■北アルプス/錫杖岳「三本槍尾根~西尾地尾根」[雪稜登攀]

2019/2/24(日) 晴れ(気温高い) メンバー:ナベ・ハッシー・しのやん


【記録】

04:30槍見温泉駐車場出発→06:00錫杖沢出合→07:30三本槍尾根→10:00P3基部(懸垂)→11:10P2基部→14:30錫杖岳南峰→15:15西尾地尾根最上部→17:20槍見温泉駐車場帰着

 

新穂高温泉駐車場にて前夜泊し、朝、槍見温泉駐車場に移動して出発。冬も夏道通りのアプローチだが、下部では本当に夏道が露出していたりして雪が少ない。トレースはガチガチ。

渡渉点で休憩。持参しているテルモスのほか、ペットボトルにウォーターチャージ。渡渉は何の問題もなかった。

結局、日帰り装備で軽いこともあって、昔夏に来たときより早いくらいのペースで錫杖沢出合い。前衛壁に取り付くクライマーのヘッドランプが見える。

                                      

まずは錫杖沢を詰める。出合からはずっとデブリが固まっており、北沢との出合の先くらいまでつぼ足でデブリの上を歩いて登る。北沢出合の先くらいから、左上に見える三本槍沢を目指し途中でガチャとアイゼン装着。当初は三本槍沢の左右どちらかの尾根にこのあたりから取り付く予定であったが、どうにも食指をそそられない岩の形状なので、三本槍沢の最初の小滝を右の藪から越えてから、右岸側のコルに上がる。

 

前衛壁。1ルンゼすげ~。

 

錫杖沢を詰める。左奥の岩尾根と岩尾根に挟まれたルンゼ(三本槍沢)に入ってすぐ、右岸から尾根に上がった。


1p目:ナベ 35メートル 藪と雪稜のミックス(ど腐れ雪)最悪

藪の上に雪が乗り、中が空洞になっていて無限に沈む。蹴り込んでも決まらないので目の前の雪がどんどんハングになってゆく。

結局、スタンスはほとんど木、手もほとんど木。小一時間かかった。

 

P目をフォローするしのやん


2p目:コンテ15m 雪面をラッセル。


3p目:ナベ 35メートル ワンポイントハングした藪 最悪

1p目より藪部分は短いが、傾斜が強い。パンプしかけた。フォローしてきたハッシーから「ファ○ク!」と、短いが強い感想コメントを頂く。

目の前に雪のこぶがあり、その先に大きな岩があり、岩登りは無理そう。

ハッシーに交代し、判断を任せる。雪のこぶを越えて偵察した結果、右手のルンゼから沢に降りれば巻けそうとのことで懸垂50メートル二本連結で懸垂。

 

P3を偵察するハッシー

 

懸垂するしのやん


4p目:ハッシー 55m 歩き→アイスセクション 割と楽しい

気温が高く雪崩が怖いので、ザイルを出す。岩屋状の岩壁基部を絡むようにラッセル。時折岩にカム。途中で、ビレイ点からみて左にカクッと曲がるため、岩壁が邪魔で途中からコールが通らなくなり、仕方なく若干コンテ。

ビレイ点の立木前が氷結しておりバイルが決まって楽しい。スクリューも一発決めていた。本日唯一の快適なピッチ。

 

唯一快適だったピッチ。


5p目:ハッシー 45m 腐れ雪の木登り 最悪

左手の岩と雪面のコンタクトラインを登っていくが、出だしが最悪。トップがなんとか騙した雪はセカンドが全部踏み抜き、結局木を掘り出して登る羽目になる。


6p目:ハッシー 50m

 

左上の岩峰目指して雪田をラッセル。本来ザイルは不要だか雪崩が怖いので、ザイル出しっぱなし。

 

どうも懸垂して巻いたのがp3、目の前にあるのがp2とp1らしい。登る気にならないほど小さく、かつ登るとなればそれなりに難しそう。

衆議し、パスすることにする。ハッシー「イカモノだな!」


7~8p目:ハッシー

p2をパスして基部をラッセル。ここも念のためザイル。

すぐ先に南峰と思われるピークが見えているが、ザイルを出しているのとラッセルと踏み抜きで時間がかかる。クライミングとしての楽しさをこのルートにもはや誰も求めていない(さっさと頂上踏んで帰りたい)場面で、不必要に尾根が立ってきて、アルペンムードが出てきてやたら写真映え。いかにも雪稜という感じなのだが、低木が生えている部分は大体その下が空洞で、もがくほど目の前がハングになるので、技術的には難しくないがザイルを出さざるを得ず、時間ばかりかかる。

