2014.4.26
佐藤、他1
久々に山スキー+αがやりたい。しかし準備不足なので、ハードなやつは来シーズン以降の課題とし、どこかないかもっと簡単なところはないか?と思い出したのが雨飾山南尾根。 クラシックルートではあるが、山スキーによるP2までが人気で、そこから岩を登って山頂を目指す人は少ない。GWでも混雑しないだろうし、往復コースなのでクライミングのときに板を担がなくてよく、「なんちゃってクライム&ライド」の課題として手頃でよさそうだ。
計画を提案したのがその週の月曜日だったけれど、のってきてくれた。
しかし、どんな感じなのかいまいちよくわからん。 登山大系には「初心者がいる場合にはザイルが必要」、ハイグレード山スキーにはルート図中に「このあたり悪い」と、どちらもあっさりしたものだ。 ネットで記録を見ても、単独ノーロープでIV-とか参考になるようでならない。装備を考える上で支点がどんなものか知りたかったのだが。まあ沢登り程度の登攀具でいいだろう。
アプローチは栂池へ向かう田中・小池組と同行し、白馬大池駅で仮眠をとることにする。白馬大池駅は明かりが消えており目立たない。最初に通り過ぎ、さらにコンビニに行って戻ったらまた通り過ぎてしまった。
2:30まで飲み、朝5:30起床。意識があるんだかないんだかほとんど自動的に起きるなりテントをたたみ、小谷温泉へ車を走らせる。道中ピンクの桜が満開できれいだなあ、とか言ったりするけど、眠くて出る溜息のついでに言葉を発しているだけだ。除雪は雨飾荘までで、駐車場に車をとめる。
出発してすぐにスキーを履ける。雨飾高原キャンプ場までは林道を行き、そこからワセ沢に入ってワセ沢の支流を詰めると自然にP3に立てた。なんとなく休みそびれてしまい、ここまで2時間休憩なしで来てしまった。
それにしてもものすごく暑く、ばて気味なので少し長めに休みたっぷり水分を補給する。
P3からP2へはわずかに下ってから登り返しとなる。帰りの滑降ルートを観察しながら登っていく。「ハイグレード山スキー」のルート図ではここのコルから奥ワセ沢を降りているが、狭いし、木が多いし、下の方には茶色いデブリが出ている。もっとずっと上から滑った方がよさそうだ。しかし、P2直下は超急斜面で割れ目も走っている。帰りの滑降がちょっと憂鬱になってきた。
一方、登りは順調で、最後は少し板を担いだが、あっけなくP2に着いた。我々はここのところ山スキーというとだいたい1300mUPだったので、1000mに満たない登りなど楽勝なのだ。
P2にスキー道具をデポし、ガチャをつけて目の前に見えているP1に向かう。あらためて写真を見てもすぐ近くに見えるが、実はP1の取り付きまでは結構距離があって、しかも条件によってはロープ出すような雪稜となることもあるらしい。さっきまでスキーをつけていたせいか、なんとなく藪をさけて雪のある方から巻いてしまう。これが案外急斜面できついし緊張する。帰りは懸垂したいと思ったくらいだった。
再び稜線に出ると、目立つ岩稜が見えた。そういえば、
「フトンビシ見えるかな?」
「荒菅沢側じゃないから見えないんじゃない?」
「がーん。楽しみにしていたのに」
なんて話をしていたのだが、今見えてるあれは、きっと、まさしく、絶対、
「鮎島が登った激ヤバなところってあれだな。そうとしか思えない.だってあんなに目立つんだもん」
帰ってから登山大系で確認したけど間違いなく右岩峰中央稜。下部のいわゆるフトンビシは雪に埋まっており、ルートの半分も見えていないかもしれないが、いちばんかっこいいところだ。
何度かガラガラと音のする方を見るとこの岩峰で落石が起こっていた。そういう意味でも目立つ。
