【日程】2024/5/26
【メンバー】ナベ、篤
0500桑の木沢出合 0700ごろ金山台地 0740第二スラブ基部 0830ごろ第一リッジ登攀開始 1040トラバース断念、撤退開始 1500桑の木
沢出合
本日の天気はいいが明日が朝から悪いので、
・常道である2スラ下部岩壁~右上バンド~スラ洞窟までのルート偵察と、おそらく雪渓が後退して露出しているであろう2スラ下部岩壁にボルト連打(後退時で
も取り付けるように)
・上記が無理な場合、かつて鉱山道が3スラ洞窟まで続いていたというので、その部分のトラバース(記録が散見される、第1リッジ左フランケの洞窟から、第3ス
ラブ洞窟までをトラバース)
を検討し入山。
まず金山沢奥壁に入ろうとするとアプローチも厄介だ。日の出くらいに金山台地に着いて、壁上部にスノーブロックがないか確認してから取り付きたいが、日の出前のヘッドランプ行動では、桑の木沢右岸の踏み跡はルートを外す可能性が高い。桑の木沢を沢登りするのが最も容易だがここを普通に沢登りできるようでは雪渓が後退してシュルンドが開いて壁に取り付けない可能性が高く、かといって雪渓がバッチリという場合は壁にブロックが残っている可能性が高い。桑の木沢に雪渓が中途
半端に残っている時期がベストと思われるが、その場合桑の木沢にを遡行すると踏み抜く危険がある。家の串尾根を末端から登るという手も有り、今回もアプローチは家の串末端からとしたが、末端のどこから取り付くかにはセンスを問われる(今回は桑の木沢に入って少し進んでからルンゼに取り付いて木登りで尾根まで上がった。勘が悪いと岩登りになるだろう)。なお、尾根上はだんだん下草が伸びてきておりこのままなら使えるのはあと2シーズンくらいか。
結局、本番では、桑の木沢出合くらいで日の出というタイミングに設定して、右岸の踏み跡か尾根末端に取り付くしかなさそうだ。
上記の通り家の串尾根はちょっと下草が伸びてきており、使えなくなるのは時間問題という感じだが、現時点では問題なし。山の神からはそれなりに踏まれているので部分的に藪が濃かったりルンゼが入って不安定な部分以外は問題ない。
やがて赤岩スラブに入ると、例年同様枯れ草が足元に堆積しており、コイツごと谷底に転落しそうで恐ろしい。
金山台地に着き、奥壁を眺めると、ブロックは全く残ってないけど雪渓はかなり後退しており、第2スラブの右上バンド取り付きは、その下の岩壁が20メートルくらいは露出していまっている。
今回は最悪あそこにボルト連打して、後退時でも取り付けるようにして帰るか、ということになり、マイナースラブから下って雪渓の繋がっている所から雪渓に乗る。
アイゼンを履いて、第1リッジ(第1スラブ右岸の尾根)を回り込んで第2スラブ基部まで歩くと、露出している右上バンド取り付き下部は、右手に顕著なコーナーがあるがこちらはプロテクションは取れそうだが傾斜が強くちょっと難しそう。真下に浅い凹状があり、プロテクションが取れそうだし、5.9くらいで登れそうだ。これに取り付くか、と近づくと、シュルンドが1メートル位開いている。今回は偵察目的…アイゼンで岩に向かって1メートルジャンプはちょっと…、というこ
とで路線変更し、伝説の大トラバースを試みる。
何十年か前にはノーザイルで歩けたらしい。
第1スラブの顕著な滝あたりからそれらしきバンドが第2スラブに伸びているのでたぶんあれだろうということになるが、その滝にスノーブロックが乗っており、アレに向かって詰めるのはナシなので、一旦、第1リッジ右側に上陸しザイルを出す。
金山沢奥壁
金山沢奥壁 概念
今回は2スラに(コンディションの悪さと気合不足で)取り付けなかったので、左の洞窟から3スラ洞窟まで繋がっていたという幻のラインを確認しようとして、
第一リッジに右側から取りついて登り、1スラへトラバースしてスノーブロックの裏からバンドに取り付いたが撤退した
金山台地の先から下降して雪渓に降りる。左奥のリッジが第一リッジ
第二スラブ取り付き
よく見ると、左上する傾斜の強い大凹角の左に、もう少し優しそうなリス~クラックが走っていて登れそう。
(しかしアイゼンジャンプしないと取り付けなかったので諦めた)
3スラ洞窟へと続く右上バンド
【1P目】 ナベ Ⅲ 30m
リッジを顕著なバンドまで。ショボい灌木でビレイ。
フォローする篤さん
金山台地に来た他パーティ(NET山岳会HALU)が我々を撮ってくれた写真
【2P目】 篤 Ⅲ+A0 40m
バンド?をトラバース。途中崩壊ゾーンを下がり気味にトラバースして第1スラブ本流に入り、スノーブロックを裏から回り込んで電ドリでボルトを1本ぶち込んで
対岸のバンドに上がり、一段上がってハーケンとカムでビレイ。
