「東洋のヨセミテ」と呼ばれるインスボン。「いつかはヨセミテへ」と思いを馳せる我々には、その前哨戦としてマストの存在だ。
登山道の入口となるトソンサから、これから始まるであろう素晴らしい花崗岩との戯れに会話が弾ませながら30分で峠へ。インスボンの全容がドドーン!!と現れる。口をそろえて「おぉ〜!!」と声が出るが、期待が現実となった喜びと、少なからず「これ、本当に登るの・・・?」という不安があったのは否めない。クライミングについては、多少はかじってきたつもりだ。だからこそ、このブッ立ったクラックとスラブを見て、誰も「まぁ、何とかなるでしょ」と気軽に言えない。つい数分前まで欲しいおもちゃを買ってもらう子供のようにキラキラしていた我々に、一転して最前線に送り込まれる兵士のような悲壮感が漂っていた。
≪DAY1≫
ルート:シュイナードB⇒インスボン頂上(5.8、7P)
パーティ:山崎&荒井、高橋&佐野
【1P:5.7、35m】
レイバック20m、スラブ15m。永遠に続いて欲しいと渇望してしまう快適なピッチ。レイバックは緩傾斜、クラックもしっかり割れているのでプロテクションは◎。「岩登りって楽しい〜」と素直に楽しめる。スラブはボルト1本あり。ランナウトするが、傾斜も緩く、スタンスもあるので安心してリードできる。
【2P:5.8、40m】
アンダークリングとスラブの変則レイバック30m、フェイス10m。シュイナードBのラインの核心。アンダークリングと言えば聞こえは良いが、甘いフチをアンダーで持って、足はスラブのレイバック。手足の4本、どれも滑りそうで恐怖感が半端じゃない。そんな状態でプロテクション△のトラバース、泣きが入ります。2か所、残地ハーケンあり。思わず「ザンチ、サイコー!!」と叫んでしまうのがクライマーとして悲しい。変則レイバックの最後、心身ともに限界オーバー、「ここさえ超えれば快適なフェイスぅ〜!!!」というところで、クラックからの染み出し。この世の神すべてを呪いたくなるのは私だけじゃないでしょう。リードした本人的には今までのワン・オブ・ベスト・クライミング。しかし、グレード5.8というのが追い打ちをかけて悲しませてくれる。
【3P:5.6、25m】
ダイクを使って右のクラックに乗り移る一歩が怖いが、その後は快適なクラックとカンテのクライミング。シュイナードBのラインで最も登りやすいピッチ。
【4P:5.7、40m】
フェイス10m、チムニー10m、ダブルクラック20mとバラエティーに富んだピッチ。チムニーと言ってもズリズリ系ではなく、実質はフェイス。ダブルクラックもハンド・サイズで効きが良い。見た目の不安を見事に裏切ってくれる貴重なピッチ。
【5P:5.6、40m】
チムニーがメインのピッチ。ここのチムニーはズリズリ系のクライミングとなる。奥にシン・ハンド・サイズのクラックが走っているため、登りやすい。このピッチがシュイナードBの最終ピッチで耳岩の基部に着く。
【6P:5.10d、25m】
耳岩の上へ抜けるスラブのピッチ。グレード的には甘目だが、出だしの2ボルトまでが高度感があって怖い。
【7P:5.6、40m】
耳岩の頂上から15m懸垂下降して取り付きへ。20mほど簡単なクラックを登り、ブッシュを歩く。インスボンへの頂上に行くまで、ロープを使うのはここまで。ここから先は「タヌキの腹」と呼ばれるスラブをノー・ロープで登り、頂上に至る。「タヌキの腹」はチッピングされているが、高度感があり、それなりに緊張する。下降路は反対側にあるピトゥルギのラインを使えば、50mロープ2本、2回のラッペルでOK。
白雲山荘の夕食で出たサムギョプサル(豚のバラ肉)が最高にうまい。一泊二食で3,500円。インスボンに行くなら、白雲山荘のステイはマスト★
≪DAY2≫
ルート名:シュイナードA(5.10a、5P)
パーティ:高橋&荒井、山崎&佐野
【1P:5.4、35m】
このルートのアプローチ・ピッチ。階段上のフェイスなので快適に登れる。トポによってはピッチ数にカウントされていないけど、安心して登れる貴重なピッチ(笑)
【2P:5.6、35m】
オフウィドゥスのセクション。特段ワルいわけではないが、ワイドに慣れていないと奮闘的。プロテクションは◎。
【3P:5.8、40m】
レイバック中心のピッチ。山ちゃん曰く「レイバックはこんなもんや」と言うけれど、寝ているとは言えない傾斜に延々と続くレイバック。あの高度感の中でプロテクションのことを考えるとビビりが入り、心が折れる。テン山+エイドで何とかトップアウト。
【4P:5.10b、40m】
ワイドハンド〜ハンドのセクション。カブッたふくらみを超えるのが第一の核心。クラックのサイズはワイドハンドでジャムの効きは甘め。コレといった足もないので、ワイドのように奮闘的になる。その後、30mほどのハンド・クラック(手の薄い人にとっては、ややワイド)が続く。ストレニュアスな第二の核心。このスケール感、ビッグ・ウォールだぜ・・・!
