■南八ヶ岳・阿弥陀岳南稜[雪稜登攀]

2019.02.16(土) ナベ

06:25発-06:45船山十字路-07:40尾根上-09:00立場山-10:30無名峰-11:40P3ルンゼ入口-12:30阿弥陀岳-14:15御小屋山-15:30駐車地


♪前しか見えない目玉をつーけて、どこへ行くのか、どこへ行くのか♪

THE BLUE HEARTSが歌うだけでなく、様々なミュージシャンが「前を向け」と歌っているが、時には後ろを振り返った方がいい。

その昔、国立府中から高速に乗った高橋さんと俺は、谷川岳に向かおうと中央道を西に進んだ。

その先に谷川岳はもちろん無かった。

出来たばかりの圏央道に感謝して、Uターンして谷川岳に向かった。

※当時高速のインターでは、逆走防止のために、事情を説明するとタダでUターンさせてくれていた。

 

そして今また俺は、八ヶ岳を目指して関越道に乗るところだった。

おまけに性懲りもなく、下調べしていないせいで高井戸から中央道に乗ろうとして「入り口がねえ」とパニクる始末。

しかも諏訪南で降りたら料金4000円と表示されて「マジ!?」。独りはつらいねー、交通費が。

 

今回、同じ時期に赤岳鉱泉で夕飯(ステーキディナー)を食うという、「パリピか!」的パーティが当会で結成されており、交通費的にも山行内容的にも、なんというか、ルサンチマン状態である。そういえば先週も俺だけ誰も応募が無かったなあ…嫌われてんのかなあ…。

こんな気分は、大学生の頃、三酎士(稲中の死ね死ね団を参考に、リア充に対してギロチン処刑的なアルハラを行うことを目的に結成された義兄弟)を結成して以来である。

「明日は久々に結果出してえな…」

珍しく結果にコミットする気持ちが沸いているが、やる気とは裏腹に、船山十字路の前からの積雪で我がワゴンRは足止め。仕方なく路肩に止め車中泊。後続車がすいすい入っていくのを見てここでもルサンチマンを抱く。

俺にも四駆を買う金があれば…。

結局予定よりだいぶ遅れたが、それでも日付が変わる頃には寝れた。

最近、前夜祭で盛り上がりすぎて翌日使い物にならないパターンが続いているだけに、とにかく早寝早起き適量飲酒を心掛けたかったので、一人車中泊は手っ取り早くていい。


行程:06:25発-06:45船山十字路-07:40尾根上-09:00立場山-10:30無名峰-11:40P3ルンゼ入口-12:30阿弥陀岳-14:15御小屋山-15:30駐車地

 

船山十字路まで思ったより遠かった。ここまで入っている車は四駆か、前駆&チェーン。なるほどね。

南稜へのアプローチは南側から旭小屋経由と北側から広河原沢左俣を渡って取り付くものがあるが、楽そうなので後者を選択。一応渡渉点には控え目な赤テープと看板があるが、看板は地面に置いてあるので雪が深いと埋まるだろう。

九十九折りの急登を経て尾根にあがる。

尾根上はほぼ一般登山道。というか、南側斜面への入山禁止警告看板とバリケードがすごい。静けさを求めてバリエーションに来ているというのに、このやかましさはほとんど下界である。

 

10万円

 

立場岳まではせいぜい20~40センチ位の積雪で、完全なトレースがあった。途中一人下山してきた人とすれ違う。

思ったよりいいスピード。というか、マジ調子がいい。昨日ちゃんと寝たのが効いている。ここから先、部分的に風でトレースが埋まっており、踏み固められている部分を外すと膝くらいまでは埋まる。時々ズボるのがうっとうしいのでワカン装着。なんか調子が悪く、一度締め直したりして時間を食う。

 

標高が良くわからない立場山

 

無名峰で一休みしながら、行く手を見る。低い雲は標高2,600m~2,700mくらいにかかっており、肝心のP3周辺がよく見えない。

粘っていると一瞬晴れて、恐ろしげな本峰周辺が見えた。中間部に短いが垂直の岩壁を、最上部に恐ろしげな雪壁を擁するルンゼが見え、あれがP3ルンゼだったらマジやべーと思うが、そんなはずはないので進む。

