北ア/金木戸川 小倉谷遡行


形態:沢登り
期間:2019年8月2〜4日(前夜発2泊3日)
メンバー:L井出(記)、伊藤

※時間は記録を付けていなかったためだいたい
2019/8/2 晴れのち夕方からゲリラ雷雨、平水のち夕方から増水
5:00 鍋平無料駐車場発
6:00 金木戸川林道第一ゲート
9:30 小倉谷出合い
11:00 ミニゴルジュ
12:00 広河原
14:00 1470mBP

2019/8/3 晴れのち夕方からゲリラ豪雨、増水のち平水
6:30 BP出発
7:00 大ゴルジュ3mCS
8:30 赤スリング、残置スリングの6m
9:00 大ゴルジュ突破
10:00 40m高巻き
11:00 1:5分岐
11:30 両門の滝
13:30 2070mBP

2019/8/4 晴れ、平水
6:30 BP発
10:00 笠ヶ岳
14:00 登山センター

 

僕はまだ沢の経験は浅いが、いくつか思い出に残る沢を数えられる。今回の小倉谷もその内の一本になった。
去年の6月、人に連れられて初めての沢登りとして丹沢の小川谷を歩いた。濡れた岩に置いた足を信じられず、おっかなびっくりしながら登ったことは記憶に新しい。
それから十数本の沢へ行き、今年はナベさんにだいぶ揉んでもらったこともあり、今回の遡行を通じて少しは実力をつけることができたと実感することができたように感じている。
小倉谷は僕が初めて人を連れていった沢となった。

いつだったか、伊藤さんに双六谷行きたいんですよねと言ったところ、「もう行ったから無理。小倉谷行こうぜ。」(口調は意訳)と言われ、その時はどんな沢かも知らずに二つ返事で「おけ!行こう!」と言っていた気がする。
沢のシーズンが始まり、そう言えばと思い出して小倉谷を調べてみると、面白そうな沢だなとモチベーションが上がっていった。
都合良く会外の友人から声がかかったところで、伊藤さんにも声をかけ計画を立てた。しかし、土壇場で一悶着あり、結局は伊藤さんと二人で行くことになった。

新穂高温泉の深山荘の無料駐車場は木曜日の夜にも関わらず満車で、平日に何してんだよ、山なんか来てないで仕事行けよと自分のことを棚に上げて愚痴を溢しつつ鍋平に停めた。
4時に起き、タクシーに場所変更の連絡をして、荷造りしてから、5時に出発。

6時頃に林道ゲートに到着しここから長い林道歩き。
途中の崩落箇所に工事業者のプレハブがあり、トイレを拝借した。今まで見た仮設トイレの中で圧倒的に綺麗で衝撃的だった。小倉谷はトイレまで綺麗なのかと。

9時頃に出合いに着き、小倉谷を眺めると、思ってたよりもこじんまりとしており「え?これが小倉谷?細くね?」と思わず言ってしまったが、まぁこれなら渡?は楽勝と息巻いて支度を整え、入渓した。
本流の水深は胸くらいで水は思ったよりも冷たくなく徐々に上がってくる気温もあって、とても気持ち良かった。





小倉谷下部は真っ白なカコウ岩に青い水が日に照らされキラキラとしており極めて美しい。そういえば、今シーズン増水してない晴れた沢は初めてだとテンションが上がり、無駄にバシャバシャと泳ぎ楽しんだ。 




しばらく歩くと、ゴルジュの雰囲気が漂い出してくる。

 




ゴルジュを進んでいくと4m直滝が現れ、この右壁を登るのだが、ホールドは滑らかでヌメったフィンガークラックがあるだけでフリーでは厳しい。ショルダーすればギアも必要無さそうだが、さすがに伊藤さんを踏み台にするのは紳士的ではないなと思い留まり、マスターカム1番にスリングをかけてエイドで登った。ここを除いてガチャは一つも使わなかった。

