2018年8月18-19日(前夜発1泊2日) メンバー:ナベ(記録)・ムラマティ・谷やん
①
飛騨川本流飛水峡下降(8/18)
②
木曽川水系柿其川支流岩倉川本流遡行(8/19)
飛水峡の存在を知ったのは、名古屋ACCの会報「ALPINE」9号。
登山道が無いため藪を避けるために沢を下降したことは何度もあるが、沢の下降自体を目的とした山行をやる、という点で度肝を抜かれた。
しかもそれが高山本線の脇。俺の親父の実家の近くでもある。すごい着眼点だ。
並行して海外遡行同人や日本山岳会青年部、愛知県岳連なども取り組んだとのことだが、市販の会報に載ったインパクトは大きい(今ではネットがあるわけだが…)
この2000年代初頭は、当会の高橋氏とともに、名古屋ACCの高橋氏もゴリゴリといい記録を連発しており、また、同じく2000年代初頭に梁山泊の20周年特別号「酔虎伝」が出版され、燦然と輝く「F」(忘れ物)の記録を世に出した(もちろんそれだけではなくいい記録も出されている)高橋氏もおり、ようするに2000年代初頭は「高橋時代」だったと言っても過言ではない(?)。
いずれも尊敬する高橋氏ではあるが、当会の高橋氏は、すごい記録を連発しつつも、
「小池さん置いてきぼり事件の主犯疑惑」
「松本から東京に帰るのに、中央道岡谷JCTで名古屋方面に舵を切った」
「丹沢<はいはい>発言」
「城ケ崎<ダメに決まってんじゃん>事件」
などの灰色の歴史があり、尊敬の念に加えて若干の「残念感」も禁じ得ない。
そこへ来ると、名古屋の高橋氏は何しろお会いしたこともないので、その端正かつ情熱的な文章から、尊敬の念「のみ」が起こるわけで、その高橋氏が「来てよかった」と綴る飛水峡は、「いつか行きたいリスト」に常に載っていた。
今年春に車を買ったことから、ついにそれを決行。幸い、若手二人が参加してくれた。
とはいえ、どう考えてもキワモノ・イカモノである。飛水峡のみの場合、外れだった時に若手二人に大して申し訳ない。
そこで、数年前に遡行した柿其川の支流の岩倉川をくっつけた(柿其も名古屋ACCさんのの記録を参考にさせていただいたものである)。
これはどう考えても間違いない内容である。
万全の保険を付けて、憧れの飛水峡へ向かった。
8月17日 東京→道の駅ロックガーデンしちそう
長い旅路。ターボのついた軽自動車なのでスピードは問題ないが、内装が安いためとにかく腰が痛くなる。2時間おきくらいに交代。
東海環状自動車道により、実にスムーズに現地入り。コンビニで酒を買って、呑んで寝る。
8月18日 ①飛水峡下降
8:40道の駅出発→9:00大柿橋より入渓→13:10細尾谷対岸のトンネル脇の旧道へ上がる→岩倉川林道終点(ゲート前)へ
最近道の駅車中泊が問題になっているようなので、ゴミ等は一切残さず、できれば職員出勤前に出たかったが、無念の寝坊によりそれは叶わなかった。
とはいえ、特に咎められることもなく出発。
あっという間に大柿橋へ到着。ウェット・ライジャケ等の完全装備となり、いざ入渓。いきなりの藪漕ぎだが、全部下流側に寝ており、「こんなとこまで増水すんの?」と飛騨川の威力に若干ビビる。
入渓してしばらく、というか、約1・5hは、とにかくトロ場を泳ぎ。しかも水は濁っている。幸い臭いは「若干」という程度。まあとにかくトロ場がしんどく、仰向けラッコ泳ぎ・うつ伏せラッコ泳ぎ、平泳ぎ、犬かきなど色々交えるがあまり意味なし。とにかく進まない。単調極まりない。ダム湖を泳ぐのもこんな感じなのだろうか?秒速5cmくらいしか進まない。俺よりも谷やんが、谷やんよりもムラマティが早く、特にムラマティはワンストロークで異常に進む。さすが元国体選手である。ちなみにムラマティは犬かきが有効と言っていた。
