■日光/霧降川「霧降の滝」(登攀)

2013.6.15
鮎島、荒井、高橋
 日本人って「百名○○」とか「三大○○」って大好きだよね〜。もちろん、私も例外ではなく、ミーハーなので百名○○は大好きなのだ。山登りで言えば、百名山、百名谷、百岩場…。しっかり、登ったところをリスト化してるで。
 しかし、登山における「百名○○」は何も百名山や百名谷、百岩場だけではない。「百名瀑」というのがあるのを忘れてはならない。ただ、百名瀑はそれらとは根本的に違って、実際に登る対象として選ばれたわけではない。だいたいが観光用なので、人目もあって実際に取り付くこと自体が難しいのだ。滝そのものがご神体というのもある。つまりは百名瀑すべてを登るのはムリな話なんだけれど、キレイな滝が多いのも事実なので、その中で何個かは登りたい…。ぬぁ〜んていう、欲求もあったりする。

 っで、霧降の滝である。
 日光の滝といえば、華厳の滝が筆頭なのだろうが、数ある日光の滝の中で華厳の滝以外では、唯一、霧降の滝が百名瀑に選定されているようだ。しかして、フツーの滝とは違って、霧降の滝は間近で見れる観光道が整備されておらず遠望するしかない。これはすなわち、あまり人の目は気にしなくていいということですな。ご神体でもないみたいだし。これは取り付けそうだ。
 また、登ったという記録はついに見つからなかったが、写真を見る限り、“っお、これ、いけるで”という感じで濡れていても登れそうな感じでもあった。
 要は、面白いかどうかはわからないけれど、これなら「百名瀑のひとつを登った!」という名を取れるんじゃないか…と思って、前々から狙っていたわけです!

 当初はドラゴンと早朝ゴルジュに行く予定だったが、連日の雨で増水ゴルジュはまずいという話になり、ではどこか…となれば、ここしか思いつかなかった。転戦の話を持ちかけるとOKとのこと。また、小川山計画が雨で破談となった高橋さんも参戦。「いや、増水の滝もまずいじゃない?」(by高橋)という声もあったが、金曜夜からひとまず向かうことにした。


霧降の下滝と登攀ライン(赤線)

霧降の下滝を登る高橋

霧降の下滝を登る荒井

霧降の上滝と登攀ライン(赤線)

霧降の上滝をシャワークライミング

霧降の上滝を激シャワーでくぐる荒井

霧降の滝上で記念写真
 う〜ん。おかしいな。宇都宮までは地面も乾いていたのに、日光に近づくにつれて地面は濡れ、日光に着くと、完全に霧雨やんけ…。いやぁ、萎えるな。本当に、明日大丈夫かよ…。
 まぁでも、車の中で宴会するのも狭いので、テントで宴会することにする。
 っと、高橋さんのザックにどこかで見たことがある”尺取り踊り”するブツが…。

 「う〜ん、これ、ヒルですよね。」
 「あー、間違いないよ。日光にヒルがいるなんて話は聞いたことないんだけれどなぁ。」

 とにかく、その一匹は、高橋さんの灰皿の中にブッこんでニコチン漬けの刑(そーいえば、その後の生死は確認しなかったですねぇ。今度、高橋さんの車の乗られる方は要注意?!)。
 この段階で実害があるわけではないが、気持ちはブルーである。となると、テント内の宴会トークは、ヒルやダニの話が中心に。
 まぁ、そんなわけで霧雨の中でもそれなりに宴会は盛り上がった。なにより、その後、なぜかヒルは現れなかったしね。高橋&荒井がテント内でいつも以上にタバコをふかしていたからかなぁ。(それが効果があったのかはわからないが…)
 でも、朝起きたら、ヒルの巣窟に嵌っていたらイヤなので、念のためテントではなく車で寝るに限る。

 朝5時。外は明るい。雨もやんでいる。よかったね。
 めいめいに準備をしていくが…。

 「うぁ、なんだよ〜やられた〜〜」

 アイツが高橋さんの足の指裏にくっついてる…。そして赤い筋が…。あー吸われてますね…。なんだよ、昨日のヒル、単独じゃなかったのかよ〜。
 この時点で、すでに高橋さんは戦意喪失…。しかし、ここまできたので、しょうがない、行くか…。という感じで、さっさとウェットを着て防護に努めるしかない。