あとは難しい所もなく、景色を楽しみつつのんびりと歩き、テン場を目指した。
1470mのテン場は、快適ではあったものの思いの外低く不安を感じさせたが、まぁ大丈夫だろうとタープを張り焚き火をおこして食事を摂った。
横になり寝入っていると、徐々にパラつき始め遠くに雷鳴が聞こえてきた。そのまま熟睡していると、伊藤さんに起こされた。僕と伊藤さんの間に水が流れ込んで来ており、一瞬何が起きたのか分からなかったが飛び起きヘッデンを点し辺りを見渡すと増水している。すぐにシュラフをカバーのなかに突っ込んでザックに放り込み、その他外に出していた物も拾い集める。その間も増水し続け気付けばテン場は川になっていた。焚き火の周辺に置いてきた鍋や食材、ビールは既に流された後だった。
テン場だった場所の奥の藪の中に畳一畳程のスペースを見つけ、ここにタープを張り直し横になった。熟睡した。



翌朝起きると、増水は落ち着き昨日より水量はあるものの遡行出来そうだったのでそのまま進むことにした。




大ゴルジュに入ると、早速泳がなければならない3mCSが現れる。朝一から泳ぐのかとゲンナリしつつも頑張って泳ぐ。増水しているが、今シーズンでは増水してる沢しか行ってないからいつものことと諦めて頑張ると、意外と簡単に取り付けた。そのまま登って立木にロープをフィックスして伊藤さんに投げ渡した。

 

 

それからしばらく行くと、次に赤スリングの残骸と残置スリングのある6mが出てくる。ここは難しくなくサクッと登れた。
ここを抜ければもうゴルジュは終わりで小倉谷の核心は越えたことになる。

 

この辺りからナメも出てきて再び癒し系の様相を呈し、変わりゆく景観を堪能しながらゆっくり歩くと40mが現れる。当然高巻きにかかるが、先日の中津川とは異なり小倉谷は総じてかなり簡単な高巻きで消耗することもなく落ち口に戻れた。


それから分岐が続き、両門の滝の左俣の滝を巻いたところでさらに高巻いて右俣に戻らなければならないところ、間違えて左俣を少し進んでナメ滝を堪能してしまった。一向に40mが出て来ないなと思っていたところで伊藤さんに指摘を受けて間違いに気付く。トポの矢印が付いてる方を進行方向と勘違いしていた。
少し戻り、高巻いて右俣に戻った。

すぐに40mが現れ、これを越えると30mが見えてくる。トポにも記述があるが、この滝は大岩が連なった急な沢筋の上部の正面に出てくるので、下から見上げるとゆうに5,60mはありそうに見える。個人的にはこの滝が一番カッコ良かった。
左から高巻くと、左岸にとても広く滑らかな一枚岩の床が広がる。落ち口から望む景色も良く寝転がって昼寝をしたい気持ちに駆られるが、名残惜しみつつ歩みを進める。


2070m地点では一部雪渓が残っておりやや冷たい風が吹いていた。もう昨日ほど増水の恐れのある場所ではないが、昨日の雨もあったことから少し高い所にタープを張った。焚き火の仕度をしていたらまたしても雨が降りだし、焚き火は諦めて食事を摂り昼寝した。しばらくして雨が止み、伊藤さんは焚き火を楽しんだようだった。もう増水はしなかった。

3日目はもう大した滝もなく余裕ではあったが、トポを数えると26個くらい滝マークがある。伊藤さんはややうんざりしている様子だったが、必要以上に寝たため元気一杯で楽しく詰め上がれた。

山頂では若干ガスっていたが、もう十分に景色を堪能していたので残念さは感じないで済んだ。
小屋まで降り、ビールを買って一息ついて、黒いアンダーウェアを着たままの下山では干からびて死にそうだったのでTシャツも買ってそれに着替えて下りた。下山はひたすら長く暑かった。

