南ア南部/遠山川支流加加良沢遡行〜加加森山〜加加森沢下降

期間:2011年7月16日〜18日(前夜泊2泊3日)
メンバー:L高橋、SL佐藤、武井、成田、ナベ

7/15 西国分寺2130集合→中央道→松川IC→伊那街道→県道251号→矢筈トンネル→秋葉街道→梨元ていしゃば2700ごろ

佐藤さんが渋滞で30分ほど遅刻したが、その後は問題なく現地まで。梨元ていしゃばは、かつて遠山川沿いにあった森林軌道の駅跡で、現在はバスはこの界隈の登山基地として整備されており、広い駐車場、テントOK、建物内にビバークOK、ガス缶販売、管理人付きとほとんど至れり尽くせりであった。IターンだかUターンだか忘れたが脱サラしてきたと言う臨時管理人さんと話しながら、ビール飲んで寝る。この方には蚊取り線香たいてもらったりしてお世話になりました。

7/16 晴れ 5:30起床 6:30出発 7:00駐車場(二等三角点576mの折り返し付近) 7:40加加良渡 11:30加加良・加加森二股 13:30核心ゴルジュ入り口 16:30加加良銅山跡下のガレ付近にて幕

起床して、ていしゃばの車両前で写真撮ったりしてから、森林起動跡の林道を車で辿る。しばらく行くと、はるか上の集落から落ちてくる道が左から出合い、遠山川の右岸を走る林道はそこから先はダートとなり、軽自動車でなければつらそうだ。左に少し上がったところに都合のいい停車ペースがあったのでここに駐車(下手なところに停めると林業の邪魔になるので注意。よく見ると広場状のところにはワイヤーやロープウエーや資材があったりする)。

車の横で身繕いした後、森林軌道跡の道をテクテク歩き、橋を2回渡ると加加良渡。別に最後は尾根を越えてもいいのだが、楽そうなので橋を渡ってから遠山川本流を渡渉。見た目激流なのでスクラム組んだら、ラスト3mくらいのところで上流側の武井さんが流され始めたので「戻れ!戻れ!」と一旦撤退。しばらく雨降ってないのに恐るべし。再度スクラムを組んだがやっぱりラスト3mで武井さんが流され始めたが、今度はそこが核心と分かっているので、既に死に体(浮いている)の武井さんを盾にして流れをさえぎりつつ強引に押し込む。いきなり厳しい渡渉であった。

その後は、大系の記述どおりどうということのない加加良沢本流を遡行。なぜか水がにごっている。基本、高い両岸の中の河原歩きだが、時折巨岩のゴーロとなり渡渉したりジャンプしたりする。2箇所くらい淵状もあるが、沢床が浅いので楽勝(2日目に分かったが、加加良沢は上流から常時大量の砂が流出しており、このため水は濁り、釜や淵は全部浅い)。ただし水量自体は非常に豊富なので、増水して水勢が強かったらこういった淵やゴーロの渡渉で撤退を余儀なくされると思われる。加加森沢との二股で大休止。ここはすごくいい幕場で泊まりたくなる。

