■頚城/雨飾山 姫川水系 中谷川支流 浅海川[沢]

2018年9/23~24 ナベ(L・記)、山崎、マティ、その他(見学者)


9/23

7:30雨飾高原バス停前の大駐車場 → 7:45取水堰堤 → 8:20最初の登れない滝 → 10:10横沢出合 → 11:45投げハンマー滝(下部ゴルジュ抜け口) → 12:00ゴーロ帯 → 12:35くらい中流部ゴルジュ突入 → 15:40くらい河原 16:00上部ゴルジュ突入 18:10幕場

 

一泊のため邪魔にならないようにバス停近くの大駐車場に停めたが、大海川右岸に大きな広場があった…。10分ロス。

林道を歩き始めてすぐに浅・中・大海川3兄弟が合流している川にかかる橋。これを渡り、浅海川右岸の林道を歩くとすぐに取水堰堤。このあたりで幅を利かせている電気化学工業(デンカ)の水力発電施設である。豊富な水量を活かした水力発電で工業をやる、というのは二昔前の日本の工業のお家芸で、延岡の旭化成、水俣のチッソ、静岡・蒲原の日本軽金属なんかはソレである。そんな産業遺産的な施設が、今でも実需に耐えうる量の電気を作っているわけで、なんだかスケールのデカい話だ。

で、これを左側から超えて遡行開始する。

 

序盤の滝。下流部ゴルジュの滝、水量大目です。

 

本日は、産業史のスケールに負けない水量。

地形図からは圧迫感を感じないが、浅いV字谷が標高1200m付近まで続く展開となる。

最初から水量が多く緊張する。何個か滝を登ると、登れない5m滝。

トマの風パーティ様(以下トマP)の記録では右岸の黒い岩壁帯に弱点を見つけて登ったとある。乾いていれば岩の部分が登れるのか?濡れていて登れそうもないので右端の垂直のブッシュからのラインで投げ縄やハーケンA1を試すが歯が立たず。

結局、投げ縄はヒバリ結びで決めてしまったため残置することになってしまった

ここであーだこーだやったせいで1hくらいロスしてしまった。

 

序盤、下流部ゴルジュの様子

 

 

黒い岩壁帯の右端を攻める山崎さん

 

少し戻って右岸側から簡単そうに見えた草つきを登ったがきわめて悪い。なんとか樹林のラインを捉えて尾根に上がる。

尚、この際にセカンドの山崎さんが「お助け」を設置し、後続二名がそれに気付かず、スリング2本とカラビナ残置…。なんてこった。

尾根に上がると、「このまま歩き続けたいなあ」と思わせるような美しい森で、下草が低くて歩きやすい。これならもっと戻って大高巻きした方が早かった(多分これのせいでさらに0.5Hくらいロス)。

 

この沢(ひょっとしたら頸城全体の特徴かもしれない)の特徴として、草付きはスラブに泥が載った状態で極めて悪く、全くフリクションが効かない。一方で、山が深くないため、樹林帯に上がってしまえばそれほど苦労はしない。巻きの際は、いかに樹林が沢まで降りてきているラインを拾うかがポイントだと思う。

 

この後は、この経験を活かして、基本的に巻きの際は、草つきに入らずに、多少遠回りでも、樹林が沢まで降りてきているラインを拾うようにした。

この前半のゴルジュは、特に山が浅いため、巻きが樹林にさえ入ってしまえば簡単。

このゴルジュの最後の方の滝は、上部にCSがあり、巻くとめんどくさいので投げハンマーを敢行。マティが見事に決めた。コツとしては、投てき役はアンダースロがよく、また、後ろでザイルを捌く人間も小さいループを作っておいて同時に投げると飛距離が出る。せっかくなので投げハンマーを決めたMにリードしてもらう。大金星だぜ!

 

下流部ゴルジュの様子

 

 

投げハンマー&ゴボウを決めるマティ

 

標高1200mくらいまで上がると様子が変わり、傾斜の強い沢の中を巨岩が転がり、巨岩で構成された小滝を乗り越していく、単調な展開となる。

先頭が山崎さんなので暑い。途中でMが全く泳ぐ必要のない小さい釜に飛び込んで「ウヒョ~」とか言っている。イカてるぜ!尚、このあともマティは、とんでもない登りを披露したりして、身体能力と精神的なポジティブさを見せてくれた。コイツは間違いなく大部(R)路線の男になるな!