新穂高温泉に着いてから登山センターに荷物をデポって歩いて鍋平まで車を取りに行き、新穂高の湯に浸かり朴葉味噌定食とラーメンを食べて帰路についた。

ここからが長かった。
今回の山行の核心は夏になり本気を出した小仏トンネルだった。
松本から家に着くまで7時間かかった。もうね、ふざけんなよ。金返せと言いたかったね。
おかげでNCISを4話くらい見ちゃったぜ。


<プランニングコメント>

1泊でも行けそう。
金木戸川は全体的に禁漁区なので釣りはしないように注意。
ギアがほとんど不要なので軽量化に努めると楽ができるだろう。

<テクニカルコメント>

ロープは30mで十分。20mでも大丈夫かもしれない。ロープは、カムエイドのところ、大ゴルジュの泳ぎ、残地スリングの滝の三か所でしか使わなかった。
ガチャはほとんど不要。マスターカムの1番に相当するカムが一つもあればいい。踏み台がいればそれすらも不要。

(記:井出)

<伊藤の感想>
小倉谷は前々から行きたかったところで、企画をしたことがあったが、なんだかんだで中止になり、今回も危うく中止になりそうな雰囲気で、まじかーなんて思っていたが、行けて本当によかった。噂通りキラキラで素敵な沢でした。
前に近くの双六谷に行っていたので、なんとなくイメージがあり、双六よりちょっと難しいくらいなのかなと思っていたが、2日目増水したことやクライミングが苦手な私には乗っこせない箇所がいくつかあり、ロープやお助け紐に助けられた。(井出っちは簡単と書いてあるが....)泳いで取り付くところなんかは、空身で先頭が行って荷物をロープで引き上げるんじゃないの?と思ったが、そのまま荷物を背負って登れてしまう井出っちには感心してしまった。私は泳ぎで途中から進まなくなってしまったのでロープ様々でした。
やはり北アルプスの沢なので、平凡な場所でもスケールが大きく、岩や釜が大きく綺麗だった。滝も双六とは違い小滝は思った以上に多く、30m以上の滝もいくつか出てくるので、すごーいと景色を楽しんで登っていたが、だんだんお腹がいっぱいになってしまった感じだった。ただ大きな滝はもちろん巻きになるのだか、意外にも巻き道は結構しっかりしているところが多かったように感じる。
また今回テン場で初めて増水で避難する経験をしたが、高い場所なら今回の雨くらいなら結構経験しているので大したことはないが、場所が低すぎた。テン場に着いた時、さすがに低いでしょと少し場所を探したが良い所がなく、雨は予報では2日目の夜だったので、まあ大丈夫かなんて思っていたが、雨が降りだし雷がなってきたので、さすがに心配になり私は沢靴を履いて荷物をまとめて待機した。しかし井出っちは大丈夫だよと早々に寝る態勢に入っているのにはある意味すごい心臓。雨は一時激しく降ったが、その後バラバラになったのでほっとしたが、その後うとうとしてしまったら、突然背中が濡れだしたのでびっくりして起きてみると一気にテン場が増水した。早急に井出っちを起こし避難したが、井出
っちは大事なものはさすがにまとめていたので大丈夫だったが、朝にも使う鍋や食料は放置していたので流されてしまった。幸いにも少し高台に上がったところが草で覆われていたが、踏みつけたら意外と平らで寝れる場所があったので本当に良かった。夜中も一時雨が激しく降った時間もあったので、タープが流されていたり、避難場所がよくなかったら、大変な一夜になっていたと思う。増水避難を経験し改めて勉強になった。増水は時間差もあることも改めて知った。
今回の沢は色々あり、少し怖い思いもしたが、奥深い沢はリスクはつきもの、得るものも多かった。安全面には充分気をつけて、また他のキラキラな沢に行きたい。思い出に残る沢の1つになりました。井出っちありがとう。

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