【5P:5.6、40m】
チムニーとトドメのスラブ。プロテクション欲しさに奥へ行くとヘルメットが挟まってフリーズするので要注意。出だしのプロテクションは少々我慢して手前側を登るのがグッド。チムニーの後、右へ少しクライムダウンして、5.5のハンド・クラック。その後、5.6のスラブをランナウトに耐え、終了点へ。ロープの流れが悪いので、スラブのランナウトはヒヤヒヤもの。
ルート名:なし(オアシステラスへ至る大スラブ、5.6、3P)
パーティ:高橋&荒井、山崎&佐野
【1P:5.5、30m】
クラックが使える緩傾斜のスラブ。これは安心。
【2P:5.6、30m】
クラックからスラブっぽいフェイス。ポケットにエイリアン赤が良く効く。これは何とかいける。
【3P:5.6、50m】
50mでボルト2本のドスラブ。グレード的には間違いなく行けるハズなのに、常軌を逸したランナウトにビビってしまう。荒井は戦意喪失して沈没。山ちゃんに蜘蛛の糸を垂らしてもらい、オアシステラスへ。
トソンサへの帰り道、振り返ってインスボンを見ると、インスボンの頂上へ抜けるシュイナードA、Bのクラック・ラインが一際目立つ。ラインのカッコ良さ、スケール、内容ともに★★★は間違いない。
日本では味わえないこの充実感が得られるなら、韓国もさほど遠くには感じられない。今も、あの甘いアンダークリングの懐かしい感触が蘇る。
(文責:荒井)
<↓下山短信@高橋>
無事三人帰国しました。山崎さんもそろそろ関空につく頃でしょう。
天気に恵まれました。深夜ソウル入りして乾杯。翌日昼過ぎからまずはシュイナードBで小手調べ。ピッチ丸々変形レイバックでスタート。これはヨセミテか、いやインスボンだ。山頂に抜けたのは6時。それから空懸混じりでコルに降り山荘に戻る。翌日めげずにシュイナードA。40M×4ピッチ丸々クラックが一直線に空まで延びてインスボンでも一番目立つルートだ。この日このルートに取り付いたのは我々のみ。最高です。同ルート懸垂で取り付き戻ったら3時過ぎ。中途半端な時間なので次回に備えてシュイナード以外の各ルートの取り付きとなっているオアシステラスまでのアプローチと位置付けられる大スラブを登っておこうと向かった。それが3Pのスラブで日本人の感覚ではそれだけでもう一本のルート。現地の人はランチを食べに気軽に上がっていくようだが荒井、高橋は途中でビビりビレーポイントから一歩も踏み出せなくなり山崎様からロープを垂らしてもらいどうにかテラスにたどり着けた。危険過ぎる!小川山のミニマムボルトがマキシマムに思える。50mにボルト2本って命懸けだろ!またも夕闇迫るなかの下山になりました。
はい、明洞で買い食い、焼き肉、南大門の買い物、それからサウナ、垢擦り、エステも一通りチャレンジしました。この行動中は社長、パパさんと言われ続け日本語だけしか使いませんでした。
また行きたい、これが全てを物語ります。
(高橋)
↓シュイナードB 2ndP
(上方のパーティは医大ルート)
↓シュイナードB、3P目
↓シュイナードB、4P目 ↓シュイナードB、5P目
↓仁寿峰頂上18:00時過ぎ
↓シュイナードA全景 見えてる部分は5P中の3P分
↓大スラブ 3rdP
滑ったら大の字になってスピードを殺すことが大事だそう!
