■南ア/遠山川西沢〜聖岳西面E沢)

2013.8.3-.4
高橋、加藤

赤い第二ゴルジュ

第三ゴルジュ入口の滝

これが二股だ!松木沢かっ

痛恨の無名沢

E沢出合。奥のリッジ上部にE稜のピナクルが見える

ピナクルまで怖そうじゃない?

E沢とはこういうところです

稜線から見下ろしたE稜の赤茶けた岩稜
8/2

 またやってきたぜ遠山郷"梨元ていしゃば"。森林軌道の展示物が林業が盛んだった時代にノスタルジーを誘う。加加良沢以来の2年振りの訪問だ。武ちゃん元気?去年は林道崩壊によりこの方面からの登山者ほとんど0になり休業していたそうだ。バス終点から歩いた25歳(あれ、25年前でしたっけ?)の 治さんのような人は中高年登山者の世の中にはいませんよ。
 ていしゃば管理を手伝っているサーフインガイドの兄ちゃんの話が面白くて就寝は2時半になってしまった。一年の半分はスマトラでガイドしているそうだけどなぜここに。


8/3 (晴れ夜雨)

 林道ゲートは自家用車0830-1700のみ通行可。安全講習を受けたタクシーなら0500から通行可。まあ地元振興のために仕方ないかな。
 登山口までタクシーで1時間強かかるので歩くことは我々には問題外として、自家用車のゲートが開くのを待っていては今日の最低到達ポイントの二股まで届かない可能性があるのでタクシーを使った。

 はじめての便ヶ島(たよりがしま)。3人共車内で爆睡により途中の道程が抜け落ちているのがちょっともったいないような気がした。

 増水時用の渡しが設置された西沢渡を渡ってすぐ左岸から巻きに入って出合の堰堤の上に出た。そこから二股までの西沢は”渓谷”の貫録が充分。期待して無かっただけにとても得した気分だ。
 巨岩チョックストーンの第一ゴルジュ、赤い第二ゴルジュ、連瀑の第三ゴルジュと続き飽きさせない。すべて水線突破できたのは満足。だけど第三ゴルジュ入口の滝だけは今度来る機会があったら(笑)右岸から小さく巻くことにしよう。

 第3ゴルジュ最後の見た目と裏腹に登りにくい5m滝を登ると谷は突然開けた崩壊地になる。おお、あれが右岸の岩小屋かぁ。こんな崩壊地でも登山大系の記述の通りにまだあった。

 時刻はもう2時だけど、傾斜の緩いガレ谷が続いているだけなので明日の楽のために少しでも近づいておこうということでA(&B) 沢、C 沢、D沢の明瞭な出合を同定しながら進みD沢出合すぐ先の8m位の滝を巻いて降りたところを時間をかけて整地して泊まり場とした。
 このとき巻の途中で左岸からの浅い沢を渡った(ような気がしただけか)のでこれが無名沢だと思った。これが翌日の痛恨につながった。一日の終わりで集中力を欠いていて、何たることか3人とも無名沢については"渡ったような、あれがまだD沢だったような"曖昧な記憶だった。

 テンバ周辺は岩塊だけで薪集めに苦労したが寝床につくまでちょろちょろとした焚火を持たせることができたのはよかった。雨が降ってきたけどすぐやんだ。

 "治さん、こんなとこに大昔来ていたのかよ。いつも期待以上の人だなあ" by ヒデキ


8/4 (曇り夕方から時々雨)

 朝方はタープの下、薄いシュラフとカバーで寒かった。8月だというのに。

 歩き始めて前方彼方にピナクルが望見できたが"あれじゃ高いとこにありすぎだろ"と思っていたら左岸から立派な水流の沢が入ってきた。
 登山体系の "入口に10−20mの涸滝があるが中央を簡単に登れる"の記述とは違って "10mの水流の滝の左のリッジを慎重に登る″ような気がしたが表現のズレとしてはどうにか許容できる範囲だろうし、長い年月この崩壊谷ではこんな変化もあろうとE沢と判断した。E沢は目指すE稜のアプローチなのだ。とにかく順番からしてE沢のはずなんだから記述の違いには目をつぶろう。甘い、甘いぜ、甘すぎるぜ。

