■巻機山/米子沢ナメ沢遡行〜上トトンボ沢下降〜ブサの裏沢遡行

2013.9.28-.29
治田、田中
 米子沢のナメ沢って?どこ?計画立案者であるリーダーのハルさんから聞いた沢の名前。  5年前に米子沢〜上ゴトウジ沢下降〜ブサの裏沢を遡行した。その時は、5人でブサの裏沢合流で幕営し、翌日ブサの裏沢を詰めて下山は18時頃だった。  このルートがやはり一番人気のようで、今回の上トトンボ沢を下降するのはブサの裏沢を途中からではなく、下から完全遡行するためのようだ。  今回は、もっと下からだから、やっぱりヘッデン下山かな・・・・巻機山を2回踏むのねぇ〜。

左がナメ沢、右が米子沢

ナメ沢スラブ100m

ナメ沢黒い滝3段30m

藪を抜けて、上トトンボ沢上流のガレ

ブサの裏沢 魚止の滝20m

チョックストーンを空荷で

20m大滝

二俣の右側が本流

じゃ〜ん!70m大滝

癒しの草原地帯でお昼タイム

ボルトの決めボーズ

前方に避難小屋、奥にニセ巻機山
 前夜、電車移動して、無事ハルさんと駅で22時合流。米子沢の入渓地の桜坂駐車場に0時半到着。まだ駐車場はガラガラだった。
 翌朝は、快晴だけど秋の澄んだ空気で、あまり濡れたくないなぁ〜てな気分。

 米子沢の左岸林道を歩き、30分ぐらいで暑くなった頃、真ん中が割れた堰堤前で、米子沢に入渓。

 カラッカラッに干上がった米子沢の広いガレ地帯を進むと、前方遠くにナメ沢のスラブが空へ突き上げているのが見える。
 ひぇ〜。あんなに立っているの?

 ナメ沢に入ると、実際はもう少しスラブは寝ていたけど、トコトコと2本足で歩いた米子沢よりは斜度がある。かといって滝登りのような斜度ではない、獣のように4つんばい状態で、デコボコしていてる部分を探し上へ上へと這い上がる。こんな体勢だから、うぅ〜、腰が痛い。
 今回は、ハルさんも私もアクアステレス。ぴたっとスラブに張りつくけど、もし、調子に乗って歩いてツルっときたらもう下の米子沢までサヨナラ〜。と思うと真剣そのもの。

 第1スラブ100mを抜け、第2スラブ100mを終えて、振り返ると、一気に高度をあげものすごい高度感。うわぁ〜、こんなに高く登っちゃったの。

 その後は、だいぶなだらかになったが、今度は濡れた部分がでてくるので、乾いた左側を歩く。
 沢幅も細くなり、黒い滝3段30mを登り、最後の分岐で左をとる。

 初めは小川になった沢沿いに薮が覆っていてかきわけながらも進めたが、薮が濃くなったので沢から離れ、薮地帯に突入。最初は上にあがっていたが、途中から登山道よりに左へと、背丈以上の高さの薮をかきわけ、途中先頭のハルさんの姿を見失いながら、声を頼りに、ずんぶん左にトラバースしちゃったなぁと思った頃、1550mでポッと突然登山道に出た。
 フゥー。3時間のナメ沢遡行は終わった。ここまでで800m上がった。

 「いやー、よかったね。いいねぇ。ナメ沢。ぐいぐいスラブ登りで楽しいねぇ〜」
 とハルさんは絶賛、ご満悦です。


 そのまま、休憩もせずにニセ巻機山へと進む。えらく疲れてヘロヘロしながらも亀のごとく足を一歩一歩前にだせばとりあえず進む。
 谷にいて気がつかなかったが、稜線にでると風が強い。避難小屋を通り過ぎ、巻機山へと歩く。

 やったー。巻機山山頂だー。あー、お腹がすいたー。ごはん♪ごはん♪と思うが、秋風がびゅーびゅー。寒いししょーがない。風のない谷に降りてから食べるか・・・。

 行き止まりでUターン。何かと思えば牛ヶ岳のピークらしきところだった。
 特になにも標識もないが、ハイカー達もみんな、とりあえずここまでは来るようだ。


 さてさて、登山道を少し戻り、眼下に奥利根湖を確認し、上トトンボ沢に入る為に登山道から左にはずれ笹薮へと降りて行く。
 上からみたら、なんとなく筋がみえたような気がしたが、それは単なる気のせいだった。

 初めは腰ぐらいの笹薮がだんだん背丈以上の視界なしの笹薮となる。風はなくなったがお腹がすき過ぎて力が全く出ない。
 傾斜がゆるいところで薮の中に座り込んで休憩。とりあえずおにぎりをひとつパクリ。あー。うまし。