この退屈区間のうち、確か2か所くらいは瀬が出てきて、フリーソロラフティングを楽しむが、岩にケツが当たって痛い。あと、若干怖い。ムラマティからは、「とにかく足がひっかかると死ぬから、足を上げて」と指示。彼は奥多摩でラフティングとかキャニオリングのガイド補助も経験があり、水圧の恐ろしさは俺よりも知っている。
やがて川並集落と勝集落の間にかかる橋。このあたりで釣り人と出会い、いい加減寒かったので陸に上がり、釣り人周辺を高巻いて、再入渓。先週まで全国中で40度近くとか言っていたのに、今日は30度ない。どうなってんの?というか、ここまで完全にイカモノであり、「やべーな、今晩は焼肉でもおごらないとマズいな…」と完全に焦っていた。
ところが、ここから先、結構瀬が沢山出てきて楽しくなる。
ケツを打ちつつフリーソロラフティングをそれなりに楽しんでいると、やがて両岸が立ち始める。ディープウォーターボルダリングの課題として面白そうな岸壁である。
ただし、チャートなので時々カチやガバがスポっと抜ける。
瀬を何個かフリーソロラフティングしたり巻いたりして(あまりにも迫力がある奴は巻いた)越えていると、いつの間にか圧倒的なチャートゴルジュとなる。
両岸すさまじい。これが高橋氏の言う「来てよかった」か…。俺たちは何しろ400km以上のドライブなので、その対価としての感動という意味では若干弱かったきらいが無い事もない。
なお、瀬を下る際に1カ所、上から見えない位置に危険な感じで流木が引っかかっており、ムラマティは肘強打、ナベはアゴ強打。幸い二人とも下を潜れたが、枝とかが付いていたら最初に突っ込んだムラマティは死んでいたかもしれない。おまけに最後の谷やんは「足を上げる」を実践していた所流木に足が乗り上げ、相当危険だったようだ。たまたま手が底につい態勢を立て直せたとの事。フリーソロラフティング、あぶねえ…
そうしたアドベンチャーも加わったためか、細尾谷出合の先のゴルジュ出口に至り、かなりの満足感があった。
右岸側は高山本線の線路沿いをカントリーロードしないといけない感じに見えたので(あとで、脇に車道があるのが見えた)、ちょっと怖いが左岸のコンクリート擁壁に突き刺さる20mほどの鉄の梯子を上って脱渓。何本か折れ曲がっておりちょっと怖い。
トンネルによって旧道となった道路へ上陸し、下降は終わった。なぜか旧道に小学生がチャリンコで突っ込んで来て、お互いびっくり。
秒速5mと思っていたのに、車まで小一時間かかった。益田街道はみなさん余裕で60km/h以上出すので、危険度という意味ではこの車道歩きが一番危なかったのかもしれない。途中で湧き水があったので身を清めてから車へ。
体が冷えたので結構腹が減っていたが、ナベが目を付けていた七宗町の定食屋はことごとく潰れているか定休日。
適当に台湾料理屋(「台湾料理四季紅」〒509-0302 岐阜県加茂郡川辺町上川辺287)に入るが、ここのボリュームが半端なく、ラーメン+唐揚げライスを頼んだムラマティ、谷やんは大満足。
ラーメン+丼を頼んだ俺もボリュームには満足したが、丼の上に載る回鍋肉の味に若干の不満を抱きつつ店を出た。
オール下道で南木曽を目指す。
なんかナビの設定のせいかえらく遠回りだったが、オール市街地で、かつ中京圏らしく道が広くて快適ではあった。
南木曽のコンビニで酒を買って、林道終点で幕。
ちょうど林道終点に着いたときに、入れ違いで車が出発。沢屋か?意外と人気があるのかな?
