丸山岳は10名山級ですよ。ほんと、良さにびっくりしました。
当初の案は大幽西ノ沢から丸山岳。16年前、山登魂の例会に見学に行ったときに治田さん高田さんの報告を聞き、印象深くいつか行きたいと思っていた。 しかし、2011年の水害による林道崩壊以降は記録がなく状況がよめない、とかいろいろ迷った末、今回は断念。「正直転進を提案しかかっています」の私の言葉に、袖沢北沢を出してきたのは伊藤さんの方だった。考えなくはなかったが、前週に袖澤南沢を歩いていた私は、同じエリアに続けていくのはポリシー(?)に反するという気持ちがあった。 しかし、そんなくだらんこだわりは捨て捨て。丸山岳の紅葉はベストタイミングのはすで魅力は少しも衰えない。アプローチを知っているのはむしろ好都合だと開き直っちゃおう。というわけで、行先は袖沢北沢〜丸山岳に決めた。
林道を1時間ちょい歩いて北沢出合から入渓、谷状地形は明瞭だけど水流が見えない。ちょっと上流側に水流があった。袖沢本流にくらべればまったく小さい。
入渓してすぐゴルジュっぽくなる。よく調べていなかったが、ゴルジュの沢だったのか。狭いが陰鬱な感じはなく、紅葉も見えなかなかよい雰囲気。
そして1つ目の滝、3段になっているようだ。左から登れそうにも見えたが、巻いた方がいいかもと右岸を登ると草付がかなり悪かった。ロープ使用で30m登ってピッチを切り、そこからさらに10mほど灌木帯にロープを伸ばす。 結果的に今回の山行でここが一番悪かった。なお、以降、滝を巻くことはなかったと思う。
適度なゴルジュ、登れる滝が続き楽しい。天気もよく紅葉が美しい。しかも、この袖沢北沢、人臭さを感じさせない。日本の渓谷97やトマの風の沢登本にも紹介されているので、もしかすると何パーティーか入るかもともっと人が入っているものと思っていたが、このベストシーズンに誰にも会わないどころか、踏み跡や残置も少ない。いいね、これは気持ちいい。
他、特筆すべき点は、ヌメヌメでよく滑ることと、シャワーというほどではないが、想定以上よく濡れる沢だということだ。時期や気象条件によってはきついだろう。
さて、他に印象が残っている滝をいくつか。
荷揚げ失敗滝:釜があり、へつって左側の凹角状を登る。空身で登り荷揚げする作戦だったが、うっかりハーケンを打ってしまったのを忘れ荷揚げ失敗。下降して登り直し。このすったもんだで佐藤のデジカメが釜に落下。それを伊藤さんが潜って回収してくれた、大感謝だ。
簾状滝:水流が岩盤上を広がって美しい。中間で左から右へ移るトラバースが滑りそうで怖いので途中からロープ使用。左のコーナーのクラックにカムが決まる。
滑落滝:連瀑帯の最後の滝。右側をノーロープで登っていたら伊藤さんが滑落。
滑落する瞬間は見ていなかったが、本人によれば滑落の高低差は3.5mくらいだそうだ。大きな音がして事故と感じたが、奇跡的に怪我はなかったようだ。 現場は多少滑りやすいものの、そこまでで登ってきた滝と比べても大したことはなかった。疲労、とくにデジカメの回収で釜に潜ったせいで冷えて体の動きがおかしくなっていたのかもしれない。
悔しがりすぐに登ってきそうだったが、ロープを出すまで待ってもらう。行動に支障はなそうだが、精神的にダメージを受けており、動きはかなり悪い。 幸い、この滝が連瀑帯の最後で、じきに地形図からも河原状と読めるCo1380mにビバーク適地が見つかったので泊まることにする。日当たりは悪いが、ツェルトの下はほぼ砂地、薪もそこそこ豊富でなかなか快適だった。
テンバでこけたときにチューハイの缶が破裂して酒が足りなくなったのと、台風が心配なのでできれば明日中に下山することにして、寝る。
それにしても夜の冷え込みはきつかった。何度も目が覚めて朝はまだかと時計を確認してしまった。4:30起床。寒いのでまずは焚火。じきに明るくなり6:30に出発
穏やかな流れとなり、赤い紅葉の混じる日本庭園風の雰囲気となっていく。紅葉がすばらしい。Co1540の二俣は右へ。ここの小滝はロープを出して右から巻いた。詰めは非常に景色がすばらしい。最後は藪漕ぎ20mで稜線に出た。稜線は草原上で気持ちいい。すばらしすぎる。気持ちいい稜線を少し歩いて丸山岳山頂だ。山頂も池塘があってすばらしい。
天気は快晴。展望は良い。会津朝日が見える。前週に行った白石沢スラブのときに超えたピークも見える。先日行った裸山も見える。見覚えのある山、意外な山が見えていたり、分からない山々もたくさんだけど、とにかく山また山で楽しい。 紅葉の、しかも誰もいない時に、この山頂に立てたのは本当にラッキーだ。丸山岳の山頂はマイベストワンに値する。
のんびりと景色を楽しんでから、メルガ股へ向けて下降を開始する。出だしは踏み跡があるが、じきに激藪になる。身長を超える薮を、1736ピークへの尾根を過ぎるところまで進み、そこから一気に谷を目指したが空中戦の入る激藪だった。 しかし、距離は短く、短時間でメルガ股へ入った。このあたりから、駐車地に近い丸山スキー場がよく見える。近そうに見えるが、やっぱり遠いのは分かってる。メルガ股の下降は懸垂を多用したが、残置の捨て縄が多くかなり利用させてもらった。もしも残置がなければ足りなくなっていたかもしれない。メルガ股ではテンバ跡らしきところもあり、なんとなく人臭い。魚影は濃い。そういえば禁漁期間のはずで、人に会わないのはそのせいか。
そろそろ袖澤乗越入口の沢のはずだが、もしかすると通り過ぎたかもと伊藤さんのGPSで確認してみると、100mくらい通り過ぎていた。この出合いは5mくらいの滝がかかっているのだが、非常にわかりにくい。袖沢乗越へはところどころ赤布が下がっている。乗越を超えると、目印もなく踏み跡も不明瞭でよくわからないが、適当に降りれば沢に入りじきに袖沢に降り立つ。もしも日没後だったら大変だろう。幸い、暗くなる前に袖さ沢の渡渉を終え、林道に乗ることができた。
帰りの林道の途中で真っ暗になったが、行きよりも短時間で通過して駐車地についた。
袖沢北沢からの丸山岳、おすすめです。自分たちの実力に見合っていたからだろうか、袖沢北沢は適度に滝が多く、思ったよりずっと充実し、楽しめました。 岳人100ルート(だったっけ?)では丸山岳へは大幽西ノ沢が一押しとなっていて、北沢は容易な登路のような書き方だったのですが、とんでもない。北沢自体十分にたのしめ、詰めの雰囲気もすごく気持ちの良いところでした。
しかし、大幽西の沢、ACC-J茨城の人が10/9にトライしていたのですね。敗退したようですが、こちらは行くことすらできなかったので、よくやるなあ、と思ったり。うーむ。
佐藤
ロープ30m、捨て縄(たくさんあったほうがよい)
銀山平温泉 白銀の湯。20:00まで開いているので間に合った