日常に戻り1週間。まだまだ消化しきれてませんが、ヨセミテレポート第一弾、高橋版ノーズへの道です。 本体はまだキャンプ4でしょう。
"あんた病んでるねー"
気が付けば出発まで一ヵ月切ってしまった。 荷揚げの腕っ節のために一ヵ月前から始めようと思った腕立てももう手遅れだからやめだ。 近づいたらジョギングトレしようなんて考えていた時もあったなあ。 換気扇の下でアルパインクライミング・ビッグウォールの章とビッグウォールやろうぜのコピーを落ち着かなげに読んでは低い呻きを漏らし日々青 ざめていく俺を眺めて嫁さんが発した言葉だ。
"気楽に楽しんできなよ!旅行いいねー"
全くそんな気になれない。自分の手に余る対象に押しつぶされている。楽しくない。 一緒のフライトの予定だった小坂さんが直前のスミスロックで故障してアメリカまで一人旅になってしまったのも輪をかけている。
"おいおい、初めてのヨセミテでエルキャップに取りつくなんて馬鹿なことは止めてくれよ" なんて書いてあるのを見つけてしまった。
どうしてこんなことになってしまったんだろう いつかはヨセミテ行きたいねーなんて適当にごまかしてもう何年。 そろそろ行ってみなくっちゃカッコ付かないなと今年は行くと春に宣言した。 よせばいいのに "日本ではやれないようなところを登んなくっちゃ"と偉そうなことを言ったのがそもそもの間違い。 "ハーフドームのレギュラーなんてどうかな"とはよく言ったもんだよ。エルキャップの2/3くらいの長さとどこかで読んだことがあったくらい の知識しかないけど2/3っていうのは大きい違いだよ。所要が一日は違う。 ところが未だ研究もしないうちに大部からメールが届いた。"レギュラー崩壊したようですよ。もうノーズ登るしかありませんね!"と楽しそう だ。マジかよ。ただな、俺は昔からノーズに興味はないのよ。エルキャップならサラテが登りたいね。そんなこんなで目標ばかり更に進化してし まった。
8月末に大部・伊佐見と3人で雨の日和田山でユマールと荷揚げの真似事をやってみてユマールさえできないことに気づき、傾斜が寝ている、テラスが要所要所にあるみたい、つまりサラテより楽そうだということでノーズに目標が定まったように記憶している。
メンバー3人でのビッグウォールに向けての訓練は出発まで一ヵ月となってから実施した2回計3日間。
ビッグウォール経験がなく(山ちゃんは中国で似たようなことはやっていたのかも)、ヨセミテどころか合衆国が初めての3人がノーズに向かうにはこれ以下はないミニマムの訓練。山ちゃんと伊佐見はこれでいいのかもしれないけど俺には不安を増すためにあったようなもんだった。
ホールバッグ125Lを入手したのが出発の週の火曜日。セミスタティックロープに至っては出発前日の木曜日。現地で買う案がもあったが行って みたらなかったりしたらアウトなので極力日本で装備・食料を用意した。食糧計画・計画書があがったのが水曜!そして伊佐美からタクティクスが 届いた。なるほど伊佐見の負担は別にして"うん、いけるかも"と思わせる内容。さすがだ。
山崎さん、高橋さん
ノーズの担当ピッチを考えてみました。
もちろん現場判断は大事と思っておりますが、いちいちジャンケンしてる場合でもないですし、
やるからには完登したいので、失礼かとは思いましたが 独断で決めました。各人の登攀能力・
スピード・荷揚げ力・体力・適当な交代を考慮するとこのような感じかと思います。
【1-4P シックルレッジまで リード伊佐見 セカンド高橋 】
ロープ4本もってシックルレッジまで。セカンド高橋が2本背負い、残り2本をリード伊佐見が引っ張ります。
二人でできるだけ早く到着し、ロープフィックス。
山崎は下部で荷物番。フィックス完了次第、山崎・伊佐見で荷揚げ。高橋休憩。
ちなみに一番下のFIXは30Mらしいです。
早く終わらせて、ゆっくり休みたい(エンクラしたい?)です。
【5-14P エルキャプタワーまで リード伊佐見 セカンド高橋 サード山崎】
序盤の5.10以下ばかりなので伊佐見リード早く抜けてしまおうという作戦です。遅くなったらごめんなさい。
このセクションだけリード伊佐見がロープ3本引っ張ります。サード山崎が早く登り切って荷揚げに参加。
リード伊佐見がスペースホーリング、サード山崎が途中からボディホーリングで参加の2人体制なら
早いのではないかと思っています。
【15-17P キングスウィングまで リード伊佐見 セカンド山崎 サード高橋】
キングスウィングは私がやった方が早いと思います。時 間かかったらごめんなさい。
【18-20P キャンプ4まで リード山崎 セカン ド伊佐見 サード高橋】
19P目のトラバースで荷揚げに工夫が必要らしいで す。途中にアンカーがあるので、
そこでピッチをきれば良いかと思いますが、ネット情報 では誰もやってないですね。
【21-22P グレートルーフまで リード伊佐見 セカンド山崎 サード高橋】
途中のランナウトフェース5.7およびGRのエイドを 考えると伊佐見が良いかと思います。
体調次第で山崎さんに交代など現場で判断。
【23-24P キャンプ5まで リード山崎 セカンド伊佐見 サード高橋】
グレートルーフまで伊佐見がリードなので、こちらも伊 佐見リードでも良いかもしれません。
現場で判断します。
【25-31P 頂上まで リード高橋 セカンド伊佐 見 サード山崎】
フリーで行けば5.14のピッチで、エイドでもナッツを沢山使うらしいですが、
ホールバッグもだいぶ軽いでしょうから高橋さんリードでお願いします。
25-27Pのエイドピッチで遅ければ、現場で他の人 に交代も考えます。
あとは5.10後半などですが、高橋さんならいけるでしょう
以上です。ご意見あれば連絡ください。
こう考えると2泊3日で抜けられそうな気もします。が、渋滞とかあるんでしょうね。
実際には山崎と高橋が入れ替わったリしているが基本的に伊佐見の戦略通りに登った。 ついでに山ちゃんの食糧計画も見事なものだったので計画書と一緒に参考としてここに添付しておこうと思う。
登攀については"絶対エース"伊佐見様様の鬼神の働き。トップは3本ロープを引いて登って荷揚げまでしなくてはならないのよ。我々は"人 間起重機"山崎様様も装備していた。俺?自分なりに頑張りました。足の攣りは気持ちで押さえた?
