■朝日連峰/三面川ムギ沢

2013.9.21-.24
高橋、成田、山崎
 中国の登攀から帰ってきて、ふと「そう言えば今年は沢に行ってないよな」。
 明け方には霜の降りる五千メートルに適応した身体に日本の晩夏はあまりにも過酷であった。
 会のMLを覗くと高橋さんが三面川を出している。八月末に台風で(文字通り)流れた計画を再興するらしい。一も二もなく参加させてもらうことにした。
 「軟弱だよ」「今年初沢だし、ハードなのはちょっと……」










9/21

 奥三面ダム湖岸道終点の駐車場で身ごしらえをして出発。

 三面小屋までの登山道はよく整備されているが、三面川流域に入るパーティが口を揃えるように、そこからの旧道が荒廃している。
 特に支流を渡る部分では崩壊が酷く苦労させられる。十分ハードだって……。

 ずっと右岸を歩き続けるせいで右脚にマメが出来る頃、ようやく下降点到着。藪こぎにうんざりしていた面々が歓声をあげる。

 が、われわれと藪とのつきあいはこれで終わったわけではなかったのである。
 きらきらと輝く清流を分け、白い岩を登りへつり乗りこえて上流を目指す。
 恐れていたアブもほとんどおらず、快適そのもの。

 竹の沢出合いまでの下流域は他パーティの記録もあるので割愛。
 竹ノ沢からものの10分ほどで本日の幕場であるスノバコに到着。
 左岸の河原を整地して泊地を作り、高橋さんの釣ってきた岩魚で大いに盛りあがる。
 やっぱり沢の焚き火は最高だ。


9/22


 出発してしばらくすると5mの滝をかけた深い淵が出てくる。早速しんぼうたまらなくなった高橋さん、いきなり竿を出す。
 ほとんど入れ食い状態でかかったのは37cmの大物。刺身にして食し、一同気合い+2。次回高橋さんと沢に行く時にはワサビを忘れないようにしよう。

 その先の二条3mトイ状の滝で初めての泳ぎ。まだちょっと寒い。
 以東沢、化穴沢を分けた先に10mの滝。
 20mほど戻り、左岸の弱点を直上してトラバース。落ち口手前の岩を一段上がる。ここは小さめのカムが活躍。手前の岩にハーケン1本残置。

 次の三段40mは左岸のルンゼから大高巻き。釜めがけて懸垂しようとする一同を必死で引き留めて、上流の河原に下降。汗みずく。やっぱりハード。

 さらに二段40m、洞窟状多段15m(共に右岸巻きとくり返し、降りたところに幕を張る。
 あまりよい幕場ではないが、この先はしばらく適地がないとの記述もあるため、早めに行動をうち切った。
 また土木作業に励んで整地し、薪を集めてまたまた盛りあがる。
 昨日糸が切れてほつれかかってきたウェットがとうとう分解しだした。歩きにくくて仕方ないので後半パンツ一丁での行動となる。佐野嬢の眉がひそめられる。いや、ほら、他に着るものないし。  着いたらついたで幕場ではばらばらにしたウェットを焚き火にくべてさらにヒンシュクを買う。ごめんなさい。

9/23


 上部は登れない滝が増えてくる。小さく巻くことを心がけて時間の節約をはかる。
 ほとんど源流まで滝が連続するので、どうして気が抜けない。
 ほとんど藪こぎもなく着いた稜線は、だが濃密なブッシュ。
 遙か彼方の以東岳まで緑の絨毯がみっしりと敷き詰められているさまに、去年のガンガラシバナの悪夢が甦り、ちょっと立ちくらみ。

   ヘンな名前の化穴岳はすぐそこに見えるのだが、どう見ても化穴岳の登頂と本日中の大鳥小屋到着の両立は無理そうな時間と状況で、泣く泣く前者を諦める。
 ブッシュの中にはかすかな踏み跡があるが、それも途絶えがち。
 エアリアはもちろん、二十五年前測量の地形図にも載っていないこの道の跡はいったいいつごろつけられたものだろう?
 とまれ、いっかなはかが行かず。ガンガラバシナに比べて多少涼しいのが救いか。

 1446mピークからの下りはさらに藪の丈が高くなり、方向を見定めるのにも苦労する状態になった。
 尾根の西側を辿るように心がけ、日没と競争するように大鳥池湖岸の登山道を目指す。五時ぎりぎりに道に出た時は喜ぶよりホッとした。

 締めくくりは五時間の密藪こぎ。ハードさもここに極まれり。
 登山道に出てしまえば本日中の泡滝ダム到着も可能であるが、地元のタクシーが多数意見で大鳥小屋に止まることとなり、今回の山行の思い出話で盛りあがりつつきれいな小屋を満喫する。

 高橋氏によれば、大鳥池は「つりキチ三平」の滝太郎編の舞台であるO池なのだそうで、小屋にも「つりキチ三平」が装備されていた。


9/24


 ダム最奥の駐車場にデポしてあった高橋号を回収し、風呂・回転寿司とハシゴ。
 関東に向かう三名とは新潟でお別れ。
記:山崎

【記録】
9/21
 600起床−730出発−910三面小屋−1355喜助沢下降点−1500竹ノ沢出合い−1510スノバコTS
9/22
 730出発−955以東沢−1100化穴沢−1530TS
9/23
 700出発−920二股−1200稜線−1430 1446mピーク−1710大鳥小屋
9/24
 500出発-650泡滝ダム→大鳥小屋→泡滝ダム→鶴岡→村上→奥三面ダム


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