南魚沼/大兜山スキー

大兜山から八海山を望む
八海山

2016.3.13
野中〜大兜山往復
佐藤

単独になりそう。ならば、ちょっと人を誘いづらいような、変な山に行けるってことだ。 積雪量から魚沼方面。変な山となれば、ジロト沢に行ったときから気になっていたあの辺。あの辺ではネコブ山に行きたいと思っていたが、あちらは岳人マイナー12名山にも紹介されてしまうくらいメジャー(?)な山だし、日帰りは難しい。そこで大兜山。ネットで検束してみると、意外にも日光白根か焼山のようなかっこいい姿が出ている。おお?なかなかよさそう。「変な山」は返上か? しかし、標高が低く、山頂でも1341m、スタート地点では300mを切る。今年の異常な雪の少なさからすると、それだけで一瞥して却下しそうなものだが、私のシミュレーションでは、結構いいかもしれないという結果だった。

メンバー募集はしたが結局一人。前夜初といいつつ自宅を出たのは午前0時。下道で行こうかと思ったけど結局本庄児玉で高速にのり、三国川ダムへ、ダムへ行く必要はないが、カーナビにセットしやすかったから。4時前着。3時間弱の仮眠。

野中配水池に移動して出発。スノーシューとつぼ足のトレースがある。昨日のものだろうか? 2,3回雪が途切れて板を脱いだが、だいたいスキーで林道を進み、見覚えのある真っ赤なパイプできた堰堤に着いた。いつの間にかスノーシューの足跡は無くなって、つぼ足のみとなっていた。無雪期はここまで車で入れる。一昨年、佐野さんとジロト沢に登ったとき(2014年のジロト沢の記録)はここに車を止めた。ふと、思い出し、頭上の野中不動尊に一礼。滝と小屋が見えている。野中不動滝とお籠堂だ。

さて、ここからは板を担ぐ。つぼ足のトレースはあるが、単独の往復に見える。ずぼずぼと潜りつつ進むとじきに二俣(大系によれば落合)に着いた。そういえば、つぼ足のトレースは途中で上にそれて行っていた。もしかすると、そっちにタキ沢の上の方へ行く道があるのかもしれない。

ここで徒渉だ。他の記録はタキ沢を少し登って、スノーブリッジを渡り、819m標高点を目指して登っているようだが(大系の北尾根)、今回スノーブリッジは期待できないので、二俣正面の尾根(大系では北東尾根)を登った方が良さそうと、目星をつけていた。

岩伝いに渡れそうに見えたので、さっさと渡ろうとしたら、ツルッと滑ってこけた。そういえば、一昨年のジロト沢左俣の記録にヌメヌメ沢だと書いたのを思い出した。むむむ?手強いな。再度慎重に乗ろうとするが、どうにも兼用靴のソールと相性が悪すぎて立つどころか、足を乗せることすら出来ない。上部に滑りにくそうな岩の徒渉ポイント探しに行くが見つからず、結局二俣に戻った。

水量自体はしょぼいので、強行突破することにする。しかし、その後もなんとも不安定な雪の藪尾根に沢からダイレクトに取り付かなければならない。帰りには雪解けが進み増水で渡れなくなるんじゃないか?この藪尾根をまた降りるの?なんて、撤退理由はいろいろあった。でも、まだまだ上部の良さを期待している自分がいる。そもそも動機は「変な山に行こう」だったので、この展開も期待通りだ。

というわけで、バシャバシャと渡り(意外に濡れなかった)、岩から雪面によじ登り手早く板を履いた。そこから尾根右側を100mくらいスキーで登るとやがてデブリが出てきて、さらに急傾斜と藪で限界。デブリは上の岩場からのものだ。

板を担いで藪の尾根上に出る。雪は少なく、シャクナゲの藪がスキーにひっかかり腹立たしい。とにかくスキーを履きたいと狙っていると意外に早く、標高630mあたりで板を使える状態になった。地形図的には、750mくらいからかと思っていたのでラッキー。快調に進み、視界が開けてきたのでジロト沢方向を眺ると、カモシカが70度くらいありそうな急斜面を駆け下りて灌木に隠れた。よく見ると、左俣の大滝や略奪点の滝が確認できた。水流は出ている。

やがて、木々の合間から大兜山と小兜山の容姿が拝めた。ネットで見た写真より若干しょぼく見えるのは、雪が少ないせいか、それとも曇り空のせいか。ああ、そうか。他の記録はキゾウ平経由だからか。こちらはあまり開けていないのだ。ちょっと残念。

尾根上は細かったり、アップダウンが多いので右側を登る。藪は埋まったが、木々は多い。それに小さな沢筋が入り、スキーで効率よく登るルートファインディングは難しい。沢の下の方を見ると水が出ている。タキ沢左俣左沢だろう。帰りも面倒だなと思った。でも、効率よくかわしていくのは楽しい。やがて、広い斜面になる。快調に飛ばしていると、真っ白なウサギが走って逃げていった。

再び尾根上に復帰すると、ネコブ山がデーンと見える。その手前はジロト沢の左俣の下山のときに歩いた尾根だ。見晴台、雨量観測小屋も確認できた。なつかしい。そして振り返ると越後三山。確かに景色はいいね。

ここまで来れば、藪もルートファインディングも問題ない。しかし風がでてきて寒く、曇り空に無木立の白い尾根はまさに殺風景。寂しい。たぶんここがハイライトなんだろうけど、テンションが上がらない。シミュレーション時の妄想は「へへへ、こんないいところを独り占めなんてもったいないな。」だったのだが、現実は「こんな寂しい山中に一人でいていいのだろうか。早く終わらせて帰りたい。」だった。

山頂にたどり着いたが、のんびりしたい気分ではない。曇っているものの視界は良いので、周囲の写真を撮り、さっさと滑降の準備をして退散。

木のないところは雪が固めのシャーベットのようでターンしづらい。木が出てくると雪は良いが、木の密度が濃すぎ。でもまあ、それなりに楽しい。基本的に往路の通り。滑れる限界まで下ると、そこが、登りで板を履いたところだった。藪尾根を下り、また、登りでちょっと板を履いたところで、板を履いて滑り、往路と同じところを徒渉し、林道をだらだらと滑って、野中配水池に到着。下山はスムーズだった。

だいたい目論見通りの山だった。条件は良かったと思う。どうせ下の方はスキーを使えないし、パウダーに当たればラッセルになり一人で日帰りは無理だろうし雪崩の危険もある。しかも今シーズンは異常に雪が少ない。そう考えれば、今回の行程は絶妙にうまく行った。ただ、晴れて欲しかったなあ。 それに、ドキドキしながら行動していたわりには、帰ってからの印象は薄い。思い出を語り合う仲間がいないと、マイナーな山は思い出す機会も少なく、記憶の奥底に沈んでいってしまうのかもしれない。

2016.3.19 佐藤益弘

【記録】

野中配水池7:00 - 二俣8:10〜8:45 - 大兜山頂12:00 - 二俣13:50 - 野中配水池14:40

【写真】