■北ア/五龍岳東面西遠見山定着 春山合宿

2013年4月14日(日)
鮎島、山崎、奥村、小池、高橋、田中、細谷、伊佐見、大部U、堀内、岩田

西遠見山手前の幕営地にて全体集合写真

雪上訓練風景

G0稜隊

GU中央稜隊

GV稜隊
 会山行委員の任期は2年。
 私は2011年夏から会山行委員となり、合計8回の会山行すべてを企画してきた。

 企画するに当たり、気をつけていたことがある。それは、「山登の魂」で標榜している「会員各自が基礎を確実にふまえた上で、創造的な登山を展開できるようになる」を実践に移すことだ。

 その「創造的登山」を行う上で、何が一番重要なのか?
 それは、「いろんな山、いろいろなジャンル・いろいろな人と行く」ということに他ならない。

 通常の山行をしていれば、個々でどうしても好みが偏るし、それに伴いパートナーも限られてくる。しかし、創造的な登山を展開するのであれば、それではだめ。
 いろいろな人と、いろいろな山へ、いろいろなジャンルで登ることをしないと、広がりがない。これは自分の経験則として、よくわかっていたことだった。

 よって、会山行という形で出来るだけ多くの人と一緒になる機会を提供し、さらにはいろいろな山域・ジャンルを行うことで、個々にありがちな思い込みや固執の枠を取り払い、会員の思考や世界を広げる―――。

 これこそが、会山行の最大の目的であり、意義だと思っていた。
 だから、会山行委員として、それを達成するためにも会山行を企画するにあたっては、

@基本的に誰もいっていないところを目指す。訓練山行でも同じところはなるべく行かない。
Aジャンルを限定せず、沢、岩、アイス、雪稜、スキーなどオールラウンドに行う。
B山域も限定せず多くの山域を目指す。
C会山行は宴会登山にあらず。それぞれの山行で2日のうち1日は、実践的にバリエーション登山を行う。
D多くの人が参加できるよう、かなり前の段階から日程をフィックスする。

 の5点が必要だと思い、前提としていた。

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 前置きが長くなった。

 まず、今回の春山の会山行で、なぜ五龍岳東面に設定したのか??
 それは会員の誰一人として五竜の東面の雪稜に行ったことはなかったからだ。
 そして、雪稜だけでなく、スキーとしても、課題が作れ、多様化する会員の思考に対応できると考えたからである。

 雪稜も、幾通りかルートが取れ、1日目は団体行動して、雪上訓練と親睦を行い、2日目は分散してバリエーションを行う―――。
 親睦も図れ、また会としての実力が試され、挑戦しがいのある課題ではないか。そう思い、2年前から計画していた。

 そして、2月中旬から実際に準備開始。3月には2日目の行動パーティであらかじめプレ山行をやってもらい、万全の準備をして望んだ。
 もちろん、直前にメンバーのバタバタがあったけれど、何とか当日を迎えられた。

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 当日の天気は、運も味方してか、2日間とも快晴。しかしながら、直前の金曜日に30〜50cmの積雪があるコンディション。
 これは、重い雪のラッセルとなるという点で決して良い条件とはいえないことを意味する。

 スキー場トップから歩く。すでにトレースがあるから良いものの、ラッセルがたいへんそうである。しかしながら、いつの間にか先頭集団に追いつき、トップを争うようになってしまった。こちとら、ワカンなんかもってきてないので大変である。
 しかし、後方のスキー隊は準備不足が目立ち、先頭のラッセル猛者集団からかなり遅れ始めて、最終的には1時間程度の差になってしまったのは反省。

 最終的には、3〜4時間程度歩いた西遠見山手前の地形図では池になっている場所に4張のテントを張り、そこをベースキャンプとした。


 BCの設営後は雪上訓練。
 ただし、ここまでに予想外に時間がかかってしまったので、当初予定していた歩行訓練・滑落停止訓練は割愛した。

 まずは、逆側の急斜面において、まずは弱層テスト。
 基礎知識を堀内さんから説明いただき、いろいろ参考になったのは、個人的には収穫である。また、スキーにおいてのシュプールのつけ方などは大いに勉強になるもので、今後、気をつけたいものだ。

 次に、スタンディングアックスビレイ。
 めったにやる機会のないビレイ方法であるので、みなうろ覚えだったがそれを確認できたこと。さらには、アックスをどのように踏むのか?を実践して、それぞれしっくり来る方法が確認できたと思う。

 最後に、ビーコン捜索。
 ビーコンを持ってても使い方を知らないと意味がない。2班に分かれて実施。最終的には7分前後で発見できたが、アナログビーコンはまったく使い物にならないことが確認できたと思う。

 2つのテントに集まって、親睦の後、2日目の行動パーティに分かれて20時半には就寝。

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 2日目の行動は、下記の5隊に分かれて、分散行動を実施。

 @【G0稜】(L田中、岩田)

 A【GU中央稜】(L高橋、大部U)

 B【GX稜】(L山崎、伊佐見)

 C【A沢滑降】(L鮎島、堀内)

 D【シラタケ沢滑降】(L奥村、小池)

 E【頂上ピストン】(L細谷)


