■白山/小矢部川「瀬戸の長瀞峡[小矢部峡]ゴルジュ」(溯行)

2010.7.10
渡辺剛士、鮎島仁助朗

遡行開始点と終了点

最初の淵をへつる鮎島

上部淵を泳ぐ渡辺

上部淵を突破する渡辺
7/9
 志木で集合すると、鮎島が浮かない顔をしている。なんでもメグさんが40度の熱を出しているらしい。沢に行っている場合では無いと思うが、「いや、よくできた女ですから」とかなんとか言いながら走り出した計画は止まらない典型的パターンでなんとなく出発。なんとか言いつつも鮎島はやはり心配なようで「お土産はマス寿司だな」などと言っている。
 上信越道はめちゃ豪雨で正直運転すら危うい。前が見えない。が、北陸道に入ると天候は安定し、「しめしめ、これなら明日の長棟も…」ともらったような気になる。甘かったな〜。
 薄波橋で車を止め車中泊。
 水量多かったらこんなんもあるよ、と長瀞峡という転進先を提示されるがこっちもゴルジュやんけ!転進先になるんかな?

<…結局、長棟川は敗退…顛末はこちら

7/10
 で、長瀞峡に転進。  錆びた看板と木でできた標がある駐車場に車を止め、100mくらい林道を下ってから適当なところで懸垂し、2発で沢床。
 花崗岩のなかなかいい感じの渓相。すると曲がり角の先でなにやらさかんに笛を吹いているご老人がいらっしゃる。何してんだ?ていうかどうやってここまで来たんだ?挨拶し少々会話する。


 「山菜取りですか?」

 「(ザックからはみ出した山菜を指して)こりゃ付録だ。相棒がここを登ってるんだ」
老人が指した方を見ると、一般には悪絶と表現される草付きの壁がある。え〜?ここ登ってるの?


 「いやあ、僕達も岩登りたまにやるんですけど、この壁難しそうですよ!」

 「いやあ、ほら、草とか生えてるっしょ?まあ若い頃からやってっから」

 …確かに生えているがそれでは体重を支えられないのでは?恐ろしい…


 「あんたたちは何しにきたの?」

 「僕達は沢登りです。まあこの先の淵を泳いだり…」

 「へえ〜(ナベのスリングをシゲシゲと眺め)こんなもん持ってねえ…まあ、ぼちぼち、な。気をつけて」

 エールを送られ、頭から?マークが消えないまま別れる。

 で、すぐにV字谷が始まり、淵が立ちふさがる。ザイルを出し、鮎島リードで左岸をへつり、最後は対岸にジャンプし泳ぎながらガバを…掴めない。なにせ流れ早すぎてタイミングが難しい&飛び込むと飛沫で視界が消えてしまうためガバが取りにくいようだ。3度目のチャレンジでガバをつかみ、対岸へ。フォローのナベは飛び込んだがやっぱりガバが掴めずほとんどザイルに助けてもらった滑降。イッパツ目から手ごわいっす。手ごたえのあるゴルジュに喜びを感じつつも、なにせさっさと帰らないといけないので素直に喜べない鮎島を尻目に、ナベは大興奮。
 この後は、一旦平凡になり小さい淵などが出てくる。今日の水量では多少手ごわいが問題なくクリア、そして次の淵。

 右側を泳いで、右の穴に入ってからなんとかしてへつるしか無いように見える。今度はナベリード。予想通り穴に入ってからカンテに取り付けたが、水勢が強すぎて体を浸したままではへつれない。一旦左岸に上がるしかないがそれとて足がないので厳しい。マントルを返そうとしたがケツが重くて返せず一旦撤退。鮎島に交代。
 鮎島はなんとかポケットにカムを決めようとしていたがフレアしているようできまらず、パンプして引き返してきた。もう穴の側壁にハーケンぶち込むしかねーかな、という話になるがとりあえずフリーの可能性もまだあるのでナベ再度リード。
 頑張ってボルダー6級くらいのマントルを返して(ムーブ自体は8級なんだけど、全身濡れてて重い!)左岸に立つ。我ながらナイスクライミングであった。加藤イズム継承者鮎島は「とりあえず褒める」が身に付いているのでたくさん褒めてくれた。もっと褒めてくれ〜。

 その後は両岸ぶったっているが先ほどまでの難しさはない。一箇所、すべると磔刑に処されるへつりがあった他は腰までの渡渉程度で、美しい花崗岩ゴルジュと沢床を愛でながら進む。左から滝を架ける支流が出合うと河原となり、左岸から簡単に林道に上がれそうな雰囲気。
 しかし、資料では「堰堤で終了」と描いてあったので、そのまま遡行すると、再び両岸ぶったってきた。なかなかの渓谷美。というかGOOD。平水ならなんてことないんだろうけど水量にちょっと苦戦。鮎島はやはりメグさんが気になるらしく「まだ堰堤ねーのかよ?」とちょっと焦っているが、何しろ結構なV字谷で簡単に上がれそうにないのだ。

 結局堰堤は見つからず(車の残骸や巨大な送水管の残骸?はあった)、沢が二股となったところで、都合のいいスリングが垂れていたのでそこから左岸に上がるとしっかりした踏み跡があり簡単に林道まで上がれた。結局12時までかかってしまった…

 帰りは交代で運転。有磯海PAでかき揚丼+トン汁を頼んだら大学生でも残しそうな量で二人とも一杯一杯。結局帰京した頃には日は暮れてしまっていた。

 いやあ、近郊にあったら一押しのゴルジュでした。ゴルジュマニアにはたまりません。すごいV字谷です。短いと分かっているから突っ込めますが、これオンサイトトライした人はすごいですね。
 しかし遠い!往復一人頭6500円で車に乗っている時間が往復10時間という燃費の悪さ。関西の岳人には大プッシュしたいですが、我ら東京の沢屋は…まあオバタキの転進先とか(オバタキだとライジャケ持ってきてないか、大体転進するってことは水量多いって事で、ってことはこっちはもっとヤバイ?)。

渡辺 記

【記録】
7月10日(土)曇ときどき晴
 8:30長瀞峡駐車場、9:00ごろ長瀞峡入渓、9:30ゴルジュ入り口、12:00二股(遡行終了)、12:30駐車場

【使用装備】
 ザイル50m(30mで十分) ハーケン2(長短各2ずつあれば十分) ライジャケ、ウエットスーツ

【写真】

@長瀞峡最初の淵。すげえV字谷です。

A最初の淵で飛び込む手前の鮎島。

B最初の淵をへつる渡辺、このあとジャンプ

CS字峡のところ。ヌメヌメしてます

D大水量をジャンプ

E核心の淵を泳ぐ渡辺

F核心の淵をガンバする鮎島

G核心の淵をガンバする渡辺

H核心の淵を立ち込む渡辺

I何度となく挑戦し突破したナベには後光が刺している

J核心の淵を上流から見る

K核心を抜けたあとの渓相

L核心を抜けたあとの渓相。これもいいのよ

M核心を抜けたあとの渓相。これもいいのよ

N核心を抜けたあとの渓相。これもなかなか

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