■西上州/大谷不動 [アイス]
2011/02/26-/27 治田、長嶋
当初は日帰り西上州の日和み主義のワイに
「ハルさん、西上州の小さい氷ばっか行ってないで、氷柱やりましょう。大谷不動でボコボコにやりましょう」
と、長嶋番長から激が飛んだもんで、例会の酒の席で面と向ってあの番長から気合の一声をかけらてはとても小心もんは断れない。
当然いつかは全部やらにゃと考えてはいたが、これ幸いと切り替え、いざ氷の殿堂へと現地に飛び立った。
大谷不動本流右側壁の大滝
規模、貫禄、登りごたえ全て一級品
初日
現地の不動様へのアプが番長の記憶も定かでない。でも、スキー場をつめて峠から地図を片手に何とか2時間ほどで着いたのだった。
早速BCを設営して、装備装着で本流へ向う。ワイは初見山なんで、まず本流一の滝、二の滝、三の滝を登る計画だ。
●本流一の滝
一の滝は釜も見えており取り付きは怖いが氷そのものは安定しているので、慎重に攻める。けっこう堅く立っているので短くてもW+くらいに感じてしまう。
●本流二の滝
二の滝はでかい。立っていて隙もなさそうだ。それに丸々50mはある。2ピッチあるそうで堂々さから貫禄は漂い名瀑だ。その手前右側にも側壁の50mの大滝がかかり、雰囲気的にも気持ちが高ぶってくる。一の滝はワイがやったので番長に上か下どっちをやる?と声を掛けたら、下の返答。
早速リードだ。中央部をダイレクトに攻める。上部は垂直の段差の悪い箇所がある。疲れも出たせいか。バイルテンションで休みを入れようとしたらバイルが外れてフォール。ロープの伸びもあり6、7mの距離だが、トンガリの金属を身にまとっているので心配だ 怪我も何もないとのことで再びのクライム。左にトラバースして弱点ラインで抜けていく。
ワイの番だが、いつものことで氷は取り付くと立っていることを感じる。堅い部分もあり打ち込みづらい。慎重に左に移り、番長と合流。続いて上部垂直の要塞へと突入だ。思ったよりは凹凸と段差もあり、それを拾っていけば下部より楽に登れる。
●本流三の滝
三の滝は番長の出番。
中央右の自然なラインでロープを引く。ここは初心者でも可能な滝だが、二の滝があるのでビギナーだけでは来れない所だ。ここは右側氷柱も綺麗にかかっており手招きしている。
ワイがやって見る。短いが垂直部がしっかりあって奮闘的だ。この垂直の中で体を安定させて支点を取るのが重要なポイントだ。下で1本、垂直2本、落ち口1本取って、上部の樹木で終了。
夜は本流で水を汲んできて雪溶かしもなく、美味い水でウイスキー。番長は純米吟醸酒。腹もへり、ぶち込み鍋のおかわり。疲労した筋肉群に栄養を与えんがため、ガツガツ喰い、グビグビ酒を喰らう。
二日目
昨日狙いをつけていた本流右側壁の大滝を登る。これも本流に劣らず、それは見事な大滝だ。色は土成分が溶けているのか、薄いウンコ色ではあるが、その迫力は素晴らしい。アイスクライマーや、ワイのような何でも山屋?でも、何がなんでも登りたいと思うと思う。
●本流右側壁の大滝
基部にて、イメージを組み立て、じっくりロープを引いていく。堅い氷で凹凸のない垂直部は甘い引っ掛けでなく、しっかり打ち込んで決めていく。腕も張り支点を取るまでは猛烈に怖い。腕を下に下げて血液を戻し両手を交互にレストして攻め続ける。垂直は15mくらいあるのか、あせらずに攻めるしかない。そこを抜けると中間は予想以上に緩い氷が20mは続く。下部の疲れを取るため休みながらつめていく。その上はまた急な傾斜だが、凹角状でもあり氷質も甘く割れることなくピックの食い込みがいいので不安は解消だ。それでも高度感はもの凄く、一瞬の油断もできないの当たり前だ。抜け口で50mフル状態なのでピッチを切る。
番長も相変わらずパワフルに登ってくる。場数は少ないが底力のある男だ。
太い立ち木の残置カラビナからギリギリ一回で懸垂で降りる。
場所を変え不動裏の滝に移動する。
●不動裏の滝
まずは下の滝だが、これは上の滝のためのアプローチ的存在だ。易しいが念のためロープを着けていく。
上の滝は左右2本あり、両方ともに見事に立っている。まったく大谷不動の滝は、そのどれもが大小関係なく、いい氷が揃っている。
早速左を番長が攻めていく。ゆっくりと確実に核心を越えていく。姿が見えなくなってからも時間がかかっている。また、落氷も多く避けるのに神経を使う。ようやくビレイ解除。
セカンドの特権で味わいながら登っていく。落氷の原因も少しは分かった。番長には口で言ったが、ピックの打ち込み後からその箇所が、欠けやすい所に入れているという点が見つかった。氷は氷結温度によるが低いほど堅く割れ易い。それでも弱点は凹んだ所、くぼんだ所。また白い所は空気も入っているので割れづらい。 つるりとした面なら剥離するので何度かの打ち直しも仕方ない。狙うべきでない所はコブ状の出ている所や丸いヘッド部分だ。コブならその手前や横、大きな丸いヘッド部分は見た目以上に割れ易く、少しでもその先に手首でやや遠方に打ってやることだ。リーチ的に無理ならワイは横腹も狙うし、斜め打ちもする。自分の両手のバイルがどこでも打ち込めるぐらい射程距離を広めていくのが得策だ。
次ぎに右の氷。近場で見上げれば垂直が長く続き、これは両日共で一番困難?かなと感じた。うーん、でもやるしかない。割れ易い下部からカンテ状を登り、上部は浅い凹角を攻めていく。実に奮闘的な氷だ。腕の張りも尋常でない。落ち着け、落ち着け、絶対登れると心中で繰り返す。難しいきわどい氷柱の滝は、左右どちらでもスクリュー取りはできないといけない。また安定した姿勢を取るには足の決めが重要なポイントだ。 ほんの小さなコブの出っ張りも上手く利用して少しでも安定させることだ。上に行くほど小さな窪みが幾点もある。それを狙い一発でバイルを決めていく。弱点は狙ったら一撃で決めるのが、腕を消耗させないコツといえる。垂直で一回の箇所に何度も振るったら、いくら馬鹿力でもどんどん吸い取られてしまうだろう。ここでも最後の落ち口が微妙に薄くベルグラ状で怖かった。氷の形状が変わりバランスが変化してくるのでその対応が難しいのだ。
こんなで雪面に抜ければ、うーん、ここも良い滝だったな、となってしまうから不思議だ。
これで予定通りのクライムは終了。実に楽しんだ二日間だった。
テント場に戻り全装備を担ぐと、下山で大谷不動から離れるのに、来年も来ようねという話しで盛り上がった。
計画では左岸壁の右はやりたいと考えていたが、右を含めて各滝のどれもが途中で切れたり細すぎたりで登れる状態ではなかった。そのどれもが氷柱の垂直も長く、相当の難儀は予想されるものだ。これらは次回のお楽しみとしたい。
【参考グレード】
本流一の滝W+ 二の滝X 三の滝V+ 右側の滝X+
本流右側壁の滝X+ 不動裏の滝F1V− 上部左X−右X+