■南アルプス南部/遠山川支流・北又沢・葡萄沢右俣遡行〜左俣(仮称:クレーター沢)下降[沢]

期間:2023年7月17日~18日

メンバー:ナベ(記・写真)、アツシ(一部写真)


た、魂〜

凄い沢でした。

これ程の沢がネット初遡行。へたすると人類初遡行。

お陰で酒が旨い!


7/16 曇り 上村川神燈沢遡行

 

金曜日がまあまあ残業になってしまったのと、平日の間天気が悪かったので、土曜は朝発としてアプローチと、アツシさんとの初ザイル合わせも兼ねて集落の裏の沢に登る。下部は堰堤だらけだったけど林道から上はなかなか滝があって良かった。超大増水していたので今日大きな沢に入ってたらヤバかった。

下山後、予定していた飯屋のオープンまで時間があったので旧木沢小学校見学しようかと立ち寄ってみると、猫校長先生をナデナデできたり、飯田出身でこちらに事務所を構えている大蔵善福さんに昔話(アツシさんの大好物)や最新の林道状況を伺えたりで大変良い時間を過ごせた。

 

遠山郷中心地の和田にある居酒屋(たまり場光穂)で飯を食い、道の駅にて車中泊。


7/17 晴れ時々曇り 遠山川北又沢葡萄沢本流(右俣)遡行~左俣(クレーター沢)1439m付近まで下降

06:50 北又沢出合→07:25 葡萄沢出合→08:15 30m大滝→09:25 1439m二等三角点から来る沢(左俣・クレーター沢)との出会い→12:00 営林跡(標高1200m付近)→13:00 上部連瀑帯開始→13:55最後の滝→14:25 エコーライン(1976m一等三角点の南)→15:15 御池山登山道駐車場(葡萄沢左俣1439m二等三角点を目指し下降)→16:30ごろ 1439m二等三角点付近

 

たっぷり寝られたので早出できた。

大蔵さんから伺っていた通り北又沢出合には色々迂回しないと辿り着けず、話聞いてなかったらヤケクソで遠山川本流遡行とかしてたかも。

北又沢出合付近の路肩は3台くらい停められるが釣師で満車。少し先の路肩に駐車して出発。

北又沢右岸の再造成中の林道を歩いてあっという間に葡萄沢出合。

 

沢は暗ったいが、その分苔が生えておらずゴム底沢靴がバチギマリ。

顕著な滝を2つほど越えると両岸切り立ったゴルジュの先に30m級の滝。左岸から高巻く。

 

入渓してすぐゴルジュとなり、小滝が出てきて楽しい。(写真提供:アツシさん)

 

大滝。左岸からちょっと高巻き。

下降時はより攻撃的に落ち口から左岸バンドを使って加工できた。

 

コイツと、右岸の木の根っこが腐ってる草付を登った滝以外は問題なかった。

沢がカクっと右に折れて、右岸から顕著な支流が入ってきて両門の滝となっており、これを越えると下部ゴルジュは終了。

もちろん見所はあったけど、意外にあっさり地形図上では核心のように見えた下部のゴルジュが終わってしまい、アレこんなもん?って感じ。

中央構造線近くで崩壊が激しいため、土砂の流入が多く、釜が埋まっているのでほぼ泳ぎが無いため見た目より優しい滝が多いのが理由だろう。

 

滝左の泥壁に木の根っこが張っていたので登れるかなと思って取り付いたら…半分くらい根っこが腐っていて肝を冷やした滝。

ザイルを出すべきでした。

 

登れる滝が多くて楽しい

 

少ないけどキレイゾーンもある。暗いけど…

 

右に折れるところ辺りにある立派な滝。

釜をへつって奥のルンゼからバンド状を簡単に巻けたが、なぜか下降時これをクライムダウンしてしまい、水流左にハーケン残置して懸垂。

 

ゴルジュ終わりに出てくる両門の滝(写真提供:アツシさん)

 

ゴルジュが終わると二本目の大きな支流が右岸から入ってくる。この支流は「御池山クレーター」のど真ん中を流れてくる支流で、葡萄沢左俣にあたるだろう。いわば「クレーター沢」ということで興味はあるがやはりネット初遡行なれば本流筋を行くべきということで引き続き地形図上では水線マークのある本流を遡行する。

見所のある滝が断続的に現れ楽しいが、滝と滝の間の河原が若干あり、かつ荒れた印象なのが残念(これが越後あたりみたいな開けたキレイ系なら☆☆☆☆☆だったのだが)。

若干持て余し気味だったので、ちょうど都合よく難しそうな滝に流木が引っ掛かっていたので、流木にスリング巻いてエイド。たっぷり遊びながら登る(このエイドで余計に1時間は使った)。

 

断続的に滝は出てくるが、ちょっと荒れている。

 

流木クライムで遊ぶ(上2枚写真提供・アツシさん)

 

 

 

沢が来たに直線的に向かう部分は、ちょっと荒れているが、荒れた中にも断続的にいい滝が現れるので、それほど印象は悪くない。

 

沢が西に折れたあたりで再び滝場となる。

以降息をつかせぬほどの連瀑帯となり、その殆どがシャワークライミングで登れるという大変人類に優しい内容。岩の色や質がコロコロ変わり飽きさせない。中でも赤い岩の連瀑帯は小滝の集合というよりも大きなナメ滝と言えそうで、スーパー楽しかった。

本流筋を追っていくとミニ崩壊地形の中に沢が消え、そのすぐ上にガードレール(南アルプスエコーライン)が見えた。詰めほぼゼロ!

