谷川幕岩 Cフェース洞穴ルート



7月23日(日)曇ときどき晴
 4時半に起床し、朝食後に一ノ倉沢を出発、谷川温泉まで。水平道を二俣まで行く。そこから中ゴーへの道を少し辿るが、雪崩の跡であろうか、倒木がひどく道がまったく判然としない。進路を川沿いへと進みヒツゴー沢を分けてからはオジカ沢を遡行するがすぐに雪渓で渓が埋まっている。雪渓の上を歩いていくと1本右岸から小沢をわけ、1本顕著なルンゼを分けると本流では滝が露出している。これは雪渓が繋がっているところから右岸を薮をこいで巻いて滝上に立ち、その後も雪渓を詰めていくと右岸から顕著なルンゼがまた入ってくる。 当初の目標は幕岩Bルンゼ。これは唯一の資料である登山大系に一番簡単そうで、かつ快適・面白いルートと書いてあったことから選んだものだ。また、登られていない岩壁は基本的にルートファインディングに非常に苦し増されるというのはこれまでの経験から分かっていて、だからルンゼを詰めるだけのルートなら間違えにくいだろうという思惑もあっての選択である。それでBルンゼだが基本的にヒツゴー沢を分けてから3本目に右岸から流入するルンゼ、またネジレ滝の上で右岸から流入するルンゼということで目印を立てていた。でも、雪渓の上を歩いているだけではまったくわからん。また先ほど露出していた滝がが魚止め滝なのかネジレ滝なのかも理解に苦しむ。あのヒツゴーから分かれてすぐに右岸から入った小沢をDルンゼとすれば、このルンゼがBルンゼだし、先ほどの露出していた滝がネジレ滝となるはずだが・・。幸いにもそれまでガスっていた視界も徐々に晴れてきた。資料と照らし合わせてみる。それでも分からなかったが、きっとこれがBルンゼなのだろうと結論して、ルンゼに入ったところで一休み。
 休み時間ふと足を見てみると、青色の靴下がなぜか朱に染まっている。何事かと見てみれば、どうやらヒルに吸われていたらしい。各人片足2匹ずつ吸痕がありまだ血が止まらない。高田さんは生涯初ヒルらしい。どうも二俣までの登山道にいたらしいが気づかなかった。帰りも通る予定なので憂鬱である。 さてルンゼは不安定な雪渓となって続いているが、200mほど進んだところで途切れる。それから先、どうにか右岸が繋がっていたのでそこから沢へとトラバースしようとするがヌレヌレのスラブに加えて非常に不安定な草付きとなって恐ろしいことこの上ない。ロープを出して高田さんがリード。35m+20m+20mのU〜V級クライム3 ピッチでようやく沢床に入ることができた。
 沢に入ればこちらのもの・・というわけにもいかない。小滝が連続し、V級ぐらいではあるものの濡れておりガバはなく、なんとも嫌らしかったりする。それを3個ほどやると8m滝。途中にカラビナが残置されているのが見える。これはロープを出さずにはいられない。わたしは肋骨が痛いので、高田さんにリードをお願いする。左の木から登って少し右へ行って、そこから水流左を登ろうとするが、そのワンポイントが非常に嫌らしい。このワンポイントだけでW+からX−はあった。ところどころ残置はあるものの、古臭くてイマイチ信用もできないがナイスクライムでした。
 すぐ上で二俣となる。Bルンゼの資料を見れば、最初の二俣は左に行かなければならないはずだが、どうみても本流は右だし、左俣には絶対にイヤらしい登攀を迫られる15mほどの滝がかかっている。悩んだ挙句、右俣にかかるスラブ滝を簡単に登ると、一気に視界は開けて大岩壁が真正面に視界に入るようになる。我々は自然とルンゼ状か草の多いスラブ帯へと導かれ、そのままスラブを登っていくが、なんだかおかしい。どう考えてもBルンゼではない気がする。この真正面に見える大岩壁は・・。Cフェイスだ。そう考えると一番辻褄が合ってしまうのは、悲しくもある。完全にCフェイスを前にしてようやくミスに気づいたが、ここで戻るか、進むかの決断に迫られたとき我々が下したのは“前進”という結論だった。もとより今まで登ってきた嫌らしい小滝を下るというのはあまりに危険すぎるように感じたし、空には晴れ間も覗いている。Cフェイスの資料もあったのでもう一度登る前提で選定をしていくと、この難しそうなCフェイスにも “クーロワールルート”というのがあって30mV級と書いてある。
 これを行けば下るよりも登ったほうが苦もなく行けそうだと思いもあったわけだ。壁には2箇所ほどロープが垂れている。濡れているし、ヤバそうだし、あんなところ登るの嫌だねーと会話を交わしながら、洞窟からは壁沿いを左にトラバースするが、ちっともクーロワールっぽいところが見当たらない。まぁルンゼ状なのかなということで簡単そうなところを登り始めると、なんだか嫌らしくなり始めてきたので、沢靴からフラットソールに履き替えて、なおもノーロープで行こうとするが、見た目ほど簡単ではなくすぐに行き詰る。幸い、目の前にはボルトがあったので、これをビレイ点としてロープを出すことにする。
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