■奥秩父/笛吹川東沢東のナメ沢[溯行]

2006.9.3
高橋弘、小浜知弘、長嶋剛
 東のナメ沢出合を"東のナメ沢もこんな感じだけどもっと規模が大きいんだよね"と講釈たれて、これが東御築江沢と信じていたので通過。
 右岸にきれいな滝が見えてきた。やっと乙女の滝か。次が東のナメだな。
 2人組が休んでいたので"これが乙女の沢ですか?"と念のため聞くと"西のナメ沢"という。彼らがネットからコピーした写真にはこの滝が写っており西のナメ沢とキャプションがついていた。ということは、さっき通過したのが目指す東のナメ沢か?目の前の滝にはワイヤーが垂れていて、確か西のナメ沢はワイヤーにプルージックとりながら登るとルート図集にあったのを思い出して動揺していると"この滝見たことありますよ!佐藤さんと釜の沢登ったときにみましたよ"とオバちゃんが言う。"それで、やっぱこれは西のナメ沢なの?乙女の沢じゃないの ? "と聞くとニヤッとしてどっちでしょうね、という。意味ねえじゃん。俺だってこの滝を見るのはこれで4回目だぜ。写真を見せてくれた二人には悪いが、西のナメ沢とは確信が持てず上流に向かう。なんてたって、山ノ神で本流に下りてからこれが右岸に入ってくる初めての沢で、さっきのが左岸に流入する一本目。ということは東御築江沢であり乙女の沢であるはずなのである。結局釜の沢すぐ手前までいって該当するものが無いので、やっぱあれかと引き返す。ほんのちょっとは気をつけていたつもりだったが、何度か流れから離れてショートカットしたのが命取りだった。
 ゴメン、自分は釜の沢敗退行の行き帰りと、翌年の遡行時の全てにおいて"ああこれが東のナメかあ"と鑑賞した覚えがあるので目をつぶってでもこれると思ってたのよ。だるい気持ちを抱えて、さっきの沢まで戻ると そうそうこれだよ、東のナメ沢だよ。思い込みで違う沢に見えるとはあらためて山は油断大敵だー
 出合でフラットソールに履き替えて一段目100Mは傾斜がゆるくフリクションバッチリで、"ふくらはぎが痛てー"と叫びながらペタペタと登る。もっと曲がってくれ足首。水流の右を登るが、気がつくと長嶋さんだけ水流左を登っていた。長さがあるだけに次第に高度感も出てきて一段目の快適度はなかなかのものだ。オバちゃんは最初沢タビでいこうとしたがやっぱやめてシューズに履き替えた。
 一段目落ち口で水流を右岸に渡りザイルを結ぶ。全ピッチでトップがザイルを2本曳いてのぼり、フォローは時間差で同時に登った。テラスはそれぞれ広く、ザイルを結び替えて順番に交代でリードした。

1P(小浜)30M
 "自分でもここは登れそうです" おいおい、なんてこと言うんだよ、オバちゃん。全く登ってないからなあ。それじゃそういうことでお願いします。一段上のレッジまで直上。登るまでは一段目に毛が生えた程度の傾斜かと思われたが、意外に厳しい。
2P(高橋)55M
 左上方の目立つ立ち木を目指し登りやすいところを選んでジグザグに。広大なスラブは距離感を狂わせ、余裕で届くと思っていた木まで5M届かず、ビレーヤーに一段上がって貰う。一番気持ちよくておいしいピッチだったかも。ピンはいがいにある。
3P(長嶋)45M
 長島さんの超絶技巧爆発。見よ 俺のアイアンハートを!立ち木からバンドを右にたどり一番傾斜の強そうで、コケがついているのか岩が黒くて滑りそうなところをわざわざ選んで直上。残置ピンは当然一本もなく、自分で打ったハーケン1本のみ。オバちゃんも"長嶋さーん、楽なところでいいですよー"と悲鳴をあげる。ブッシュに届いたときにはこちらも手に汗握っていた・・・はずはないか。タバコすってたからなあ。フォローするとすごさがよくわかる。
4P(小浜)40M
 取り付きからめだって見えていた、3段目の滝の水流すぐ左のクラックからスラブ直上。傾斜が強く、特に落ち口のスラブはフリーでは相当困難に見えたが、ここというところにカチだったりガバだったりがあって、岩登りはこれだよ!というような快適なピッチ。途中振り返ると、出合まで巨大な滑り台が続くのが見え、ど真ん中を一条の水流が断ち切りとても美しい。ここを登りきると、名残惜しいが見えなくなる。
5P(高橋)40M
 4段目は通常は水流を右にわたって登るようだが、左をそのまま直上。ステルスラバーのフリクション限界傾斜に近く、途中ズルッと10センチくらい滑るが、一段揚がると傾斜は緩みフィナーレへ。全ピッチ草付きに逃げることなく、オールフリーで登れて気分いい。

 滝上にて。
 "いやー、さっきはもう釜の沢の遡行でいいと思ってましたよ"
 実は俺も投げやりにそれでいいやと思っていた。
 "それにしても俺にはこの滝、沢タビじゃ絶対登れないね”
 "濡れて無くてよかったですねー。こんなの無理ですよ"
 全員一致した意見だが、昔から登られてるってことは・・・・
 滝から上はなんていうか、キタナイって言うか、まあ尾根まで短くて助かった。

ピンは意外に結構あり、テラスも広く、全体に4級を越えるところはなく(?)、とにかく気持ちよく美しい。滑りそうで恐いところは時に出てくるが、フリクションを信じて行くしかない。

高橋 記

【記録】
9月3日
 東のナメ沢出合10:00 - 滝上12:00 - 鶏冠尾根14:00

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