南ア前衛/巨摩山地(櫛形山地)/富士川支流大柳川梨木沢ゴルジュ遡行


形態:沢登り
期間:2019年7月20日
メンバー:ナベ(記)、ハッシー
先日伊藤さんと敗退した梨木沢へのリベンジ。
ハッシーを誘ったら乗ってくれたので、意気揚々と中央道へ。
えだ2さんのHPの写真(https://ameblo.jp/eda-2/entry-12482429691.html?frm=theme)を見てまぼろしの滝を登攀するつもりで向かったのだが…


8:55 大柳川渓谷駐車場
9:15  F2(涼みの滝)下
10:50  F3下
11:20 F4まぼろしの滝下
12:15 F5下
12:55 F7上
13:50 上部ゴルジュ(四連瀑)入り口
14:50 四連瀑上
15:00 支流に入る
15:30 林道
15:40 仕事道に入る
16:55 大柳川本流沿いの林道に上がる
17:25 起点駐車場

一回来ているので今回はスムーズ。
十谷集落手前のバス転回場所から渓谷に降りる車道に入り、公園に駐車。今日は誰もいない。
遊歩道から見える本流はまたしても激ニゴリ。前回よりも水量が多いように見える。遊歩道を経由して梨木沢に入る。F1(天狗滝)は前回登ったのでそのまま遊歩道を歩いてパス。河原状になるところで歩道は右岸の支流の方に上がっていくので、ここから本流を沢歩き。すぐにF2。
F2(涼みの滝)は右岸のスラブから上に見えるバンドを目指して、ザイルを出してナベがリード。
出だしでハーケン二発決めてザイルを伸ばすが、クラックが途切れたところで、当てにしていた灌木が頼りにならず、進退極まり、クライムダウンできるだけしてからジャンプオフ。ハーケンは二本目が抜けて一本目で止まった。
改めて左岸の前回ナベが登ったスラブ〜段差をハッシーリード。段差の所は左手の藪を利用してフリーで抜けようとするが、無情にも藪ごと動いたのであきらめて、前回ナベが残置したハーケンでA1。ナベフォロー時、みんなA1になるなら抜くことも無いかと思い回収しなかった。(このセクション、W+級A1くらいでしょうか)



F2


F3は想定通り水流左の逆層フェースに取り付く。ナベリード。今日は増水で水被っており激シャワー。幸い都合のいい節理がたくさんあるので、カムをバシバシ決めてA0で抜けるが、出口のホールドが水流沿いなのに動いて焦る。岩モロっ…(W級A0くらいでしょうか、激シャワーでなければもう少し簡単かも)



F3をフォローするハッシー


F4まぼろしの滝は、えだ2さんの写真では左壁が登れそうに見えたが、実物はインポッシブルとしか言いようがない。
滝は、上部でナメを滑り落ちてから中間部で空中を舞い、下段で岩を流れるのだが、右手の弱点を繋げば、中間部の滝の裏側までは何とかなりそう。しかしそこから先が傾斜がキツく、右壁には何もなく、左壁のヤブは貧弱で登れそうもない。
中央は、水圧で弾き飛ばされるだけでしょう…インポッシブル!


梨木沢まぼろしの滝(F4)
登れると思っていたF4まぼろしの滝。浅はかでした…F3落ち口の左岸ボロルンゼから左岸高巻き。


えだ2さんに習い、右岸に上がる手を考えたが、右岸は側壁が50m以上ぶったっており相当な大高巻きとなる。左岸はまだマシだが、滝壺から円形劇場のように岩がたっており取り付けない。右岸かなーと思ったが、ハッシーが、F3落ち口のすぐ上にある左岸の泥ルンゼが行けるのではないかと提案。あまりに汚すぎて目に入っていなかったが確かに登れる。ザイル2ピッチ出してF4落ち口の右手のリッジに出て、怖いのでここから懸垂で沢床に降りた。この高巻きも良くはない。
すぐF5。えだ2さんの写真では右壁が簡単に登れそうだったが、実物は、ラスト3メートルがブランクセクションに見えた。ボルトキットを持ってきているので、最悪ボルト打てば登れそうだったが、F2で落ちていることもあり、自重。右岸巻きに入るが、この巻きが簡単そうに見えたのだが以外に悪い。木はしっかりしているが、木と木の間が悪い。ザイルを出せば良かった。
やがて上の方に植林帯が見えた。トラバースしながら沢の様子を探ると、F5のすぐ先に二段の滝(えだ2さんのナンバリングに従うとF6とF7)が見えた。懸垂してF6〜7を確認することも考えたが、側壁は立っているし、どう考えてもこのまま植林帯に突っ込んでF7の上に降りた方が合理的かつ無理のないラインなので、懸垂はやめてまるごと高巻きして沢床に降り立った。




