2019年6月29日(前夜発日帰り) / 三重泉沢下部ゴルジュ~ニグラ峠~三俣沢右岸林道 / ナベ(記)、イデ
6月28日 関越道→沼田→道の駅白沢
梅雨空の中、行先で二転三転。南ア方面にしようかと思っていたが、突如発生した台風で激増水しているだろう、ということで当初予定した三重泉沢を再検討。
土曜の予報は降水確率50%くらい、日曜の予報はもっと悪く70%くらいだが、マイ読みでは土曜はそんなに悪くないはず…
問題は木・金でどれだけ増水したかだが、アメダスの累積降水量によるとそんなに降っていない。ということで決行した。
ちなみに関越道走行中は断続的に激しい雨が降り、いわゆる通り雨的なやつがそこかしこで動き回っている状況と推察された。
雨雲がアメダスポイントを外して見せかけの累積降水量は少ないが、実は足尾山塊ではジャンジャン降っている、ということも十二分に想定されたが、あまり考えず道の駅で一杯飲んで寝る。
なお、車中では
イデ「いやー、ナベさん、俺も純綿軍手買いましたよ、しかも国産を」
ナベ「おー、国産。いいね。でも、産地より、縒り方とか重さが大事だからな。密に縒ってる方が重いから。時代は軽量化だけど、軍手は重くないと駄目だから」
と、軍手について語り合ったのだが、翌日、イデはせっかく用意した軍手を家に残置したことに気付く…
6月29日
6:55 林道ゲート発(地形図の奈良集落の先あたり)→7:50三重泉沢出合→8:40峰山から南に下ってくる沢との出合(ゴルジュ開始)→9:05第二ゴルジュ入り口→11:05滝の沢出合→11:40石橋→11:45広河原→12:55荷鞍峠(ニグラ峠)→13:35三俣沢右岸林道→14:30三重泉沢出合→15:30林道ゲート
軍手は無いが、行く道は行くしか無いので出発。
ゲート前は広場がないので、大きい車は切り返しが大変だろう。もちろん我がワゴンRは問題なし。なお、路肩の駐車スペースもさして多くはない。先行は一台、多分釣り師だろう。
途中に集落跡があり、神社と壊れた自転車があった。無事下山を願って歩みを進める。
一時間近く歩いてようやく待望の三重泉沢出合。パッと見、平水より若干増水しているだけのように見える。安心、安心。
入渓してすぐ二段の堰堤、これは左手から簡単に巻けたが、次に出てきた二段堰堤は右手から巻くものの渋い。人間が人工物に苦しめられるってっておかしくないすか?
やがて左手からいい感じの滝となって出合ってくる沢を見送るとゴルジュ開始。思ったより釜が浅いので簡単。でもちょっと水量が多いように見える…
浅いので簡単
次の第二ゴルジュは出だしの滝が半端ない水量でトライことすら諦める。
(下山後、他の人の記録をいろいろ見たが、やはり結構増水していたようです。出合で平水に見えていたのだけれど…ちょっとした増水でも狭いゴルジュでは影響が大きい)
右岸にフィックスがあったのでこれを辿る。
第二ゴルジュ入り口。水圧すごすぎ。トライする気になりません…
この右岸のフィックスのラインを「高巻き」と書いてある記録を多数見るが、勘違いしてはいけない。
これは「高巻ラインの難しい場所にフィックスが設置されている」というパターンではない。
最短・最小の巻きで落ち口を目指した攻撃的なラインで、「側壁の草付へつり」といった方が実態に即しており、そのへつりにたまたまフィックスがあるだけの話。
このラインを見つけた先人を尊敬しますわ…。凄い発想、凄いラインどり、凄い力量である。普通ならもっと大高巻きとなるだろう。
確かに、終わってみると、バンド状だし、要所に木はあるので、まあなんとか繋がっているなというラインなのだが、じゃあオンサイトでこのラインを見つけろと言われたら絶対無理。センスの差を見せつけられた思い。(大高巻きの方が安全なのは間違いないので、初心者を含めたパーティーは、フィックスを無視して大高巻きしたほうがいいと思います。あるいはザイル張りっぱなし・出しっぱなしになるでしょう。支点はそこそこ木があります)。
尚、技術的には、ムーブとして難しい個所はない。とにかく丁寧に足を置き、滑った時のために、フィックスが使える個所は使い、使えない個所は全身で備えて、慎重に進むのみである。我々は、特にクライムダウンの箇所では肝を冷やしながらも問題なく通過したが、一部フィックスにヤバい部分(虎ロープなので結び目が末端まで滑ってきてしまっているなど)があるので、チェックは入念に。
このあとは第三・第四ゴルジュと続くが、核心と言われる「落とし穴の滝」は、落ち口の右手の、スラブとチョックストンで構成された部分を、イデが簡単にボルダリングで突破してしまった。俺はスリングゴボウさせてもらったが、難しいのは出だしだけなのでショルダーすれば楽勝だろう。ボルダリングでは俺には無理だったので、ボルダリング4級くらいあるかも知れない。あまりにもあっさり登ってしまったので写真を撮れなかった…
他には3か所くらいで若干苦労したほかはさしたる困難もなく突破。
一か所は、確か落とし穴の滝の手前で、左の弱点に取り付くまでの浅い釜の水圧がヤバく、胸元位の水位なのだが恐怖を覚え、一旦引き返してザイルつけて突破した。
半端ない水圧にビビった個所。もう少し深かったらマジでヤバかった。
もう一か所が、多分第四ゴルジュだと思うが、右手のバンド状をイデがボルダリングで突破した箇所。ここはまたしてもスリングゴボウさせてもらったが、ここは頑張れば俺もボルダリングで登れそう。ボルダリング5級くらい?
