三面川 岩井又沢本流


[期間]2011年9月7-10日(前夜発3泊4日)
[メンバー]高橋・成田・他1
[形態]沢登り
 
9/6(火):
刻々とスピードを遅らせる台風にがっくりしながら週末を過ごす。大朝日岳の山岳天気予報は怖くて見れない。満を持して会社を出る直前に三面のアメダスを恐る恐るチェーック・・・・オッケー!そんなに降ってない。
 
(西国分寺駅集合19:30 - 奥三面ダム東屋25:00 - 泊)
 
9/7(水・曇り):
”岩井又はすぐ沢に入れるのがいい”
竹を知っている者にとってはこれが一番なはずだ。最初からやる気をだして行っていい。そういう時期を狙ったのでメジロアブはもちいない。対岸の切れ込みを観察しながら登山道を進み、いくつかある踏み跡から一番近そうなのをチョイスしておりたら出合から10m上流に出た。平水なのは途中見下ろして知っていたが、本流は記憶にある「腰で押し切る徒渉」ではなくひざ上のさらさらした流れだ。″あれえ、こんなんだっけえ〜と苦笑しつつ成田さんに問えば″こんなんだよ″というので納得することにする。案ずることなく、岩井又に入って20mも進むと腰上だ。ふわっと体が持ち上げられて泳ぎが入る。胸まで浸かって進む緩いトロでは透明な水をとおしてつま先がくっきりと見え、目眩がする浮遊感覚だ。玉石を敷き詰めた岩井又の流れはまったく変わってなくそこにあった。最初のS字滝は落ち口に渡る一歩がバランスがいる。蘇るメモリー。後続の補助にハーケンを打ちこむがリスの方向がいまいち。次のS字釜は下部ゴルジュの華で大きく口を開けた空間を泳いで岬状を回り込んでリッジ出る。ここもここにきて思い出した。リッジ出だしが微妙でザイルを出したんだった。まだ入り口の二人は手振りで巻くと言ってる。ノーザイルで人知れず落ちたらどうしようもないので泳ぎ戻る。左岸の巻きは楽勝で上から見ても迫力のゴルジュだけど、内院から見て欲しかった気持ちはする。成田さんともども、これ以後は畑沢まで危険箇所はなかった記憶なので今日中にゴルジュ帯を抜けられそうだと俄然元気が出る。寝不足の初日でどこまで行けるかが遡行の第一ポイントだと皆で話してたのだ。途中熊の水浴びに遭遇したり、パラっと降ってきりしたが雲は薄い。両岸の白い花崗岩はへつりの登路をどこまでも保証してくれるし、岩魚も丸見えだ。ゴルジュの抜け口の滝を左からへつり、落ち口を渡ると待望の畑沢まで続く川原に出る。右岸の上戸沢シリーズのスラブ滝が見事だ。成田さんは畑沢まで行こうかという意見だったけど、そうすると遅くなって釣りの時間がなくなるので中先沢の手前でやめにした。二人にタープと焚き火設営をお願いしいそいそと食糧計画の遂行に出る。一人頭二匹分として6匹調達。塩焼きサイズで刺身になるような大きいのは釣れなかった。途中にいくらでもあった大渕で時間を気にせずドバミミズをたらしてみたいものだ。あ、釣り竿は任意装備で高橋しか持ってこなかったので、これは好き勝手にしたわけじゃありません。
 
(三面登山口08:00 - 岩井又出合09:00 - 下部ゴルジュ帯 - 中先沢手前左岸泊地16:00)
 
9/8(木・晴れ):
朝から焚き火。たらたらとコンディションを作りながら畑沢を目指す。泳ぎに入る前の歩きの一本はありがたい。畑沢を分けても本流は水量を減じることはなく、何もなかったように谷が続く。さあ、これからだ。想像していただけの先が見れる。17年前はこのすぐ先の淵かそのまた先の淵でいよいよヤバゲな雰囲気に呑まれ畑沢に引き返したのだ。あれは入渓して既に3日目で”あと何日〜?”って気持ちが入っていたし、きっと水も少し多かったのだろう。雷雨増水でワカバ沢付近で停滞もしたっけ。
 
V字に突入していく。侵入するにつれ”竹化”した水路の様相を呈してくる。足元はえぐれてエメラルドグリーンは益々深く、釣竿がすっぽり沈みそうだ。それでも底が見える。こんなのが西俣沢出合まで切れ目なく続く。これが岩井又だったのか。岩も白さを増したようだ。泳いで、へつって、また泳いでを繰り返して突破していく。西俣出合手前に崩れた雪渓。これが今回のただ一つの雪。条件に恵まれた。西俣からガッコまでは幾分おとなしくなるが相変わらずの水路。ところで、出版された遡行図を三種コピーして持っていったが、畑沢を分けてからは枝沢の表記、滝、巻き、参考時間と皆バラバラで実見と合致するものはなかったように思う。とにかく地形図に水線の入ってない枝沢が皆大水量で出合うので訳が分かんなくなる。ただ、巻きの入口はここしかないって感じなので問題はない。
 
たどりついたぜ、なにしおうガッコ沢。やっぱり本流が本流だったのは嬉しいが、ここから先はうって変わって黒くて暗い挟間となって進入を拒んでいる。さて巻きだが、ガッコ沢出合の滝の右壁が唯一の弱点に見える。ここは空身で登ってよかった。背中を使って登ったから。ガッコの水を飲んで、水筒に汲んで巻きに入る。案外にすぐノーザイルで降りられた。ここは60m懸垂などという遡行図もあって、40m一本の我々にはとても心配だったとこだったのだ。
 
