■男鹿山塊/那珂川水系 木ノ俣川西俣沢左俣 [沢]

2018年8月25日(前夜発日帰り) ナベ、他(会外)


色々あってメンバー&山域変更、吾妻の中津川を予定していたところ、木ノ俣川となった。

結果として、激山!久々にしんどかったっす!残置やら踏み跡やらがないと沢登りってシビアね!ということが良くわかりました。


8/24 駒込→黒磯板室IC→木ノ俣川右岸林道ゲート

 

ナベは自宅から離れたところに駐車用を借りており、『駐車場→GS→自宅で荷物ピックアップ→見学者ピックアップ』というコースを予定していたのだが、給油予定地のスタンドが開いていなかったことで混乱し、危うく全装備を自宅に残置するところだった。まだまだマイカー登山に慣れない。

見学者さんとは初ザイル合わせ。免許をお持ちでないということが乗り合わせてから発覚。ショック!しかしまあ、先週の飛騨・木曽みたいに片道400キロ弱というわけではなく、往復で300キロ無いので問題ないでしょう!

黒磯板室まで東北道を快適に進み、休憩をはさみつつ二時間強。渋滞しない高速は早いなー。中央道も見習ってほしいもんだ。

少しだけ遠回りしてコンビニでビール買って、板室の集落から延びる木ノ俣川沿いの林道を詰め、ゲート前で幕。


8/25 ド快晴のち曇り(一時雨)

6:40頃 出発→8:20頃 二俣→8:45頃 左俣40m大滝下→リングワンデリング開始→10:50頃 大滝上→14:40頃 黒滝山山頂→16:15頃 三石山(1257mピーク)→16:35頃 百村山(もむらやま、1085mピーク)→17:40頃 起点駐車場に帰還

 

6:00に起きたら、釣り師がやってきてすぐに身支度して先行していった。うーん、幸先悪いぜ。

我々も身支度して出発。すぐに橋があり、そのあたりからさっさと入渓。水が綺麗である。若干ヌメリ気味で、フェルト底の方がよかったかなーと後悔。

とりあえずパッと見て水量が多い。すぐに釣り師たちに追い付いてしまい、挨拶して先行させてもらう。

 

下部ゴルジュで見学者さんの登りを見て、これなら安心、というより俺が足を引っ張りかねないなと逆の意味で心配になる。

取水堰堤までの区間は釣り師が大量に入るので、踏み跡やら残置ロープやらがあり、全然難しくない。コバルトブルーの水が美しく、素晴らしい。

 

序盤の様子。簡単かつキレイ。

 

下降予定コースとしている小屋ノ沢が右岸から出合うが、出合にかかる滝が水量多く、こんなの下降で使えるのかなと心配になる。

小屋ノ沢出合いを過ぎても滝場はもう少し続くが、やがて平凡な感じとなり、飽きてきた頃に立派な橋を発見。時間短縮のため上陸し利用。上部の取水堰堤に続く巡視路で、ものすごく立派。橋を三回渡ると左岸の取水堰堤施設に着いた。

飛ばしてしまった区間にもちょっとした滝は1~2はある模様で、余裕があるなら遡行した方が充実するだろう。我々は飛ばして良かった…(笑)

 

参考にしている「ひろたさん」の記録(その空の下で…)によると、そのときは全量取水していて堰堤の下は枯れていたらしいが、本日は堰堤下もじゃんじゃん流れており、やはり水量が多いと認識する。

堰堤の先から再度入渓するとすぐ二俣で、左俣に入るとすぐまた右手から沢が入っており混乱する。確認していないが多分右俣のインゼルか、増水した小沢だろう。

※このあたりでルートミスして大ハマりしている記録もある。

なんで40m大滝を見て「これは違うな!」と思ったのだろう…しかしヘッドラで頑張って日帰りしているのは凄い。

 

二俣から先は世界が一変。とにかく人気がない。滝には巻き道がなく、岩には残置はない。これらのことが難易度に大きく影響してくる。当たり前の話で頭では理解していたし多少は体験もしてきていたが、今回深く体感できました(笑)。

二俣からしばらく進むと(よく覚えていない)40メートル大滝。

 

40メートル大滝。増水で2段目と一体化。

 

直登できる気配はゼロ。右岸の方が傾斜が緩そうに見えたので、沢状の草付きを登るが、ズルズル滑るので一旦左手の尾根に逃げて巻き上がる。相当高度を稼いだところで、右手に繋がっていそうなバンドがあったのでトラバースをかけ、もう十分だろうというところでルンゼを懸垂二発で急な草付きへ降り立つ。ちなみにこの懸垂中、ナベがザイルをほんのちょっと横に振った際に落石をおこし結構危なかった。安定していると思ったのだが…

この草付きを降りると左手に、なんと、一時間前に拝んだ40メートル大滝があった!!!