 

まあそれはともかく、単調な急傾斜ゴーロ&小滝が標高1400mくらいまで続いたのち、再び滝場。

地形図に出ていた滝マークが「大滝か!」と恐れていたが別にそんなことはなかったもの、最初のゴルジュのように樹林に入ろうとすると超大高巻きになってしまう滝が多く、そういうところは樹林までの5mなり10mなりを草付き上りせざるを得ず、怖い思いをする。確か2~3回くらいはそういう巻きがあったように記憶している。

確かこのあたりで見学者さんがハンマー紛失。ここまで見せ場が無い上に、約1万の落とし物…合掌。

 

上部ゴルジュ入り口

 

んで、一旦河原を挟んで、すぐ上部核心ゴルジュの入口。

既に16時。

常識的にはゴルジュに突入する時間ではないのだが、翌日の山崎さんのバスの時間や、3連休の渋滞を考えると少しでも進んでおきたいという事と、トマPが2時間10分でこのゴルジュを抜けて稜線近くまで上がっていることを考えると、実力差及び人数差を鑑みても、2時間でゴルジュを抜けるくらいはできるだろうという見込みもあった(そして抜けたすぐ先に、トマPのトポによるとテント適地があるとあった)。

山崎さんは「登って様子を見てみて判断すればいいんちゃう?」というし、わらじの仲間パ―ティ様がこの滝でフィックスして滝の下で幕とした記録もある事から、それを真似してもいいかなという考えもあり、結局、意思決定できぬまま、とりあえずマティが空身で入口の滝の左側を上る。抜け口のハイステップが悪そうである。

 

セカンドの山崎さんからの荷揚げを提案されたが、それまで抜けるか抜けないか腹が決まっていなかったところ、この一言で腹が決まった。

「様子を見るだけなら荷揚げをする必要はないでしょ。突破するなら荷揚げしてたら間に合いません。フルボッカで登ってください」

で、頑張ってフルボッカで登ってもらう。多分ひどい奴だと思われただろう。

その後マティのザックを荷揚げ。その間、見学者さんからも「荷揚げしていいですか?」と尋ねられたが、これも「時間が無いから駄目です」と却下。多分ひどい奴だと思われただろう。

見学者さん、ナベの順で登ると、山崎さんは案の定、後を顧みることなく先行している。もう行くしかない。

 

トマPの記録によると、何か「ゴルジュなんか無かった」くらいに読めるが、全然そんなことはなく、両岸10m程度の井戸底状の狭いゴルジュ。小滝と釜が連続する異空間、見応え十分である。

内容は、基本的に釜&小滝を、浸かり&突っ張りで登るしかないのが多く、寒い。ちなみに水温はかなり低いが、後で聞いたところによると、Mも見学者さんも、「それまでの歩きで体が熱く、ちょうどよかった」などとのたまっていた。イカれてるぜ!

俺のような常人としては暑い時期に挑みたいパートである。

 

一番難しかった4mくらいの滝は、釜に山崎さんが薄着で突っ込んで、いろいろやっていたがうまくいかず、そのまま水中で土台になってもらいナベがショルダーで突破。このショルダーは、水中の山崎さんに対して完全に全体重をあずける拷問ショルダーであったが、さすが山崎さん、ビクともしなかった。

 

セカンドのマティはこのころアドレナリン全開で、途中のヌメリで落ちかけながらもすごいスピードのフリーでひょいひょい登ってきた。最初からマティを突撃させればよかったと後悔。それにしても山崎さんは通算3分くらい浸かりっぱなしだったので、大丈夫かなと思ったが、案の定カッパを着込んでもガタガタ震えている。

ここは荷揚げしたので時間がかかった。

 

上部ゴルジュ ひらすら開脚&ツッパリが多い

 

 

上部ゴルジュ

 

 

上部ゴルジュを攻める山崎さん

 

 

まだまだ続く上部ゴルジュ。十分異質なゴルジュだと思うのだが…

 

ただでさえ暗いゴルジュの中、どんどん日が落ちて暗くなっていき、焦る。

ナベはゴボウで登るときに安全カン付カラビナを取り出そうとしてATCガイドを水没させる。見えていたが、潜って拾う気力は無かった…

尚、山崎さんもナベから長いソウンスリングを受け取り損ねて水没させ回収不能。今日は貧乏神が取り付いている。

 

上部ゴルジュ。暗くなってきました

 

 

