谷川岳/幽ノ沢左俣/滝沢大滝
メンバー:ハガリン(L)、ナベ(記)
形態:クライミング(本チャン)
日時:2023年10月14日(夜行日帰り)
10/14 晴れ
0415頃 ビジターセンター駐車場発 0540幽ノ沢出合 0645幽ノ沢二俣 0800左俣カールボーデン下 0825
滝沢大滝1ピッチ目登攀開始 1215 大滝上
1400堅炭尾根 1600芝倉沢 1630芝倉沢旧道出合 1815駐車場
駐車場出てからハガリンが腹痛を訴えている。腹を冷やしたらしい。まー敗退でもいいかなと思ったが本人が行くというので行く。
幽ノ沢出合にはチャリが2台。なるほど賢い。二俣下の10メートル滝で右岸側に1パーティザイルを出して張り付いており、もうひとパーティ順番待ち?してたので左
岸からザイル出して抜かせてもらうが、抜いたあと二俣でグズグズしてたら抜かれた。彼らは全員右俣行き。
我々のみ左俣へ。
最初の滝もスラブが乾いていたので直登できた。幸先が良い。
すぐ釜持ち滝が連続するので右岸から灌木登りというか藪漕ぎと言うか、巻気味に登る。1時間ほど巻いて、広い草付きの上部から懸垂で左俣に降りる。
ここから最初の滝を登り、カールボーデン(スラブ)を概ね水流左側を登り、傾斜が立ってきた所でロープを出す。
懸垂下降して大滝を仰ぎ見る。
最初の滝を登り、スラブ(カールボーデン)へ。※写真提供:ハガリン
スラブ(カールボーデン)を登るナベ。この少し先でザイルを出した。※写真提供:ハガリン
※全ピッチほぼ50メートルロープ一杯
1P目 ナベ V+
簡単だったのと下山が強烈過ぎて忘れた。ビレイ点は、ハンガーがぶっ飛んだ(最初から無い?)錆びたオールアンカー2本の上でハーケンとロストアローで作成。登る
よりビレイ点作成の方が時間使った。
1P目をリードするナベ。※写真提供:ハガリン
1P目をフォローするハガリン。よく見ると腐ったビレイ点用アンカーがある。
ビレイ点が腐り過ぎていたので、テラスの一段上の狭い所でビレイ。
2P目 ハガリン V+?W-
傾斜の強い尾根の側壁みたいな奴を右から巻くようにして登り、少し左上の外傾テラスでビレイ。ランニングはカムやボールナッツが決まり良好だがビレイ点は腐れ残置
しかなく、ハーケンで作成。こちらもビレイ点作成の方が時間かかった。
2P目をリードするハガリン。強傾斜帯を右から巻いて左上。
3P目 ナベ W+?X-
強傾斜帯基部を左にトラバースし、オープンブック(コーナー)下から取りつく。動きそうな岩にボールナッツなど怪しげなプロテクションしか取れないがスタンスは豊
富。乾いてさえいれば難しくはない。コーナーをちょこまかとスタンス・ホールドを拾って登り、やがて核心の凹角。
凹角下には8年前に打った浅打ちリングボルトがまだあったが、ハーケンやスリングはもう無かった。凹角はカムが決めづらく、ザイルもちょっと重かったしもう半分出
ていたのでハガリンに代わってもらおうかと思ったが、そもそもまともなビレイ点が作れないので、頑張って左壁に長めのハーケンを根元まで決めてようやく腹が決まり
離陸して凹角の中に入る。全く安心できない残置ハーケンにクリップ。すぐに行き詰まり左手に逃げたが、これが「日本の岩場」に載っている「凹角から左のリッジ」と
いうことだろう。気休めのハーケンを足元に打つ。高度感が半端なく、ここで足先行ムーブを起こさないといけない。
「ハガリーン、落ちたら全部飛ぶと思うけど、落ちたらごめんね?」