登攀レポートは俺の任ではないので割愛。ただ個人的に言っておきたいのは予備のロープを持たず、アブミは3人で一組2台しかなかったので ロープスタックしたりアブミ落としたらおしまいだとの緊張感は半端なかった。風で先行パーティーのロープが真横近くになびくのを見ているとそれはいや増した。BDのアブミの底に重しをぶら下げるカラビナホールがついている意味を実感。2日目午後に山ちゃんが残置アブミ一台ゲットしてからは大分気持ちに余裕ができたのだった。
3人別便で日本出国
午後〜夜にサンフランシスコ着。レンタカー借りて金門橋観光。途中スーパーでノーズ用食料を買い出してヨセミテへナイトドライブ。
C4に未明について並ぶが我々の直前で今日の新規宿泊は21人は終わり宿無しに。車でふらふらし向こう一週間の天気予報とかキャンプサイトを情報収 集・・・しているうちに今日のうちにどっかのぼってみるかということになり(寝てないんすけど!)エルキャップ隣の小岩峰でC.S. Concerto (6P)を登りおかわりで 名高い5.8ルート Nut Crakerに取りつくも2P登ったところで渋滞で終了。伊佐見は会社で "どうせノーズなんて言ったって実際はNut Crakerあたりでお茶を濁すんだろ"なんて言われてきたそうだけど、Nut Craker さえ登れなかったんだから違うな!
C4の受付前でシュラフに入って野宿したおかげで向こう一週間の滞在資格をゲット(一旦とればシーズン終了まで延長可では)。天気予報がよくなく、ノーズ 用装備(オフセットナッツ、トイレ袋等)買い出しと装備準備。俺たちのサイトはNo.30
ヘッデンで取りつきノーズ1−4p登ってFix。一旦降りて、4p目の終了点Sickle Ledgeまで荷揚げ。C4に戻って明日の登攀開始に備える。
取付きスタート05:00 〜 El Cap Tower 着18:00。 グレートな岩棚でごろ寝。
スタート04:30 〜 Camp V着22:30。 2人用岩棚は先行のポータレッジで占領されていて、各人どうにか横になれたり膝を抱えられるところを見つけ3人バラバラでビバーク。
スタート04:30 〜 頂上台地18:00。 まだ続くと思っていたので、ヘッドウォールの張出しを越えて伊佐見の脇に松の木を見たとき終わったことを知って叫んでしまった! 沈みかけた夕日に西の山際が赤い。下山の道がわからなかったが、一緒になったヨセミテPatrolのメンバー達について行って無事下山。C4着23時。" 明日はハーフドーム(Snake Dike)どうかな?"なんて山ちゃん正気か!
Curry Village でシャワー・洗濯をしてからノーズ取りつきに戻り、残置していたFixロープ50mと1日目登攀中に落とした伊佐見のアプローチシューズ片方を回収。
Middle Cathedral で Cetral Pillar of Frenzy (5P) 登攀。 終了後C4に戻り滞在延長手続きをして高橋は帰国の途に付く。バスでMercedまで。Marcedから列車。EmeryVelleで再度バスに乗り換え SF着。23時。ダウンタウンに投宿。
半日サンフランスコのダウンタウンを散策してから空港へ。山ちゃん・伊佐見はどこを登っているのだろうか。
羽田着 23:30 (時差の関係で着いたら10/12)
他ルート登攀 2日間
*天候に恵まれた!高橋はシュラフカバーを持ち上げるのを忘れたので雨に降られたらやばかった。
1週間たち ヨセミテ・Camp4 すべてが懐かしい。
メンバーに感謝
以上
(高橋)