P1~2のコルでアイゼンに履き替え。ルートファインディングミスしてあのルンゼ入ったらマジやべーと思っていたが、風で夏道(?)が露出しており杞憂だった。

 

阿弥陀本峰方面を望む。左手のルンゼじゃなくて良かった。

 

 

P3は頑張れば正面から登れそうだが、まあソロだし大人しくしておこうと左のバンドを辿る。側壁の草付きにバイルが入るし、頼りないとはいえワイヤーがフィックスしてありトラバースは問題なし。

そんで右手のルンゼに入る。バイル二本なので技術的には楽勝だが、思ったより距離が長く、ふくらはぎに来た。この辺から若干疲れてくる。「食べログ」、じゃなかった、「ヤマレコ」で、南稜登った後北稜登った記録があったが、よく山頂からまた降りて登るよな~。そのモチベーションと体力は見上げたものだ。彼が何にモチベートされてるのかは謎だが、そりゃこっちも同類で、山登りなんて、世間から見ればどーってことはないし、どーでもいいし。でも、どーでもいいから我々は自由にやれるんだし、自由だからこだわるってところはある。

※最近はオリンピックだのなんだので、世間の手が伸びてきたが。コンペをぶっ潰すと息巻いていたギュリッヒ様を見習ってほしいもんだ。

 

P3ルンゼへのトラバース。針金がFIXしてあるが信用ならないので右の草付にバイルを叩き込みながらトラバース。

 

P3ルンゼ

 

P4も左からトラバースしたが、こっちはP3のトラバースと違って側壁が完全に岩で、バイルが入らず、距離は短いがちょっと怖い。

バックステップで進む。

そんで最後の岩は右手から絡んで山頂へ。

ガスっていてよー見えん。行者小屋方面から若者が一人上がってきた。

 

ガスっているので下降を間違えないか心配。コンパス振って慎重に下山開始。

阿弥陀北稜や広河原沢中央稜へ迷い込まないか心配だったが、御小屋尾根を下から上がってきた人が来て助かった。その後晴れ間が一瞬見え盤石。

 

御小屋尾根上部。一瞬晴れてくれて助かった。

 

途中でつぼ足になる。アイゼンのが安心だが、やっぱりつぼ足のが早い。TV番組「世界の果てまで行ってQ」で、イモト様がヨーロッパアルプス登るときに、ガイド様に「アイゼンはギリギリまで履くな!」「こんな所で履いていたら間に合わない!」としごかれていたが、その通りですね。

大学の頃、「足の一キロ、背中の五キロ」と先輩に教わったが、やはりヨーロッパガイドの方が説得力がある。

 

下山は、最後の方で沢山の財産区境界標識(と踏み跡)や林業の林道が出てきて訳分からなくなり、スマホGPSパワーを借りて船山十字路ちょい上に出た。行きには見えなかったが、林道の脇も立ち入り禁止のバリケードがすごかった。

50万円!

 

帰りは20号線を甲府昭和まで走ってから高速に乗ったが、結構いい感じの定食屋やドライブインがポツポツあり、なんで昨秋にしのやん達と甲府幕岩の帰りに飯屋に困ったのが謎。早めに20号に出るといいのかも知れない。


【メモ】

1.今回は軽量化した泊まり装備(ガス、ツエルト、スコップ、夏用寝袋、マット)を担いだが、本気の泊まり装備だとワンデイはキツいと思った。

一泊二日のコースは、頑張って軽量化して日帰りにすると、日曜日は家族サービスがたっぷりできて、登山活動が安定します。

※日曜は、家のトイレ掃除ほか色々はかどった。

2.とはいえ、立場山までラッセルがあったら、軽量化しても日帰りはキツいだろうなーと思います。

3.最近の山行で、体力落ちたなーと毎回思っていたが、確かに20代の頃に比べて落ちたろうけど、それ以上にコンディションが大きい。

最近は前夜泊で、飲み過ぎ&寝不足過ぎである。先のクリスマス前に西穂高に行ったときの初日(5時間も歩いてない)より、今回の方が楽に感じました。

4.技術的にはどうってことはないけど、初心者向けといいながら、トラバース部分で支点が取りにくいので、本当の初心者を連れて行くのは危ないです。

(文責:ナベ)


 

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