「落ちないでくださ?い」
腹を決めてハイステップ。幸いホールドは繋がっていた。
左上にある灌木にスリングを巻いてようやく安心。右上してスラブで残置のリングボルトからランナーを取りテラスっぽい所に出るが残置が何もなく、かつ、これでビレ
イするにはちょっと…という形でしかカム・ハーケンが決まらないので、それらの中途半端なカムやハーケンをザイルまとめて、2m下のリングボルトまでクライムダウ
ンし、上の支点と合わせて流動分散してビレイ。
009.j
3P目をリードするナベ。ビレイ点から左トラバースして、コーナー下から直上。※写真提供:ハガリン
3P目の凹角を左出てリッジを登るナベ(小さく映ってます)※写真提供:ハガリン
3P目をフォローするハガリン
ザイルをスリング代わりに使うなど、小細工総動員のビレイ点。
4P目 ハガリン V+?W- 45m
直上後、右トラバースして若干草付きっぽい所を抜け、滝落ち口の水流を渡る。ここもまともなビレイ点が得られず、ハーケンを叩き込んでいた。ハガリンは落ち口の大
岩(といっても1?もない)を使えないか真剣に悩んだとか。
4P目終了点。ここはいいテラスで水もあり、眺めも良くて最高。しかし支点は無い。(写真左奥の岩をビレイ点にしようか迷ったとのこと…)
まだ沢は滝を掛けながら続いているが、ここでザイルを畳んで、クライミングシューズのまま、右手に見えている岩稜の裏を取りに行く形で詰めを開始する。気持
ち的に は、中央壁の頭を裏側から登るイメージ。
簡単だが、スリップ即死亡みたいなゾーンが結構続いて精神的に来る(ハガリンはロープ出したピッチよりカールボーデンの登りと詰めの登りのほうが怖かったとのこ
と、しかしザイル出してたら絶対に日帰りはできない)。
岩を右に左に逃げたり藪をこいだりで確か150メートル程標高を稼ぐと、途中一回テラスを挟むので、ここで沢靴に履き替え。藪優勢となり傾斜がゆるんできてリッジ
の上(多分日本の岩場に載ってる「スカイラインリッジ」)を行けるようになる。振り返るとなんと後続に人が。中央壁の正面フェースを登ったとのこと。
沢から離れて左岸を登るナベ ※写真提供:ハガリン
4P目終了点から出発するハガリン
詰めの下部は岩が多い ※写真提供:ハガリン
詰めの上部は藪優勢
やがて待望の中芝新道(堅炭尾根)に出る。廃道とのことだがこのあたりはまだ高山帯の植生なので、クライマーの靴裏攻撃に藪が屈しており、明瞭。しかし下るにつ
れ、刈払いがなされていないことにより笹藪が優勢となり、小さく2〜3度ほど踏み跡を外す。なお、この下降の間、ハガリンは「地図の読めない女」的な部分で女子力
発揮(前腕はその辺の男より太いのにな)。
そして最後の芝倉沢への下降は途中の鎖場以降完全に踏み跡を見失い、適当にルンゼを下降。何度か踏み跡を外している間に抜かれた中央璧パーティも同じところを下っ
ていた。
消滅しかけの中芝新道。
なんとかノー懸垂で芝倉沢に降りれば、もともと登山道なんかペンキマークしかないようなところなので、適当に下れた(滝は概ね左岸巻き)。
旧道を歩き、一ノ倉沢を過ぎたあたりでヘッデンを出し、無事駐車場着。
予定していた水上周辺の穴場?は閉まっていたので、ハガリンの案内で月夜野の定食屋へ。
なお、ハガリンとは下山中に飯の話をしたが、ハガリンは「モツ煮とご飯は合わない」「ラーメンは食べに行こうと思わない」などのちょっと意味の分からない発言。
ラーメンが苦手…?
