信越 清津川棒沢

泊りで行けて手頃な沢を考えていた。仕事疲れもあってやはり近場がいい。 信越もけっこう通っていろんな沢に行っているが、この棒沢は外れていた。 ごーろが長いけどそこそこ楽しめるという記録が散見される。 でも、丁度いい。これに決めた。

8月1日

同行者はいなくて単独となった。早朝発で現地入りだが、いきなり暑い。 林道歩きで体温が上がる。入渓は堰堤を山道から巻いて入る。 さすがに沢筋は空気の流れがあり涼しい。しかも即下部ゴルジュが登場だ。 胸まで入り小滝を越え、その先のナメ滝は右から取付くが体が浮いて泳ぎ となる。これは新鮮だ。しばらくナメ状で8m滝が堂々の登場。これは左側から 登るが落ち口の一歩が悪い。残地ハーケンにさらに一本ハーケンを打って補強 して自分をスリングで確保して一段上がる。用心用心で安全を高めていく。 ごーろも出てくるが、また小ゴルジュで2段の滝は上段はまともに濡れるし滝の 弱点が無さそうなので、空身で右側壁を登って荷を上げる。 沢いっぱいに大ナメが広がり文句なく気持ち良い。

その先で二人の釣り師に出会うが、時間もあるし、そのまま先行してもらう。 ロスタイムはあるが、ゆっくり休んで、自分も竿を出してみるが全然だめだ。 釣り師は、型のよい岩魚を釣り上げていた。熟練度の違いかな。 昼前にここから降りるということで釣り師は戻っていく。 さて、この先延々とごろ石歩きを続けていく。いい釣りポイントもあったが、 空振りに終わり釣果なし。

そのうちに小滝が現れ連続してくる。さらに土壁状のゴルジュとなり、にわかに 気持ちが入ってくる。一か所小釜があって浸かるのも嫌なので突っ張りで行くが 幅が微妙に広く厳しいので空身で攻めて荷は上から引っ張った。 ここを越えると上部核心?は過ぎたようで泊り地を選定していく。 ごろ石帯だが、これといった良き地はないが、砂地と薪が散見している所が あったのでそこに落ち着く。 ただ、多少増水には問題ないが、近年特有のピンポイントのゲリラ豪雨があっては 吹き出しを食らいそうに思えたので面倒だがツエルトのすぐ後ろの右岸側に 固定ロープを張った。

大昔、朝日の岩井俣に行ったときは初日に岩畳に泊まった。沢床より2mくらいの 高さがあったが逃げる場所が無かったのでワイは一人で後ろの藪岩稜を登り固定 ロープを張った。 その時は皆に治田さんが逃走ロープを張っているが明日誰が回収するんだ などと冷やかに見られていた。ワイはワイで危険なもんは危険なんで身を守る術は施し たいとの考えから実行したものだ。ところが、夜の雷雨で増水が始まった。徐々に増えたが そのスピードは上がり、寝床にも水が上がりその場所は危険となる。逃げ場はなく全員 固定ロープを伝い上の棚に移動したことがあった。

只見のワカゴイ沢の時も寺さんと二人で夜中雷雨に襲われた。降りの状況を見て夜中 全装備を構えて横になっていた。増水が止まらず谷が荒れだしたが、即行動できた。 行動はできたが安全は確保できず高台に逃げてからさらに場所を変えて夜が明けるのを待った。

やはり泊り地に避難できる場所が確保されていなければロープを張り安全を高めることになる。 酒を食らい横になってから豪雨に襲われ逃げ場ないのではお手上げだ。

さて宴だ。薪を組み火床をこしらえる。いい感じで燃え上がりウイスキーぐびぐびやる。 酔いが回り嬉しきことこの上ない。

8月2日

気温が低いうちに稜線に抜けて行動したいが、冷え込みも今一。出発の準備をしていると 驚いたことに5時過ぎだというのに軽快に単独行者が上がってきた。聞けば深夜の1時に駐車地 を出てきたとのこと。沢沿いに詰めてきたらしいが、その猛者振りに脱帽だ。

でも、ワイはワイでいつものようにじっくり詰め上がる。お花畑の分岐で左に入り雪渓が続き、 ひと踏ん張りで稜線の山道に出た。予定ではそのまま下山だが、膝もまずまずなので苗場山を 往復する。水とカロリメイトのみ持って湿原散策をする。頂上台地は大きく、池塘が散りばめ明るく 爽快だ。

戻ってからの下山は苦労した。気温が上がり下っても下っても赤湯に近づかない。そんでもって 赤湯に着いてからもまた登り返しの山道が待っている。 支沢で休憩をしていると一人の沢屋が降りてきた。しっかりした歩調で、「どこぞの沢ですか」とお互い やり出す。相手はサゴイ沢、「ワイは棒沢です」 ……でもなんか見たことあるんだよね。

何のことはない、弘田さんでした。お会いしたのは初めてですが、HPを散々見ているのでその 雰囲気でわかりました。偶然といえばそうだが、林道は沢話で盛り上がった。清津川は本流、西の沢、 セバト沢が気になると言えば、弘田氏も三国スキー場からの入渓を考えているとかで似たようなもんだ。 しかし、氏の毎週山行と徹底的に攻める姿勢は熱い限りで、ガタが来たワイには羨ましい。 でもワイもまだしぶとく山やるつもりだし、ここで情熱をもらえたのは実にありがたかった。 お互いの山行を応援し駐車地で別れた。

棒沢はサゴイ沢や熊の沢と比すれば、滝の数や大滝もない。でも下部と上部に小さいがゴルジュを 秘めてナメもそこそこにあり、登っても十分楽しめる沢と感じた。あれもこれも登った御仁にはどうぞ と勧めたい。

治田

行動時間

8/1 駐車地発8:00〜大ナメ滝上10:30〜釣り師遭遇11:00〜ゆっくり遡行〜幕場14:45
8/2 幕場5:25〜稜線7:35〜苗場山頂往復〜駐車地13:30