この後もしばらくは地形図の屈曲っぷりからは考えられないくらい楽勝。
右から支流が入ってからすぐ出てくる釜持ちの3m滝が手ごわく、ここで初めてロープを出す。とりあえず高橋さんが左岸をへつるが無理。ナベが滝左の凹状に泳いで取り付くが足が着かず、正面のリッジ状に取り付くがフエルトのフリクションでは完全なスラブに立ち込めず敗退。武井さんにも泳いでもらったが、リッジに取り付けず撤退。仕方なく左岸から高巻き&懸垂。
この後、やや倒木がうるさくなるがすぐに復活。そしていよいよ核心ゴルジュ。
おお〜、確かにとんでもねえ。全体が滝状で、8個くらいの連瀑のようにも見える。
最初の方は登れそうだが、どん詰まりが絶対に無理。
最初の3個くらいを水流左から登り、そのまま右岸に逃げる。まあ南アの草付きなので、確かに泥壁だったりして悪い部分もあるが、ガッチリした木がところどころにあるので、ゴルジュの凄絶さと比べると巻きには悲惨さはない。概してV+くらいか。1Pザイルを出して、一番奥の滝の右岸から懸垂して沢床へ。
しかしゴルジュはまだまだ続く。
先ほどまでの威圧感はないが、登れない滝が立ちふさがりそのたびに巻きを強いられる。あんまり滝が多かったんでイチイチ覚えていないが、技術的にはV+の域を出ない。登れる滝はなるべく登ろうとしたが、登れる滝のすぐ後に登れない滝が控えているのが見えたりして、正直、攻撃対象としてはあまり魅力的ではない。しかし感動的なゴルジュではある。しかも見た目ほど巻きが難しくないのがありがたい(笑)。
何がなんだか分からなくなった頃、いかにも銅山跡からガレてきました的なガレが左岸から流入してくる。
右岸のガレ沢に幕場となりそうなところがあったのでそこで休憩。ここで張るかという話も出たが、ゴルジュの中で完全に距離感と現在地を喪失していたので、現在地をなんとしても掴みたい佐藤さん&ナベが偵察を買って出ると、「じゃあ俺休んどくわ」などと隊長。丁重にテンバ探しをお願いし、偵察に出撃。ここが鉱山跡下だとしたら、すぐに沢が右に屈曲して右岸から沢が流入してくるはずだが…。ちょっと行くと予想通りの地形となり、かつ、いい幕場も見つかったので、ザックまで戻って全員でもう少し進んで幕。

整地したらものすごくいい幕場となった。当然焚き木も豊富で、大宴会となった。成田さんが持ってきたカレーが、我々が普段目にしない高級そうなカレーでまあとにかく旨かったし、相変わらず武井さんは色々持ってきていた。

二股までは概ねこんな感じで大水量+ゴーロ+河原+浅いゴルジュ状 時々股下くらいまで浸かる。増水時はアウトか?

難しそうに見えますが、順層の岩質と浅い水深に助けられ実は簡単 加加森沢との二股を過ぎて、ようやく難しそうな滝が…

高橋さんが右壁をへつるも無理。ナベが正面のリッジを攻めるも敗退。武井さんも果敢に泳いだが力及ばず。右からザイル出して巻きました。 写真で見るととってもいい滝ですが、全く覚えてません。

核心ゴルジュ。奥の方に無理そうなのが鎮座しております。 後の二人の表情が、ゴルジュの迫力を物語っています。しかしなぜかトーマスさんは笑顔。

最初の方の滝は果敢に攻めるが… 結局、無理そうな滝をまとめて巻きました。

スゲー迫力 高巻き中に撮った写真。こりゃ無理だあ。(以下、核心ゴルジュ写真連続)

みんなで相談中 ゴルジュを抜けると、いかにも「銅山跡から流出してきました」的なガレが左岸から出くわす。

ヤニ男。値上げにも負けません。 焚火を囲む





7/17 晴れ 4:30起床 6:30出発  10:30沢が涸れる 10:50ごろ 左岸の尾根に逃げる 11:20ごろ稜線 11:45加加森山山頂(一等三角点) 15:15営林小屋跡 16:30ごろ地形図上の加加森沢下部廊下帯入り口付近(1070m付近)にて幕