(服部文祥さんも、<「朝からラーメンなんて食べられません」なんて言ってる奴は大体使えない>とか書いていた。いや、角幡さんだったか?)、
「じゃあテメー何なら食えるんだよ」とかちょっとキレ気味に食って掛かったが、そんなグルマンであるハガリンの案内の店である。完璧な下山飯を決めて完☆全
☆優☆勝でした。
「下山飯さえ決まれば山行は8割成功」。そんなマイ格言を確信させる下山飯でした。
【テクニカルコメント】
・主な装備はアプローチ出動として沢靴(ゴム底)、ザイル50×2、カム、ハーケン、ボールナッツ。カムはマスターカム?キャメ赤。ハーケンはアングル1、ロスト
アロー1、薄刃ピトン6程だが、アングル以外全部使った。薄刃ピトンもビレイ点で使うとランニング用が少なくなるので、もう少しあってもよかった。ザイルは担げる
なら60でも良いかも。撤退もビレイ点探すのも少しは楽になる。ボールナッツは無くても良い。むしろナッツを撤退用(いざというときにハンマーで叩き込んじゃう)
に持っていくといいかも。
・二股まで本流遡行、二俣から左俣に入り右岸を藪こぎして懸垂して沢に戻った。右岸の踏み跡はあまり期待しない方がいいと思う。我々は大半を外したと思うがそれで
も1時間くらいしかかからない。
・大滝下のスラブ(カールボーデン)も落ちると死ぬが、こんな所でザイル出しているとビバーク確定となると思う。
・大滝は我々の場合、合計4P。残置はほぼ無い。人工なんかできないし、フツーここでビレイするだろってテラスにも残置の残骸しかなかったりするのでピッチグレー
ドのわりに。毎回ハーケン打ってビレイ点作成。乾いてさえいればスタンスを信じてグイグイ登れる。W+の域を出ないし、眺めは最高なのでもっと登られてもいいと思
うが、ビレイ点が無いこと(=撤退も困難)やツメ・下山の悪さから簡単には取りつけないという事か。(ガイドがビレイ点整備して同ルート下降できるようにしたら手
ごろなルートになると思うが、それもちょっと違う気もする)
・核心の滝左の凹角(我々の場合3P目)は乾いていればW+?X-程度だが残置はほぼ無い。カムもあまり決まらない。この支点状況では乾いてないと俺くらいのクラ
イマーでは無理(前今回は二日ほど降ってない。また、前後のピッチやアプローチ・詰め・下山含めて乾いてないと相当難しい)。コンディション悪い場合は少なくとも
人工壁5.11+程度を普通にオンサイトできるくらいのクライマーにリードしてもらう必要ありと感じた。なお、ここが一番ビレイ点に困り、残置のリングボルトと、
2m位上に取ったスリーカム&タイトルハーケンをザイルで連結しこれに半ばハンギングしてビレイ。
・4ピッチ目は思わず直上して枯滝を登りたくなるが、右上して藪の薄いを越えて本流の落口に出るのが正解。ここも、このルートを登ろうとすると間違いなくココでビ
レイするはずなのに、ビレイ点用残置が何もない。
・詰めは大滝終了点から、中央壁の頭を裏側から取りに行くイメージで左岸を詰める。簡単だが高度感があるので結構怖い。途中まではクライミングシューズ。
・廃道となった中芝新道(堅炭尾根)は標高高いところでは踏み跡がハッキリしていたが、下るにつれ笹が優勢となり、何回か踏み跡外して藪こぎした。最後の芝倉沢へ
の下りは完全に踏み跡を外してしまい、ルンゼを無理やり下ることに。ヘッドライト下山は難しいと思っていた方がいいと思う。
・芝倉沢はもともと登山道なんかペンキマークくらいしかなかったので廃道化の影響はなく普通に下降できる。
・総評として、クリーンで静かなクライミングが楽しめるがアプローチ・詰め・下山含めて非常にワイルド。乾いていれば残置頼りからから脱却してナチュラルなクライ
ミングに挑戦したい初?中級本チャンクライマーにとって丁度いい対象。濡れたらマジでヤバイ(これは谷川の岩全般に言えるが…)。
・土合〜湯檜曽~水上あたりの店は閉まるのが早いが、月夜野まで出ると結構開いている店が多いということを覚えておきたい。混むのが嫌なので今回の店名は書きませ
ん!
地図軌道:https://yamap.com/activities/27453645/tracks(幽
の沢出合からログ取って下山まで)
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