■那須 阿武隈川雪割渓谷ゴルジュ[溯行]

2012.7.15
鮎島、佐藤、武井、水度辺(会外)
 私には、興味のある場所を一覧にまとめた「インタレストリスト」というものがある。メジャーでまだいったことがないところから、マイナーなところ、そしてよくわからないところまで、いろんな種類のところが含まれている。
 今回の雪割渓谷は、はっきり言って「よくわからない」部類であるが、地形図でみると3qを越すゴルジュマークで非常に興味深い存在であった。また自分の中では鳥首川の小滝群はそれなりに面白そうだという観光情報をもとに考えると、それなりに自信があるところでもあった。やはり、人を誘うからにはそれなりに自信がないとね。
 というわけで、3連休中日に募集をかけると3人の仲間が来てくれることになった。

遡行マップ

側壁をへつる

ダムが立ちはだかる
 雪割橋を渡ったところには、あまり繁盛していなさそうな売店の前に駐車場があるので、そこで準備。適当に準備して、崩落した車道を進む。

 5分ほどを進むと「死」という落書きがアクセントをつけている案内板があって、そこから遊歩道をてくてくと歩き、適当なところから鳥首川へ。鳥首川を今度は本流に向かって降りるが、この鳥首川の渓相は川幅いっぱいにナメと小滝が連ねておりなかなかである。これからの沢に期待が膨らむというもんだ。

 本流と合流したところは和楽渓というらしく、たしかに本流はゴルジュが狭まって、泳がないといけない感じだ。
 記念写真を撮った後、上流にすすむとこちらもなかなかのゴルジュ。少なくとも逃げ場はない。ただし、幅は20mほどあり、また川底も深くないので、渡渉を繰り返していけば問題ない。また両岸もスラブが発達し、へつっていけるが一か所、泳がないといけないところがあった。
 そんな感じで進んでいくと、橋の下あたりに、なんともすごい雰囲気を持ったゴルジュになってきた。あいにく、天気はあまりよくなく、沢の中はガスっているが、その効果も合わさって、なんともすごい大河のゴルジュの雰囲気。ただし、雰囲気だけ。実際のところは砂が堆積しており、そんなに深くない。深いところでも股下ぐらいで進むことができる。でも、ずっと膝上の水量をひたすら歩く感じになる。要は、ひたすらラッセルしているような感覚ですね。下は砂地だし、結構疲れる。

 右岸に発電所を過ぎると、両岸がさらに狭まり、両岸の高さが50mを超える圧倒的なゴルジュになった。そして、ようやく30pではあるが、ようやく初めての段差が見えてきた。おぉ〜。ようやく始まるか…。ワクワクっ!
 っと、微妙にガスっているのでわかりづらかったが、その奥にもっともっと高い障壁があるのが見えた…。…。…。ん?っえ??なにこれ。。。。
 …………。…………。
 そこには、高さは50mははるかに超える壁があった。それも明らかにアーチ型をした人工的な障害物、コンクリートの壁があったのである。
 「アーチ型コンクリート壁ってことは……。…これってダムじゃん。ダムがこんなところにあるのか。うっきゃぁ〜地図にも書いてないぞ〜〜。」
 ダムということは、この上にはバックウォーターがあるということ。このダム、結構古そうでこの前の地震もあるし、なんか怖い…。なんかの拍子で、ドバっとくれば、逃げ場のない我々はひとたまりもない。うひぃ〜。想像するだけでビビってくるぜ。

 ということで、さっきの発電所までもどり、そこから高巻くことにした。まぁ、高巻くにしろ、上流部はバックウォーターかもしれないのだけれど。。。。
 一度車道に出て大高巻。ダムを見下ろすところに来た。
 …っとバックウォーターがない。
 なんと、あのアーチ式の人工物は堰堤だったのだ。コンクリートダムには大きく分けて重力式とアーチ式の2つあるが、アーチ式の堰堤なんで見たことがなかった。だからこそ、我々もダムに違いないと思い込んだわけだが、実際のところはただの堰堤。かなり大がかりだけれど、意味があるんかなぁ。。