 ここからどんどん薮をかきわけ高度を下げて行くと、そのまま、沢筋にはいった。お見事!!
 沢の石はフリクションがきいているので、滑る心配なしに降りる。
 ふと右をみると、おー。真っ赤で熟したとっってもおいしそうな木苺が!
 「ハルさん、イチゴ!イチゴ!」
 狭い沢の右、左、右、左パクパク。二人降りながらパクパク。また降りながらパクパク・・・・こんなにたくさん熟した木苺を見たことがない。ほんとに獣のように食べまくった。おいしかった。

 そーいえば、前回ブサの裏沢を遡行した時も、ポツポツ木苺があって食べていたけど・・・。ゆるやかになったところで、やっとお昼タイム。
 沢も開けて景色はいいし、天気はいいし。さっきの稜線の風がうそみたいな別世界。

 変わらず上トトンボ沢はフリクションばっちりなので、いいね。途中、大滝が3ヶ所。
 ナメ状大滝は笹をつかんで左岸側をフリーで降り、他2つは薮の中を巻く。
 急斜面だったので、懸垂下降で降りたいなぁ・・・と思いつつ、必死で笹や枝をつかんで滝下に降りる。

 ようやく下トトンボ沢に合流。
 すぐ先でブサの裏沢と合流。15:30
 明日のことを考えて、時間があったら上ゴトウジ沢出合まで行こうね。なんて言っていたけど時間的に無理だ。


 薪は山のようにある。幕営場所もトトンボ沢とブサの裏沢出合で、一段あがったところに平らな場所があった。
 ブサの裏沢は水がにごっているが、トトンボ沢の水は澄んでいるのでこっち側の河原で焚き火宴会。
 焚き火はメラメラ燃え上がり、豊富なつまみ、スープパスタ、ラーメンでもうお腹一杯。

 ん?なんだこのカエルは?
 気がつくと隣のハルさんが、足をがばっと広げてそのまま後に倒れた格好で爆睡中。zzzzz一人ぼっちだと沢での泊まりなんて怖くてできないけど、誰かいれば快適にすごせる。まぁ、隣でカエル化していても、存在があるので不安はない。
 薪をくべたりお茶を飲んだりして、一人の時間を楽しむ。寒くもなく快適な夜。
 明日4時半起きだから、8時間睡眠の20時半で、ハルさんを起こすとなんだか寝ぼけていた。
 2人用のツェルトに入って寝支度をしていると、暑いぞぉ。
 防寒雨具も着ず、シェラフにも暑くて入れない。夜中少し涼しくなったのでようやくシェラフに入った。



 夜中、隣から「う〜、寒い」との声で一瞬目が覚める。ガサガサとシェラフカバーにはいったようだ。
 4時半起床。ツェルトの中で昨日炊いたごはんにトマトスープでリゾット風。
 焚き火はしないよ。6時半にブサの裏沢を出発。

 空は曇っていたが、昨日のような秋の空気ではなく寒くはなかった。

 20mの登れる滝。左壁に残置ハーケンがひとつ。出だしは寝ているが中間が立っていてここが核心かな?ハルさんリードで、フォローする。2ヶ所打ったハーケンを回収。


 1時間後に上ゴトウジ沢と出合う。げっ!
 すぐ先にはスノーブリッジとかじゃなく、まるでトンネルのような雪渓が、どぉ〜ん。あー、だから沢の水がにごっていたのか。
 前回、10月中旬の時には、ここには雪渓はなく、70m大滝前にスノーブリッジがあった。うっ、そうなると今回は大滝前は一体どうなっているのよ?
 まぁ、今から気にしていてもしょーがないので、前進する。
 チョックストーンは、空荷で岩に背中をあててずりずり登ると難しくはない。

 そして、心配の大滝20mが現れる。景観が迫力だね。
 前回は、右岸のルンゼを登り、支流をトラバースし、薮をトラバースし、次の黒い滝も一緒に巻いて、懸垂して降りた。いろいろ記録をみると、左岸の草付きを登っている。
 見た目は、草付きというよりも岩が見えるので、薮地帯まで岩づたいに上にあがれば行ける感じ。そのあとは、薮をトラバースして懸垂かな?

 高さがあるので、ハルさんに恐る恐る「あのぉ〜。ロープを・・・・」
 「要らない」とあっさり却下。
 確かに真上に岩づたいに登っている時は大丈夫だった。薮まで上がらず、滝の落ち口平行のトラバースが、足下が怪しく、笹や枝がなく草付きだけになると、こ・こ・こわい〜。
 必死。一歩一歩慎重に慎重に進む。滑ったらアウトだ。ガンバレ、ガンバレ。そのまま滝の落ち口に着くと、ハー。ハー。
 あー、怖かったよぉぉぉおおお!

