「へーい。なーんでまたあんなに遠くに見えるんだ。これから向う駒ははるかかな
ただぜ」どっしりと左右の雪の台座から、なお鋭くりりしく存在を誇示している。で
も、まあ、天気上場、2日もあるし、明日は多少の崩れはあるかもしれんが、何とか
いけるべ。
なんてたって相棒はあの絶品滑降の寺なんだぞ。
そんなスチエーションのもと快適なシール登高で、道行山だ。この登りは尾根を使
うが急なためと雪の少なさからスキー担ぐが、雪状態がよくても傾斜と滑落の恐れか
ら、スキー登高は無理だろう。
次の小ピークは小倉山、ここいらからしばらくだらだら登り。小草平の池から急登の
始まりだが、一踏ん張りで抜ける。さらに幅の無い急斜面をトラーゲンで駒の小屋
へ。
もう山頂は指呼の間だ。カラ荷でピストンするが、その頂きからの眺めはやはりグー
だ。
荒沢岳から稜線のつながり、中ン岳、八海山。その合間に見える平が岳、下津合、巻
機山。反対は未丈が岳、毛猛連山、その他会津の山もばっちりだ。これもほんも一部
で山座同定はきりがない
。
さあ、滑降モード。一気に小屋前へシュプールを刻む。雪質はまずまず。幅狭の部
分は寺は一気に小回りでガンガンで通過。ワイは慎重に抑えすぎて冷や汗で通過。こ
けて滑り出したら大チョウナ沢まで吸い込まれて、五体満足では済まされない。
そこを過ぎれば、そう近場にはない大斜面がしばらく続く。
気持ちの良い、駒の尾根を体で感じながら風を切り、周りの山とも一体して降りてい
く、そんな感じの滑降だ。
無理に下れば充分、車へはたどり着く。だが、今日はあの寺がパートナーだ。絶対
今夜のディナーは絶品にちがいない。そう読んだワイは「このまま降りてもなんだか
ら山での酒の一夜を楽しもうや」で予定通りのツェルト泊。
ところがこれがでかいアクシデント。なんとこともあろうに、酒飲み寺の酒が無い
というのだ。ウイスキーとスピリを持参したというニコニコ顔が引きつってきた。
リックを逆さにしようが、隅をほじくろうがない。3回ほどまさぐりあきらめた。
二人して、爆腕オバがいれば、下の小出の酒場に買いに頼むだが。つまみと飯の上手さ
と多少の酔いで目一杯盛り下がったのだった。
夜半、予報通りの強風に見舞われ、バタバタのおおわらわだが、朝方に再度ブロッ
クを積み防風する。なんと一晩で昨日積んだ1mのブロックは跡形もなく、風に水分
を取られてなくなっていた。雪面も10センチ以上は下がったようだ。
そんな状態も楽しみながらチカララーメンで腹をこしらえて、一気に下降する。短
いがやはり雪の尾根は楽しい。右に左に木立を抜けてアッという間に駐車地だ。
振り返るとまた、あの駒がはるか遠くに見えている。なんと崇高な姿やんけ。これで
ワイらのたった2日間の山スキーは終焉し、実社会に戻された。ジ・エンド。
メンバー L治田敬人、寺本久敏
タイム
4月20日銀山平8:00〜山頂13:40〜道行山15:00泊
21日発7:40〜銀山平8:40