無積雪期黒部横断

赤岩尾根〜棒小屋沢〜剣沢〜池ノ谷
10/18〜27
オーブ1、けんじり(会外)

無積雪期のこのラインの黒部横断は、1983年夏に中尾政樹氏がパートナーを入れ替えながら逆コースを辿っている。後立側からは初の記録と思われる。
※2007年にチーム84 の木下氏らが後立側からトライし棒小屋沢で敗退している

久々に入山前に胃がキリキリした。いつ以来だろう? 今回は運良く、天気・水量・雪渓の状態など全てのコンディションに恵まれたおかげで抜けられたようなものだ。何はともあれ心強いパートナーに感謝。

けんじりは初剣。そもそもアルペンルート家族旅行以来の殆ど初黒部。オーブも剣は文登研で6月に平蔵谷から登ったのみ、黒部の沢も別山谷に2回足を踏み入れたたけでお互いこの山域の概念をあまり把握していなかった。無知故に固定概念がなく、恐れ過ぎることなくトライできた

継続など所詮先人たちの業績の上澄みを掠め取るようなものとは理解しながらも中々の満足感を噛み締めている。だが、自分が一発で成功できたということは逆にその程度のルートだったのかも?という気もする。

計画は8泊9日+予備3日の計12日

10/17

昼過ぎに松本で合流して買い出し。簗場駅で駅寝

10/18

タクシーで大谷原へ。灼熱の赤岩尾根を登る。12日分の食料と多めの登攀具が重い。棒小屋沢上部はヌメる。ゴルジュが始まる前の河原で幕営

10/19

ゴルジュの中で雪渓に出くわす。やはり今年は雪が多い。下降支点には木下パーティーのものがかなり使えた。途中にあるトンネルや堰堤の開発跡には驚く。所々水に浸かり、寒さで萎えてゴルジュの途中で幕営。幕営可能な河原は意外と多い

10/20

この日は思いの外水に浸からなかった。十字峡ではNHKの撮影班がドローンを飛ばしていた。黒部ダムの観光放水は10月中旬で終了しているため、十字峡より少し下流で簡単に渡れた。剣沢出合のゴルジュの巻きの踏み跡は思ったより明瞭。懸垂2Pで沢へ降り立つ。雪渓を2つ越えて剣沢平で幕営

10/21

水量が異常に少ないようで、I滝下までは簡単に辿り着く。左岸から5P登り、懸垂下降して焚き火テラスへ。焚き火テラスは快適で横になれたが、手持ちの水が殆ど無い。大滝周辺は紅葉が見頃

10/22

かの有名なトラバース。荷揚げが大変なため2Pに分けて登る。残置様様。色々と掴みまくる。水際バンドへ斜め懸垂(途中に振られ止め用の残置あり)。 バンドからコッヘルを投げ入れて水を4L強汲む。 緑の台地へ1P。岩稜を3P登る。少し登りすぎたのでFIXして下の外傾テラスでお座りビバーク。この日も水が少なめ

10/23

岩稜をもう4P伸ばす。非常に脆いとは聞いていたが許容範囲の脆さ。慎重に登る。懸垂下降4PでD滝上へ。久々に水をがぶ飲み。滝上の河原で幕営

10/24

CBA滝を左から2Pで登る。大滝上の雪渓を2つ越える。2個目はボラードで懸垂下降。そのままゴルジュを巻き、少々歩くと広河原。ここでラジオを聞き今晩は荒れることを知る。真砂沢ロッジ(既に営業終了しており人はいない)の小屋陰で幕営。夕方から雨になり、夜中に雪に変わった

10/25

朝起きると快晴だが気温は非常に低く、装備が凍りついている。当初は剣岳のピークを踏むつもりだったので、長次郎谷の左俣を詰める予定だったが、あまりにも雪が多いので、ピークを諦めて右俣を詰める。池の谷乗越から池の谷ガリーを下る。懸垂下降13Pでカリカリの雪渓に乗り移る。ヘッドランプでクレバスをジャンプしたりしながら下る。けんじりは1回滑落。雪渓が切れた場所にたまたま岩小屋があったので幕営

10/26

二俣までは直ぐ。今年一番の冷え込みらしく霜が降り、水たまりが凍っている。携帯の電波が入るので翌日の天気予報が下界は夏日なのを確認し、ゴルジュの上の河原で幕営。行動時間2時間のみ。飯を消費して、要らない装備を燃やしまくる

10/27

ゴルジュを下る。右岸からルンゼが2本入る箇所の崩壊が激しくダム湖ができていた。ここのみ右岸から1P巻いて下る。 スペースCS滝で泳ぎが入る。一瞬だが寒すぎる。安全圏の白萩川に出たとこで握手。上市で風呂に入り、富山で友達と飯を食って夜行バスで帰宅

コンディションが良かったからこんな事が言えるが(真砂沢で雪に降られた以外は終始快晴)剣沢はあっさり終わってしまった。本来の剣沢はこんなに優しくは無いだろう。全体としては8月の日高の継続溯下降の方がよっぽど堪えた。天気悪いし、行動時間長いし、食料少ないし。しかも今回は朝が寒いから出発前もダラダラしたし

