■北ア/劔立山連峰/常願寺川水系 称名川支流 ザクロ谷[沢]

2020年8月15~16日 記録:ナベ・イデ(青字)


去年病院送りにされた因縁のザクロ谷。 正直今は、有名な難しい沢より、小粒でも記録のない沢の方が興味があるのだが、沢シーズンが始まる前から、「今年こそ行きましょう!」とイデに何度も言われていたし、去年のケジメとんねえとなと思っていた。

8/8-10の連休でザクロに行こうとしたときはそこまで盛り上がっていなかったが、天候不順で尾白川ゴルジュに転進、手も足も出ず敗退したことで、二週連続の敗退はねえな、とやる気スイッチオン。 

 

毎日称名の滝のライブカメラで水量を観察、木曜日まで出ていたハンノキ滝が金曜に消えたことで、そこまでの増水はなかろうとイデにGOのサインを出す。

天気図的には2日目に降るかも知れないが、その時は牛の首から撤退すればいい。


8/14 20時ごろ新宿→翌3時ごろ桂台ゲート

ケチるため中央道~松本~安房トンネル~神岡経由でアクセス。グーグルナビに従ったら、常願寺川左岸をひた走ったためコンビニが無く、渡ろうと思ってた橋が通行止めだったりして一回戻ったり。まあとにかく富山まで、また来た。


8/15 晴れ時々曇り

06:40桂台ゲート出発~07:30トンネル入口~07:45雑穀谷~09:20ザクロ谷出合~12:00F4下~13:10F4上~17:05 前半ゴルジュを抜ける~17:30幕場(牛の首の下)

 

<初日前半戦>

 

3時間ほどの仮眠、アルコールを抜いたのはいつ以来か。

称名道路でイデがヒッチハイクし、富山の方に乗せさせていただく。「東京から来ました」の一言に富山の方々は何と思われたか。(私とイデは、出発前も記録書いている今も発熱してませんよ!)

称名川第二発電所前で降ろしていただく。

 

導水管沿いの階段は去年と変わらずえげつない。トンネルが寒いのは分かっていたので、入る前に十分にクールダウンし、合羽を着こんでイン。

イデ「今年はナベさんが先頭行ってくださいよ。顔面にコウモリ当たるのマジ嫌なんですから」

とオラオラされ、先頭に立つ。

案の定コウモリがこっちに飛んできて、二人でわーわー言いながら進む。

鋼鉄の扉を開けると雑穀谷。

幸いアブがいない。一度だけ見かけただけ。日本海側なのに不思議だ。

身支度して遡行開始。記憶よりもゴーロがかったるい。イデもそう思ったらしく

 

イデ「よくこんなとこアバラ折れたまんま降りましたね」

 

いやほんとだよ。救助だけはされたくないという見栄の力だったんだけど、見栄って大事ね。きっと経済的成功をしている人はみんな見栄っ張りなんじゃないかな。

で、1時間ちょいでザクロ谷出合。

前回はこの出合いで期待4・ビビり6くらいだったように思うが、今回は、期待9割、ビビり1割くらいだったと思う。先週尾白川ゴルジュに行ったおかげだ。あれ以上のゴルジュは、そうはない、はず…

 

F1はなんてことなく越し、F2。

昨年より明らかに増水している。淵の浅いところではリードが見えないので、泳いで近づいて、イデがペッカーを左壁に叩き込んでビレイ点構築。これで浸からずにビレイできる。安心したところでイデが何度か突っ込む。人間により水流が変化し、滝が盛り上がる様は「ホンマにアイツ大丈夫か?」としか思えない。2~3回トライするもはじき返される。

 

 

水流に突っ込むイデ(水流右側に若干見える黄色い奴)。

この後はじき返される。

 

 

イデ「これ、無理じゃないっすか」

ナベ「ま、俺が片付けてきてやるよ」

 

と言いつつ、イデが掴めたホールドすら掴めず、なすすべなくはじき返される。

戻って、

 