 6時前に霧降川の橋から本流を溯行開始。
 この霧降川本流。案外となかなかにいい渓相だっ!チンケな丹沢や奥多摩なんかよりずっといいんじゃない??なにせ小滝あり、ナメあり、トロ・淵あり…。小滝もロープを出すわけではないが、いい感じなのだ。もっとも、我々3人は今回が今シーズン実質初めての沢登りなので、こういう小滝・ナメ・淵といった渓相にとても新鮮な気持ちに戻れただけなのかもしれないが…。でも、「沢登りってなんかいいね」って思えたことがうれしい。心なしか、ヒルもいない感じだし。
 しかし、霧降の滝までけっこう遠いんだな。地図的には目測で30分程度かな〜と思っていたが、うねうねしている分、もう少しかかった。道なんかないし。

 っで、霧降の滝に到着。
 この霧降の滝。ウィキペディアによると「上滝は25m、下滝は26mで、全長は75mとなる。頂部の幅は約3mだが、下部では約15mにも広がる」とのことだが、実は霧降の滝に到着したといっても、上滝はまったく見えない。つまりは、下滝と上滝は少し離れてるんだな。つまりは霧降の下滝に到着した…というのが正確か。
 っで、この下滝。高さも26mとあるが、いや、どう見てももっとあるでしょ。40mくらいはありそうな。それに幅も上は3m、下は15mとあるが、いや、もっと幅もあるでしょ。水が多いだけか??
 でも、傾斜もそれほどないので、これがホンマに百名瀑かいな…とは個人的に思ってしまうのが哀しいね。いや、上滝が見えれば、「うわぁ〜」と思うんだろうけどね、見えないんだもん。しょうがない。
 しかし、これを実際に登るとなると…。いやぁ、下のスラブ滝みたいなところは問題ないさ。けれど、上部の草付きっぽいところが厳しそう…。なにより、やっぱり水量が半端じゃないし…。


 とにかく一服して、楽勝に思えた下段のスラブ滝を左からノーロープで登る。
 しかし、これがけっこう、アレだね。緊張するんだな。久しぶりだからかな?。ヌルヌルのところもあるけれど、全体的にフリクションが利く。私と高橋さんはステルスラバーなのでまだマシで何とかノーロープで中段のテラスまで登れたけれど、ドラゴンのフェルト靴では、確かに厳しいね。フリクション勝負のところもあるし、じゃんじゃん水が流れてるしね。(V程度?)

 そんなんで、中段のテラスから上を見ると…。う〜ん、どうなんだろうねぇ。なにより大水量だからね。なんで梅雨時期に来ちゃったんだろうね…と企画した自分も思ってしまう。
 登るとしたらラインとしては水流の左のコンタクトラインを登って、途中から左壁。草付を登って滝上へというものしかない。
 もちろん、ロープを出すよね。というわけで、じゃんけん。勝ったヒトからリードということで、高橋さん一抜け、ドラゴンが二抜け…。
 え〜〜〜。高橋さんが1ピッチ目なの??いや、1ピッチ目は大水量だけれど、傾斜もないし、なんとかなりそうかな〜と思ってたんで、内心やりたかったんだけれどなぁ。エースと期待した高橋さんが1ピッチ目かよ…。高橋さんも心なしか、うれしそうに準備して登る気マンマンのところ見ると、「いや、やっぱり俺やります」なんていえないしな。

 水流をわたって左壁に取り付き、ハーケンを2つでランナーを取ってまた水流に入って左壁のしっかりした潅木まで(20m)。いや、まぁ途中のセクションでちょっと細かいところもあるが、やっぱり問題ないよね(V+程度?)。これなら俺でもイけたで。

