甲斐駒ヶ岳/赤石沢奥壁Aフランケ赤蜘蛛ルート



赤蜘蛛(甲斐駒ヶ岳Aフランケ)
日程:2014年7月25日〜26日(前夜発1泊2日)
メンバー:高橋、佐野、荒井

井上進氏&木下五郎氏が1971年に初登して以来、人工登攀やアメリカン・エイド、さらにはフリークライミングのマルチピッチの場としてクライマーを受け入れてきた赤蜘蛛、岩ヤでなくともその名前は聞いたことがあるだろう。日本離れした300mのビッグ・ウォールに発達したクラック、はるか眼下に赤石沢を望みつつ、鳳凰三山のエールを背中で受けるそのロケーション、そこはまさに標高2,500mにたたずむクライマーのエルドラド。リッジ・トゥ・リッジでフリー化に成功した平山ユージが「ワールドクラス」と銘打つ80mのバーティカル・フェイスに引かれた一条のクラックから巨大カンテへクロス・オーバーするライン取りは大胆で攻撃的。ビッグ・ウォールを目指す我々には避けては通れないマスト・ルートの一つがこの赤蜘蛛だ。

<7月25日>
6時30分に竹宇駒ヶ岳神社を出発。ギアを満載したザック、猛暑に苦しめられ、16時に8合目岩小屋に到着。7合目を過ぎて登山道を進んでいくと、平坦な場所に出る。記念碑(?)を超えたすぐのところ、左手に踏み跡があり、岩小屋へ。4人なら余裕を持って寝られるスペース。湿気が籠っているので、カビ臭いが、香取線香を焚けば気にならない。入口はツエルトなどで塞いでおくと、風が吹いても快適に休める。

<7月26日>
3時起床。フリーズドライで朝食を摂り、4時30分に岩小屋を出発。赤テープをたどり、左側に下っていく。所々にあるフィックスロープを使って、いったん涸れた八丈沢へ降りる。八丈沢を20〜30mほど下り、右へトラバース。最初に出てくる巨大なフェイスが右フェイス。右フェイスを回り込んだところが、Aフランケになる。到着は6時。部分的にかなり悪いところがあるので、自信がなければフィックスロープの状態を確かめたうえで、懸垂下降をすると良い。

【1P:25m、A1、高橋リード】
出だしの小ハングを超えて、垂直のフェイスをアブミで登る。核心は出だしの小ハング超え。実際に取り付くと2本目のボルトがかなり遠い。終了点は快適なテラス。

【2P:40m、X、荒井リード】
ハンドサイズのクラックが40mにわたって延びる凹角。赤蜘蛛の全ピッチを通じて、最も気持ち良く、安心して登れる。この大自然の中でバシバシとハンドを決めながらフリーで40mも登れるなんて・・・、クラックをやっていて良かった(涙)。グレードは5.8程度。終了点はかなりせまい。

【3P:20m、A1、荒井リード】
凹角の左のフェイスに打たれたボルトラインに沿ってアブミで登る。赤蜘蛛全体に言えることだが、ボルトやハーケンはかなり古い。今にもちぎれそうなリングボルト、グズグズに腐ってそうなハーケン、ゴミにしか見えない極小スリング・・・。静荷重とは言え、これにすべてを託すのはかなり躊躇する。「神様、お願い・・・」を何回つぶやいたか。昔のトポには「古い残置には注意したい」なんて書かれているけど、注意したい残置しかないんスけど・・・(汗)唯一、7ピッチの快適な終了点にペツルのハンガーボルトがあったけど、ここじゃねーよ!(笑)

【4P:40m、W、A1、高橋リード】
ボルトのラインに沿って、アブミで登る。凹角からハング下をトラバースし、ハングを超える。この後にも小ハングがあり、ちょっと悪い。そして、フェイスを登り、快適な大テラスへ。

【5P:20m、W-、A1、佐野リード】
木が生えているワイルドな凹角からフェイスをアブミを使って登り、突き当りのリッジを左から回り込んでいく。フリーで登れば5.8程度。大テラスからリッジの後ろ側にあるAフランケが良く映えるので、写真ポイントとしてグッド。登りやすいピッチなので、安心してカッコ良いアルパイン・クライマーとして写真を撮ってもらえる。ただし、ガスが出るとAフランケが見えない。