正直、残置やトポを追いかけただけの大高巻きの剣沢大滝は沢登りとして楽しいとは言えず、パートナー曰く「聖地巡礼」の趣きがあった。ただやはり、月並みな感想だが先人達のライン取りは驚きと尊敬の気持ちを抱かざるを得ない

そして池の谷の下降は寒かった。上部は手足が痺れるなか13ピッチを3時間程で駆け下りた。初めてカムを残置した。極寒のゴルジュを含めて池の谷の下降が核心であった。

備忘録のためにメモと装備&食料計画を記す

※計画は木下パーティーのものをかなり参考にしました

行動着は
上:薄手アンダー+長袖Tシャツ+ドカヤッケ×2+雨具
下:ファイントラックのタイツ+薄手ズボン+雨具+スパッツ
防寒着兼寝巻きとして
上:化繊綿ジャケット+ドカヤッケ+目出帽
下:フリースズボン+ドカヤッケ
ただ、夜の時点で服が激しく濡れてることは殆ど無かったので行動着も着たまま寝れた

  • オーブのロープは激しく芯が見えてしまった。けんじりのロープは池ノ谷で末端が釜にスタックして回収不能に陥りやむなく切断したため、最終的に長さは半分程になってしまった。
  • キャメの3番は良く使った
  • ハーケンは最終的に半分の数に。ロストアローが欲しかった
  • ボルトは工事用のM8オールアンカーを棒小屋沢で2本、剣沢で2本打ち足した(ごめんなさい)
  • 捨てなわ30mは勿論、ソーンスリングも半分ほど残置し、切ったメインロープ、アイゼンバンドまで残置した
  • ハンマーはミゾーのミニバイルを使用。池ノ谷の雪渓は夕方以後は非常に硬く、3発くらい叩いてやっとピックを打ち込めた
  • オーブはクライミングシューズを持っていかず、全てアクアステルスの沢靴で済ました。足袋より底が固くアイゼンとの相性も良いためにお勧めです。小阪はフェルト足袋
  • ツェルト&タープは最高
  • オーブはシュラフは持たず、インナーシーツ&シュラカバ&銀紙(マットは小さいお風呂マット、何晩かはペットボトルの湯たんぽ使用)で寝た。寝られないほど寒くは無かった。けんじりはシュラフ使用。
  • オーブは6本爪アイゼン、けんじりはおもちゃみたいな10本爪アイゼン(サイズ合ってないし、途中で破断した!)。どたらもオーブが前々職場で拾ったもの
  • システムとしては、スッキリしたラインなら荷揚げしたが、基本的にはリード後に懸垂して担ぎユマールをした。ユマールは2人で2つ欲しかった
  • 雪の稜線を越える日は靴靴下素足の間にビニール袋を履いた。手は軍手にゴム手袋。あと、目出帽
  • 食料は剣沢で水が足りずに行動食で済ましたり、そもそも行動時間が短く、ビレー時間なども長いため、量として十分過ぎた。
  • 行動食と飲み物が多過ぎた、行動食もα米などにして更なる軽量化を図ればもっと行動範囲を増やせるだろう
  • 棒ラーメンにスーパーにタダで置いてある牛脂を入れた。寒い時期の長期山行には良いかも

ロープ50m2本 各自
キャメロット0.5〜3 大部
マスターカム 00〜3 大部
ナイフブレード12 小阪8 大部4
アングル2 大部
軟鉄ウェーブ2 大部 
ボルトキット1 大部
換えキリ2 大部
ボルト15(工事用10) 大部
ストッパー1セット 小阪
アブミ2 各自1
スリング 各自 60*3 120*3 180以上*2
カラビナ 各自
捨て縄 30m 大部
ハンマー 各自
ヘルメット 各自
確保器 各自
ハンドル付アッセンダー1 大部
小型アッセンダー2 各自
フラットソール 小阪
軽アイゼン 2 大部(10本と6本爪)
ツェルト 小阪
タープ小 大部
ザック 各自
防水袋 各自
シュラフ+カバー 各自
マット 各自
雨具 各自
防寒具 各自
タオル 各自
軍手 各自
トイレットペーパー 各自
ライター2 各自
焚火缶 小阪
ジェットボイル 小阪
ガスヘッド 小阪
食事用具各自
ヘッドランプ電池各自
水筒 各自
渓流シューズ 各自
渓流靴下、スパッツ 各自
地図、磁石、ホイッスル、ナイフ 各自
計画書 各自
筆記具、時計 各自
カメラ 小阪
ガス缶 大2 小1
メタたくさん 大部
のこぎり 小阪
薬一式 小阪
ラジオ1 大部
着替え各自(任意)
その他、一般沢登り装備 各自

大まかな食糧計画

11泊分
朝 棒ラーメン 計22食
夜 アルファ米 122g/1人 ジフィーズ計22食
他、乾燥ラーメンの具・高野豆腐など

飲み物
甘い系 60杯分
スープ 30杯分
1日1人約4杯

オーブ