なおナベはビレイ中にハーネスを履いたまま野グソという高等技術を実践。
ビレイする篤さん
フォロー中にビレイ点~2スラ方面を撮る。なんとなく行けそうだが…
【3P目】 ナベ Ⅲ+ 10mで敗退
三つ峠の鶴ルート八寸バンドを彷彿とさせるバンドが右へと続いており、トラバース。5mくらい進んでガバがあったので電ドリでボルトをぶち込み一安心。さらに
右トラバースを続けるが、この先は傾斜が増して、部分的にスタンスがつながっていない。その先で一旦バンドが復活してはまたブランクセクションが現れて…と
いった状態になっており、とても「雪渓後退時のバイパスルート」にはなり得ない状況。
5.10くらいのクライミングで行けそうではあるが…俺には無理。
【撤退】
諦めて撤退することとした。ランニングのボルトからM8用ハンガーを外して戻り、篤さんのビレイ点下にボルトを2本ぶち込んでワッシャーで切り売りダイニーマを無理やり抑えてつけて固定し、懸垂支点として2P目終了点へトラバース気味に懸垂。やむを得ずスノーブロック下に一度入ってしまったが幸いブロックは落ちてこなかった。
M8のウェッジアンカーにスリングをかけてワッシャーで固定。
なお、ビット選定を誤ってオールアンカーM8用(8.5ミリ)にしてしまったせいで、一部アンカーはチップが効いていない(ほぼリベット状態。本来はウェッジアンカーM8にはビットは8ミリを選定しないといけない)。
2P目終了点ではナベのクソに気を付けながらボルトをぶち込み1P目を懸垂。ここでナベが雪渓の繋がっている上陸地点まで下りればいいものを、なぜか、1P目
の取り付きでオーライと言ってしまい、ロープを抜いた後でクライミングで降りるのは厳しいということに気付き、さらにもう2本ぶちこんでショートの懸垂。
雪渓に戻り、マイナースラブから金山台地へ。
帰りに見た第一リッジ左フランケと洞窟。こちらの面もかつての鉱山道は概ね崩壊している模様
金山台地からの帰りは、下り勾配となるので行きよりさらに危ない。
何度もこんなところに来ていてはいずれお陀仏だろうと思うが、金山沢奥壁はなかなかタイミングを掴ませてくれない。
やはり、フリーと体力を鍛えて、5~6月の、多分1週間くらいしかないベストコンディションの時を捉えて一撃するしかないのだろうか。
あるいは、金山台地をベースとして登り、テントは残置して翌週回収ということでワンデイクライムで突っ込むか、家の串尾根から戻ってくるか(赤岩第一スラブ左
岸の尾根から家の串尾根に上がるルートが過去越後三山岳友会により赤布が付けられ整備されたが、現在では赤布は見当たらず、簡単には金山台地には戻れなさそ
う、ボルト持ってればマイナースラブをラッペルしてしまうのが一番安全そうだが、あるいは藪がうるさそうだが赤岩第一スラブ左岸の尾根の一番藪が濃い所をラッ
ペルしてくるか)
第2スラブ右上バンド下のラインが意外と下までつながっていそうなので、雪の少ない年の秋に来てゴルジュから登るというのもあるかもしれないけど、それもまた
例年なら中途半端に雪渓が残っているはずで、コンディションが難しそう。
【篤感想】
例年なら6月が「岩壁上部の雪のブロックが無くなる」「雪渓が壁に付いているか、安全に飛び付けるレベルのシュルンド」でチャンスの筈が、今年は牧野さんからのアドバイス通り、まだ5月だったのに1mのシュルンドが開いてしまっていました。
また、桑ノ木沢の「雪渓が鉱山道が横断する辺りから上はバッチリなのに、下部は一片の雪もない」のにも驚きました。
つまり、
・桑ノ木沢出合いまでの林道に雪はほぼ無し
・桑ノ木沢下部と鉱山道が鉱山尾根に向けて横断部分する付近までは雪は無し
・家の串尾根の鉱山道にも雪は無し
で、「上部のブロックはなし」「シュルンドは1m」だったことになりますが、こうして指標となる基準を積み上げたいものです(いずれにしてもブロックと雪渓が見えるところまでは行ってしまうと思いますが)。
また、3年前に3スラを登った際に3スラ洞窟を確認しましたが、1m程しか掘られていない試掘のようでした。
なのに、金山台地からあそこまで岩をうがってトラバース道を作った当時の鉱夫たちの根性と、その道を消し去ってしまう金山沢の雪崩のパワーにはただただ驚くばかりです。
今回はその「道が消し去られた地帯」に入って、バイパスルートの可能性を模索し、「例え強引に拓いてアプローチルートには出来ても、撤退ルートとしては無理がある。仮にボルト連打でアブミトラバースとしてもボルト自体が数年で無くなってしまいそう」ということだけでも確認出来たことは収穫であったと思います。
GPS→https://yamap.com/activities/32100982/tracks