【6P:40m、A1、荒井リード】
赤蜘蛛の看板ピッチ。80mのバーティカル・フェイスに引かれたフィンガークラックに沿って、40mをアブミで登る。下部はフェイスになっているので、ボルトラインに沿って登る。間隔が遠いところは、右側に走るハンド〜フィストのクラックを使って対処。トポやネットの情報では「間隔が遠いところがある」との記述があったけど、ほとんど遠いんですけど・・・(笑)間隔がさらに遠くなっているということは、やっぱり抜けているってことだよね・・・。私の実力では、マスター#2〜#5は最低でも2セットは必要。ヌンチャクは15本あったが、20mに行かないところで残り5本。高橋さんからの「1本づつ間引いて行けよ〜」のコールに、「1本間引きでも足りないッス」と私。「じゃぁ、2本間引いて行けよ!!」の打ち返し。ひと事だと思って、このヤロー!!!結局、5〜6mのランナウトに耐えて後半の20mを登る。もちろん、衝撃荷重に耐えられないであろうプロテクションしかありません。色の抜けたボロボロの極小スリングは、マジで勘弁して〜。終了点はハンギング。

【7P:20m、W-、A1、高橋リード】
恐竜カンテへクロス・オーバーする、これも赤蜘蛛の看板ピッチ。ボルトのラインに沿ってアブミで登る。恐竜カンテを回り込むクライマーの姿は、岩と空のコンタクトラインと重なって、かなりカッコ良い(もちろん、クライマー自身もカッコ良い)。ベスト・クライミング・ショット・イン・マイ・ライフを撮って欲しい人にはお勧めです。終了点は快適なテラス。

【8P:30m、W-、A1、佐野リード】
フェイスからスラブをアブミで登る。緩傾斜なので、比較的登りやすい。終了点はブッシュのテラス。
クライミングは実質8Pで終了。9P以降は木登りを交えたブッシュを登る。U〜V級程度。Aフランケの頭の岩小屋へ17時着。8合目の岩小屋を18時30分に出発。竹宇駒ヶ岳神社に23時30分着。
≪記録;荒井≫

甲斐駒ケ岳 Aフランケ 赤蜘蛛ルート
L.高橋、佐野、荒井
2013年7月26-27日 (金・土)

あいつがこんなにも登れないとは・・・想定外かも

そりゃ人工を舐めきっているだろうことは言動から伺え、そんな甘いもんじゃないぜ、面食らえばいいと俺も思ってましたよ。しかしあんまりじゃない ですか
ね、上から見下ろしているとカエルが何度も飛びついては跳ね返されるように全く離陸できないでもうずいぶん時間が経ってしまった。もっと ロープ張ってくれと思っているんだろうけどダブルロープなんて伸びてそんなもんよ。

ルートの取りつきだぜ。出直して来いと言いたいが道連れはゴメンだ。だもんで"ばか力で頑張れー"と温かいアドバイスを叫ぶのだった。


前日、五合目で1人遅れる俺にやきもきして

"荷物持ちましょうか?"と聞いてくるもんだから
"すまんな!それじゃハンマーと、ええっと・・・あと食料も頼む"と、すかさず返事して持ってもらった。

まさかと本当になるとは思わないで言ったんだったら甘いぜ、甘すぎるぜ。

"ありがとうございます。いやーもう山登る資格ないね"
"高橋さんもうアルパインっていうかバリエーション無理じゃないですか"

そこまでいうか。はいはい、言って当然だよな。7丈小屋からは水も追加して持ってもらった。

佐野さんが心配して途中まで戻って見に来るほどさらに遅れて8合目に着いてドラゴンのザックを持ってみたら持ち上げただけで吐きそう。凄いなドラ ゴン。
鍛えればパチンコだって出来んじゃねえの。あ、俺?明日は大丈夫だから!多分。


そんな伏線があるもんだからもう一丁行くよ。


と、6ピッチ目のドラゴンのリードが体感2時間かかったことに進もうとしてい
たら荒井様の山登MLにレポートが入電しました。
未完にて終了させて頂きます。失礼しました
(高橋)

赤蜘蛛の写真です。 佐野さんのカメラは5P目でフィストサイズの割れ目深くに落ちて紛失。ドラゴンのスマホ写真のため本人は足しか写ってません。
これだけは書いておきたい。竹宇駒ヶ岳神社P標高780m - 8合目岩小屋標高2680m (- 赤蜘蛛取りつき2350m?) 金アプローチ、土曜の登攀は静かで最高でした。


8合目岩屋
8合目岩屋

左/見下ろす2P目のジェードル。ジェードルに入って視野に飛び込む上部は背景と重なり日本離れした雰囲気だが登攀中撮れず残念。
中央/ 5P目。カンテに浮かび上がる佐野
右/ 6P目取りつきから。クラックを最後まで辿ると70m11dだそう。強靭なハートはもとより、ストレニュアスさ、上部の細さによって我々には別世界。
  


6P目終了点から見下ろす。フォローも荷物を背負って且つカムがなくて大苦労。


鳳凰三山方面。ガスが巻き上がり直射日光から遮られ助かった。因みに赤蜘蛛は昼前までは日陰のロケーション。


7P目。恐竜カンテ。天気に感謝しつつ登る。午後の雷雨が怖く昼過ぎまでに勝負をつけたかったが問題外でした。
恐竜カンテ

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