F5。F6・F7とまとめて右岸から高巻き。


このあとは一端沢は平凡になり、取水のホースと並行するようになる。小滝がちょっとある他は、多段10メートルくらいのナメ滝があるくらいだが、このナメ滝の抜け口でナベがヌメリに足を取られてウォータースライダー状態に。一瞬止まるかなと思ったら水圧に流され下の釜までドボン。滝壺になぜか竹があり、登る段階で「なんでここに竹が?」と気になっていたし、何か不吉なものを感じてもいた。だから、落ちながら「竹が尻に刺さりませんように!」と祈ったが、幸い竹は腐っており向こうの方が砕けてくれた。
尻と右手薬指を打ってしまったが遡行には問題なし。
ハッシー「笑っちゃいけないと思うんですが、笑っちゃいました」
笑うしかない滑りっぷりだったと自分でも思います…



ナメ滝を登るハッシー。この後ナベが滑って振出しに戻る。
この写真の箇所がちょっと難しかったので、それで気を抜いて最後の抜け口でタワシクリーニングが甘くなったというところはあるが…。


この先でホースが左岸側にくっついており取水しているようなのだが、そのあたりだけ沢床の色が違う。明らかに温泉系。
ひょっとすると、飲料水ではなく鉱泉水を取水しているのだろうか?大規模な取水堰堤などはなく、つつましやかに取水していることからも、あまり飲用水として取水している雰囲気ではない(とはいえ、これより上での用足しは当然控えるべきであり、そもそもF7を超えた時点でえだ2さんに倣い、右岸の滝観歩道に上がっても良い)
※下山中、ホースが上空を伝って十谷温泉に取水している様子が見えた。十谷温泉のどっかの宿で使っている模様。

やがて前方に、ナメ滝の上に巨岩が乗った気持ちの悪い滝が見え始めたが、実はそれは支流で、本流はカクッと右に曲がってゴルジュとなり、5メートル前後の滝で四連瀑を形成している。以外と弱点があり、一段目は右側のクラックを使って突破、二つ目はシャワーで簡単に突破、三つ目は右岸側から若干緊張するバンド伝いに登ってクリアできたが、四つ目は水流以外に弱点が無く、今日の増水では吹き飛ばされるだけなので、大人しく高巻き。クライムダウン(怖い)して一つ目の滝の上から左岸に取り付いてザイル2ピッチで四つ目の右手のリッジに出た。なお、先ほど分かれた支流がここから良く見える。30mほどの直瀑をかけている。いや〜、どうなってんのこのあたり…。
なお、ここも懸垂で降りたが、よく見ると右手に踏み跡?らしき物があったので不要だった。



奥に見える巨岩は支流。ここから沢が右に曲がる。



本流はゴルジュとなり四連瀑となる。



4つ目が無理でした。


既にいい時間になっているので、このまま林道と平行するように屈曲する沢を遡行するより、右手から流入してくるはずの支沢を詰めて林道に早く出ようと言うことになったが、頼みの支沢は25メートル直瀑を掛けながら流入。



林道に上がるのに使おうと思ってた沢。笑っちゃいました。


「本流しかねえか…こりゃヘッドランプだな」と思ったら、少し進むと、今度は割と平和そうな支沢が右手から入ってきた。本流は小滝を掛けながら屈曲しており、まだ何か出てきそうな雰囲気。もうお腹一杯ということで、支沢に取り付く。あっという間に伏流しそうになったので水くみ休憩したのち、なおも沢を詰めると、巨大なコンクリートが散乱しており、頭上に巨大な橋があった。右手の尾根に上がって林道に出る。 