↓オアシステラスから次回の課題を偵察
(写真はすべて佐野)
ドラゴンの記録を読み直して自分の昨日の写真の不備がが判明。
やっぱり記録は大切ですよ。
Complete versionとして再送します。
インスボン
期間:6月5日〜6月8日(クライミング期間:6月6日〜6月7日)
メンバー:高橋、山崎、佐野、荒井
「東洋のヨセミテ」と呼ばれるインスボン。「いつかはヨセミテへ」と思いを馳せる我々には、その前哨戦としてマストの存在だ。
登山道の入口となるトソンサから、これから始まるであろう素晴らしい花崗岩との戯れに会話が弾ませながら30分で峠へ。インスボンの全容がドドーン!!と
現れる。口をそろえて「おぉ〜!!」と声が出るが、期待が現実となった喜びと、少なからず「これ、本当に登るの・・・?」という不安が
あったのは否めない。クライミングについては、多少はかじってきたつもりだ。だからこそ、このブッ立ったクラックとスラブを見て、誰も「まぁ、何とかなる
でしょ」と気軽に
言えない。つい数分前まで欲しいおもちゃを買ってもらう子供のようにキラキラしていた我々に、一転して最前線に送り込まれる兵士のような悲壮感が漂ってい た。
≪DAY1≫
ルート:シュイナードB⇒インスボン頂上(5.8、7P)
パーティ:山崎&荒井、高橋&佐野
【1P:5.7、35m】
レイバック20m、スラブ15m。永遠に続いて欲しいと渇望してしまう快適なピッチ。レイバックは緩傾斜、クラックもしっかり割れているのでプロテクショ
ンは◎。「岩登りって楽しい〜」と素直に楽しめる。スラブはボルト1本あり。ランナウトするが、傾斜も緩く、スタンスもあるので安心してリードできる。
【2P:5.8、40m】
アンダークリングとスラブの変則レイバック30m、フェイス10m。シュイナードBのラインの核心。アンダークリングと言えば聞こえは良 いが、甘いフチを
アンダーで持って、足はスラブのレイバック。手足の4本、どれも滑りそうで恐怖感が半端じゃない。そんな状態でプロテクション△のトラ バース、泣きが入り
ます。2か所、残地ハーケンあり。思わず「ザンチ、サイコー!!」と叫んでしまうのがクライマーとして悲しい。変則レイバックの最後、心身ともに限界オー
バー、「ここさえ超えれば快適なフェイスぅ〜!!!」というところで、クラックからの染み出し。この世の神すべてを呪いたくなるのは私だ
けじゃないでしょう。リードした本人的には今までのワン・オブ・ベスト・クライミング。しかし、グレード5.8というのが追い打ちをかけて悲しませてくれる。
【3P:5.6、25m】
ダイクを使って右のクラックに乗り移る一歩が怖いが、その後は快適なクラックとカンテのクライミング。シュイナードBのラインで最も登りやすいピッチ。
【4P:5.7、40m】
フェイス10m、チムニー10m、ダブルクラック20mとバラエティーに富んだピッチ。チムニーと言ってもズリズリ系ではなく、実質は
フェイス。ダブルクラックもハンド・サイズで効きが良い。見た目の不安を見事に裏切ってくれる貴重なピッチ。
【5P:5.6、40m】
チムニーがメインのピッチ。ここのチムニーはズリズリ系のクライミングとなる。奥にシン・ハンド・サイズのクラックが走っているため、登
りやすい。このピッチがシュイナードBの最終ピッチで耳岩の基部に着く。
【6P:5.10d、25m】
耳岩の上へ抜けるスラブのピッチ。グレード的には甘目だが、出だしの2ボルトまでが高度感があって怖い。
【7P:5.6、40m】
耳岩の頂上から15m懸垂下降して取り付きへ。20mほど簡単なクラックを登り、ブッシュを歩く。インスボンへの頂上に行くまで、ロープを使うのはここま
で。ここから先は「タヌキの腹」と呼ばれるスラブをノー・ロープで登り、頂上に至る。「タヌキの腹」はチッピングされているが、高度感が
あり、それなりに緊張する。下降路は反対側にあるピトゥルギのラインを使えば、50mロープ2本、2回のラッペルでOK。
白雲山荘の夕食で出たサムギョプサル(豚のバラ肉)が最高にうまい。一泊二食で3,500円。インスボ ンに行くなら、白雲山荘のステイはマスト★
≪DAY2≫
ルート名:シュイナードA(5.10a、5P)
パーティ:高橋&荒井、山崎&佐野
【1P:5.4、35m】
このルートのアプローチ・ピッチ。階段上のフェイスなので快適に登れる。トポによってはピッチ数にカウントされていないけど、安心して登
れる貴重なピッチ(笑)
【2P:5.6、35m】
オフウィドゥスのセクション。特段ワルいわけではないが、ワイドに慣れていないと奮闘的。プロテクションは◎。
【3P:5.8、40m】
レイバック中心のピッチ。山ちゃん曰く「レイバックはこんなもんや」と言うけれど、寝ているとは言えない傾斜に延々と続くレイバック。あ
の高度感の中でプロテクションのことを考えるとビビりが入り、心が折れる。テン山+エイドで何とかトップアウト。
【4P:5.10a、40m】
ワイドハンド〜ハンドのセクション。カブッたふくらみを超えるのが第一の核心。クラックのサイズはワイドハンドでジャムの効きは甘め。コ
レといった足もないので、ワイドのように奮闘的になる。その後、30mほどのハンド・クラック(手の薄い人にとっては、ややワイド)が続く。ストレニュアスな第二の核心。
このスケール感、ビッグ・ウォールだぜ・・・!
