■奥多摩/日原川倉沢谷「マイモーズの悪場」ゴルジュ

2008.8.9
鮎島仁助朗、高橋弘、渡辺剛士、石川真也、佐藤益弘

F1をエイドするナベ
 結局、当初計画からみんな1時間遅刻した倉沢橋の駐車地(車4台くらいは停められる)―――。
 「あちぃな〜」と連発しつつ、完全装備という名の変態格好に着替える。山の車道脇でウェットにライジャケなんてナニやってるんだろうね。しかも、いい大人のオトコが5人。うーん、哀しいね。でも、視線など気にしないのだ。まずは堂々と橋上から偵察だっ!マイモーズはちょうど倉沢橋の真下にあるはずなのだ。っが、倉沢橋から見下ろしても全然わからない。木の葉に隠れているし、なにせ深すぎる。結果、偵察は意味ないのであった。
 まぁともかく入り口まで行くかと不明瞭な踏みあとを下って倉沢谷の出合まで降りる。すると、いきなり出合から50m進むとF1が立ちふさがっていた。
 F1はあきらかに人工となりそうな6mの樋状滝。巻くことも不可能。マイモーズをやるからにはやるしかない。「誰かやりたいヒト??」・・・・。シーン。「誰かやってもいいヒト??」・・・・。ナベ一人が手を上げた。まぁ、よくよく考えると石川さんも佐藤さんも沢始めらしいし、高橋さんは風邪気味らしいし、わたしはまぁちょっと・・と考えると、残る選択肢でもナベがやるしかないのよね。というわけでナベがロープ2本を引いて空身でトライ。詳しくはナベの懺悔録を参照。意外と残置はあるが、欲しいところにないらしく、とにかくこの6mの滝だけに2時間は頑張っていた。とにかく、後の4人が「あぁ眠いぜ、とりあえず横になるわ」「ここ寒いから日原川の川原で日向ぼっこしてくるわ」とかでウダウダしている中で、ナベは一人だけ奮闘し、間違いなくカッコよかったことは報告しておく。
 でもその終盤、空から「ドッカン、ガラガラピッシャ〜ン、ドッカン」というイヤーな音が・・。う〜ん。確かお天気お姉さんも「夕方から山沿いはカミナリに気をつけてくださいね、ウフッ」と言っていたけど、まだお昼前。オイっそいつマイモーズにやってこい。オシオキしてやる!さらにどうにかこうにかナベが抜けた頃には、雨も降り出してきた。ここ最近のゲリラ豪雨を考えると、こんなゴルジュにいる場合じゃないでしょ。やっぱ10時に集合するんじゃなかった・・と思いつつも、ユマーリング経験豊富なワイがさっさと回収するためにユマーリング開始。
 回収後、さーて懸垂で撤退するかと思ったら(F1上にはしっかりした木があるので容易にゴルジュ入り口まで降りられるのだ!)、いつの間にか雨がやんでいた・・。またF1下からではわからなかったが、F1上の渓相がいいのよ。「ほほぅ。確かに『奥多摩最難』といわれるのもうなずけるな・・」というもの。雨も上がったし、潅木から簡単に懸垂して戻れるし、ちょっと一見の価値はあるな・・ということで全員ここまでユマーリングで上がってきてもらうことにした。
 全員集合後、とりあえずいけそうなところまでということで、進む。
 F2は1mナメ状滝。白泡立っていてヤバそうに見えるが、意外と足が立つので激流を感じながら進めば問題なし。
 F3は左に曲がって大きな釜を持った3m滝。右壁から簡単に登れ、ここまでは問題なし。
 しかしここからだ。ゴルジュの幅はさらに細く5mほどとなり、逃げ場などありゃしない。またこの先、水流は再び右に曲がり、5m樋状滝が架かっていて、しかもその先はまた左へ曲がり、その先がどうなっているのかもまったく伺えない・・。雨は上がったとはいえ、わずかに見える空は相変わらずのあやしい雲行き。さっきのF1みたいに一つの滝に2時間かかるかもしれないし、取り付いている途中にピッカンきたらすぐ戻れるかどうかわからない。戻ろうか・・という方向で話をしていたら、さっきまでシオらしかった高橋さんが俄然張り切りだし、「行くしかないでしょう」という。総長の仰せだ。総長はガンダムのシャアと同じなのだ。赤いシャア長指令は絶対なのである。なお、この場所。丁度、倉沢橋の真下。
 とりあえず、F4の5m樋状は鮎島が右壁を残置ボルト2本を使いつつ8m登ってバンドまで(アブミ使用)。残置ボルトにロープをFixして後続はユマーリング。そこからは総長がきわどいトラバースで越えたが、ここはF4落ち口に降りる感じにトラバースするのだが悪く、アングルハーケンを一本残置でゴボウで下った・・。しょうがないっす。しかし、ここまで来てしまうと戻るのも厳しくなってしまった・・。総長は「この滝を滑り台にして下ればいいじゃん」とか仰っていたけれど、5mとはいえあの樋状滝をウォーターシュートするのは痛そうだし、そうする場合も総長に率先してもらってからでないと絶対にイヤである。まぁここまで来てしまった以上はもう一度雷雨が来ないのを祈り、前に進むだけだ。
 F4上もゴルジュはさらに続く。・・と思っていたのよね。っがだ!確かにゴルジュは続くが、F4上は右に曲がり左へ曲がるが簡単に越えられ、すぐに林道が見えてきてゴルジュは終わった。あれっ。終了!ピッピーッ。結果的にF4を越えたあとには難しいところはなく、総長の判断は正しかった。よかったよかった。
 洗濯機だか浴槽だかよくわからない巨大プラスチックの塊を総長は蹴散らしながら、踏みあとをたどって林道まで上がると車まではわずか15秒の距離だった。この近さが特B級に値するとの声あり。「川乗谷本谷のほうが難しかった」と言う声もあったけれど、結構、緊迫感のあったマイモーズ探検隊はナベと総長の大活躍にて終わったのだった。めでたしめでたし。