 

 

 

 

 

 

 

段々水流が細ってきた。左の二条の滝は右手から巻いた。

 

最後までシャワークライム。

 

もともとは下部ゴルジュが手強いだろうという想定で、葡萄沢の中で一泊、翌日はエコーラインに出てから少し歩き、コスマ沢を下降する予定だったが、葡萄沢がワンデイで終わってしまい、かつ今からコスマ沢下降(もちろん記録無し、かつ地形図ではビバークサイト少そう)はちょっと無謀に見えたので、このままエコーラインを歩いて車回収し帰京するか、葡萄沢左俣の1439m二等三角点周辺が明らかに幕営適地なのでそこを目指し、左俣を下降するかということでしばし協議。

・明日の渋滞やだなあ

・さっさと帰ってスパ銭で休みたい

・せっかく来たんだし焚き火やりたい

・下降すれば流出したアブミ拾えるかも

など色々あったが、左俣は御池山クレーターのど真ん中。アツシさんの「クレーターの中を歩きたい」という希望もあり、左俣下降に決定。

御池山登山口駐車場のあたりから尾根に入るが、この尾根は下草無くてとても下りやすい。隕石落下から二万年の間に河川の浸食作用で普通の尾根・谷になってしまったようで、クレーターっぽさは欠片もなかった。

 

下りやすい尾根。

 

最後は尾根が急になってきたのと暑いので、南側に降りて沢に入った。少し下ると葡萄沢左俣上部二俣。ここはあまり広くなく、少し下った左岸が広く、かつ増水しても安心なので幕場とするが、なんだか人の気配がある。どうやら営林か測量の拠点だった模様で、ストーブの残骸やガラスの破片なんかもあった。

薪は豊富にあったので、右岸側の河原で焚き火を楽しむ。


7/18 晴れ時々曇り 遠山川北又沢葡萄沢左俣(クレーター沢)核心部下降~葡萄沢本流下降~北又沢

05:50 幕場発→06:45 両門の滝(3段70m滝)2段目落ち口→07:05 3段70m下→08:55 葡萄沢本流→10:45 北又沢出合→11:05 駐車スペース

 

下降開始するとすぐ滝が出始め、以降葡萄沢本流に出会うまでずっと滝。本当に河原が無い。懸垂は何回やったか分からない。滝も多すぎて数えられない。捨て縄二本使用。

40m級の両門の大滝(見ようによっては3段70m?もう少し小さいか?)などもあり、凄い内容だった。

 

3段70mを下降し終わったところ。

 

3段70m遠景

 

両門の滝動画↓

南ア/遠山川支流北又沢葡萄沢左俣の大滝(YouTube)

 

小滝が続く

 

登る場合に問題となりそうな滝。

2~3個くらいだが、両岸ブッ立っていて高巻きも困難そうな滝があった。

ほかは直登・巻きどちらかが使えそう。

 

下降もまた楽し。

 

イエーイ

 

ようやく葡萄沢本流と合流。ここからも簡単ではないけど様子は分かっているので一安心。

登りで高巻いたところを誤って滝下降してしまい、一箇所ハーケン打って残置しラッペルした他は問題なく下降できた。

 

葡萄沢下部を下る。

なお、下部の標高950m(ナベ推定)くらいまではヒルが出ます。

 

下山後はせっかく下栗まで来たんだからということではんば亭にて蕎麦定食をお願いする。

おいしかったけど…タンパク質が足りない!!

 

なお、三連休最終日、順調なら4時間で帰京できるはずが渋滞で9時間かかった。


【コメント】

○右俣は、一部を除いてはせいぜいRCC3級くらいの高巻きや岩登りで、その割には内容が充実しており登りごたえ十分。初級者以上にはマジでオススメ。チャリデポしておけば下山も楽勝。ザイルは40m一本で十分。

○左俣は両岸絶壁で巻くなら大高巻きになりそうな滝や、スケールのある大滝があり、登れば正統派の沢としては(俺の経験では)日帰り最上級のオジカ沢に並ぶレベルに感じた。大滝チャレンジや撤退考えると50m二本か。

○両方とも滝が多く登りごたえがあるが、一般ウケする奇麗な部分がごくわずかなのが惜しい。ただ、岩質が多様で変化に富むので、登りごたえ重視の人にとっては、花崗岩一本槍みたいな沢より面白い。両方ともコケは少なく、ゴム底の沢靴がビタビタに決まる。

○車からのアプローチは近いが、下栗周辺は多数の通行止めがある。事前に飯田市HPなどで調べておかないと辿り着けない。

○北又渡付近の駐車スペースは釣り師との取り合い。


【感想】

下田の沢に行く予定だったけど増水してそうだったので転進。

大系に記載がほぼ無く、ネット記録未見の沢を登れて、しかも内容があったのでうれしい。

これだからマイナー沢探しはやめられない。

 


 

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