上部ゴルジュ。もういい加減浸かりたくないのに、まだ浸かる

 

 

上部ゴルジュ。支流が滝となって出会ってきて激シャワー

 

 

上部ゴルジュ。最後の方は足元が見えなかった

 

右岸側の側壁がゆるんだところで、「最悪、この草付を上って上でビバークもあるな」と考えたが、徐々にゴルジュはゆるんできているので、最悪の場合、ゴルジュの中で日没しても、残りは大した距離ではないはずで、トップをみんなでヘッドランプで照らせばなんとか登れるかも、とかいろいろ考えた。

やがて左岸から支流が滝をかけながら出合ってくるので、これのシャワーを避けるように左手をへつるようにして登る。

支流と出合ってしまえばもうゴルジュは終わると思っていたがその後もまだ何個か釜&小滝を浸かり&突っ張りで越える展開。

いい加減足元が見えなくなってきてマジで焦る。

日没までロスタイム突入、というタイミングでようやくゴルジュが終わると同時に、右岸に多少の増水なら耐えられそうな台地状があり、選択の余地なく幕場とする。

正直助かった、という感じだ。

 

ヘッドランプをつけての薪拾いと設営。しかしトマPは同じ2Hでこのさらに上(標高にして約200m上)まで進んでいるわけで、いったいどーなってんの?って感じだ(しかもその幕場に15時に着いている)。

ちなみにマティのペツル製防水ヘッドランプが水没して死亡。もしゴルジュ内で日が暮れていたら…(下山後乾かしたら復活したとの事)

 

幸い薪は豊富にあり、時々現れる月を眺めながらの飯。みんな乾きモノをはじめとしてまあ色々出てくる。山の話や馬鹿話に花が咲く。

ナベは早々に寝たが、他の三人は2時過ぎまで飲んでいたとの事…よーやるわ。

 

なんとかテンバ

 


9月24日

5:30起床 → 7:40出発 → 9:50金山と天狗原山の間のコル → 10:00天狗原山 → 11:50林道 → 12:40雨飾高原バス停(駐車場)

 

なぜか山崎さんの行動食の入った袋が川の中に浮かんでおり、それを取ろうとして山崎さんが早朝から入水してびしょびしょ。

話を総合とすると、昨晩(というか3時間前)、酔っぱらった山崎さんが対岸の草付をなぜかトラバースしたり、「ツエルトどっちやっけ?」と謎の行動をとっている間に落として、それが巻き返しの中で滞留していたようだ。行動食の餅が別の物体になってしまっていた(食ったら「まずかった」とのこと)。

 

それもあって、朝からゆっくり焚火をしてから出発。マティはなにせ2時間くらいしか寝てないのでしんどそうだ。

出発してしばらくは幕営的地がポツポツ。特に背後に樹林がある幕場は増水した場合逃げられるのでポイントが高い。

やがて浅いV字谷状となり、3~5mクラスの滝とナメが連続する癒し系の渓相となるが、ぬめり度が半端ではなく、ナメなのに緊張感がある。

小滝も巻かざるを得ない場合があり、草付が悪いため、ワンポイントであるが緊張する。

一番大きい3段15m滝は大したことなかったが、8mほどの滝の右岸高巻きは、その次の滝もまとめて巻いたのだが極めて悪かった。

最後は山崎さんがクライムダウンで河原に降り立ったが、誰も同じムーブができず、全員2mほど滑落。下にいた山崎さんがスポットしているので問題はないが、特にマティとナベは降りれると思っていた所に予期せぬフォールだったので若干ショック。本当に、ココの草付は踏ん張りが効かない。一体山崎さんはどうやって…?

 

源流部の3段15メートル滝

 

 

源流部のナメ

 

 

ヌメリにヒャーヒャー言いつつも順調に高度を上げていくと、なかなか減らなかった水量もようやく減り、ひたすら本流筋を追うと、やがて草原からポンとコルに出た。

地図に道マークはないがしっかり踏み跡(というか登山道)はある。

 

天狗原山の山頂にて、火打・妙高・雨飾などの山座同定。


【地図】


天狗原山から先は地図通りのしっかりした登山道ではあったが、地図から読み取れる以上に細かいアップダウンがあり、ナベは早々に「先に行って!」モード。

山崎さんも無理はしないで~とマイペース。

一方、今山行、それほど見せ場の無かった見学者さんがぶっちぎりで下っていくのを、マティが「見学者さんについていけたら客観的に強くなったと言える気がする」と言って追いかけていく。 いやーマジで速いです…。 

