八ヶ岳地獄谷権現沢右股三ツ滝ルンゼ遡行


2024/6/30
丸山、他2名

シン沢ヤ交流会当日、人疲れしてしまった我々は明日はちょっと別の沢に行かない?ということになった。楽しむだけ楽しんですみません。ここ数日の降水量は多く明日も雨予報。ならば普段水がチョボチョボの沢が良いはずとキノポン図書室で本を漁るうち、大系に三ツ滝ルンゼというのを見つけた。「八ヶ岳でも他に類をみないルート」「見かけ以上に脆い岩は人工手段をも受けつけず極度に苦しい登攀になる」「…最近の技術を持ってしてもなお不安定感は残るという名うてのもの」らしい。ふんふんなんだかたのしそう。夏の八ヶ岳の沢登りというのも変わり種的で面白いので行ってみることにした。しかもこれは、流行りのBK活動なのでは?

6/30(日):曇のち雨
美し森(8:20)―出合小屋(9:40-10:00)―三ツ滝ルンゼ出合(12:10)―権現岳(16:50-17:00)―ツルネ(17:30)―出合小屋(18:20-18:30)―美し森(19:50)


前日は結局、日付が変わるまで飲んでいたのでとにかく眠いし、遅すぎる出発になってしまった。でもこれが限界。地獄谷は2~3年前の冬にシンさんとイサミさんと来ているが、どこを登ったのかもあまり覚えてなかった。しかし記憶とは不思議なもので、アプローチの河原を歩くうちにいろいろ思い出してきた。出合小屋の薪ストーブが壊れているのに燃やしまくって人間燻製小屋になったこととか、アイゼンの前コバのアタッチメントを忘れて予備の靴紐とダクトテープでぐるぐるにして登ったこととか…。

思い出の小屋を過ぎ権現沢へ。正面ルンゼ出合いを分けると、谷はゴルジュの気配を放ちはじめる。そこから10分程、アイス本でいうところの「ゴルジュ入り口」と、ナメ滝ルンゼ出合「要注意デブリ多い」の二ヶ所に大きめの雪渓が残っていた。どうりで水が痺れるほど冷たい。今年は雪渓などカケラも残ってないと思っていたのでちょっと意外だった。


「ゴルジュ入り口」の辺りの雪渓

その間にある10mの滝が最初の核心。両岸は凝灰角礫岩のそり返るようなゴルジュで、巻くならば大高巻きは必至。登るしかないってやつだ。下部はボロいながらも傾斜は緩く、上部は岩質が変わっていて硬そうに見えた。はじめ羽月さんがフリーで取り付くが、むしろ上部が想像を絶するボロさで傾斜も強まって進退極まる。しかもロープを持っていなかったのでそこにいてもらい丸山がロープを引いて登ことになった。下部をこなし件の上部。マジでボロい。炊飯器とかケトルくらいの岩が平気で取れる。リスはあるものの基本的にピトンを打つとエキスパンド。ボールナッツ1番と怪しげなナイフブレードを決めアブミをセット。恐る恐る立ち込んでいく。ピトンはぬ、ぬ、ぬ…抜けなかったッ!ギリギリで滝上のガバにマントル返して突破。ただ、念の為と羽月さんのセルフをプロテクションからとったのだが、それは本当に良くなかった。フォローしてきた成田は「事故のニオイがした」と一言。ハイ反省します。


最初の核心10m滝


アブミをセット。右手の先に見えているフーレクみたいなのは触れたら落ちた


ナメ滝ルンゼ出合手前の雪渓

ナメ滝ルンゼ出合手前の雪渓は際から躱し、三ツ滝ルンゼへ入る。やがて最大の核心の三ツ滝。う?ん、デカい、悪そう。水量はもはやほとんど無く滝というよりはBK(ボロ壁)だ。というかガスっていて全貌はよく分からない。絶対に勝ちたくないジャンケンは、羽月さんの勝ち。「勝ったからにはやるわッ」と頼もしく気合い入れクライムオン。登るのは三つある滝の一番右。ガスが濃く何やってるかはよく見えないが、ロープは快調に伸びていく。時折、ハッとかホッとか吠える声がする。垂直部に差し掛かった直後、ふわりと身体が浮いたように見え、ガラガラッと大量の岩とともに羽月さんがおちてきた。最終ピン2本は敢えなく弾け飛び5m強のフォール。その下で止まった。「あれ?あんなところにプロテクション取ってたっけ?」と不思議に思うが、なんと、岩角に引っ掛かって止まっていた。ロープが切れなくて本当に良かった。もし引っ掛からず下のハーケンまで落ちていたら落下距離10m以上となりそれはそれで危なかった。落ちた際左手を強くついたため痛いそうだが、歩くのに支障なかったのは幸い。上のプロテクションが全部飛んだので回収の必要もなく一旦帰着。「すまん選手交代で…」と言うので、「いや巻くでしょ!」と二人総ツッコミ。結局、草付きをトラバースして右手の尾根に乗り、岩壁回り込む形で高巻いた。滝上に懸垂15mで復帰。


核心の三ツ滝を登る。ガスっていて良く見えない


三ツ滝頭に懸垂で復帰


その先は源頭の雰囲気となり、地味に悪い滝が連続する。ボロいのが怖くて何回かロープも出した。息が切れる登りを終えると縦走路に飛び出した。無事登りきれて良かった。雲海とかを期待していたが、そんなことはなくガスガス。風持つよい。権現岳ピークに立ち寄り、赤岳にも行きたかったが終電の時間を考えてやめて(社会人らしい判断)、大人しくツルネ東稜を下降した。河原を歩き、すべての渡渉を終える頃に暗くなった。雨もますます強くなるなか、最後はヘッデンで下山。いろんな意味で思い出に残る山行になった。なんか自分は地獄谷という名の谷と相性悪いのかな…。


源頭まで地味に悪い滝が続く


権現岳ピーク


最後はヘッデン
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