「穂高・屏風岩 フリークライミング」

2015年5月3日(日)

大学1年生の夏山合宿で初めて見た大岩壁・屏風岩。こんなのを登るクレイジーな野郎がいると想像しただけで恐怖を覚えたものだった。それから屏風岩は徐々に私の登攀対象へと変わったが、なかなかパートナーを得られない期間が続いた。初めて出会ってから7年間、遠目に見ていた岩壁は私の頭の中でどんどん膨張してしまっていた。

パートナーは鹿児島大学山岳部時代の先輩黒岩氏。氏は現役部員と別の山行を予定していたが、ふられてアローンとなり、鹿児島からの航空券だけが残った・・・らしい。「なんでもいいよ(登るよ)」とのことで今回組むことになった。

【取り付き】

横尾の先の岩小屋跡からケルンに沿って渡渉し、T4尾根を目指す。T4から右へ50mほどトラバースしたところのコーナーが取り付き。

【T4尾根】

1P目30mとされるセクションが雪に埋まっていた。それより上は前日に雲稜ルートのトライ時にロープ2本をフィックスしておいた。

【ルート】

1P目 25m 5.8(黒岩):大きなルーフしたフェースからコーナーへ。カムで十分プロテクションは取れる。が、氏は3番キャメを決めた後、躊躇なく残置スリングをつかんで登ってしまった。「なんでもいいんだよ。誰が見てるんだよ」とのこと。なんでもいいってそういうこと?ちょっとくらい逡巡してほしかった。「自身がフリーで登ればいいのだから」と思い直して我慢。コーナー終点で終了。

2P目 30m 5.10b(伊佐見):バンドを右へトラバースし、途切れぎみのもろいクラックを4m直上。右手に終了点あり。バンドに手が届くまでと、もろいクラックが核心。もろいクラックは探せば3つくらいカムが決まる。充実のピッチ。

3P目 40m 5.11a-b(伊佐見):草の多いセクションを3mほど越えると、バチバチにジャミングがきくコーナークラックを登り、その先のルーフを左へ避けながら越える。ルーフ中のクラックは半分くらいで閉じており、出口までプロテクションは取れない。足元もツルツル。少なくとも小川山の最高ルーフよりはむずかしいのではないか。ルーフのあとの直上セクションでは、ガバがクポポポという音を立てて剥がれてくるので、気を付けて剥がれる前に登った。

4P目 40m 5.9(伊佐見):東壁ルンゼをコの字に巻く。出だしのクライムダウントラバースが核心だが、上部でかなり迷った。途中で何もないフェースを直上しようとしたが、もろそうなフレークにカムを入れたところ、見事に壊れたので直上はあきらめた。決死のクライムダウン。ナチュプロの設置場所はほとんど見当たらなかった(8mおきにきめられるとの情報あり)。精神的核心はこのピッチ。

5P目 20m X(黒岩):東壁ルンゼのチムニーを直上。氏いわく、快適だったとのことだが、もろいし、チムニーを抜けた後のちょっとしたフェースが嫌な感じだった。終了点では、氏が太もの親指くらいの木で私をビレイしながら、4番キャメで自分のセルフビレイを取っていたのを見つけてキレてしまう。そのキャメ使ってくれよ!

6P目 40m 5.10a → W(黒岩):への字ハング下を左へトラバース。出だしはまた脆いフェースで、嫌がる黒岩氏に無理をいって突破してもらった(もちろんカムエイド)。本来はルンゼ突き当りのへの字ハング右端からトラバースなのかもしれない。フォローはフリー突破。

7P目 35m 5.9(伊佐見):雲稜と合流し、快適なハンドクラックのコーナーへ。左面はツルツルの真っ白なスラブとなっており、とても美しい。まさにフィナーレ。

8P目 30m X(黒岩):ダメ押しのピッチ。残り1ピッチ、泥のルンゼで頂上へ出るが今回は懸垂下降予定だったので諦めた。ちょっと心残り。

【備考】

憧れの屏風岩を登ったことに大満足。そして初登の草野さんに脱帽。とてもマネはできません。

パラノイア、オープンロード(東稜)、右岩壁?とまだまだ登りたいルートばかり。今年もう1回行こうかな?

(伊佐見)