ナベ「お前どこ持ってたの?」

イデ「水流の裏にサイドガバがあるんすよ」

 

あ~思い出したわ。

 

で、なんとかF2一段目を越える。2段目はどう見てもショルダー。

もともと、前回荷揚げで苦労したことから、荷揚げはショートで行こうと決めていたこともあり、2段目の下で荷揚げ態勢に入るが、安定して立てる部分は30cm四方しかなく、ちょっとでも動くと足を掬われて流されそう。というわけで荷揚げしても荷物が流されるだけなのだが、リスもクラックもない。ボルト穴を見つけたのでオールアンカーを叩き込むが、半分くらいしか入らない。まあでもコイツでいいや。スリングをタイオフして荷揚げ、グラグラするオールアンカーにザック二個ぶら下げて、肩がらみでイデフォロー(ビレイはこの水圧ではいずれにせよボディビレイしかない)。

 

F2の1段目をフォローするイデ

 

 

そのままショルダー土台となり、イデに上に行ってもらう。

さて、俺どうやってフォローするんや?イデも荷揚げした荷物置き場がなく、ボルトスカーも無いようで土木工事開始。 

 

F2二段目上にあがるイデ。まるで嵐。タワシでクリーニング中。

 

 

 

その間にショルダー土台なしでどうやって上ればいいか思案。左壁にもう一個ボルトスカーを見つけたのでこいつにオールアンカーを叩き込み捨て縄をタイオフ。これでA0すればなんとかなるか?

イデが完璧に埋め込んだリングボルトに荷揚げしたザック2個つるし、いよいよフォロー。あれ?フリーで行けんじゃん(フォローなら)。ボルト&スリング意味なし。ちなみさっきガチャガチャやってたらキャメ0.75番も流出。この時点で増やしたゴミ、ボルト3(オールアンカー2、リングボルト1)、スリング1、キャメ。マジすいません(多分リング以外は無くなると思うが)。

 

お次は3段目。これはナベがリード、右手のリスにマイクロナッツを決めてA0であっさり突破。

 

3段目をフォローするイデ

 

 

そして因縁の4段目、CSハング滝(いわゆるF3)。まずは去年敗退の時に使ったスリングとカラビナを回収する。

上を見ると、左手の水流は圧がすごすぎて無理。去年病院送りにされた中央のクラックはジャンジャン水が流れている。右手の傾斜のキツイクラックもあるかもしれんが、ちょっと難しそうだ。

というか、今いるところも水が当たって寒い。

ナベ土台でショルダー&アブミし、イデに行ってもらうことに。土台もジャンジャン水被りマジ寒い。やはり慣れないハングエイドは簡単でなく、イデが苦労する時間分俺はシャワー漬け。本当につらかった。とはいえ今回は無事故で突破。やったぜ!

 

ナベ「4段目行ってくれてありがとう。アレだけはやりたくなかったんだ」

イデ「いや~、ナベさんこそ1段目マジ凄いっす」

 

コウテイペンギンのコウテイちゃんの如くお互いを褒め合う。

すぐF4。イデリード。ナベは淵の浅いところ(15mくらい手前)でビレイ。

どうせプロテクションとれないだろうから、ザイルは2本連結して荷揚げ専用に使おう、ということにしていたのだが、ボケっとしているうちに、ステミングに入るまでに苦労するであろうと思ってたイデがあっさりステミングの態勢に入って30m一杯まで進んでしまい、ザイル連結できずに行ってしまう。

 

調子よくF4を突破するイデ。一方、ビレイのナベは絶望のどん底。

ロープはこのあと2mでスタックした。ここでスタックしなくて良かった!