朝から焚火でリッチな朝飯。
出発してすぐ滝が連続。威圧感はないが、単純に技術としてみると昨日より難しいかも。一箇所、高橋さんが何を思ったか武井さんの土台となってショルダー。頑張りますなあ。結局潰れて交代、ナベ土台+高橋屋根で突破。ここには残置ハーケンがあったが、なくてもキャメで代用できるし、ショルダーがあればフリーで行ける(が2手くらい悪い)。まあそこを登っても奥の滝が登れなかったため結局左岸巻きとなったが(ザイル使用)。
巨大ガレと沢が左岸から出会うと、いよいよ水量が減ってきて(といっても奥多摩の立派な沢くらいにはある)源頭の雰囲気が出てくる。
細かいクライム&下降がたくさん出てきて、スリング連結や武井さん個装のお助け紐が役に立った。何度も支沢が入ってくるが、ちゃんと地形図を見ていれば間違いようがない。
じりじりと高度を上げるが水流はなかなか減らず、「もう滝はええわい」というくらい滝がしつこく出てくる。
しかもこのチャート感、苔&ヌメリ…そこはかとなく奥多摩を感じさせる(奥多摩でも最上の部類ではあるが)。
右岸からの沢を分けるとようやく沢が涸れたが、今度は気の遠くなるガレが続く。2312m二等三角点ピークの北のコルに出る予定であったが、圧倒的なガレと照りつける太陽に負けて右手の尾根に逃げる。鹿道がありがたいぜ。詰めとしてはかなり楽勝で稜線に上がる。稜線が平らだったもんで多少右往左往したが、無事立派な踏み跡というかちょっと手の行き届いていない登山道と言うか、まあとにかく道に上がる。気持ちよくハイキングして、光岳方面へ抜ける登山道から左に分かれ加加森三角点を目指す。踏み跡はしっかりしていて、あっという間に山頂へ。記念写真を撮り、ここから下降開始。最初東へ降り、沢に当たってから北へ。
佐藤さんとナベは、加加森沢と諸河内が略奪点により二股となっている可能性もあり、注意深く下っていたが、何のことは無い、諸河内との間の尾根が細いだけであった。
加加森沢は加加良沢と違い、ガッシリした沢床をドコドコと下れる沢で、まああんなガレだったらどうしようかと心配していた我々にはありがたかったが、暑い!なんで暑いかっていうと水流がないから。やっと左岸から支沢が入って水流復活。うろ覚えだが、1800mで出合う沢だったか?加加森山は2400mもあるので、遡行してくるとラスト600mも水無しである。ちなみにここまで2回くらい酷い涸滝があって、遡行してきた際には面食らうことは請け合い。
1630mくらいで左岸から沢が入ってくるところで、右岸の小高いところに巻き上がると営林小屋跡があった。巻き上がる前にワイヤーを発見していたので嫌〜な予感はしていたのだが…
果たして果たして、予想通り、(時折いい感じの連瀑やナメ滝は出てくるものの)そこらじゅうにワイヤーが残置され、興がそがれる事甚だしい。
午前中、加加良沢で「奥多摩にちょっと似てるな」と思っていたが、このチャート&残置&苔は完全に奥多摩ではないか!(こんな水量の多い奥多摩の沢は無いが)
まあ営林跡のおかげでそこらじゅうに踏み跡があり助かったといえば助かった。
おそらくこの沢が大系に載ってないのは、昔の地形図には登山道と営林小屋が記載されていて「登る価値なし!」と判じられたからであろう。
ちなみに沢自体は上記のとおりナメ滝やいい感じの連瀑があり、十二分に魅力的な沢である。ワイヤーさえなければ…
まあワサビ田や堰堤がバンバンある奥多摩の沢があんだけ登られてるんだから、コレがアッチにあったら結構登られてて「ワイヤーがうるさいけどいい沢」とか言われてるかも知れないが。
16時ごろちょっとした幕場を見つけたが、高橋隊長の「もう1ピッチ行こう」という非情な指示によりさらに引っ張る。さすがに地図上の下部廊下帯にこの時間から突っ込むのはまずいだろうということで、廊下入り口の右岸にちょっとした場所を見つけ整地して幕とする。んで左岸で焚火。成田さんがナイスな橋をかけてくれたので(倒木を利用)、酔っても安心。遠慮なく焚火&飲んだくれるが、飲み始めた頃に佐藤さんが
「ああ!ヒルに食われてる!」
一同気が気でなかったが、しばらく飲んでいたらどうでもよくなった。
ちなみに加加森下降では一回も懸垂しなかった。

実は、まだ結構登り応えのある滝が潜んでいる。 左に同じ。

非情の武井さん屋根・高橋さん土台。ここには唯一残置ハーケンがあった。 結局奥の滝が無理で、右から巻き(ザイル使用)。

ガレと沢が流入してくる。 まだ水量こんなにあるかとげんなりしてくる。

オイオイ、もういいだろ〜 まだこんなのが出てくる。

突然涸れると、今度は絶望的なガレになる。 無事加加森沢下降に入り、営林小屋跡を発見
夜はまた焚火。




7/18 曇り 4:00起床 6:15出発 6:50加加森・加加良二股(大休止) 9:20加加良渡 10:20ごろ駐車スペース

今朝も起きてからリッチに焚火。
地図上の廊下帯とはいえ、等高線あんまりまたいでないしたいしたことないだろうとタカをくくって出発したら、ところどころに見所のある滝はあるもののやっぱりたいしたこと無かった。特に、二股前に左岸から流入する沢の滝は見事だった。
二股に着くと高橋さんが竿を出したが、我々が荒らしたばかりの沢でヒットがあるはずもなく…

