黒部川支流剱沢(剱沢大滝)※敗退

日程:2023年10月6日~8日(前夜発2泊3日)
形態:沢登り(大滝登攀)
メンバー:丸ちゃん(L)、ナベ(記)

10/5(木)
運転に弱い二人で交代しながら扇沢まで。
北上するにつれ天気は悪くなり、扇沢では雨。ターミナル軒下にテントを張らせてもらう。

10/6(金)
曇り時々雨
0750 黒部ダム発 1200ごろ 十字峡 1250ごろ 懸垂点 1550ごろ 剱沢平


0730の始発で出発。平日にも関わらず人は多い。
日電歩道への入口はバス降りてすぐなので、バスの中で飲んでいたペットボトルを捨てる暇がなかった。
日電歩道に入るのは始めて。丸山東壁は意外と近いな…という印象を受けたが、別山谷より先はさすがに遠く感じた。

白竜峡に多数ある木製の足場はただただ怖い。ほぼ番線任せの強度。普通の現場なら怒られるよコレ。

そしてようやく十字峡。
踏み跡は吊り橋の上の広場から続いており、なんとフィックスまである。
適当に辿り、そろそろトラバースするか、というところで踏み跡から外れてトラバースし、適当な尾根を下る。いまにして考えるとこれはドンピシャだった。
尾根は上流側が常に切り立っており、本流近くで懸垂。十字峡出合ゴルジュ最上部に出る。
小滝が2つほど残っており、増水していたので難儀した。


吊り橋の上から出合いゴルジュを見る。



尾根の踏み跡上にあったプレート。


踏み跡からトラバースし、尾根を下って最後は懸垂



剱沢本流は水圧が強い




これを越えると容易な河原となるが、トポ通り左岸→右岸と2回の渡渉。いずれも増水していて緊張した。剱沢は俺の知るどの沢より流れが早く、冷たく、水圧が高い。 時折I滝がちらっと見える。通常、滝という物は下方向に流れるところ、間欠泉のように時折横方向に噴き出しており、ちょっと引いた。
右岸から大きな支流が入り、その先に台地が見える。アレが剱沢平か?その麓の平和な河原にツエルトを張る。明日水が引いて無かったらヤバいなあ…とかなんとか話し つつ、丸ちゃんが担いできたパック酒をストローで回し飲みした。
結局、日曜晩から天気が崩れることから、今回は焚き火テラスまで偵察して帰ろう、ということになった。



最初の渡渉点。


1回渡渉してから左岸をへつったり巻いたりして、もう一回渡渉して右岸へ。写真中央ちょい左奥の台地下(おそらく剱沢平)の河原で幕。



焚き木は豊富。



ワンパック熱燗ストロー飲みはコスパ最高


10/7(土) 曇り一時雨
0700 剱沢平出発 0850ごろ I滝手前で撤退開始 1130ごろ 剱沢平 1250ごろ 十字峡出合いゴルジュ出口付近から右岸高巻き開始  1750ごろ 高巻きを終えトラバース開始 1930ごろ 水位計小屋 2000ごろ 十字峡


起きると昨日よりはなんとなく減水しているが相変わらず水量は多い。出発し対岸への渡渉とロープを出しての左岸ヘツリでI滝に迫るが、最後のちょっとした渡渉が増 水でこなせない。
片道切符でジャンプすれば7割位行けそうだったが(残り3割は賽の河原にたどり着きそうだった)、もし行ったら真砂沢まで抜けるか、運に任せて水流に流されるしか なく、日曜晩から雨が降る予報では突っ込めなかった。
散々協議した結果、I滝をバックに記念撮影して撤退することとした。
多少なりとも減水していたので下りは行きよりは楽だった。