 「ムフッ」隊は石川さんと佐藤さんを吸収し、マイモーズを解明しました。「これでオクタマゴルジュが何たるかを語れる」と、ドタキャンを宣言しておきながらなんやかんやでドタ参加された夏風邪気味のT総長もご満悦なのです。
 え〜。でも完全にナメてましたマイモーズ。「奥多摩最難」とはいえ、やっぱりオクタマでしたから。それは奥様に「沢は2級までしかやらない」と約束してしまった3代目ハンサム、石川さんも参加されたことでもわかるでしょう!しかし、「奥多摩最難」とレッテルを貼られただけのものはありました。なかなかなのです。確かにハイパー短いですし、泳ぐところもないし、実際のところ残置も多いのだけれど、F1を登るのはマジな登攀技術が必要よっっ!しかも、そのF1を越えないとマイモーズの真価がわからないというエゲツなさ。そう、まぁ技術的核心はF1なんだけれどF1を越えてからがこのマイモーズゴルジュの真骨頂なのっ。この渓相は一見の価値ありよ!
 マイモーズは高橋さんからも評価「特B−」を獲得いたしました。最近、特B連発なのでちょっと甘いという声もありますが、ともあれ、ちょっくら、いいよ。ちょっくら充実しますよ。ちょっくらお薦めしたいのです。

【記録】
8月9日(土)晴ときどき雷雨 ゴルジュ入口0945、ゴルジュ終わり1500

【使用装備】
ロープ8mm×30m×2、カム(エイリアン)、ハーケン(ナイフブレード、アングル、ロストアロー)、ボルト1、ユマール各自、アブミ各自、ウェットスーツ各自、ライフジャケット各自
※ロープは少人数であれば30m×1で十分。
※ライジャケは必要なし。(倉沢谷本谷をそのまま継続する場合はわからないけど。)でも、ウェットは欲しい。
※クライミングシューズは有効だとおもう。
※大きいカム(キャメロット系)は使えない。小さめカムとハーケンが有効。
※ボルトもあったほうがいいかも。

【写真】

倉沢橋から偵察→失敗?


2008.8.12 鮎島 筆