 

 

 

あらら、と追いかけるが、あっという間に釜に吸い込まれてしまった…まあ大丈夫か?と思ったが大丈夫でなかった。イデが右の穴にフックしレスト後、落ち口左に得意のペッカーを叩き込みA1で這い上がると、ちょうどザイルがスタックして動けなくなった…這い上がった後で良かった…しょうがなくナベが泳いで色々試すが完璧にスタックしておりザイル切断。

そうするとザイルはイデの手元に6mくらいがビヨーンと行き、残りの絡まった24mが俺の手元に…どうすんだこれ。

 

とりあえず残りのザイルで投げハンマーをするが、届かず、今度はハンマーがスタック。オイオイ!またしてもザイル切断。ハンマーレスでザクロか~。こりゃ厳しいな~。それはともかく荷揚げとフォロー。結局、イデやんの手元にある6mくらいを垂らしてもらい、ナベがフリーでF4途中まで登りもう1本と連結。

 

必死こいてザイル切断ミスを取り返そうとするナベ

 

 

 

一旦戻って荷物を取り荷揚げしていると、なぜかハンマーが外れ流れてきた。ラッキー!

ナベの凡ミスでゴミは増えるはザイルは継ぎ目だらけになるわで最悪だが、F4自体は、はっきり言って全然難しくなかった。(滝の真下が浅いのであっさりステミングに入れるため。滝の真下が深かったらステミングに入るのが相当難しいと思う。で、これはたぶん毎年変化すると思う)


<初日後半戦>

 

これで初日は大半が片付いたな、とか思ったのが大間違いだった。

わずかたとえ1mの滝でもザクロは全く情け容赦ない。側壁が常にぶったっており、わずか1m滝でもたいてい淵やら釜やらが付属しているので、いちいち泳いで張り付かないといけないし、突っ張りが効かずガバもなければ、投げハンマー、カムエイド、流木でエイド、ショルダー、側壁を人工など色々工夫しないと登れない。ここまで純度100%混じりっ気なしのゴルジュってのは拝んだことがない。

 

典型的なザクロの小滝。いちいち泳ぎやボルダリングが入る。

 

 

流木のヌメリに耐えながら馬乗りになるナベ。

右のポットホールが深く印象的。これも流木無かったら大変…

 

 

ただし、今回だけかもしれないが、「これ普通正面突破はないだろ」と思うような滝も、大体が浅いところがあり、泳いでみると立てた、というケースが多かった。

一か所、こんな晒し場、絶対死ぬやろ、というころも意外と行けた(イデが行こうといわなければ側壁をエイド→高巻きで苦労していたはず)。

 

イデのナイスジャッジで越えられた滝。

この晒し場を右から回り込んでCSに取り付いた。

怖すぎません?深かったら磔刑ですわ…(CS右の隙間をA1)

 

 

もうそろそろええわい、というところでようやく一旦ゴルジュが途切れ、右岸側にまあまあのテンバが散在するようになるが、本気で増水した場合背後に逃げるのは難しい程度の傾斜なので、あまりお勧めはできない。

 

本日初めて、工夫のいらない滝のあるミニゴルジュを抜けると、どうやら牛の首直下。ここの砂地で幕とする。ここはちょっとした高台で、少し降ったくらいなら大丈夫だし、背後の斜面に歩いて上がれ、いざとなれば牛の首にも上がれる安全地帯。

焚き火を起こし、ぜいたくな一晩。


8/16 曇り時々晴れ

06:50 幕場発~07:00 てまり滝~07:25 早乙女沢出合~07:40 元口なしの滝~10:10 F25下~11:55 ソーメン滝下~13:30 後半ゴルジュ・前半の部終了(標高1590m付近)~14:20 F31(右壁ヌルヌルA0滝)上~14:30 ミニF4下~15:20 F34(水中ショルダー滝)下~17:10 F37(10m滝)下~17:45 F40最上段の下~18:30 二俣~18:50 登山道~18:55 大日平山荘~20:30 称名道路~21:15 桂台ゲート

 

<二日目前半戦>

朝から焚き火してぜいたくな朝。出発してすぐに、昨日の物件より下地が小石で快適そうなテンバ発見し若干テンション下がる。

すぐに手まり滝。定石通り右岸から高巻き。途中までトラロープがFIXされているが、その後は激藪。とはいえ大した距離ではない。念のため懸垂すると、早乙女沢出合出合いだった。なかなか奇麗なところだが、幕場としてはちょっと流木が少ないしゴツゴツしている感もある。