ボルダリングで突破。
最後に、ショートカットを狙って取り付いた、第四ゴルジュ最後の滝の左手の涸れ滝が結構悪く、最終的にはザイル出してカムのA1で越えた。ここは左手から巻けそうな地形なので、ザイルを出すくらいなら巻いた方が早かったのだが、取り付いてから登れそうで登れずムキになったのと、時間も早いので練習ということで登った。
結局ザイルを出した個所。左から巻いた方が早かった。
ナベがカムA1で突破したが、イデはあっさりフリーでフォロー。
なお、遡行中、平凡な箇所で井出が落石、ナベがかわせず左足のアキレス腱辺りに被弾、最初は何ともなかったが、だんだん被弾していない(と思っていた)足の裏が痛くなってきたので、泊まりの予定を日替えに変更する(もちろん翌日の天気も心配だった)
ゴルジュが終わってもその後もなかなかいい渓相。そして突然現れる石橋を潜ると広河原。
うーん、泊まりたい!良さそうなところだ!
が、骨にまでダメージがある可能性が排除できず、そうすると明日動けないor行動に支障がでる恐れがあるため本日中に下山したほうが安心。
さらに、今晩雨が降るため、増水も怖い。ということでニグラ峠を目指す。
(なお、これを書いている現段階ではどうやら打撲っぽい。どうやらアキレス腱あたりだけでなく左足の左側部にも被弾していた模様で、あざになっている。歩いて石を踏むと刺激されて痛かっただけのようだ)
ニグラ峠への踏み跡はどうやら広河原に入ってすぐのインゼル地形(左が本流、右が普段涸れている模様)の、涸れている方の右側に付いているようで、気付かず20分ほど迷う。迷っていたら、左岸に石積みの歩道を発見したので這い上がる。石積みがあるくらいだからそんなに悪くないのかなあと期待したが、足がつりそうになるほどの急登。急登をこなしつつ、やがて東にトラバース気味となり安心。ピンクテープを追っていくとやがて荷鞍峠(ニグラ峠)。
ここからの下りは迷いやすく、かなり注意が必要。そこらじゅうに倒木や崩壊があり、踏み跡・ピンクテープが分かりにくくなっている。また、一か所あった崩壊ルンゼのトラバースは結構痺れた。自然に還りつつある林道に出たときはホッとした。どうやら踏み跡は、三俣沢・ニグラ沢(ニグラ峠から南下して三俣沢に合流する沢)出合の右岸あたりで林道と合流した模様で、下りがやたら長かったのも、南西へトラバース気味に下っていたからであろう。
林道を歩いていると左手に小屋が見えた。このあたりを平滝集落跡といい、足尾銅山への燃料供給の為に林業を営んでいたらしい。そんで、この小屋は墓参りやら旧交を温めるための、集落出身者の拠点らしい。
三俣沢はこの集落の横で川幅全体がナメ滝になっていて凄い。素敵な所で、確かにこんな所で生まれ育ったら、戻りたくなるだろうなあと思う。
このナメ滝、もっと近くから見たかったが、この頃には結構足が痛かったのでカットし先を急ぐ。
三重泉沢出合からゲートまでの区間は、林道がかなり上に付けられているせいで、帰りなのに登り勾配が多く、メゲる。腹が減って仕方ないので、降りたら何を食うかという話で盛り上がる。そういうわけでどんどんペースが上がり、釣り人を合計3人抜いてゲート前へ。
行き道でとんかつ屋がたくさんあったので、その中でも、イデが検索した「まるきち」をチョイスするが、その途中でナベが目ざとく「足湯」を発見。
「尾瀬市場」なる、農産物販売所を中心とした施設。
入ってみると、なんと足湯しながら飲み食いできるスペースがあり、面白すぎるので「ココで小腹を満たして、まるきちでの食い過ぎを防ごう」と路線変更。
ところが、イデがまたしても攻めに出る。デリカコーナーのおばちゃんに
イデ「メンチカツバーガーお願いします」
お前それ、一番ボリュームありそうなやつじゃねえか…どこが小腹満たしなんだあ…?