いずれにせよ、結構早めについたのに、遅くまで飲んでしまい、焼酎7合と日本酒4合が空いた。
ドザエモン軍団。
何しに来ているんだろう…
ここは一旦右に上がってからラフティングを楽しんだ。
チャートゴルジュ。
地図:飛騨川本流飛水峡下降(8/18)
8月19日 ②岩倉川遡行
7:40ごろ出発→8:10入渓→9:30三俣の滝→10:20林道に上がる→11:20駐車場ゲート
朝、ラーメンを食っていると女性2名+男性1名の他パーティ1台到着。先方も岩倉川本流らしいので、さっさと準備してゲートの脇をくぐり林道を歩く。
しばらく行くと左から立派な樽ヶ沢。面白そうだ。が、今日はこれではない。
岩倉川本流に掛かる橋から入渓。
岩盤・小滝・ミニゴルジュが続き、簡単だけど面白い。そしてコバルトブルーの釜と花崗岩が美しい。
楽しみながら進むと、あっという間に三俣。すべての沢が滝となって出会っており見ごたえあり。
ロクに資料を見てきていなかったが、地形図をよく見ると三俣になっているのでここだろう。
一番右の本流に進む。左の滝から巻いて右の滝の下に出て、さらに右手の尾根から巻けるが、ムラマティ泳いで取り付いて、右の滝は右壁のクラックから直登。よーやるわ。
この後堰堤が出てきて河原になってしまう。
ナベ・ムラマティがテンション下がる中、谷やんは「安全でいいですね~」とのこと。
しばらく行くとまた岩盤が復活するが、だんだん右手(左岸)の林道が良く見えるようになり、人工物も増えてくる。
適当なところで左岸の林道に上がる。正直、「もう終わり?」という感じなのだが、谷やんがすごい笑顔である。
ナベ「林道に上がってどんな気分?」
谷やん「安全でいいですね~」
そんなに安全が好きなら山に来なくてもいい気もするが、安全のありがたさを知るためには危険なこともたまにはしないといけないのよね、人間は。
谷やんも利根川先生みたいに大物になって、俺たちを引っ張り上げてくれ!
(賭博黙示録カイジより。一読をお勧めします)
それはともかく、林道1h歩きで下山。遡行が短かった割に長く感じた。
駐車場には、行きであったパーティが帰り支度。用事が出来たので樽が沢を途中までで打ち切ったようだ。
頑張れば樽が沢のお代わり可能であったが、帰りの渋滞を考えるとその余裕はない。
とはいえ温泉くらい入って返りたいので、柿其温泉に寄って入浴。
こじんまりとしているが、壁の1面がほぼ全部窓で開放感があって良かった。
飯は南木曽の喫茶店「ピエロ」。
俺とムラマティはカツ丼、谷やんが豚玉丼をチョイス。メインが美味いのはもちろんのこと、味噌汁と漬物が手を抜かない丁寧さがにじみ出ており、評価高し。おススメします。全く名古屋飯ではないですが。
ここで読んだ中日スポーツには、秋田代表金足農業の2ランスクイズが大きく報じられており、すげえ&どういうプレーだが分からんという感想を抱いたが、それ以上に、中日の扱いの大きさにビビった。
一面こそ甲子園に譲るものの、その裏は全面中日。さすが。二軍の動向まで報じていた。
帰りは予想通り小仏の渋滞にはまった。
序盤の滝。簡単。
明るい渓相と、花崗岩。最高。
三俣。一番右の滝を右から簡単に巻けるが、ムラマティは右壁のクラックを直登していた。
下段は左から簡単に巻けるのに泳ぐムラマティ。
堰堤の後の滝。
地図:木曽川水系柿其川支流岩倉川本流遡行(8/19)
【コメント】
・両日ともザイルは出さなかった。飛水峡は持って行っても意味なし。飛騨川本流の水圧に人間は対抗できない。岩倉川もよほどの初心者がいない限りは不要。
・飛水峡はライジャケ必須。猛暑日でなければウェットも必須。入渓点はもう一本下の橋(川並集落と勝集落のあいだに掛かる橋、グーグルマップで茶加工施設が表示されている辺り)でもいいかもしれない。
・逆に岩倉川は、遡行距離が短いので、距離を稼ぐために、林道ゲートあたりから適当に沢に下って入渓してもいいかも。
・フリーソロラフティングは、嵌れば一発で死ぬので、あまり舐めないように。
今回の流木も、たまたま本当に浅瀬で、かつそこそこ高い位置に引っかかっていたから助かったが、もっと深かったり、枝が付いていたりしたら結構ヤバかったと思う。
下流側で立てるところが全然なく、かつ、下からの声は通りくいため、最初に下ったムラマティからの声が全然聞こえず、危険な気配が感じられないまま俺も谷やんも安易に続いて下ってしまった。
結果として、ちょうどいい塩梅で反省で済む程度の痛い目に遭えたので、まだ神様は我々を見放していないという事か。