 

 

朝から焚き火。

目の前がナメかつ焚き火がしやすく、安全でいいテンバだが、砂まみれになる。

3分も進むともっといいテンバが…

 

 

 

手まり滝。

右手に弱点も見えるが最上部で行き詰りそう。

早乙女沢出合いから見るとこの後に釜&滝が続いており、巻きが無難。

この後いくらでも滝は出てくるし(笑)

 

 

 

さてここから逃げ場のないゴルジュ再開。

元・口なしの滝は、イデがヒールフックをかけるが水圧が強くてマントルが返せず、投げハンマー。ちなみにフォローのナベはヒールフックが上がらずユマールのゴボウで登る。

 

ナベ「左足ないのにどうやって右足上げたの?」

イデ「足ぶらでヒールフックっす」

 

腹筋の差ということですね…

(下山後の記録を見ると、どうもイデは左足を見つけていたらしい。盛りやがったなこのヤロ~…)

 

元・口なしの滝を攻めるイデ。

この後ヒールフックするも水圧に負けたが、写真奥のCSに投げハンマーを1発で決めた

 

 

そのあとの長方形CS滝も苦労。CSの右を越えるのだが、残置スリングが奥の方にあり使いづらい。スリングをチョンボ棒で押し込んで右の接点に回すが、抜け口ホールドが無く、右足もぬめぬめで悪い。こりゃ難しいなー、右にボルトぶち込むか…と思ってたらイデが無理やり体突っ込んで越えてくれた。これは俺にはボルト打たないと無理だった。ナイス!

 

苦労した長方形CS滝。

 

 

 

これ以外にも数々の逃げ場なし・正面突破しかない小滝が次々と現れるが、ショートの投げハンマー、ワンポイントハーケンA1などで調子のいいイデがどんどんリード。

特に投げハンマーがほとんど一発で決まっており神がかっている。

 

 

一人投げハンマーを決めるイデ

 

 

 

リードマシンと化すイデ

 

 

 

で、後半の核心F25。逃げ場のないゴルジュのうち右岸側に何とか登れそうなスラブがありここを登る。スラブのど真ん中に燦然と輝くリングボルト。各種記録ではリングボルトを取るまでが勝負的なことが書いてあるが、全然違った。

俺がやります!と出てくれたイデに遠慮なくリードしてもらう。

で、イデは滝身側のリッジから2歩ほどのトラバースであっさりリングボルトにクリップ。そこまではよかったのだが、そのあと左手トラバースでスリップ、さらに左手のリッジで残置リングボルトにクリップ直後スリップ。2度目は若干危険だった。そして凹角状をじりじり登り、左の段差を越えて藪に突入していった。荷揚げ用に買った「TOWAプロフェッショナルロープバック」は期待通り途中までは突っかからず上がってくれたが、藪の入り口で突っかかったので、残り一個のザックを担いでフォローすると、1本目のリングボルトから後はコケが多く滑る。凹角も残置はそこそこあるが足が滑るので簡単ではない。そして段差の部分。下から見ると寝ているのだが、実物はぶったっている。イデは必死こいてハーケン打っていたがさもありなん。フォローでも怖かった。突っかかっているザックを小突きながらビレイ点へ。

 

ナベ「ナイスリード!あの段差の乗り越し、ヤバかったな~」

イデ「ヤバかったっす。先週と今週で、草付き限界グレードは間違いなく上がっちゃいました」

 

先週の方が長かったけど、ピンポイントな悪さではこっちだったかもな。

 

1ピン目を取るイデ。

この後左のリッジでリングにクリップして右の凹角に入り、左の段差を経由して藪へ。

段差が滅茶苦茶悪かった。

 

 

 

次のピッチはナベリード。ここはトラバースなのでザックは担いで登る。確か最初直上(若干右状気味?)して残置にクリップした後、岩壁基部沿いにトラバースして30m一杯で大木がありビレイ。

