■北ア/青海黒姫岳西壁第三バットレス中央ルンゼ(登攀)
2013.9.28
鮎島、荒井
探検的クライミングを志すものにとっては岳人の「未踏の岩壁」シリーズはバイブルだろう。ここで紹介されている24個の岩壁は、谷川岳一ノ倉などの手垢にまみれた岩壁とは一線を画し、掲載から30年以上たった今でも色あせなく「マイナー岩壁」であり続けている。(唯一、小川山はメジャーになりつつあるが…)
さて、この青海黒姫山西壁もそこで掲載されていた一つである。ただ、この黒姫山西壁についてはあまりにも情報量が少ない。しかし、何気なくネットサーフィンしていると、青海黒姫山西壁を近年登攀されている記録がアップされていたのを発見した。アスターク同人さんである。
その写真を見る限り、期待以上のスッキリした壁であり、かつ素直に登攀意欲をそそる素晴らしいものであり、ドラゴンが行きたいと申し出てくれた。やったねvv。
東京から高速を4時間弱。糸魚川ICを降りて青海方面。清水倉橋をわたったところに車を止めて仮眠。
起きると、ドカーンと壁が見えた…。アプローチは近く見えるのだが…。
アプローチはまずはリサイクルセンター脇を通って、藪に突入することから始まる。この藪がただの藪ならいいのだが、変にからみつく蔓系の植物が混じっているのが腹立たしい。
最初は判然としないなか、藪の中を適当に進むが、次第に踏みあとのような、ただのガレ沢のような感じになり、藪こぎという感じではなくなる。ただ、石灰岩のガレガレでとても歩きづらい。見通しが利かないが、最後には開け、見通しが利く。ここまで1時間ちょっとというところか。それにしても第三バットレス。でかいなぁ。傾斜もあるし。
目指す中央ルンゼは一目瞭然。迷うことはない。ドーム状が目印の正面壁(?)の左側に、明らかに「ルンゼ」態であるものだ。
最終的には木登りとかをして、取り付きのテラスへ。ルンゼの入り口の右壁にわかりやすくリングボルト2本が打たれてある。
そこからは岳志会直上ルートと同じ取り付きのようで、確かにフェースに残置ハーケンが散見できた。
さて、じゃんけんで勝ったドラゴンから。今回はトップはキャメロット#5.0も持って登るので、フォローが全装備を担いで登るという戦術で取り付く。
1P目は最初はルンゼを登っていくが、最初のチムニーから右にはずれ、フェースからカンテを巻くように登っていく。実のところ、やっぱりこのチムニーを登るのが正規のルートのよう。だって残置あったもん。そんでもって、このフェースからカンテを巻くところが高度感は出るし、傾斜は強いし悪いぜ。カムでランナー取れるけど、残置ももちろんないしね。カンテを超えれば傾斜はゆるくなる…が、つるつるのスラブ。いやだねぇ。ランナーも取れやしない。そしてナッツでランナーを取って下る感じで左トラバースして、最後には正規ルートに戻って、チョックストンを強引に登ってビレイ点へ。
2P目は左に明らかなチムニー然、右にルンゼっぽい凹角とわかれている。見た感じ明らかにルートは左のチムニー然なのだが、なぜか凹角のほうに残置が見える…。見なかったことにして、チムニー然を登るべく、右から巻く感じで登り始めるが、、、。このフェースが悪い。選手交代し、イレブンクライマーのドラゴンがあっさりと抜け、その後は、ズリズリとチムニー登り。
CSを超えてからもまだまだチムニーが続くが、そこは避けて左壁のバンドから登っていって、大テラスへ。フォローは、荷揚げ。
途中、残置は見当たらず…。やっぱ、正規ルートは右の凹角なのかな…。まぁそこから登ってもこの大テラスに来れるみたいだし…。
3P目も、ルンゼというか、チムニーを登る。最初のCSを右から。残置がある。もうひとつのCSも右から越せば、ルンゼの中に安定した木があったのでそこまで。
4P目はは完全にチムニー登りとなる。CSを一個超え、次のCSが核心。キャメロット#5.0とかが邪魔みたいだ。途中、残置があって「ザンチ、サイコー」と叫んでいる。このCSを越えた後もよくないらしく、苦労して登り、木まで。フォローは、こんな狭いチムニーをザックを背負っては無理なので、端から荷揚げ。
4Pで核心部は終了。あとは普通の急傾斜の藪となる。通常はこの4P目終了点で懸垂下降して戻るのが普通のようで、懸垂支点の残置スリングがあるが、われわれはやはり山頂を目指したいので、そのまま登る。