I滝手前。記録の多くは右岸側のCSに泳いで取り付いている。今日は水圧強くて水流の向こう側に行けなさそう&寒すぎるので左岸の岩をへつること に。


へつり中。行きも大変だったが帰りも大変だった。


I滝。大西ラインが見えたが、俺が行く時は古のラインだろうな…

行きに懸垂したゴルジュ出口付近の尾根に直接取り付くと岩登りになるため、1本手前の尾根の上流側のルンゼに取り付いて適当に登り、トラバースをかけようとした が、これが大ハマりの元となった。
ルンゼを適当に登っていったら岩が出たりなんだりで行き詰まったので、左手の尾根に取り付く。ザイル出して登り、尾根に出たのはいいが、目標はもう1本下流側の尾 根(行き道で下ってきた尾根)だ。しかしずっと側壁が続いていてトラバースが掛けらえない。こっち側も断崖になっていて、要するに間の谷が深い。
しかもこっちの尾根がだんだん悪くなってきてザイル出動。灌木が多いのでザイルさえ出せば危険ではないが、藪にザックを抑えられながら急傾斜の岩・灌木交じりで非 常にしんどい尾根を何と10ピッチ近く(しかも毎回50近く出した)登り、ほぼ稜線に近い1300m付近まで追いやられてようやくトラバースが掛けられる雰囲気と なった。安易に高巻くとハマる、という典型ではあるが、まさかこんな超大高巻きになるとは思わなかった。剱沢恐るべし。
既に日没近く。まさかこんな超大高巻きになるとは思ってなかったので水もほとんど持ってない。ヘッドランプを出してトラバース開始し、以降は10m下るごとにスマ ホGPSで現在地確認しながらの下りとなる。下ればどこかでビバークできる平らなところがあるはずだということで進むが、全然平らな所はない。延々と急斜 面&藪が続く。昨日中に雨がパラついた影響で藪が濡れており非常に鬱陶しい。ビバークを諦め、「標高1100mくらいまで降りれば、行きに使った踏み跡を つかまえられるはずだ、そうすれば今晩中には降りられるはずだ」ということで蟻のような歩みで少しずつ下っていく。周りは猛烈な藪で、ヘッドランプで急激に落ち込 む斜面を照らし、時折ある高木を目印にジリジリ進む。
やがて1130m付近で丸ちゃんが「人工物だ!」と叫ぶ。そんなわけねえだろと思ったが本当に人工物で、芋川ジロト沢にもある、ダムの水位計小屋だった(「仙人谷 ダム上流水位計十字峡中間局」と銘盤があった)。

「これがあるということは、メンテナンス用に作業道がある!」

この喜びは、日没後に藪の中でダム用の水位計小屋を見つけた人にしか分からないだろう。

小屋からの出だしで若干迷ったが、以降はほぼフィックスが付けられた踏み跡を順調に辿り、無事十字峡に出られた。広場にツエルトを張ってビバーク。水は丸ちゃんが ザイルで吊り橋から焚き火缶を垂らして補給した。

焚き火テラスにすら辿り着けず、完全にシャーディス団長状態(「何の成果も!得られませんでした!!」)だが、結構ひどい目に遭った後にヌクヌクと平な所で寝るこ とができて、充実感はあった(笑)。



人工物だ!(写真:丸ちゃん提供)

10/8(日) 
高曇り
8時ごろ十字峡発 12時ごろ黒部ダム着


今日は下山だけなので朝寝するか…とか言ってたら阿曽原温泉小屋から何人も縦走者が上がってきて、広場を横断する形でザイルを張ってツエルトをぶら下げていた我々 はとにかく謝るしかなかった。

帰りの日電歩道は、登りとなるので行きよりは怖くない。
なんと大学の時の先輩と行き違う。山の世界は狭い。

丸ちゃんがぶっ飛ばして、ナベは黒部ダム着40分遅れ。次回は丸ちゃんにギア担いでもらおうと思った。


こんな感じで広場にザイル張ってる所、続々と登山者が…ご迷惑おかけしました。

初日の軌跡 https://yamap.com/activities/27269987/tracks
2日目の軌跡 https://yamap.com/activities/27288315/tracks

<感想>
次回アタックのために書き残しておく。

・花崗岩でヌメる。たわしで擦ってもあまり落ちないタイプ。しかし草付きを考えるとやはりゴム底か。
・本流ではフレアしたクラックが多く、ハーケンは長めの方が有効だった。大滝ではわからないが…
・残置ピトンがあるので、スリング&カラビナ多めがいいと思う。今回カム対カラビナを一対一でラッキングしたが、二人ならカラビナにカム3個位まとめてス リング&カラビナを増やしたい。
・ナベは下半身は2mmのネオプレンタイツ+カッパで行ったが渡渉はどうしようもなく冷たかった。3mmネオプレンウェットやドライスーツで断熱するか、いっそ断 熱は諦めて行動中に乾かすこととして厚手のネオプレンはやめるか。丸ちゃんは下半身はドライレイヤー+1mmウェット+カッパとのこと。
・ナベは上半身はドライレイヤー+ラピッドラッシュ+土方ヤッケ+1mmネオプレンベスト+カッパだったが、これはまあまあ良かった。
・丸ちゃんは薄手中綿入の化繊ジャケット+280ダウン、ナベはDASパーカーライト+イスカの150ダウン。ふたりとも安眠できた。もう少し削れるかも。ツエル トの結露さえ気をつければ濡れないので、ジャケットはダウンでもいいかも。
・やはりサンダルは必須。今回減量の一環で省いたら、ネオプレーンソックスを履いている時間が長くなり、足の皮がズルズルにふやけた。快適性に加え、足を乾燥させ るためにもサンダル必須。
・鍋はロープで吊ることも想定して焚き火缶にしたと丸ちゃん。今回大当たりでした。
・どんなに強いパーティでも、入山前最低1日、入山後最低3日の好天が必要。スピードがあれば次の悪天に捕まる前に脱出できるはずなので、やはりスピード=安全。 沢の登りこみよりも、フリー・本チャンの登り込みによる技術・スピード・体力アップが必要だと思った。


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