右手に立った滝があり、現在地点を考えれば、普通はアレごと高巻くものだが、トポでは沢に降りてあの滝を登っている。若干議論(ナベは巻きたかった)したのち、まあフル装備でこれ以上高巻きすると熱中症になるな、とナベが妥協し、沢に降りる。ここも懸垂だったっけ?覚えてない。

この滝(ソーメン滝)もイデリード。ハーケン(残置だったかも?覚えてない)A1からフックA1を2連発。二発目をテストで乗ったら外れてビレイしている方も相当ビビった。

 

ソーメン滝を攻めるイデ。乗っているのはフック。

 

 

 

次の小滝も似たような感じで、今度は右壁。イデやんがフックA1からフリーで抜けようとするがフォールしてドボン。ほほう、ドボンで済むのか…

 

ナベ「おい、ちょっと俺にもフック乗らせろ」

 

とリード交代(最低の先輩だな…)。おお、なるほど、これがフックか。快適快適。イデが落ちたところは心の目で探すと奥にリスがあったのでハーケンぶち込んでA0でクリア。落ちてもドボンだと大胆になれる。

(「北アルプスの沢」のトポにある1mハング滝は記憶にない)

 

フォローでフックに乗るイデ。

 

 

 

本日ここまで全部イデがリードしていたが、これをきっかけにナベもようやく調子が出始める。

この後右岸から支流が入るところで小休止。岩盤が発達し、ものすごく奇麗な所だ。日当たりもよくて最高。

 

つかの間のオアシス。(標高1590付近)

 

 


<2日目後半戦、そして大日平残照>

 

2日目後半戦のゴルジュへ突入。ナベリードのF31はマジでヌメヌメ度MAX。右壁を残置+ハーケン4発くらいぶち込んでA0で落ち口手前に達するが、そこから先は…まさか前方対岸の落ち口にジャンプか?遠いし、足場がヌメヌメすぎてあり得ん…

 

イデ「ナベさん、ジャンプ!」

 

こんなの無理だって!ハーケン1発叩き込み、長スリングかけてA0トラバースし左岸落ち口に。このトラバースも失敗すると滝の水圧を受けてしまうパターンで危ない(絶対にハーネスに連結してはいけない)のに、足場ヌメヌメで相当怖い。

フォローのイデもヌメりに苦笑い。そしてジャンプポイント。

 

ナベ「残置してもいいぞ。飛べるなら回収してほしいけど」

イデ「残置していいっすか」

 

F31をフォローするイデ

 

 

 

F31どん詰まり。

このあとスリングでぶら下がりながら左のカンテをトラバース。

これを飛ぶのはちょっと

 

 

 

さらにゴミを残してしまったが、ここは仕方ない、というより、残置が無い方が不思議だ。

その次はノーマークだった3mくらいの小滝。形状がまんまF4。イデが突っ込むが水圧に負けて帰ってきた。

 

ミニF4。この写真の中に水圧に耐えるイデがいます。

 

 

 

交代してナベリード。とりあえず水流の中に頭を突っ込むと滝の裏で呼吸はできる。周りは全く見えないがワイドクラックにおける右差しの態勢で右足を上げて何らかのスタンスに立ちこむが、水圧と右足のぬめりに負けて2回ほど滑り、3回目で成功。立ちこんでワイドの要領でじりじりと、呼吸ができるところを探しつつ水中を登る。右差しの態勢なので水流左に出たいが水圧が半端なく、どうやったか覚えてないがなんとかして水流右に取り付き、水流中のハマっているCSを「抜けるなよ~」と願いながら握りしめて這い上がり、落ち口に立つ。

なお、後半ゴルジュからは登り方が雑になっており、今回もギアの受け渡しをしていなかったので、滝の上でビレイ点が構築できず、荷揚げして荷物は3mほど先の安全地帯に置けたが、ビレイはノーピン腰がらみ。