このあたりで背後から不吉な音が聞こえ、見るとアイスフォールが完全消滅していた。

 

左上が本峰フェース、右が烏帽子岩。写真中央下の、右又沢(?)から錫杖沢本谷にかかる立派な氷瀑が一瞬で消滅。


9p目:ナベ 50m

途中までP1(?)基部をラッセル。最後はまたしても腐れ雪の藪。懸垂して沢から登った方が早そうだが、それをやると三本槍尾根ですらないので自重。

 

槍基部をトラバース。このあと腐れ藪。


10~11p目:ハッシー 50m

一部腐れ藪。南峰手前の前衛岩峰直下のコルまで。後ろを見やると槍岩峰群が屹立しておりそれなりの雰囲気がある。もしp2とかを登ると、岩峰上は雪がついているので支点構築しての懸垂下降にも時間がかかりそうだ。

 

時折踏み抜く。尾根が立ってきた。すぐ右奥が南峰だが…

 

さて、行く手だが、正面は垂直の藪と雪に守られており、さらにその先に南峰直下の藪やら岩やらが控えている。軽く一時間以上かかるのは目に見えている。

衆議し、左にトラバースして、登れるようなら山頂を、無理ならなんとかトラバースして稜線に出て大木場の辻を目指そうということになる。それも無理なら、雪崩覚悟で錫杖沢を下降するしかなさそうだ。

ハッシーが雪のこぶを越えて向こう側を覗き込む。俺としのやんは息をのむ。「山頂行けそう!」


12p目:50m

岩と藪の前衛岩峰を左から巻いて急な雪壁をラッセルし山頂直下でビレイ。

眺望は最高。前衛壁が完全に足下である。

前衛壁を登る鼻息荒いクライマーに「お前南峰登ったことねえの?ちっちゃい山登りしてるねー」とマウンティングしたい(怖くてできないけど)。

時間的に厳しくなってきたので写真もそこそこに、ワカンに履き替えて大木場の辻を目指す。

 

南峰直下にて。奥に見えるのが大木場の辻。


下降(西尾地尾根経由)

一部踏み抜きはあるものの大して深くないラッセルを、95%ハッシーのトップで進行。ハッシーの急げ急げに引っ張られて、たまにトップを交代してもセカンド・サードで休めていないので青息吐息ですぐ交代となる。

錫杖南峰から大木場の辻は見えていたので、大木場の辻ピークは巻いて西尾地尾根に入るが、地形が相当複雑で自信がもてない。スマホGPSの力を借りる。

間違いなく西尾地尾根ということがわかり、1,958m二等三角点ピークを目指すのだが、晴れていても樹林に遮られ眺望がなく、尾根形ははっきりしない。全方位ただの急斜面である。それでもなんとか三角点ピークの前のコルまで到着。

このまま西尾地尾根を下ると確実にヘッドランプなので、「蒲田川目指して下ろう。この様子(全体に傾斜が強いがはっきりした沢はなく、樹林の中に何も生えていない雪田が点在)ならなんとかなる。」といった方向で衆議に図る。

ハッシーが「それでも行けるところまで尾根沿いに行こう」と提案し、意味が分からなかったのでトップをお願いする。ハッシーは尾根の南側斜面を尾根に沿って下っていった。

やがて尾根が険しくなり、トラバースし難いルンゼ等が出てきて、1,512m二等三角点の手前のあたりで尾根沿いを諦め、それでも尾根沿いを意識しつつ下る。

最後はデブリの出ている小沢に入ってしまったものの、デブリの上をさっさと通過し、クリヤ谷登山道の、最初の急登を終えたあたりにポンと出た。

 

下降するしのやん


【コメント】

1.雪がたっぷり乗った状態で取り組む方が楽しいと思います。その場合日帰りは難しいと思いますが、戸隠の雪キノコ的なクライミングになるような気がします、戸隠行ったこと無いけど。

2.南峰に立つだけなら、1月とかに、ヘッドランプ行動して早出、三本槍沢から登るのがいいと思います。多分少しぐらいはアイスが楽しめます。この場合も下降が悩みの種ですが…。

3.ギア・・・結局どういうラインを取りたいかによる。岩を登りたいならキャメ1番くらいまで。ルンゼを登るならスクリューも。灌木が有効なのでスリング多め。ザイルは50m x 2で行ったが、古い方のロープが若干短くなっており不足を感じた。60m x 2の方がよかったかも。


 

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