【5P:5.6、40m】
チムニーとトドメのスラブ。プロテクション欲しさに奥へ行くとヘルメットが挟まってフリーズするので要注意。出だしのプロテクションは
少々我慢して手前側を登るのがグッド。チムニーの後、右へ少しクライムダウンして、5.5のハンド・クラック。その後、5.6のスラブをランナウトに耐え、
終了点へ。ロープ の流れが悪いので、スラブのランナウトはヒヤヒヤもの。
ルート名:なし(オアシステラスへ至る大スラブ、5.6、3P)
パーティ:山崎&佐野、高橋&荒井、
【1P:5.5、30m】
クラックが使える緩傾斜のスラブ。これは安心。
【2P:5.6、30m】
クラックからスラブっぽいフェイス。ポケットにエイリアン赤が良く効く。これは何とかいける。
【3P:5.6、50m】
50mでボルト2本のドスラブ。グレード的には間違いなく行けるハズなのに、常軌を逸したランナウトにビビってしまう。荒井は戦意喪失して沈没。高橋も交替を言い出せず。山ちゃんに蜘蛛の糸を垂らしてもらい、振り子でキャッチしオアシステラスへ。
トソンサへの帰り道、振り返ってインスボンを見ると、インスボンの頂上へ抜けるシュイナードA、Bのク
ラック・ラインが一際目立つ。ラインのカッコ良さ、スケール、内容ともに★★★は間違いない。
日本では味わえないこの充実感が得られるなら、韓国もさほど遠くには感じられない。今も、あの甘いアンダークリングの懐かしい感触が蘇る。
記)
荒井
写真
1 シュイナードB 1stP スタート12:30
2
シュイナードB 2ndP
上方のパーティは人気の医大ルート
3
シュイナードB 3rdP
背後は大スラブ2P目のパーティ
4 シュイナードB 4thP
5 シュイナードB 5thP
6 シュイナードB 6thP
=医大最終ピッチ。耳岩ピーク上まで
7
仁寿峰頂上18:00時過ぎ
8
シュイナードA全景。写っているのは2P目途中から5P目途中までの120m分。夕方帰り際に撮影
9 大スラブ 3rdP
"ロープを使わないで登っているが滑ったら大の字になってフリクションをとる"by
CJ22号韓国からの手紙.....無理!
10 オアシステラスから次回の課題を偵察。でも問題はアプローチのスラブだ
写真提供佐野。
木の葉の隙間から仰ぐ満天の星の白雲山荘、李さんとの記念写真がないのが残念
山崎です。
二日目のおまけのオアシステラスへの道行き、1P目は向かって左側からショートカットできる
ことを追記しておいた方がいいのでは?
あと、初日、平日だと(思っていたのに)やたら人が居て、何事かと思いました。
聞いたところ顕忠節という祝日だったようで、そりゃ混むわ、と。
向こうのクライマーはソウルの市内から日帰りで登りに来るパターンが多いようです。
なので、夕方になると見事なぐらい一斉に帰って行きます。
山荘に泊まる計画なら、長めの人気ルートは遅めの時間に取り付くのが吉かも。
それでは