北ア 金木戸川打込谷

2003.8.13-.15

治田、寺本、佐野、塩谷、近松

 台風からの増水も実は引けてなく、与えられたチャンスを逃さず不安の中、「やるしかないやろ」で行ったのが今回の山行の成功 の賜物だと感じる。僕らの前後の入山パーティは敗退し、この13日 に突っ込んだ連中が何とか双六の下流を味わえ通過できることを 許された。


打込谷下部の渓相
 水流を舐めていたわけではないが、小倉谷上の渡渉で流されそうに なったときは、僕自身もやばいと感じた。体勢を崩しつかんだ岩にさらに 姿勢が崩れ水圧に抵抗しているとき、「こりゃ、やばい」と直感した。
 登攀の墜落の恐怖とは別の流されたら最後、もみくちゃになって岩に ぶつかりながらころがる自分を想像できたからだ。
 さて、この体験から無理は禁物と踵を返し、まき道の軌道跡登山道で上部へ誘う。
 つり橋から双六本流に降り立つが、相変わらずの激しい流れである。
 僕の経験した、黒部上の廊下、岩井俣の下流をはるかに凌ぐ、強く重い 流れである。弱点ツキだが、女性二人とまだ経験値の浅い塩爺もいる。
 あまり無理してもフォローができなくては意味がない。いくつかのポイントを楽に進むが上の幅広の瀬に詰まってしまう。横切るのも下に滝があるので後続者を考えると今ひとつに思え、泳ぎからのザックピストンで行こうと決断。ところがこれが八目うなぎでも前に進めず、側壁から振り子トラバしてのダイブで何とかクリアした。水も冷たく久々に気合いの入った一瞬。
 やっと打込谷。この日だけだった太陽サンサンとはしらず、くつろぎ谷の明るさ広さにため息をついた。
 打込谷は本流とにて白い大岩のゴロゴロした谷で滝もそれらしい顕著なものはしばらくない。幕場もなく35m滝を右岸から越えた先に手頃な平地の河原を寺キャンの勘としつこさによって発見。焚き火もし盛大に入山初日を飾る。

 夜半から雨。明け方から強くなり、出るのを遅らす。ラジオの予報では一日雨である。幸い小ぶりなので今日中に下部ゴルジュを抜け、安全地帯までと気合いをいれて遡行開始。
 打込で一番いいところはと聞かれて、人は上部の底抜けに明るい大ナメと言うだろう。もちろん僕も異論はないが、凄みと迫力と面白みの点で僕はこのゴルジュの滝どもを一押しする。巻きが基本だが、仙ノ淵の大滝は玄人向けの手ごわさがあり、迂闊には攻められない。5人が全員通過するまでゆうに2時間はかかった。特に振り子で落ち口テラスに降りてからの上部の登攀は距離はないが人工でかなり辛い(今年の三重線の下部のCSの人工部の乗越しに似た感じだ)。
 ヘアピンの2連爆も規模もでかく、上の釜は20m以上に直径にまっすぐに落ちる水勢は久々に「うーん、いいもの見せてくれるわい」で感嘆詞と絶句のみ。
 ゴルジュを超えれば気が抜けて、本降りになっても楽勝気分。ただ時間との戦いでどこまでいけるか、手頃な泊り場あるかを考えるだけだ。
 しばらく中州とゴーロが続く、あきの来る頃、待望のナメが空前のスケールでご登場だ。これもまったく素晴らしい。いわゆる東北にある「ヒタヒタにユルユルな森の中のナメ」ではなくで、「豪快に水を落とし落差もそこそこにあるナメ滝」が中心で構成されている。そしてこの谷全般にいえるがフリクションは良く効くので「濡れ手に滝」で実に楽しく登れる。
 正面に爆水を見ると二俣で、ここしかいい泊り場ないと直感し末端台地へ。
 案の定何とか5人が横になれる最適な草地が見つかった。 雨に打たれ体が冷え冷えになる中、快適にタープ張りを終え、いよいよ今山行のディナーショー「塩爺鍋」の始まりだ。具は書ききれない。確か白菜一束、餃子、シュウマイ、棒ラーメン、ポコチン、ニンニク漬けやら白米五合と全部はとても 食切れない。散々食って飲んで、外が風が吹こうが雨が降ろうがお構いなし に酔いしれた。