久々のリングワンデリング。モチベーションは0となり、実際見学者さんに「撤退っすかね!」と声をかけるが、まだ時間もあるし…ということで再度挑戦。

 

今度は沢状草付きの右手の岩壁に食い込むルンゼ、すなわち今降りたばかりのルンゼを登る。ザイル50メートル一ピッチで懸垂開始点へ戻れた。

一体なにやってんだか…。

 

で、ここからも踏み跡等は皆無で、なんとか右手、すなわち滝側に繋がるバンドはないかと探すが、どんどん上へ追いやられる。仕方ない、もう大高巻きた!藪の中を上へ上へと進み、対岸を見ながら現在地をなんとなく確認するが、事前にちゃんと確認していなかったせいで、確実に滝上に出ているか自信が持てない。降りやすそうな沢状があったが我慢して見送り、さらに藪をこぐ。どんどん藪が濃くなる。先ほどの降りやすそうな沢からもう一本先の沢状から沢へ戻る。下りなのにキツさを感じさせる濃密な笹藪。密度が高くて太い。

降りたところは…滝上でした!いやー良かった。しかし相当に体力消耗。

ひろたさんは左岸を逍遥山岳会さんは右岸を高巻いている模様

 

右岸の草付きと、懸垂してまた登ったルンゼ。

 

しかもこの先も悪く、増水していなければ水線シャワークライムで突破できそうなところが、悪い側壁登りや草付きの巻きを強いられる。

男鹿山塊の草付きってこんなに悪いの?ここ栃木じゃないの?と思わざるを得ない箇所が2箇所位あった。そして側壁登り。

ゴルジュの中でナベ土台、見学者さん屋根でショルダーして離陸したが、見学者さんが右足の立ち込みに失敗して滑落。土台のナベにぶつかってお互いに怪我はなかったが、ナベは足をつり、首を寝違えた。

役割交代して再チャレンジ。見学者さんが滑った箇所は離陸前にタワシでクリーニングしたが、左足は決まっているものの、手掛かりはクラック内のチョックストーンのみ。これで右足スメアっすか?怖くて立てましぇん!

 

敗退か、と思ったが、敗退となるとまたあの40メートル大滝を高巻きして下るということで、それだけは嫌だ。なんか無いかと探すと目の前に都合のいいリスがあったので頑張ってハーケンをぶちこみ、こいつにA0してなんとか突破。その上でキャメが決まりさらに安心。

 

ようやくここを越えるとその上にも増水で直登不能な小滝があるが、とりあえずそれは置いておいて後続を腰がらみでビレイ。激シャワーの中なので若干辛い。

見学者さんはこのハーケンを回収してきたので、ということはあの右足にA0無しで立ったの?セカンドとはいえ参りましたわ…。絶対残置になると思った。

 

で、次の小滝も水量が多いので右壁から行くしかないが出だしに全然ホールドがなく、しかし今度はいいリスがないので、回収不能になるのは承知で下向きのフレア気味クラックにアングルを無理やり叩き込む。で、スリングを通してこいつをフル活用してA0トラバース。

 

その上は問題なく、ルンゼ状の岩を上がって左にトラバースで滝の肩に出られた。

見学者さんはしっかりスリング回収して、アングルをちょい掴みで登ってきたとのこと。

てことは、体重をあんまりアングルにかけてないってことで、どーなってんの?

 

簡単じゃないっす。

 

 

核心となった滝場その1。

ナベが写っている上で、ショルダーやらハーケンA0やらの奮闘。

平水なら水線攻めで簡単と思われるが

 

核心となった滝場その2(その1写真に写っている上の段の滝)

写真奥の壁にアングル打って抜けた。

 

このあと悪い草付き登りを強いられる滝が何個かあり、その度にナベは「もうエエわい!」「いい加減にせんかい!」とわめきたてるが、目の前の現実は微動だにしないので、行く道を行くしかない。40m大滝の下降なぞまっぴらごめんだ。

そういえば見学者さんはそういうネガティブコメントを一切発しなかった…モチベが違います。

 

次第に水量が減ってきて、水線攻め可能となり、なんとなくヌメリも減ってくる。しかもここぞというところにスタンスやガバがある。また、両岸の傾斜が緩み、巻きも容易となる。一方で、一時的に雨がぱらついたりと、天気は下降気味。

詰めは下草が低く、奥秩父チックで楽。ほぼノー藪こぎ。黒滝山の少し西に出た。しかし山頂周辺はのっぺりしており、かなり分かりづらい。

(上にリンク張った大ハマりの記録でもハマっている、要注意)。

 