谷底を少し辿るとちょっとした登れない滝。左から軽く巻いて落ち口に回り込めそうだったので水も汲まずにとりついたら地獄への入り口だった。あの錯覚は何だったのか、すぐ降りられそうなんてとんでもない。谷底を確認しながら進みたかったし、何度か降りられそうなところで下降してみては”40m一本では無理そう”と戻るのを繰り返して、右上がりの折れ線グラフ状に巻き進んだ。傾斜の強い側壁から逃れられないまま水もなく2時間近く経つけどまだ先の見通しがつかない。気力も水分も涸れ果てようとした頃ラッキーにも水のちょろちょろ流れるルンゼを通りかかったので大休止できたが、これがなかったらやばかった。ルンゼを少し下ったところからまた巻きを再開し漸く開けた河原が見えてきたので降りていったら残置シュリンゲがあった。15m懸垂で生還。この3時間に及んだ巻きは成田さんがずっと先頭を切って巻いていった。”こんな傾斜のとこなんで巻くんだよって視線が後頭部に突き刺さりっぱなしで緊張したよお”。”ははは、わかりましたあ〜” 俺も ”もっと危険じゃないとこないのかよ”って思って最後尾から我が身かわいさに右見て左見てしてたけど、結局すぐ付いていくしかないって納得した。成田さんの巻能力は知っているのだ。結果オーライの見事な巻きでございました。
 
降りると沢はひらけ、ちょっと進んだ先の左岸に絶好の泊まり場があった。樹林帯が降りてきていて川原も広い。のこぎりがなかったので薪の確保はちょっと時間がかかったけど中俣沢唯一の安心できる泊まり場と見た。角を曲がって上流を見ると圧倒的な滝の連なりが見えるが明朝までもう見ないことにしようと思う。
 
月明かりがまぶしくて夜中起きてしまった。
 
(発07:00 - 畑沢08:00 - ガッコ沢10:30 - 1回目高巻き終了11:00 - 2回目高巻き11:30〜14:30 - 中俣沢左岸絶好の泊地15:00)
 
9/9(金・曇り):
今日も朝から焚き火。
滝は次々登れて爽快。気分いい!2段20mを左から簡単に巻いた記憶しかない。フェルト底の成田さんは苦労していたところがあった。三面の花崗岩は風化してないのでアクアステルスソールがギタギタとまり申し訳ないくらいだ。
 
二股から東俣に入りフィナーレを予感しつつ登る。相模尾根と寒江山を振り返っては、上げていく高度を感じる至福の時間が流れる。ところが、笹藪が始まってもう終わりかと思ったらきつい灌木の藪漕ぎに嵌ってしまった。しかしこれも、もうスパイスでしかなく、一頑張りで稜線の草原に抜けた。仲間も最高の笑顔で続いてきた。西朝日岳の肩。風が吹きわたり山は早くも色づき始めていた。
 
そして、下山ね、下山。相模尾根ははるかに霞んで見え我々には無理と方針転換して竜門から右に折れてしまった。日暮沢小屋からタクシー、JRを乗り継いで小国まで行きついて、その日は駅横でオープンビバーク。降らないでくれとの祈りは最後の夜が一番切実だったかも知れない。
 
(発07:15 - 二俣 - 東俣沢 - 稜線西朝日岳の肩下12:00 - 竜門山 - 日暮沢避難小屋16:30〜17:30 - (タクシー) - 左沢駅18:20 (JR左沢線) 山形駅 (奥羽本線) 米沢駅 (米坂線)小国駅22:00 泊)
 
 
9/10(土)
三面在りし日のバス道というが今では信じられない。通行禁止の看板がありに緊張が走ったが、運転主さんはゲートも突破して三面まで送ってくれた。
 
(小国駅発06:30 - (タクシー) - 三面登山口07:30 - 村上警察署? - 瀬見温泉 - 笹川流れ観光 - 西国分寺駅解散17:30)
 
 
”水の透明感、緑の釜、白い岩、稜線から見た山並。三面は期待を裏切らないなあ”by 成田
 
 
ノート
1.日暮沢小屋に降りると以下のことが待っている。
日暮沢ー左(あてら)沢駅: タクシー11,000円
左沢ー山形ー米沢-小国: JR 2,200円
小国ー三面登山口: タクシー11,300円
 
2.今回装備で最後まで迷ったのがザイル。結局三人で40m一本としたが結果よかった。強引に懸垂するような無理はしたくてもできなくなるので。ただし、三面川の沢の様子が経験から想像できたからで、たとえば飯豊だったら40mx2本が基本だろう。
 
3. とにかく条件に恵まれた。
 
 
個人的な話をすれば92、94、96年と竹に3連敗を喫した(94年は車中で岩井又に方向転換し、さらに畑沢に逃れたのは文中の通り)。初めての泳ぎの谷に、”こんな世界があったのか”と出会えたことを悦んだ。帰りの車中では毎回”あのメジロ野郎め”と性懲りもなく同じ敗退を繰り返す自分たちを笑いとばし悔しさは既に消失してた。6:4で釣り目的(もち4ね)もあったしして。三面川の自然はメジロアブに守られているんだとほんと思う。竹の沢、岩井又どっちがいいかなんて愚かだ。自分の中ではどっちも絶品だ。透明感は同じだけど内容が違う。しかし、治さん、長さん、あの竹は間違いなく増水してましたよ!同じく竹上流部で敗退経験ある成田さんも言ってますよ。
 
以上

 
写真
1 岩井又入ってすぐ
2 S字滝 
3 奥で陽があたってるのが畑沢出合
4 ガッコ沢F1 
5 中俣沢 
6 3日目の連瀑帯
7 稜線まで20m
 
記)高橋















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