 最終日は強行軍だ。笠まで800チョイ登り、新穂高まで1800下るというものだ。なかでもやはり北西尾根にルートを取ったのは正解で本筋攻めだったら最後の不安定なガレでどれだけ苦しめられたかわからない。それでも足が決まらず苦労してようやっと稜線に抜け、笠まで立った。
 笠新道のくだりは楽しさも最後は「いい加減にせい」とふつふつと喜びに変わって来るから面白い。ガクガクの膝で新穂高。グッドタイミングでタクシー乗車で金木戸林道。でも後が続かない、風呂でゆっくりして飯食ったら、帰りの電車に間に合わなくなってしまう。急きょ中央道経由、みんなの家まわりでご帰還となった。寺さんはでも3時過ぎのお帰りらしかった。ほんとうにご苦労様。
 この山行でだいぶみんな力をつけたと思う。シーズンはこれからだ。

記 治田

【記録】
8月13日
 林道終点7:30 小倉谷9:30 つり橋11:00 打込み谷 13:00  幕地16:00
8月14日
 8:30発 ゴルジュ抜け12:30 二俣台地15:30
8月15日
 7:20発 北西尾根9:30 笠が岳10:20 笠新道林道14:30 新穂高15:30 タクシー金木戸林道16:30

金木戸川打込谷の感想を遅ればせながら書きます。
今年の沢は雪渓に増水にとイジメてくれる山行が多い中、今回もやはり苦労しました。
本流筋の増水はかなりのもので、治さんの報告でもあったように真剣勝負でした。実際確認出来ただけでも3パーティーが敗退していました。
水量は一時1.5mも増水したそうです。(その人達は2日待ち、結局渡れずに帰ってきた)車止めで偶然行き会った名古屋の友人(松本労山パーティー)達も本流を遡行して蓮華谷出合いまでに3日を要したそうです。ちなみに蓮華谷出合いでルアーを引いたところ、釣堀状態だったらしい。ちょっと悔しいゾ〜!

打込谷の下部は巨岩の乗越しとその下に出来た深い淵の渡渉に苦労するも、それなりに楽しみながらの遡行。快適なテン場で初日だけでも焚き火を堪能できたのは幸せ&飲み過ぎでした。
増水で迫力を増した滝の登攀、巻きからみたゴルジュの凄まじさ、これだけ増水してもなおエメラルドグリーンに輝く深い淵、上部のナメの連瀑、等々見所は続き飽きが来ない。
2日間とも良いテン場に恵まれ、たらふく食らい快眠できた事も成功のカギだったのでしょう。 ツメのガレ場には難渋したものの、読みもバッチリ、小笠にピョコンと飛び出し拍手バンザイ。
雲の中、たまに姿を見せる槍や穂高を眺めながら大笠まで15分。下山の笠新道は相変わらずきつく昨夜までの雨で道はドロドロ、コケまくりお尻もザックも泥まみれ。途中の水溜りでお尻を洗う姿も。
 下山後、車の回収も実にスムーズに運び満点の山行でした。でも、この後がいかんかった。 大渋滞にハマり、全員を自宅まで送り届け帰宅したのが3:30。実にこの日23時間行動。
オイラまだまだ元気だわい・・・とビールが美味かった。笠新道を下っている時はこの山域は暫く勘弁だなと思ったが、あの辛さも喉もと過ぎれば・・・で「次は小倉谷だ!」なんて考えています。岩魚もウヨウヨいるらしいですよ。

追伸、治さんの報告中にある食材の紹介での「ポコ○○」はいかんね。上品な山登の中にあって「ポコ○○」はいけません。あれは愛称「ポコ」で断じて「ポコ○○」では無い。似てても違う。
ウーン、やはりポコはポコでありポコ○○では無いのだ。
上品に上品に・・・いきましょ!