あとは勝手知ったる本流を下降。
相変わらず水量は多く、スリップして白泡に飲まれたら…と思うと、むしろ登りよりもナベは緊張したが、みんなはそんなことなく、次次と大岩をジャンプしていくので、「俺ってヘタレなのかなあ」と自信喪失した。
やがて加加良渡に到着。今度は見事なスクラムで一発渡渉した。
林道もヒルが出ると聞いていたので各自恐れおののきながら歩いた。
途中、佐藤さんが食われかけ悲鳴を上げていたが、他は誰もやられなかった。駐車場では各自念入りにチェック。

帰りは下栗の里観光。言うまでも無く武井さんは(前に来たことがあるにもかかわらず)写真とりまくり。
集落の開けたところからは、登った沢と山がよく見える。「よく歩いたねえ〜」という思いと「なんだか、ここから見ると、あのあたりって結局下栗集落の裏山だよなあ…」という思いが複雑に交錯。
しかしこの里、日本離れした空中集落で、「日本のチロル」と形容されたり、その眺めが絶賛されたりするのだが、ナベや高橋さんはそれを認めつつも、「村八分」「畑から滑落」「電動三輪車も逆行」といった単語が口をつくのであった。救い難し。しかしオバタキの帰りの白川郷でも、世界遺産よりも用水路の魚を見ていた(そんで「金のある奴に金が集まる世の中の仕組み」を学んでいた)くらいだから仕方ない。

帰りは秋葉街道をちょっと南下して「かぐらの湯」に浸かり、梨元ていしゃばで飯を食って帰京。
ていしゃばの飯は旨かったが、待たせすぎ…

↓ていしゃばで鹿肉をほおばる。味はいいけど、待たせすぎだあ…



参考グレード:
加加良沢 3級〜3級上
加加森沢 2級(遡行したら2級くらいかなあという意味で)
今回の遡下降で3級上〜4級下

使用ギア:8.3mm×40mロープ2本(結果としてこれでちょうど良かった)、ハーケン(何回か使用)、カム一式(無理やり何回か使ったがなくても全然大丈夫)、タープ2〜3人用×2、鮎タイツ(高橋・佐藤・ナベ。成田&武井は不使用)、お助け紐(人数が多い場合はあった方がいいが、少なければ不要)、タイブロック(細いロープの場合はユマールか、カンプのリフトロープクランプがいいと思う)

テクニカルコメント:体力がまず要る。そして読図(読図力というより、こまめに読む根気。地形自体は簡単だが、大系の遡行図が適当なためちゃんと地形図読みしないといけない)。
技術的に極度に難しいところはないが、なにせ長いのでイチイチロープを出せない場合がある。巻きでは騙し騙し登るところも多いため、エースは必要ないがパーティの足並みが揃ってないと厳しい。今回は結構積極的に攻めたと思うが、グレードとしてはWを越える箇所は無かった。その代わりザイルを出せないVくらいのところが結構あった。あと実は遠山川の渡渉が結構厳しい。まあちょっとした労力で尾根越えすればいいのだが。
ヒルは少なくとも晴れている日はほとんど出なかった(加加森沢で1匹、軌道跡で1匹)。森林軌道跡を歩くハイカーも多いと聞くが、塩や薬で武装すれば問題ないだろう。沢・林道とも、今のところは気にするほどの量ではない。見敵必殺の気構えでこれ以上増やさないようにしたい。


感想:期待がものすごく大きかった分、ちょっと肩透かしを食った感はあるが、いい沢であったし手ごたえも十分であったことに間違いは無い。登り応えという意味では、ゴルジュは凄いが観賞用だし、泳ぎも無いため、ちょっと残念。泳ぎがあったり(全部埋まってる)、加加森沢にワイヤーがなかったりしたらなあという思いを禁じえない。もうワンパンチ欲しかった。
まあ今回は人数多くてそういう意味ではちょうど良かった。何より宴会が楽しかった!

記:ナベ
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