ここでスマホGPSフル活用。ここまでナベは地形図読みで現在位置をほぼ特定していていたが、このあたりの細密地形では訳が分からなくなってしまい、見学者さんのアイフォン&活用術様様である。

※ナベの安物スマホはGPS精度が悪い上に、活用術も全然ダメである。こういう便利な物も、ある程度使った経験を積んでおかないといざという時に役に立たない。

 

藪の薄いところを選んで黒滝山へ。

この時点で15時前。時間や天候(遠くで雷の音が聞こえる)に加え、下降予定の小屋の沢について全然調べてなかったこともあり、散々迷ったが登山道で百村山(「もむらやま」と読みます)を経由し林道に出る大回りコースを選択。

 

登山道は刈り払いされてはいるのだが、急斜面に階段とかがなく、下りにくい。結構虎ロープのフィックスを活用。

百村山から先はかなり歩きやすいし、笹藪と樹林が綺麗でハイキングとしても悪くない。既に「疲れたからもうのんびり行こうぜ」的な雰囲気になっていたが、地図にのっていない登山道の二俣を発見し、やる気復活!

木ノ俣川方面へ下っている左手の道を下ると、かなりのショートカットとなり本当に助かった(送電線の巡視路のようです)。

 

林道に出ると虻に集られたが、質・量ともに越後方面に比べたら大したことない(言う程集られた事はないですが、明らかに越後に比べたら弱いです)。

虫よけを使うとあっさり退散。越後とは虻の種類が違うのかもしれない。

 

キャンプしている方々と少しお話したが、今日は増水していてルアーがうまく使えず全然ダメだったとの事。

そういうもんですか。大蛇尾川、小蛇尾川、矢沢などを大プッシュされた。いや~マジ、今回男鹿を舐めていたので、また勉強しに来たいと思います。

 

帰りはすぐそこの幸乃湯温泉に立ち寄り。

入湯料500円は良心的だが、ロッカーはすべて100円返却無し方式。日帰り客の貴重品預かりも無し。基本料金安めで、オプションで稼ぐ戦略か。飲み物も高い。

合宿か何かで小・中学生が大量にいてすごい騒ぎだったこともあって、飯はスルー。風呂自体は打たせ湯の圧力がすごくて満足。

 

たまたま見つけた「スーパーいけがみ」にて惣菜を買って小腹を満たすことに。栃木らしく「いもフライ」を食べたかったが、なんと「焼きじゃがいもに味噌をつけたもの」が販売されており、「中島らもの<明るい相談室>まんまやんけ!」と笑ってしまった。

焼きジャガイモに味噌を付けて食べると死ぬ問題

味噌が甘くて美味かった。


【テクニカルコメント】

・靴は高巻きや登攀を考えるとゴム底がベターか。ただし前半~中盤はヌメリが多く、特に河原歩きの時に転けやすいが、そこは我慢。今回タワシを使ったのは1カ所だけだが、無かったら敗退だった。(まあ軍手でこすってもいいんですが)

・ザイルは50mを持参したが、30~40mで十分。

・ピトン大活躍。残置が無いので必須。

・カムはマスターカム0番~キャメロット0.75番まで持っていったが、小さめのは決まらなかった。キャメの0.5と0.75にだいぶ世話になった。

・登山体系によると、小屋ノ沢は簡単らしい。出合の滝より上の方に巡視路がつけられているはずなので、下降ルートとしても問題なさそう。ひろたさんの記録によると相当立派な橋が架かっているようなので見落とすことはなさそう。ただし、登山道から鉄塔の巡視路経由で降りれば3h前後なので、時間が押してしまい日没が迫っている場合は登山道経由が無難と思われる。暑いが。

・泳ぎはなく、標高も低いので寒さ対策はそこまで必要ない。我々は真夏日だったこともあって汗だくだった。ただしシャワーの中でのクライミングやビレイはあるので、基本的に薄着でいいが、状況に応じてパッとカッパを着込みたい。

・とにかく、「栃木の沢」と思っていると痛い目に遭う。日帰りとしては手強い。草付きが悪いので初心者は同行しない方が無難。取水堰堤までの遡行で「こんなものか」なんて思わない方がいい。大体、すぐそこが福島なのだ。「南会津の沢」と思っておけば油断もしないだろう。

・増水していなければここまでクライミングで苦労することはないと思われるが、大滝の高巻きやただっぴろい頂上付近などハマりポイントが複数あり、舐められない。

・意外にも虻がいた。数が少なく凶暴さも感じられないので、虫よけ1本持っていけば十分。

 

【地図】


 

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