2019/4/6~7
・雪稜隊:渡辺、橋本、竹内、●●(見学者)
・スキー隊
1班:小池、篠崎、井出
・スキー隊
2班:佐藤、伊藤、菅原
4/6(土)
この日は快晴。二股から猿倉荘までは7割ほど除雪が進んでいて、林道の途中からスキーとワカンに履き替える。
猿倉台地まで上がったところ、天気は良いが稜線はかなり風が強いようで、雪煙が上がっていた。当初の予定では小日向のコルまで上がり幕営の予定だったが、風が強いことと明日は天気が荒れる予報だったことで、猿倉台地をBCとすることにした。
ひとまずブロックを積み、テントを張り小休止。
幕営の準備が整ったところで、訓練開始。
まず、JANの雪崩講習を受けてきたばかりの小池さんを中心に、ビーコンの基本的な使い方及びプローブでの捜索、雪崩の基本をおさらい。
次にケーススタディということで、適当な2班に分かれ、残留物を配置するなどして実際の雪崩現場を再現し、捜索する訓練を実施した。
先に捜索した班は、下記の問題点が発覚。
・通報を忘れる
・リーダー、役割分担が曖昧
・残留物をよく確認せず、発見と掘り出しも遅れる
2班目は、先に指摘のあった個所をカバーし、的確・迅速に動き、5分以内に掘り出した。
その後は、雪に埋まった経験のない希望者を募り、埋没訓練を実施。
実際に埋まってみると、身動きが取れず、声は聞こえるものの何も見えないため、今までにない恐怖感があった。
余った時間は、前回の会山行の復習として、イグルー作成や宴会の準備をした。
暗くなってからは、テント・イグルーで鍋を食べ、就寝。
4/7(日)
朝5時に起床。思ったほど天気は悪くなく、各班支度をして全体ミーティング。
暴風雪の予報があったため、天候が悪化した場合は撤退、BCに14時には戻ることにして出発。
雪稜隊とスキー隊1班は、ひとまず小日向のコルを目指し、同じ斜面を登る。
少し雪と風が強くなってきたところで、スキー隊1班は撤退。適当な斜面からベースへ滑走。
雪稜隊は引き続き登るも、小日向のコルまで到達したところで撤退。
スキー隊2班は、長走沢を上がった他の隊が撤退した後も引き続き登り、樺平から滑走。先に降りた隊は、ベースからその様子を確認していた。
全隊がベースに戻ったところで、帰りの支度をしつつ、雪稜隊の橋本さんと●●さん(見学者)が山スキー体験。来シーズンは是非スキーも…。
片付けが終わったところで、全員下山開始。二股に戻り、「おびなたの湯」に入り、駅前の定食屋で昼食を取ったところで解散。
【所感(参加者)】
ビーコンの使い方、ゾンデの感触体験、半イグルーのおさらいなど、いい経験ができました。
また、レスキューに対する考え方は、『バックカントリー』と『山屋』では全然違うということも、今回浮き彫りになりました。
今回のロールプレイ想定は、「雪崩跡や遺留品を発見し、雪崩遭難が発生したと思われる場面に遭遇」でした。
この場合は「二次遭難を起こさない」ことが通常以上に意識される形となり、山屋には有り得ない「通報して指示を仰ぐ」という行動に繋がります。
本ロールプレイのケースは、人気バックカントリーコースでは十二分にあり得ます。あるいは、山登りの世界でも、一部山域に集中する傾向が高まっていますので、例えば南八ヶ岳などは似たような状況かも知れません。
一方で、山屋の世界では、基本的に同一ルートにたくさんのパーティが入っているということを想定していないうえ、自パーティの一部人員が雪崩にやられた、という場面の想定になります。私はそういう想定でしか、訓練したことがありません。
そこでは、「ザイルパートナー」という言葉に象徴される信頼関係を前提としたパーティ編成を行っていることから、セルフレスキュー以外ではパートナーが助けられない場面では、二次遭難回避策はとりつつも、セルフレスキュー優先という行動になります。
逆に言うと、しょうもないミスをしたり、あまりにも力量差がある人とは、厳しい場面での信頼など育めませんので、厳しいところに一緒に行ってはいけないということです。
要するに、埋まった人は『身内』のメンツなのか他パーティなのか、発生箇所は人気コースなのかマイナーなのか、気温や積雪・天候はどういう状況なのか、地形はどうなっているのか等を、総合的に勘案する必要があると考えます。
ザックの扱いについて、遺留品と混じったら訳分からなくなることと、二次遭難が発生した際にゾンデが当たる可能性が高くなることから、ザックを外さずにレスキューを行なうとのご意見も有りましたが、山屋の世界では、二次雪崩回避やレスキュー時の動きやすさ、雪崩で流された際の脱出可能性向上のために、ザックは捜索開始時に外すとされています。私は、そう教わりました。
これも、その場の状況次第と言えます。
ルンゼ内登攀中ならば、ザックは岩に引っかけるなどして確実に残置できますが、広い谷を滑っているときならば、その辺に置いといて二次雪崩で荷物が流されると、装備不足で帰れなくなることもあり得ます。日帰りなら、この心配はないかもしれないが。
・・・ということで、これもケースバイケースと考えます。
おそらく、バックカントリーの世界では、そういうケースバイケースを排除して、平準化・マニュアル化による全体的な生存率向上を目指しているのでしょう。マニュアル作業なら大間違いは少なくなります。
伝統的な山屋の世界では、ケースバイケースで動けないレベルの人間は雪山でリーダーないしメンバーはまだ早い、という判断になり、そこを甘く見ると、ダメリーダーあるいはダメメンバーに引きずられて生存率が下がるということになります。
結局、その山・コースのレベルに相応しいメンバーで山に行くという、先ほどの原則と同じ結論になります。
各作業手順から、バックカントリーと山の考え方を整理してみましたが、登山界でも人気山域では(というか、そういう山域に集中するメンタリティを持った人々は)、バックカントリー的考え方になってきているかも知れませんし、もしかしたら、セルフレスキューそのものが「素人が余計なことするな」と警察消防に怒られる時代なのかも知れません。
要するに、登山やバックカントリーの一部が大衆化したということなのですが、少なくとも雪崩のセルフレスキューに関しては、仲間を助けるためには警察・消防に何と言われようがその場でやるしかないので、基礎的なビーコン使用法・ゾンデ使用法とロールプレイはやっとかんといかんなあ、と思いました。
【所感(会山行幹事:篠崎)】
今回は2日目、ピークハントや槍温泉到達は果たせませんでしたが、1日目の訓練は各自とても良い経験になったと思われます。
雪崩発生時、その場での役割分担や的確な捜索は、訓練をしていないと出来るものではないです。
今後の山行の一助になれば、幸いです。ご協力頂いた会員の皆様に、感謝申し上げます。