地形図に出ている登山道は単なる仕事道で、ピンクテープベタうちではあるが、鹿防止フェンスに塞がれてフェンス沿いに歩くかと思えば、フェンスをくぐったりで分かりにくい。登山道が左手にカクッと曲がる辺りでピンクテープが全く無くなり、スマホGPSでほぼ登山道通りに歩行すると、うまく下草の無い植林を拾う事ができ、やがて植林が本流まで落ち込んでいるのが確認できたので、適当に本流に降り、堰堤の左岸から車道に上がる。

林道をちょっと歩くと遊歩道入り口があり、こちらの方が近いことは分かっていたが、何となく十谷集落を歩きたい気分になり、集落を歩いたらかなりの遠回りとなったが、良さそうな宿が何軒もあった。
いつかこのあたりの温泉宿に泊まって、「対岸の梨木沢にあるまぼろしの滝、みた事あるで」とかドヤ顔で言ってみたいものだ。(宝くじに当たらないといけない)

帰りは、かじかの湯で垢を落とす。
この温泉、前回は「特徴がないなー」と思ったが、こうして二回目に来てみるとなかなか味があるように思えてきて不思議。サウナで地元の親父さん達がおしゃべりしているのがいい味を出したのだろうか。

ハッシーが検索して見つけた南アルプス市の「ふたば食堂」(https://tabelog.com/yamanashi/A1904/A190401/19002395/)で飯。
ややシャレオツ(サラダが異常にオシャレ)かつ若干高かったが旨かった。

梨木沢概念図
梨木沢概念図

【テクニカルコメント】
・足回りは、俺は秀山荘忍者(アクアステルス系)、ハッシーはフエルトタビだったが、そこまで登攀的に厳しいものは求められないので、フエルトシューズが良いと思われる。意外なところがヌメる。(F2の左岸登攀でクライミングシューズがあると有効、F3はフエルトシューズで十分)
・標高が低いので水温は高い。
・巻きが意外と悪いので基本的にザイル出した方がいい。
・ロープは50ダブルを持って行ったが1本で十分。40でもいいかも。
・近隣の人気沢・芦川濁沢と同じく、下降が不明瞭。途中まではピンクテープベタ打ちなのに、地形図上の登山道が北に曲がると急に何もなくなる。登山道マーク通りに進めば植林を拾えるので、途中まではそれで行き、最後は本流まで植林が落ち込んでいるのが見えたのでそれを拾って降りた。ヘッドランプだと厳しいと思われる。遡行中に何度か余計な懸垂をしてはいるので、我々のスピードは若干遅いと思われるが、前夜発しておいてもう少し朝早く取り付くのが無難と思われる。あるいは、朝発の日帰りでF1〜F7の下部ゴルジュだけやっつけて、えだ2さんのように右岸の滝見遊歩道に上がるという手もある。

【感想】
林道や取水ホースの物と思われるゴミが多く、また、芦川濁沢と同じで黒っぽい岩であまりきれいではない。しかし、内容は秀逸、林道まで上がると日帰りガッツリコースとなる。特にまぼろしの滝は一見の価値あり。ネット上に記録が無かったこともあり、かなり充実した。F5の右壁直登とそれに続くF6・F7、そして本流上部の未遡行部分が残す課題となってしまったが、今後登ろうという人には、ちょうどいい課題になると思う。ただし、F5〜F7はチャレンジのしがいがあるが、第二ゴルジュを抜けた先の本流上部未遡行区間については、林道とほぼ並行しており、精神的につらいものがある。

※山域名について
このあたりの山全部「白峰南嶺」(しらねなんれい)なのかと思ってましたが、かえって調べたらどうも違うようです。
Wikipediaによると、大井川と早川に挟まれた山域が「白峰南嶺」らしく、コトバンクによると、このあたりは「巨摩山地」(こまさんち)というようです。
その中にも「身延山地」「櫛形山地」という呼び名があり、それらの境界は結構あいまいなようです。
なお、大系では早川右岸を、七面山や八鉱嶺あたりまでまとめて「白峰南嶺・安倍連山」と紹介しています。
とりあえず良くわからなかったので、「南ア前衛/巨摩山地(櫛形山地)」と呼称しました。
まあとにかく、広大な山域ですわ。

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