でも、けっこう傾斜が強いのでロープをつけたまま。ロープいっぱいのばしたところで終了。ロープを解く。
あとすこしで、稜線だろう…と思って登っていくが、、、。ようやく稜線…と思ったところは、ただの支稜だった。幸い、見晴らしはいいので、主稜線の方面を見ると…。うげげ、、絶望的に遠い。その主稜線にたどり着いてもまだ登山道があるわけでもなく、1km弱の藪こぎが待っている。時間はといえば、すでに14時を過ぎていた…。水も尽き果てた。
両者一致で、残念だけど同ルート下降だな…ということで、下山を開始。
適当な木から落石に気をつけながら同ルートを懸垂下降。4ピッチで取り付き。そこからB沢へ1ピッチ。まぁ、案外、苦労しなかったなぁというのが率直な感想。
あとは、石灰岩のガレガレをガンガン落石しつつ下る。最後の、蔓の藪に腹立たせながらもなんとか車にたどり着いた。はすでに17時だった。結局11時間行動。ヘロヘロになってしまった。
黒姫山西壁はなかなかだった。日本海が望めるロケーションだし、二子山、明星山にならぶ日本三大石灰岩壁だと思う。また、西壁という特性上、この時期は、暑すぎず、寒すぎず。よいコンディションだったと思う。染み出しもあまりなかったし。岩の脆さも私とすれば許容範囲だ。
ただ、二子山と明星山と決定的に違うのがアプローチだ。時間的には1〜2時間なので、それほど遠くない。ただ、このアプローチはその時間以上の遠さがある。歩けば確実に落石が起こるガレ沢のアプローチは、これまでいったところで屈指。まぁ、関東近辺にあったとしてもそれほど人は来ないだろう。「ゲレンデになる日も近いかも」なんて、未踏の岩壁には書いてあったけれど、まぁここがゲレンデになる日は来ないね。まぁ、人がたくさん来るようになったら、確実にアプローチで落石事故が起こりそうだ。
ともあれ、無事に帰ってこれてよかった。
でも、なんか「会心の山」とは言い切れないんだよねぇ。なんというか、同ルート下降の岩登りって「美しくない」のよ。自己満足の問題だけど、やっぱり頂上に行きたかったなぁ。もっともあの時間じゃ無理だったので納得はしているけれど。
「あぁ、いい山やったね」と胸張って言うためにも、もっとルートファインディングを適切にこなし、チムニーをてきぱきと登り、そして、荷物の軽量化、荷揚げのシステムなどを的確にこなさなきゃダメだね。もちろん、トレーニング不足の私が一番のお荷物だったことは間違いないのだが……。日々の研鑽の積み重ねが重要だということだね。とにかく、それが反省点かな。
でも、とにかく充実した1日を過ごせたのは間違いなく、また2013年で一番思い出深い山行になることは確実。
「この岩場、二度とこねぇぜ、少なくとも当分の間、石灰岩とチムニーは勘弁だぜ」
と思うほど素晴らしい充実感を味わった。こんな満腹感。年にそんなに味わうものでもない。
それも、付き合ってくれて、そして核心ピッチを悉くリードしたドラゴンのおかげ。本当にありがとうね。まぁ、今度はもっとトレーニングしてから行くので、またよろしく〜〜。
また、アスターク同人さんの記録にも感謝です。ただでさえ記録の少ない海谷・頚城方面で活躍されているので、その報告の数々、たいへん参考になります。
最後に、岳志会直上ルートも気になるが、さらに傾斜が強くて苦労そうだ。もういいや、遠いしね。アプローチ悪いしね。まぁ興味がある方、誰か行ってくれ!
2013.10.2 鮎島 筆
【記録】
9月28日(土)快晴
駐車地0610、取付き0745、4P終了1320、最高到達点1430、取付き1545、駐車地1700
【装備】
ダブルロープ×2、カム(#0.2〜#5.0)1s、ナッツ、捨て縄
※デカいカムもフルに活用。
【メモ】
・軽量化に限る。荷物はかさばらないもの。荷揚げがキーになるので、ダブルロープは必須。
・核心を抜けたあと、主稜線まではけっこう遠い。そこからの藪を1km弱進まないといけないと思えば、ワンデイで頂上まで行こうと思うのなら、スピーディーな行動が必須。
・石灰岩なので染み出しに注意。雨が降った翌日はダメなのではないか?。今回は、木曜日に雨が降った翌々日だったが、一部濡れているところがあった。
・とにかくアプローチの落石は注意。
山登魂ホームへ