幸い、異常に太いブナの倒木が何度も道を塞いでおり、そのたびに乗り越えるのが大変なためパーティはバラバラにならずに済んだ。

小一時間林道を歩くとやがて雨飾山荘が見える。雨飾山荘と雨飾高原バス停の間に無料露天風呂あり。下山口に無料露天風呂があるなんて、最高としか言いようがない。募金に100円玉を突っ込んで遠慮なく入湯。男湯の開放感はすごい。というか、塀が全くない。おそらく落葉したら道から丸見えなのではなかろうか。

 

下山飯は、残念ながら中休みタイムに突入してしまっていた。

大糸線千国駅前で「これは!」と思うカラオケスナック的店構えの定食屋「いっちゃ」があって、「これは絶対美味い!しかしこの店構えはハードル高い!」と迷っている間に、おばちゃんが出てきて「営業中」の看板を「休憩中」にひっくり返してしまった。

ちなみにあとでググるとこのような感じでした。

「小谷白馬辺りの唐揚げでは一番うまいかも。」「親子丼がおいしい。」「南小谷あたりの食堂ではここが一番かな。」「唐揚げが柔らかくて凄く美味しかった。」「量も良いね。」

逃がした魚はデカい…

 

山崎さんのバスの時間があったため、白馬の「ガスト」。ここまできてファミレスか~

画竜点睛を欠いてしまったきらいが無いでもないが、まあそれなりに旨かった。

マティは満足しておらず、このあと唐揚げ串を食っていた。


尚、今山行の損害は…

・山崎:お助け紐(15mくらいのスリング)、ダイニーマのソウンスリングの長めの奴2本

・ナベ:スリング2、ATCガイド、軽自動車のバンパー

・見学者:ミゾーのハンマー

・マティ:ヘッドランプ(水没)→山行後乾かしたら復活

スゴイ損害です…


【テクニカルメモ】

〇今回、他所からの転進だったので装備変更できず、50mザイル2本で入渓したが、基本的に沢底から10mくらいが雪により浸食されていることが多いようで、それより上は大体木がある。大滝はない。従って、30m2本がベストだと思う。

〇ハーケンは打つと岩の方が割れるのでほとんど使えないので、気休めに何本か持参する程度か。

〇カムは滝上でのビレイでそこそこ使えた。キャメ0.75まで持参したが、マイクロ系はあまり使えず、逆に大きいのが欲しいと思うことが多かった。キャメで言えば0.4~2番くらいが妥当か。

〇参考にしたトマPの記録は早すぎるし、あまりにも辛すぎる。沢グレードなんて登り方や水量、雪渓の残り方次第ってところはあるけど、いくらなんでも3級下ってことはないと思う。だって「関東周辺の沢」で湯檜曽川本谷が3級なんですよ…。

〇ただ、トマの風HPを見ると、アクアステルス系のシューズの登場でグレードが下がったという考え方をしているようで、なるほど、そういう考え方も正しいと思う。だが、むしろそういった道具の進歩とフリー技術の向上により、人間の方の限界が上がったと考える方が、グレードがそもそも安全のための目安という意味では健全な気もする。5.10が人類の限界と思われていた所、ギアや技術や考え方(ハングドックOK)の変化・進化で5.15の世界に突入したのと同じように…

〇旧来通りのグレーディングならば、草付の悪さと踏み跡や残置の無さを考えると4級はあると思う。ただ、遡行も下降も短いし、稜線に道があって下降の心配は無く、全体に山が深くなくプレッシャーが無いこともあるので、それらを踏まえると3級上~4級下あたりが妥当と思った。

〇ちなみにヌメリはひどいが、草付の危険度が非常に高いので、フエルト底よりゴム底の沢靴の方がよい。ヌメリ対策に、源流部でゴム底靴の上からモンベルのサワーサンダルを履いたりできれば最強か?(履けるかどうか知りませんが)


【雑感】

今回、マティも見学者さんも楽しかったと言ってくれて、山崎さんもそれなりに満足されたようで良かった。

俺としても、草付の悪さと、日没ゴルジュというあり得ないシチュエーションにはかなり痺れた。

それにしても、皆酒も体も強え~な~。今回も筋肉痛になった。俺だけ。どうなってんの?

酒を飲むと回復の妨げになるらしいが、他の方々の方が俺より飲んでいるわけで…分からん…。


 

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