いずれにせよ固定確保はあり得ないが、本当は支点構築してアブミを垂らしてやりたいところだ。荷揚げした中にハーケンがあったかもしれないがめんどくさいのでそのまま腰がらみ。

 

水圧に耐えて登るナベ。

 

 

 

イデ「死ぬかと思いました。なんでこんなのリードできるんすか」

ナベ「体重差じゃねえ?重い方がこういうところはいいんだよきっと」

 

それはともかく、完全に冷え切ってしまってつらい。それなのにF34はトポによると「水中ショルダー」。とりあえずナベが泳いでみるが、足が全くつかない。こんなんじゃショルダーできないので、泳ぎながらピトンを叩き込んで起点構築。イデがそれにA1してさらにカムをぶち込んでA1し、ここにナベが下からチョンボ棒をパスして上のハーケンにクリップ。見事な連係プレーだ。

 

 

小細工総動員のF34。

 

 

 

この後残置ボルトでA1トラバースだが、離陸前の準備不足でスリングヌンチャクが足りず苦労していた。抜け口が悪いようでハーケン叩き込んでようやくビレイ解除。

フォローは快適だが、抜け口一歩手前のボルトでイデはアブミを直接クリップしてそれにロープを通しており、そのカラビナがいわゆる「アゴ」が当たる形でテコがかかり、抜け口のリングボルトが抜けてしまった(教科書通りすぎる)。幸いまだデイジーチェーンを前のボルトにかけていたので問題はなかったが、ナベがプッツン。

 

ナベ「おい、基本は守らんかい!」

イデ「届かなくて適当しちゃいました!」

ナベ「お前が登ってるときに抜けたらえらいことになってたぞバカヤロ!」(初日のザイル切断でイデは怒らなかったのにな…)

 

まあとにかく俺のフォロークライムだが、よく見ると上にハーケンが入るところがあったので、そこにハーケンぶち込んで問題なくフォローできた。

とにかくこれで大物は片付き、あとはF40だな、と思ったが。まず10m滝(F37)と間違えた小滝でザイルを出させられて、時間がだいぶ押しているのにさらに時間を使う。

しかしF37は右岸から簡単に巻け、沢にもクライムダウンで戻れた。

源頭の雰囲気が出てくるが、それでもまだCS滝で泳がされたりして「もうおなかいっぱいだから勘弁してください」とか二人でブーブー言いながら、しかしそれでも登らないと帰れないので遡行を続ける。

 

F37かと思ったが違った滝。左手からザイル出して登った。

(普通ならザイル不要だがもう疲れちゃった…)

 

 

本物のF37。以外にも左手から簡単に巻けた。

 

 

 

で、ようやくF40だが…最後の垂直滝が、イデの投げハンマーも届かず、左手のリッジから巻き。

 

F40最上段。ポジションが悪くハンマーがうまく投げられなかった。

左から巻き。ワンポイント激悪。

 

 

 

ナベがとりあえず取り付き、2段上がるが、その先が悪い。イデも一段上がってきて、そこからハンマー投げを試す。その間にナベはちょっとしたピナクルにザックをひっかけ空身になり、泥をほじくり返してクラックを探し、ハーケンを試す。イデのハンマーが3回くらい失敗し、仕方ねえ、これ突っ込むぞということになる。このハーケンしか支点がなく、こいつでA1するので抜けるとノーピン。ということでロープは荷揚げ専用。抜けるなよ~と祈りながらA1に入るが体重かけた瞬間動いたので一旦戻る。動く様子を見て、話に聞く「重ね打ち」を思いつく。おお、なんか効いてる!