 問題はその次。う〜ん。出だしがたってる。でも、しっかりルンゼっぽいところから登れて、ちゃんとカムが取れそう。ま、ドラゴンがリードだから、いいや。傾斜強いし。
 しっかりとタバコ一服の後、キャメロット#2.0と#3.0でランナーを決めて問題なくのぼっていく。おぉ〜。さすが、クラック登りこんでるだけあるねぇ。いやらしそうに見えた草付も案外階段状のようで、するすると登り、20m程度でビレイ解除。(W-程度?)
 フォローすると、傾斜が強いところも案外とガバがあるのね。でも、傾斜がきついね。いや、リードは怖いよ。

 そんなんで、案外、強烈な困難もなく「霧降の下滝」の登攀、サクッと終了〜〜。やったね★
 しかし、この終了点から上を見ると、木の間からなんか怪しげな霧降の上滝が見える…。う〜ん。なんかね。雰囲気が怪しい…。下滝と違って、上滝は明らかに傾斜あるで。
 順番的には私がリードなんだよなぁ。そそくさとロープを片付け、100m(!)も離れた上滝下へ移動…。

 霧降の上滝は…。確かに下滝以上に雰囲気があった!何よりやっぱり傾斜があるしね。ウィキペディアの高さ25m??うそだろ。どう見ても40m近くはあるでしょ。いやぁ、ウィキペディアによるとした滝が26mで上滝が25m、全長75mって、本当に実測したのか??上滝と下滝の距離だって100m近くはあるしね。
 しか〜し。上滝を見て、ほくそ笑んでいる自分がいた…・。イヒヒ。これはいけるで!そう、階段状だったのだ〜〜。ラッキー。振り返ると、高橋さんもニヤけていた。。。まぁ、それだけ下滝上から木陰から見える上滝はそれだけ不気味な感じだったのだ…。まぁよかったよかった。

 まぁ、途中まではノーロープで問題ないでしょ!という感じで、めいめいに水流の左側から取り付くが…。やっぱ、水量が多いのかな…。けっこう、怖いぞ。水をしみこんだロープも重いし…。ガバに見えるホールドはなんかポロッととれそうで怖いし。。。V程度だがロープを出してもよかったかもね。
 で、途中の大テラス。ここからがね…。左壁はブッたってる。しかし、滝下から見た感じ、ここから水流右側にわたって、右壁を登ればいけそうな感じだったが…。でも、この大水量をくぐるのかよ〜。ちょっと、気合が必要だけれど、まぁ、行くしかないよね…。
 ロープをつけてくぐる…。うぉー、すげぇ水圧ぅ〜。それに冷てぇぇ〜。ウェット着ててよかった〜〜〜。それに、オーブ方式(めっとの下にキャップをかぶる)でよかったぁ〜。視界が確保できるぜ。そんなんで、15mで反対側へ。肩がらみで後続を迎えるが…ドラゴン。なぜに水圧が一番強いところに行くのか??滝と白いメットが一体化してるぜ。いや、ありえないね。

 あとは、もろそうな右壁をロープを出して10mのぼれば(V+)、後は簡単に滝上に出られた。やったね★。
 霧降の滝、完全登攀だ!へへへ。百名瀑、ひとつ落としたぜ。


 時間はまだ8時半。想定どおりの時間で終了だ。
 あとは、5分ほど霧降川をたどって、堰堤を左から越すともう少しで登山道が見え、あとはそこから下山するだけだ。お手軽だね。。

 …っと、ドラゴンの膝後ろにアイツが、ウネウネしてる…。そうだ、完全に忘れてたが、ここにもヒルがいるのか…。なんだよ…。ブルーだ。。。

 それはともかく、やっぱり自分の足跡を振り返りたいもの。下山途中に展望台があるので、「山のレストラン」前にザックをデポし、立派な石畳をたどって、展望台から霧降の滝を見学。しかし、さっきまで晴れていたのに霧がかかってるんだな。。。さすが、霧降。
 っというか、高橋さん、靴!靴に…2〜3匹、アイツがたかってるんですけど…。うげぇ〜。こんな石畳にもいるの??

