった。オーブは良く登ったよ。

2P(鮎島、45m、W-)
 ルンゼを忠実にいくが、2箇所あるチムニー登りのところが、案外いやらしい。途中、怖くなっちゃったので、カムでランナーとろうとしたが、なかなかハマらず、時間がかかってしまった。下で、オーブが震えているような感じがするが、まぁそこはM男よ、耐えてくれ。今が、お前の見せ場だ。
 そこを越えれば、傾斜が緩くなって稜線が見える。その草付ルンゼを20m登り、最後の草付チムニーを簡単に越えると稜線。そこに生えている潅木まで。ここもメチャ寒い。
 なお、このピッチ、残置は一切見当たらず…。濡れてなければ、ロープいらないなのかなぁー。

 最後に右へ15mいくと、K2ピークだった。しかし、この風景、見覚えある。実際に見れば、中畠新道がすぐそこにあり、一ノ倉本谷を登った帰り、もしかしたら登ったかもしれない…。私はすでにK2登頂していたかもしれなかったが、それでも、「バリエーションルートからのK2登頂」の目的は達成できたわけで、感激は一入である。
 でも、そんな感慨に浸るより、ただ、ただ寒い。風も雨も強くなってきた。あぁ、サム。早く帰りてぇ。アァ寒い。

 予報どおり、雨も風も強くなりゆく中、悪路の中畠新道を下る。帰りは旧道を一ノ倉まで経由したので、時間がかかってしまった。それにしても、こんな悪天でも、一ノ倉を見に来る奴いるんだなぁ〜。
 それでもちょうど12時に駐車地にたどり着いたので良かった。
 当初は、単独で行こうと思っていたが、とんでもなかった。もし、単独で来ていたら、確実に途中で敗退して下山していた。もっとも今回は、濡れていたからかもしれないのだが、それでもオーブがいてくれて本当によかった。思わず、昼食の石焼きカレーをおごってしまった。
 今回、勉強したことは、谷川岳のグレーディングはやっぱり辛いということ。そして、谷川岳の岩質は濡れるとまったくフリクションが利かなくなることの二つだな。これからも、この二つを弁えて謙虚に接していかねばと思う次第である。
 しかし、とにかく、案外に視界も良く、堅墨岩の雰囲気に接することができた。カールボーデンの景色、なかなかだ。二度と来ることは…わからないけど、谷川岳を彩る景色の一角を味わうことができて良かった。今度は、幽の沢とマチガ沢へ。ここはいずれ行きたいね。もちろん、一ノ倉沢二の沢へも。

2010.10.12 鮎島 筆

【記録】
10月9日曇のち雨(強風)
 マチガ沢出合駐車地0530、堅墨沢出合0605、取付き0730、中畠新道0930、駐車地1200

【使用装備】
 ダブルロープ50m、カム(キャメロット#1.0まで)、軟鉄ハーケン
※残置は古いものが多く、また意外とないセクションもあるので、何かしら持っていったほうが良い。
※なおグレードは体感。濡れていたのでものすごく悪く感じたが、乾いていれば、簡単かもしれない。



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