会越/御神楽岳 湯沢・高頭スラブ、ダイレクトスラブ

御神楽岳湯沢ダイレクトスラブ
湯沢奥壁。赤線はダイレクトスラブ

【日程】

2015/5/23 - 24 (前夜発一泊二日)

【メンバー】

佐藤、佐野

【報告】

ずいぶん前にナベと御神楽沢本谷ルンゼを登ったときに見た湯沢は、暗く、本当に恐ろしい雰囲気で、とても登る対象とは考えられなかった。 しかし、いつのまにか積雪期と無雪期の狭間に行く予定の山として頭の中にあって、昨年、水晶尾根に行ったのは、湯沢を偵察するためだった。そのときは残雪と雨上がりのためか水流がキラキラと輝き、それでも明るく、全く違う表情を見せていた。そして、傾斜はさほどでもなく、1、2週間のチャンスと思われる残雪のタイミングさえ間違えなければ登れると確信した。

5/23 高頭(タカツムリ)スラブ

蝉ヶ平登山口の駐車場につくと、ハーネスをつけて準備している人たちがいる。行き先同じかもと思いつつ、どこへ行くのか聞いてみると、一日目は同じく高頭スラブだという。「どちらから?」「東京の...」なんて会話してたら、実はトマの風の方だった。

一時間で湯沢の出合。思ったより雪が多く、すぐそばまで雪渓がせまっている。荷物をデポし出発。アプローチは雪渓をざくざくと歩く。じきに右から前沢が入り、正面にどん詰まりの壁と二俣が見える。ということは、今右手にあるのが高頭スラブか。でも、どう見てもしょぼすぎる。念のため二俣まで進んでみると、左は小さく急峻な谷で、右には広々としたスラブが見えている。右は正面スラブのようにも見えるが、そうだとしたら、左の小さい谷が本流ということになり、おかしい。勘違いだった。この二俣の左は珊瑚クラックで、右の正面の広いスラブが高頭スラブだ。よく概念図をみれば、高頭スラブは珊瑚クラックより先だし、記録には「広いスラブ」とある。危うく変なところを登りそうになってしまった。あとで聞いたところではトマの風のパーティーも同じような会話と行動をしていたらしい。

高頭スラブは水流の左の広いスラブから登る。思いのほか、きもちいいスラブだ。勘違いしてがっかりした反動か、とても好印象。上部は二俣となるが、左俣を登った。ここに涸れ滝があり、ロープを一ピッチ出す。残地ハーケンあり。涸れ滝の辺りは、岩質が異なり、傾斜が出ている。この岩質の異なる層は、各スラブの門の両脇の岩峰や山伏のドームなどを作り、湯沢全体に広がっているようだ。 この後もいいスラブが続いたと思われるが、記憶が無い。写真を見ると白いスラブが美しい。とにかく暑かった。 詰めは、最後には、右に適当にトラバースし、登山道に出た。といっても登山道だと分かるのは赤テープが落ちていたからで、さっきまで登ってたスラブと変わらない感じのところだった。 もの凄い暑さの中ふらふらになりながら湯沢出合に帰り着いたが、しばらく動けず、雪解け水をかぶりながら冷却した。

遅れて降りてきたトマの風のパーティーと一緒に焚き火を囲む。沢の側で、のんびりと焚き火しながら酒を飲むのは楽しい。トマの風の方から、とてもおいしいコシアブラの天ぷらを頂いたり、興味深い話を聞かせていただいたりした。トマの風のお二人のガチのマイナー志向には大いに刺激を受け、私ももっとおもしろいところを探さなくてはと思った。

5/24 ダイレクトスラブ

久しぶりにシュラフカバー+インナーシーツ、マットはロールマットの切れ端という貧弱な寝具で寝たせいだろうか、夜中に寒くて何度か目が覚めてしまった。朝から焚き火。新高ルンゼへ向かうトマの風のパーティーと前後して出発。

取り付きまでの雪渓が繋がっているかどうかがポイントだ。前日高頭スラブがから観察した限りでは、大きなクラックが見えていたが、、かろうじてつながっている箇所があり通過できた。でも、結構怖かった。雪渓はそれほど傾斜はなく、アイゼンがなくても大丈夫だった。

雪渓の厚みのあるポイントを選んで、あっさりとスラブへ乗り移り、クライミングシューズに履き替える。取り付きには門がある。他の記録からロープ使用かと思ったが、今回は必要なさそうだ。ただし、門の手前は案外傾斜があって、容易とは言えない。今回もしロープを3回出すとしたら、最初のポイントだろう。

門を超えれば快適スラブが延々続く、そして、例によって山伏のドームと同高度の門。ダイレクトスラブの場合、門というほどの囲まれ方ではないが、ここは岩質が変わり、若干傾斜が益して、外傾した階段状だが快適。残置ハーケンがあったが、ルートをミスしなければ、ロープは不要だろう。

そして再び、快適スラブ。白くて美しいところもあったが、もろく、傾斜が少し増してくる。はっきりいって、悪い。ロープが欲しいけれど、佐野さんがさっさと行ってしまったのでノーロープで行くしか無い。もっとも、もろくてハーケンもボルトも効かず、まともな支点は得られないと思う。

最後は右側に詰めあがり、三角スラブの一番右の沢の源頭にあたる小さな雪渓に出た。沢靴に履き替え藪漕ぎを20mで登山道に出て、そこから20mで湯沢の頭だった。結局ロープを出すこと無くで登ってしまった。登山大系にも「スラブ中ではロープ不要」と書いてあったし、雪渓のアプローチがうまくいけば、こういうものなのだろう。

再び炎天下の中、暑さにやられながら、榮太郎新道を下降し、湯沢出合いで荷物を回収して、車に戻った。

ダイレクトスラブを楽に登るタイミングとしてはベストだったと思う。逆に、このタイミングではダイレクトスラブ以外は登れなかった。周りのスラブは雪が悪そうに残り、特に三角スラブは何度か大音響とともに崩壊し、一部は直接稜の下部を飛び越えて、本谷側の我々が通ったところにまで飛んできていた。

かつては、ただただ恐ろしくとても登ろうなんて考えられなかったところに登れて満足だ。結果的には楽に登ってしまったが、ここのところ季節感を大事にして山に向かっていたおかげだと思っている。これからもできるだけ自然を敏感に感じながら山に行きたい。そしてできれば、記録や資料からではない山登りがしたい。

【記録】

5/23 蝉ヶ平登山口08:00 - 湯沢出合09:30 - 高頭スラブ取り付き10:15 - 稜線登山道(860m)12:00 - 湯沢出合13:00
5/24 湯沢出合5:30 - ダイレクトスラブ取り付き6:30 - 湯沢の頭9:20 - 湯沢出合11:10 - 蝉ヶ平登山口12:30

【装備】

ラバーソールの沢靴、クライミングシューズ、ロープ40m、虫除けスプレー
※ブヨが問題。軍手をはずすと食われまくる。虫除けスプレーは一瞬しか効かない。なにかいい対策はないものだろうか。

【風呂と飯】

みかぐら荘

【写真】

5/23 高頭スラブ

5/24 ダイレクトスラブ