A1で立ち上がり、なおも枯木と草しかない危ない草付きをもう2mほど上がって大木で荷揚げ&ビレイ。懸垂しないと降りられなさそうだったので、そのまま小尾根まで上がってトラバースをかけ、いい感じで二俣に降りているリッジを使って沢に戻る。ちょうど二俣。

右は支流で黒いナメ、左は明るい小沢という感じ。なお、巻いている途中に右の支流の上部に大日平山荘の導水ケーブルが見え、地図上も右支流の方が早く登山道に出れるのは明らか。

 

ナベ「念のため聞くがどうする、本流は左だが」

イデ「ぶっちゃけ、さっさと登山道に出たいっす」

ナベ「当然だな」

 

右のナメへ進む。なお、進む前にウェットスーツ等を脱いでいたらヌカカに襲撃されてボコられた。

ナメ歩行7分くらいで登山道。やったぜ!イデと握手。

 

ドヤ顔軍団

 

 

 

夕暮れの大日平は素晴らしく、勝利の栄光を称えるウイニングランにふさわしかった…だが、その後の下りが長い!

完全ヘッドランプ行動となり、急ぐ必要はないし急ぐと危ないので、電波が入ったところで下山連絡。

さらにイデは彼女へのフォローで電話。そりゃこんな時間になったら心配するわな。俺もカミサンに連絡。

「あと1時間くらいで駐車場着くと思う」はい、楽観的でした。

この後も長~い、そして急な下りと、ダメ押しの称名道路歩行(45分も舗装路を歩くんだぜ)でボロボロになり、桂台ゲートに着く頃には、「勝者」というより、「敗残兵」といった有様だった。

 

だが事実、この大いなる自然の前で、勝った負けたなどと児戯に等しい。俺たちはお釈迦様の掌で踊っているに過ぎない。二日目の途中で例のゲリラ豪雨的なのが降ったら、下手すると死んでたかもしれないのだから。

山登りは、我々人間に、謙虚であるべきことを教えてくれる。

 

イデが月曜に休みを取ってないというので不本意ながらコンビニで飯を食い(最近のコンビニ飯は結構うまい、しかしせっかく富山まで来ているのにローカル感が無いのが残念)、北陸道~上信越道~関越道経由でひたすらブラックブラックガムを噛んで眠気をこらえながら帰京。東京についたのは翌3時過ぎ。


【ナベ感想】

 

今まで培ってきた沢登りテクニックと経験を総動員できて満足。掛け値なしに総動員した。

イデヤンとは、お互いの発想と長所が絶妙にマッチして上手く突破できた。 月曜会議が入っているのに頑張ってくれたイデヤンに感謝。

(お互いミスもあったが、登っちまえばこっちのもんだ!)

それにしても、二日目は、天気図的には雨が降っても全然おかしくなかったのに1日持ってくれたのは、立山の神々の思し召しかもしれない。


【ナベ テクニカルインフォメーション】

 

イデは細かく書かないというが、俺は書いちゃうよ。書いたって、結局それを選ぶのは登る本人だからね。

嘘は書いてないけど、状況や本人の実力で毎回ベストギアは違うはずなので、参考にしてくれればという気持ち。

俺たちだって、先人の記録を参考にしてるんだしね。

 

1.我々はゴム底で行ったが、全体にコケとヌメリが多いので、フエルトシューズがベストだと思う。ヌメリはタワシで落とせるが、粘土質の岩に生えたコケはタワシでは落とせない。フエルトでもコケは滑ると思うが、ゴムよりはマシと思われる。

※コケもワイヤーブラシなら落とせるかもしれず、その場合はゴム底有利かもしれない。

2.カムはキャメz4(#0、1)、マスターカム(#1~3)、キャメC4(0.4~1)をもっていって大体使った。特に下部のCS滝ではよく使った。キャメの2番が欲しいな、と思うところもあった。ただし、常に濡れた状態でぶら下げることになるので、重い。数が多いので受け渡しもめんどくさい。キャメのサイズはリンクカムでまとめると軽量化できていいかも(使用はほとんどワンポイントなのでリンクカムは有効と思われる)。

3.ナッツは俺は1回しか使わなかった(イデが使ったかも?)。ただし、今回はなかったがリングボルトタイオフとかもあるかも知れんので減らしにくい。

4.ハーケンは8本くらい持って行ったが、敗退考えたらこのくらいあってもいいと思う。前進だけ考えるなら5本程度で十分(少し減らして、敗退用にはマイクロナッツをハンマーインしちゃうという手もある)。岩質的によく効く。というより、粘土質なので、A1程度までは粘りで効いてくれる。ただし、固くないので、フォールには耐えられないと思う。それはカムも同じだが…