 何個かノーザイルで滝を登った後、もろい滝を避けて右岸の草付きをザイルを出して登ってリッジに出たら、目の前の対岸のギャップ越しに広い谷が見えてスラブ滝が見える。
 あれはD沢の大滝だろう。登山体系の概念図を検めてみると、今いる地形は無名沢に合致するじゃありませんか。それにこれがE沢だとしたらアプローチにこんな苦労しているようじゃ出直した方がいいってことだぜ。無名沢の案内ものっているのを発見。やったね、一本登っちゃったね。涙。

 2本のザイルを連結した懸垂を2回交えて出合に戻ったら既に3時間経過していた。この時点でE稜は無理だと判断し、安全に本沢かと思っていたら、

"E稜取りつきまで行ってみて登るかどうか判断ですかね"
"えっ・・・・・"

 せめてE稜を近くで見るってことは意義があるな。取りつきの草付き台地ってのも興味はある。治さんの登った西沢本谷をリピートじゃ確かに芸がないしな。岩のアプローチに使われる沢ねえ。
 でも、E沢ならギリギリ聖岳西面登ったといえるはず。

"E沢登ってみよう!"
はじめてきたのに既にリベンジの心持ちなのはなぜだ。

 E沢についても写真参照が早いでしょう。当然岩は崩れて登りにくいです。後続者は先行者の落石から自分の責任で身を守らねばなりませぬ。
 幸いガスってなかったのでE稜の目印のピナクルはよくわかるが、草付き台地とそれに続くトラバースは"ここかな?"って候補が2,3か所 あってよくわからなかった。
 もう時間切れと判断していたので真剣さに欠けていたことも大きいのだろうけど、ただはっきり言えるのはE沢入ってすぐではなく結構溯ったところであることだ。。どこから行くにせよ、ピナクル基部まで崩れそうな岩で緊張を強いられそうではある。  ピナクル基部までたどり着ければ赤い岩稜は魅力的に見えた。ただ、ピナクル視認のために視界がいいことはマスト。

 源頭の二股は見た目を信じて記述で楽そうな左股ではなく右股を選択。
 稜線に出るところで脆壁に阻まれるのではないかとドキドキしながら進む。先頭がハイマツに届き、続いて"登山者が見える!"と言ったところで初めて余裕をもって廻りを見渡せたのだ。

 稜線に抜け出たところは地形図の2796mの少し上、2820mだと思う。赤石沢の向こうに百間洞の赤い屋根がみえる。 赤石岳山頂はガスの中。


 ろくに使わなかった登攀具を仕舞いながら休んでいたら目の前(E稜の頭=2796mの西のピーク?)で滑落を目撃したことは下山報告の通りです。
 下山は雨が降ったりやんだりするなか先頭に遅れること2時間。星のない漆黒の闇の中、ネズミの徘徊する廃屋で待たせてしまったことは申し訳ない。この日は15時間半行動也。


8/5

 昨日稜線で予約しておいたタクシーに朝一で乗り梨元に戻る。帰路立ち寄った旧木沢小学校はきっとまた訪れたい場所だ。
 懐かしいというより、木造校舎で学んだ英樹と俺には小学校時代に戻ったようなひとときであった。

 学生時代、聖を目指して遠く届かなかった。赤石沢を登った時が次のチャンスだったがピストンできるわけもなく聖岳に登れるのはこの西面からしかなかったと今にして思う。
 皆初めての聖岳で思いは様々。また一緒にいい山、いい旅をしましょう。よろしくです。

高橋 筆

【記録】
8/2
 梨元ていしゃば2430-2630 (宿泊1,500円。無料施設だと思って使用してしまったが・・・・)
8/3
 ていしゃば発0530 (タクシー8,900円) 便ヶ島0630 - 西沢渡 - 二股1400 - D沢出合先泊地1600
8/4
(起床0400) 発0630 - 無名沢0700-1000 - E沢出合1030 - 上部右俣 - 稜線2820m1330 - 事故待機1400-1530 - 聖岳 - 薊平(聖平分岐)1730 - 西沢渡2100 - 便ヶ島2200
8/5
 発0730 (タクシー10,000円) - 梨元ていしゃば0830 旧木沢小学校・かぐらの湯 - 西国分寺駅1630


【写真】


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