 しかし、ここから駐車地に戻る道の方がもっとヤバかった。長峰ヶ丘を経由して霧降川に降りる道はエアリアではしっかり赤線で入っているのだけれど、実際は完全に廃道状態。しかも、すげぇジメジメしてて、明らかにアイツがいる雰囲気しかしない。いや、絶対にいるでしょ。でも、ここを通るしかないからね…。
 展望台から駐車地までは40分ぐらいだったかな。でも、駐車場についたときには、靴の中から片足10匹程度はくっついていた(涙)。実害は高橋さんが両ふくらはぎ、私が両足首に…という感じ。ただ、ドラゴンだけはしっかりとウェットで覆っていたせいか、実害は一切なかった。

 通りがかりのオッちゃんと、高橋さんが話していたが、この2〜3年でいきなり増えたらしい。また、オッちゃんによるとこの辺は放射能のホットスポットらしく、背骨が曲がった岩魚がいるといっていた。
 それよりも、相手が栃木弁を丸出しだからといって、どうして高橋さんも言葉を東北弁に切り替えたんだろう??いや、不思議に会話が成り立つというか、逆に栃木弁と東北弁がマッチするので、それはそれで「いい物」を見させてもらった。。。

 とにかく、家に帰ってザックからヒルが出てきたらいやなので、アスファルトの安全地帯で駆除するに限る。。。。
 しかし、高橋さん、その期に及んでから「ヤマビルファイター」を車から出すの、やめてください。あるなら、なんで朝出してくれないんですか…。意味ないじゃないですか…。

 百名瀑ゲット!これで3つ目。やったね。
 しかし、実際のところ私が登った3つの中ではこの霧降の滝は明らかに格落ち。そもそもが、これが本当に百名瀑かよ〜と思っちゃったりもするんだけどね。
 もちろん、この百名瀑は「観光百名瀑」ともいえるので、そもそもが発想は違うわけだし、観光百名瀑でも、華厳・那智・袋田の3名瀑はもちろん、私が登ったほかの2つ(称名滝・七ツ釜五段の滝)は、確かに感動するような滝だ。しかし、そういう意味では、霧降の滝は、@ガンガラシバナ、A水無川真沢「幣の滝」、B釜川右俣「三ツ釜滝」、C西ゼン「大スラブ滝」、D東沢釜の沢「両門の滝」、E兵衛谷「天然橋の滝」、F大畠谷「二俣の滝」以上の感動はなかった。つまりは、私が感動した上記の7滝や、行ったことはないが越後沢大滝やドウドウセン、剱沢大滝のほうが、もっと真の百名瀑にふさわしいのではないか。どうだろう、岳人の企画で「真・百名瀑」なんてやってくれないかね。登魂通信復活号でもいいけど。

 いや、でも、よかったと思うよ。「観光百名瀑」を登るという発想自体、私の中で新鮮なもので、実際に霧降の滝も記録がなかったのである。また、残置もなく、自分たちでラインを読みながら登れた。それはそれでとてもいい経験であった。
 それに、私は登った後の充実感ももちろん重要だけれど、登る前のワクワク感も大事にしたいという気持ちがある。そういう意味で記録がないところを登るというのはワクワクするものだし、今回も例外なくドキドキした。それだけでも、私としては今回の山行を大事にしたいし、私の中では有意義な時間を過ごせたと自負する。
 ただ、お勧めできるかどうかといわれれば、厳しい。なにより、あのヒルだから・・・・。日光にヒルがいるなんて知らなかったけれど、検索エンジンで「日光 ヒル」で検索するとけっこうヒットするのね。これからはどこかを計画する際に「○○ ヒル」で検索してから行くことにしよう…・。心の準備とともに、いろいろな準備をしたいからね。。。
 とにかく、ドラゴン&高橋さん、どうもありがとうございました。登攀自体は厳しいものではなかったですが、けっこう楽しめましたよ。今後も、どうぞよろしくお願いいたします。

2013.6.19 鮎島 筆

【記録】
2013年6月15日(曇)
 駐車地0550、霧降の下滝下0640、霧降の上滝下0730、霧降の上滝上0830、駐車地1000

【使用装備】
50mダブルロープ、キャメロット(#1.0〜#3.0)、薄刃ハーケン、ウェットスーツ各自
※ロープは30mのほうが便利。2人パーティなら30m×1がよい。
※上滝で激シャワーになるので、ウェットはあったほうがよい。




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