 雪稜の3隊はそれぞれの報告を参照いただきたいが、前日に積雪があり、日曜日も終始、重い雪のラッセルが強いられる悪コンディションの中、なんとか1dayで貫徹できた結果となった。
 一方で、ピストン隊は2日目午前中の主稜線は風がとてつもなく強く、GUの頭手前で撤退し、ピストンは断念。
 A沢隊も弱層や雪庇が懸念されたため、A沢の滑降を断念せざるを得ず、かわりにシラタケ沢の滑降へと切り替えた。シラタケ沢の雪のコンディションも良いとはいえず、果てしなく重い雪のスキーとなった。

 さて、13時にBCに待ち合わせ予定であったが、G0隊とGX隊はその時間には帰ってこなかった。BCから両隊の動きはある程度把握できたが、かなり時間がかかりそうだったため、鮎島だけを残して下山。
 最終的には両隊とも16時前にBCに帰着、その後にBCを撤収して下山を開始し、何とか明るいうちにはスキー場についた。しかし、ゴンドラの営業時間に間に合わず、ゴンドラをわざわざ動かしてもらっての下山となった。

 今回の山行は、とてもいい結果の山行ができた、と評価できると思う。そう思う理由は下記の4点。

(1)雪稜3隊が貫徹
 G0,G2,G5の雪稜3隊がこんな悪コンディションにかかわらず貫徹できた。これは会山行全体の成果として、十分な結果だったといえる。
(2)今後の個人山行の可能性の拡大
 今回、天気も良く十分に鹿島槍北壁が望めた。また同じ山域の不帰など、後立山の雪稜を狙うに当たっては、今回の山行は大きなモチベーションになったと思う。会山行の目的の一つである個人山行の可能性の拡大という点でも、今回の山行は目的を果たせたと思う。
(3)あまり顔を合わせない会員との親睦
 今回も11名という多くの会員に参加いただいた。新入会員の堀内さん・岩田さんの参加、さらには関西在住の山崎さんが参加してくれたおかげで、新鮮なメンバーの親睦も十分できたと思う。
(4)リーダーの育成
 実質、当会でリーダーを務められる経験者は現在のところ、治田・高橋・山崎・佐藤+私(?)の5名に限られている。昨今、個々に忙しいし、今後のことを考えるとリーダーの育成は急務であった。ついては、今後の期待という意味を込めて、G0隊を田中さんにお願いしたわけだが、今回のG0稜でそれなりの経験を積んでいただいたことは、会にとっても意義があると思う。

 その一方で、もちろん反省点が少なからずある。
 一番の反省点は「会山行に臨む姿勢」が共有できてなかったことに尽きるだろう。それぞれ、いろいろ言い訳はあるだろうが、参加する以上、しっかりと準備し、意識して臨んでほしかった。
 これは、今後の課題といえると思う。

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 さて、この2年間、下記のように8回の会山行を企画・実行してきた。

No.時期計画実施
12011夏奥鬼怒/源頭沢登り奥鬼怒/源頭沢登り
22011秋丹沢/水無川訓練丹沢/水無川訓練
32011冬奥秩父/東沢アイス奥秩父/東沢アイス
42012春毛猛/未丈ヶ岳スキー越後/巻機山雪訓
52012夏南ア/戸栗川沢登り上州武尊/川場谷沢登り
62012秋関越/土樽周辺訓練関越/土樽周辺訓練
72012冬上信越/木戸山ラッセル奥鬼怒/明神ヶ岳ラッセル
82013春北ア/五龍岳東面雪稜北ア/五龍岳東面雪稜

 会山行の意義・目的は「多くの人と一緒になる機会を提供し、さらにはいろいろな山域・ジャンルを行うことで、個々にありがちな思い込みや固執の枠を取り払い、会員の思考や世界を広げる」ことと、冒頭に書いた。

 結果としては私が凍傷になってしまったこともあり、実際は2012年春・夏・冬については妥協せざるを得なくなったこと、また昨秋の土樽白板スラブも2日目が雨ということで、実践の岩登りができなったことはご存知のとおり。
 それでも、多くの山域に行き・多くのジャンルをやり、多くの人と山に行けたという実績は誇れると思う。
 確かに、会山行を通じて全会員の思考や世界まで広げられたかどうかまでは疑問に残る部分もある。
 しかし、それは個々の会山行に臨む姿勢次第という側面もあるのだろう。そのあたりは割り切って、会山行の役割・目的は十分に果たせたものと自負したい。

 それはともあれ、最後に、忙しい時間に都合をつけ、これらの会山行に参加いただいた皆さんにも感謝申し上げたい。
 特に皆勤の高橋さんは敬服するばかり。いや、ありがたい!また、8回中7回参加の治田・田中・伊佐見の3氏にも、深謝。
 もちろん、私、個人的には、育児の忙しいなか、会山行を優先させていただき、率先して家事を引き受けてくれた妻、恵に対しても感謝なのだ。

 皆様、2年間、本当にありがとうございました。

2013.4.22 鮎島 筆

【記録】
2013年4月13日(土)快晴
 スキー場トップ0900、西遠見山BC1330、<雪上訓練>、終了1630
2013年4月14日(日)晴
 <各隊分散行動>、BC最終撤収1615、スキー場トップ1800

【写真】

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