 すぐ上の8m黒い滝は、左からフリーで登る。
 本流が右に曲がる二俣を過ぎ、この先の登れない滝は、右岸斜面を巻くが、踏み後がない。
 笹も枝もない。うぇん。怖い。「あのぉ〜。ロープを・・・・」と言いたいのを飲み込む。
 斜めに登るハルさんが、「う〜ん、ここはちょっと、きついかなぁ。」なんてポツリ。といわれても・・・。
 んじゃ、ハルさんルートではなく、真上にとにかく一歩一歩足場を作りつつ、草をつかみつつ、呼吸を整えつつ上がる。
 そして、ハルさんと合流するほんの4、5歩のトラバースがえらく怖い。はぁ、はぁ。足場のない草付きは、ほんとに怖いわ。

 じゃ〜ん、出ました。70m大滝。ナイアガラ的横の広がりが大迫力だね。
 ここは左側の乾いた岩を気持ちよくフリーで登る。下段よりも上段のほうがより登りやすい。
 あれっ?そういえば、大滝前のビクビクしていたスノーブリッジがない!?雪の残骸すらない。えー、どうして?暑かったというよりも、ポイント豪雨で溶けちゃったのか? でも、上ゴトウジ沢のあの、トンネルスノーブリッジはなぜ溶けなかった?う〜ん、不思議だ。まぁ、いいや。なかったから良しとして前進しよう。

 この先の登れない10m滝は、滝すぐ左横を巻く。上の大岩までは踏み後があったが、その上の急な斜面は笹や枝をつかんで、滝のほうに笹をつかみながら巻き降りる。ふぅー
 前回は、大岩の下側を、ロープ頼りに滝の落ち口に登った。落ち口への2、3歩が悪かった。

 二俣を過ぎると、だんだん滝がぬめってくる。黒い滝はぬるぬるなので、ロープを出してもらい右側を登る。足場はあるが、アクアステレスがにゅるにゅるーと動く。
 沢も小さく草原の中の小川のようになり、視界はパァーと開け気持ちのよいところでお昼タイム。昨日のご飯で作った、おにぎりを食べる。

 だんだん雨樋ぐらい細くなった沢から草原に上がり傾斜はゆるい、腰ぐらいの薮をかきわけ、登山道に出た。
 今日は、昨日と違い風が全くないおだやかな天気。全く寒くない。
 朝は雲っていたけど20m大滝左岸草付きの頃から青空がでてきて、70m大滝の頃には快晴だった。

 13時過ぎなので、どうやらヘッデンなしで下山できそうである。やれやれ。
 休憩なしでガチャつけたまま、避難小屋へ向かい、ここで装備を外す。

 外観よりも中はものすごくキレイなウッディハウスだ。
 女性が今夜はここに泊まるそうで、のんびり小屋の前でくつろいでいた。


 さて下山。ハルさんがいつものごとく、ぴゅーと降りて行く。登りではついていけないので、せめて下山ぐらいは離れないようにしようと、私も必死で後をくっついていく。下山なのに汗だくだく。日差しの下はあちー。
 今日は少し風が欲しいなぁなんて、贅沢にも思う。

 一度、ブナ林で休憩し、あとは一気に降りる。今回も沢の中では他のパーティとの遭遇なし。
 駐車場には巻機山から2時間40分後の15時50分に到着。
 終わってみれば、今回は8月下旬の楢俣周回遡下降4本よりもヘトヘトではないが、とにかく3回の巻きが真剣緊張MAXだったので、精神的に疲れたぁ〜。
 (ロープ、ロープを・・・。ロープが欲しいぃぃぃぃいいい。)

 結局、ロープはナメ沢のスラブ始まりの大きい段差でお助け的に2ヶ所、足が短いから届かないのよ。ブサの裏沢で滝登り2ヶ所。魚止めの20mと上部ぬるぬるの滝。ロープがあるって、ホント安心ね。(ウフッ)

田中 筆

【コースタイム概略】
9/28  6時過ぎ、P出発〜7:10米子沢ナメ沢遡行〜10:00登山道合流〜11:11巻機山〜11:45牛ヶ岳〜上トトンボ沢下降〜下トトンボ沢合流〜15:30ブサの裏沢との合流・幕営  【800m遡行3H半+登山道500m登り2H、1000m下降4H】 9/29  6:30ブサの裏沢遡行〜7:30上ゴトウジ沢〜10:15大滝70m〜13:15登山道合流〜13:40巻機山〜15:50駐車場  【1000m遡行7H、登山道1300m下り2H半】 【写真】


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