さて、難しくはないが気の抜けない雪稜を経て、P1の取り付きに到着。遠目にはどこを登るのかわからなかったが間近に見れば、腐ったFIXロープもあるし、ラインは一目瞭然。
岩は脆くなく、やさしそうでうれしい。ルートの合理性にはこだわりがあるが、困難さには興味がないのでやさしければやさしいほどうれしいのだ。
雪は全くついておらず、「なんでわざわざアイゼンなんだろう?」という感じ。もちろん素手で登れる。
Ⅲあるかどうか、しかしロープ無しで行くような所ではない。ブッシュで2箇所と残置ハーケンで2箇所支点は取れる。カムも使えると思う。残置ハーケン4本(軟鉄)のビレイポイントでピッチを切る。
左上していくと....あれ?P1を巻いて稜線に出てしまう、ということで戻ってP1に直上するルートを登り直す。悪い正面を避け右のカンテから登るがそれでもワンポイントがいやらしくてIV-くらい。ここで、ロープが流れなくなったのでビレイヤーが移動したのだが、1ピッチ目をもっと上まで伸ばした方が良かった。
P1から山頂までは再び雪稜となるが、藪が埋まる程度のちょうどよい残雪だった。もちろんロープは不要。
山頂には我々のほかに誰もおらず、GWの百名山なのに今どき珍しい。山頂からの展望は、2週間前に行った昼闇山や焼山はよく見えたが、霞がかかっていてあまり遠くは見えず、白馬など北ア方面はまったく見えなかった。
下降はP1を巻いて1P目の終了点まではロープなしでクライムダウンできたが、そこからは50mロープ1本では下まで届かない。登ったラインとリッジを挟んで反対側にある立木でピッチを切るが、ハンギング状態になるので怖かった。
P1取り付きからP2までは、登りとは異なり稜線を忠実に藪に突っ込んで下ったが、こっちの方が正解。登りのときは、スキーを脱いだばかりなので、ついシール登高のルートのとりかたになってしまったようだ。しかし今日はそういう頭の混乱も楽しく思える余裕がある。
P2に戻ると、とても穏やかな雰囲気で、ここで酒を飲んで寝てしまいたい気分になっている。いやいやいや、まだ終わっちゃダメ、滑降が待っている。
登りで滑降ルートを観察していたときのことを思い出してみると、確か結構な急斜面に憂鬱な気分になっていたはずだが、今はまったくヤバさを感じない。気が抜けたのか状態が良くなったのか???
実際、緊張感なく滑りだしてみると、まったく問題なし、むしろ快適だった。腐りきった雪がとても優しく、かっ飛んで行ける。
出だしの急斜面をさけ尾根を南西方向に少し下ってから、コルっぽいところから無木立の広い谷に滑っていく。調子に乗って一番下まで降りてしまうとまずいことになりそうなので、途中から夏道登山道を辿るシュプールを追って行くとドロヤナギの大木がぽこぽこ生えているいい感じの雪原に降りた。
そこからは傾斜はなくなるが、林道もまずまず板が走って楽に駐車場まで降りられた。P2より一時間。やっぱりスキーの下りは早い。
なんだか楽しかった。
天候、雪の付き方、緩み方、条件に恵まれていたと思う。
P2から山頂までは他パーティーはなく、マイペースでじっくり登れてよかった。
佐藤 記
4月26日
雨飾荘6:45、P3 8:40 9:05、P2 10:10 10:50、P1取り付き1120、 P1 1235、山頂1250 1305、P2 1420 1445、駐車場1550
山スキー(1名はフリートレック)、各自バイル1、ロープ50m1本、捨て縄2
風呂:山田屋旅館。ここの日帰り入浴は15:00までだけど、せっかく来たのだからと入らせて貰えた。
飯:白馬の「和所 あかり(歩香里)」。山賊焼定食はうまくてボリューム満点。うどん付なので山登りの後でなければ食べきれない。