ところが、おばちゃんに「二個でいいの?」と聞かれ
ナベ「あっ、はい、私もそれで」
なぜか俺もつられてしまった…
小腹満たしどころではないメンチカツバーガーと、足湯
案の定なかなかのボリュームで、特筆すべきは地元産トマト。非常に主張しており、もはやトマトバーガーでいいのではというレベル。
このあとお土産を物色するが、小腹を満たしたにも関わらず、イデは腹が減った時にスーパーに行って余計に買い込み過ぎる主婦状態で、
イデ「ナベさん、このマイタケすごくないすか?」
ナベ「すげえけど、それ2個も食べるの?」
結局1個にしていたが、おばちゃんが、若干傷んでいるから半額ね、というミラクルが起こったり、楽しい所だった。
(この辺に来た際は立ち寄ることをお勧めします。)
この後、さらに「まるきち」。
時間帯的にここしか開いていないらしく選択の余地がほぼないのだが、グーグル様は★3・8と高評価。
既にメンチカツバーガーがボディーに効いてきていることを考慮すると、「うどん・そばにミニ丼」のセットが妥当であるが、ここでもイデが「味噌カツ定食」というMAXの一手で行くという(いつもならそれに麺類を付けているが、さすがに自重したようだ)。
群馬(沼田・片品界隈だけ?)が味噌押しということもあり、俺もそれをチョイス。
イデ「おばちゃん、味噌カツ定食2つ、一つは大盛で。大盛はなるべく盛り気味でお願いします」
全然自重してなかった…
なお、この界隈、「上州上田とんかつ街道」と名乗っているらしく、ぶた侍なるキャラクターが活躍中。
イデ「このキャラクター、ヤバいっすね。ぶりぶりざえもんに似すぎじゃないすか?」
ナベ「ぶりぶりざえもんって?」
イデ「知らないんすか?クレヨンしんちゃんに出てくる…」
聞くと、何の役にも立たないのに100億要求してくるというスゴいキャラクターらしい。
食われるくせに威勢のいい豚。そんなに似てないと思うが…
注文後はサラダバー食べ放題・コーヒー飲み放題で、ここもまたトマトが旨く、俺はつい2皿目に突入。
イデがコーヒーなんぞ啜っているので、「そんなことしてる場合じゃねえだろ、サラダバーだぞ、食わないと勿体ないぞ」という意味を込めて尋ねる。
ナベ「あれ、おかわりしねえの?」
イデ「いや、とんかつ食った後でもいいかなと思って…」
確かに…俺もおかしくなっているようだ。「おかわり自由」→「おかわりしないと勿体ない」という頭に沁みついた貧乏中枢が、満腹中枢をおかしくしている。
やがて出てきた定食にはなんとサラダが付いており、「フツー、サラダバーあったらサラダ付かねえだろ!」と思いながらも頑張って食べる。
サラダが二皿…
豚は甘い、やわらかい、で最高に美味い。奥利根もち豚というらしい。
濃厚な味噌ダレもそれにマッチしているが、この味噌ダレがクドく、3切れ目位にはしんどくなってくる。
「味噌がキツイ!」
「これ、ソース3切れ、味噌3切れとかのハーフ&ハーフとかじゃねえと、普通食いきれねえよ。もう少し考えてくれねえと…」
「せっかく2人いたんだから、どっちかがソースとか別の物にして、半分こすりゃよかったな…」
など、言っても仕方ない事をグダグダと話しながら時間をかけて必死で食べ進める。
何しろこのままでは、「大盛頼んでおいて残したバカ」「サラダバーお代わりしすぎて残したバカ」である。
ついでに、店に入る前にバーガーを食っているわけで、「自己管理のできないバカ」でもある。
意地でなんとか完食。
しかし、帰りの車では、あまりの満腹にナベはほぼ死亡…(運転任せきりですいません)
イデのボルダリング力と胃袋力が際立った山行だった。
<プランニングコメント>
全体的なプランニングとしては、三重泉沢は、ゴルジュで釣りすれば時間調整できるので、広河原に昼過ぎくらいに着くようにして、焚火&魚、そんで次の日は稜線まで、というプランが一番楽しそう。
とはいえ今回のように梅雨時の小康状態を縫っての前夜発日帰りも登攀的な沢登りとしてなかなかナイス。綺麗でいいです。
ただし、ニグラ峠~三俣沢林道の区間はかなり分かりにくいので、この区間はヘッドランプ行動無理ということは念頭に置いておいた方が無難。
<テクニカルコメント>
全体に難しくはないが、第二ゴルジュの「側壁の草付へつり」は、ワンミスで死亡なので初心者同行は厳しい。
大高巻きするか、ザイル張りっぱなしを覚悟すること。その場合ザイルは40あった方が無難。支点は木がそこそこある。
ほかのゴルジュはショルダー等駆使すれば特に金物は不要と思われる。
<感想>
最後に危うく「メシ敗退」しかけたが、結果として、軽量化しているとはいえ、増水しているコンディションで、泊まり装備担いで日帰りできたことは自信につながるだろう。
早めに降りられたのでアフタークライミングも充実(笑)。
<使用ギア>
ザイル35m(今回は結果として20mでも十分だったが、第二ゴルジュで追いやられた場合を考えると、30~40は欲しい。
人数多いなら30×2がベストか)、マイクロカム(1カ所使用したが、巻けば不要だった)
<立ち寄り>
尾瀬市場:http://www.ozeichiba.com/
まるきち:https://tabelog.com/gunma/A1003/A100301/10000947/
大雑把な行動図(国土地理院「電子国土」より)