 まぁ、バックウォーターがないというのはある意味ラッキーなので、適当なところから降りるが、なおも両岸はゴルジュ状で、最後は懸垂下降20mで沢床に降り立つしかない(最後は空中懸垂だった)。念のため持ってきた30mロープ×2本が役に立った。
 さて、ロープを引き抜いて、先に進もうとするが、しかし、なおもずっと両岸ゴルジュ状が続いている。
 「う〜ん。この先、同じような堰堤があったらピンチじゃね?ロープを抜いちゃうと、もう高巻けないぜ…。」
 とも思うが、「まぁ、なんとかなるんじゃね?」ということで、ロープを引き抜いた。その時は少なからず緊張感があったことを報告する。

 というわけで、両岸で万が一なんかあった時に、登れそうなところをチェックしながら進む。しかし、あまりないんだな。ずっと、両岸はゴルジュ状の岩が続いている。なんかあったときにも上がれない。
 しかし、実は緊張感があったのはそんなに長い時間ではなかったりする…。なんといっても、川底は延々と河原状なのだ…。ダム(堰堤)の下流は砂で埋もれていたものの、膝上までつかるところが頻繁にあって、あまり河原という感じじゃなかったのだが、ダムより上流はずっと河原なのよね。いやはや、ゴーロやで。そんな感じで、両岸ゴルジュで「逃げ場のないただの河原」を延々歩いていく。…。「逃げ場のないゴーロ」ですよ。これは性質が悪いっす。途中、柱状節理の大崩落はあるけれど、変化といえばそのぐらいで、あとはただの逃げ場のない河原という景色が延々、延々、延々、延々、延々・・・・。もちろん飽きてくるわけだけれど、かといって「や〜めた」といって帰るわけにもいかないのがつらい。。。
 さらに悪いのが、先頭を突っ走るトーマスさんのペースが暴走し始めてきたこと。暴走機関車トーマス復活です。うげぇ〜、早いっすぅ〜。ちょっと、再来週の富士登山競争のトレーニングを今、ここでしてるでしょ!…でも、山登魂の一員たるものは「もう少しゆっくりペースでお願いします♪」なんちゅう言葉は禁句なので、「トーマスさん、自分のペースでいいですよ」なんて余裕をかまして黙々とついていくしかないのだ。

 ようやく、右岸に取水口が見えてきて、そこから遊歩道に上がって終了できた。。。あぁ、疲れた。。。。
 っあ、最後のほうは緊張感はまったくなかったなぁ。

 あとは車道を1時間で駐車地まで。駐車場前の売店は、けっこうこの時間に来ると大繁盛している。我々もソフトクリームなどを買ってしまった…。(結構、うまい)

 しかし、時間はまだ早い。
 雪割渓谷は我々が遡行開始した下流にも「瀞の大滝」とか「西郷瀞」とかがあると書いてある。そこで「おかわり」しようということで、車で移動し、遊歩道から偵察。
 しかし、瀞の大滝はただの堰堤滝!西郷淵はその堰堤のバックウォーターだった!…。
 なんだよっっ、西郷村!ただの堰堤を滝とか書くんじゃねぇ!ただのバックウォーターを瀞とか書くんじゃねぇ!そして、それらを観光名所として紹介してるんじゃねぇ!
 …もちろん、ダマされた我々が悪いんだけれど。…もちろん、その遊歩道は誰もおらず、引っかかったのは我々だけだったようだが・・・。

 参加者の皆さんには「ノークレーム厳守」を守っていただいて、否定的な意見は一切出ませんでした…。みんな、優しいねぇ〜〜。
 でも、どうなんでしょうねぇ。確かに雰囲気はすごかった!また、結構疲れた!ちょっとは冒険的心境にも浸れたしね。まぁ、「それなりに、それなりに。。。」というところでしょうか。
 お勧めできるかどうかは微妙ですけど、夏でもラッセルトレーニングしたい人はいいんじゃないですかね??前夜、山崎さんから「探検的ちゃうで、賭博的やで」…というお言葉をいただいてしまってましたが、まぁ、そんな感じでしたね。まぁ楽しかったですよ。
 とにかくとにかく、参加者の皆さんにははるばると付き合ってくれて感謝感謝なのです。ありがとうございました!!

2012.7.18 鮎島 筆

【記録】
7月15日(日)曇
 駐車地0730、鳥首川との出合0800、ダム0900、遡行終了点1100

【装備】
30mロープ×2
※ウェットスーツは下はあってもいいがなくてもよい。



山登魂ホームへ