5.ペッカーがかなり活躍した。

6.フックも何回か使った。

7.ジャンピングもF2で使ってしまった。なお、工業用のM8オールアンカーがあると、ボルト穴(ボルトスカー)に効くのでザックひっかけるくらいのことができる。(F2は まるでマシンガンを食らったかのように ボルトスカーがたくさんある)

8.ちょんぼ棒は活躍したが、なくても全然大丈夫。今回は掃除用のアルミ伸縮棒と、布テープを使い、カラビナはグリベルのチョンボ用カラビナを使用した。

9.ザイルは30×2、途中から1本は荷揚げ専用となってしまったが特に問題なかった。荷揚げは長距離を荷揚げすると大概ハマるので、ショート荷揚げを心掛けたが、おおむね成功。


【イデ記録】

 

ナベさんがほとんど書いてしまったが・・・、俺も書きたいんや!ということで、重複する箇所もあるだろうが個人的な感想を記させていただく。

なお、個人的に持参すべきギアや不要なギアについて思うところはかなりあるが、あえて記さないでおきたい。

俺はF34やエイドのために50mmのコンクリ釘が使えるはずと考えて持参したが、結局使わなかった。試しに打ってみたが垂壁では心もとなさ過ぎた。しかし、こうやってギアを選別するのも楽しみのひとつのはずであるし、あまり他人の意見を鵜呑みにすべきではない。自分で考えるべきだろう。

 

ザクロ谷。言わずと知れた険谷で成瀬さんの本の表紙を飾る印象的な緑の谷である。

本で初めて見てからここに憧れを抱き続け、山登に入ったのもザクロ谷へ行きたかったからである。

 

山登魂に入った年は沢登り1年目の9月で到底行けるような実力は無かったし、パートナーも見つからなかったであろう。

沢登りを始めて2年目の昨年、ナベさんという頼もしいパートナーを得てチャレンジするも敗退。

3年目の今年こそと思っており、先週尾白川を敗退し、ここよりは簡単なはずと思って今週挑戦することにした。まぁ今週を逃すと今シーズンはナベさんとのスケジュール的にチャンスが無さそうだったので、とりあえず触りに行きましょう!という軽いノリで立山へ向かった。

昨年の敗退、先週の尾白川の敗退が間違いなく生きた、会心の遡行だった。

自分の足りない部分をパートナーが補ってくれて、パートナーの足りない部分を自分が補う。そんな山行を実現できた。俺が出来なくても、ナベさんが出来なくても、俺たちなら出来た。そんな山行だった。極めて強い達成感を覚え、これ以上ないやり切った気持ちだった。感動した。

 

先週の尾白川で強烈な敗退を喫したので、今週はヌルイ沢で釣りでもしましょうか、などと話していたが、ザクロへの未練は断ち切れず、釣りに適した沢を探しながらも天気予報と称名滝ライブカメラを眺めていた、

「ハンノキ滝が消えた」というナベさんからのLINEを受けて希望を膨らませ、ナベさんと運転をローテしながら松本から安房トンネルを経て立山へ向かった。

 

桂台のゲートに着くと昨年を思い出しテンションが上がる。

ゲートが閉まる前に下山することができないかもしれないので、ゲート前の路肩に駐車し、装備を調えて朝6時頃に出発する。

 

第2発電所を目指して歩いていると、後ろから車がたくさん入ってくる。ダメもとでヒッチハイクしてみると、なんと一発で止まってくれた。富山市内から登山に来た方々で快く乗せていただいた。多謝!

 

発電所のパイプライン横の階段は鬼のようにキツくて、死にそうになりながら登る。例のトンネルは水が滴り、非常に寒いのでカッパを着込んでヘッデンを点けて歩いた。ナベさんに前を歩いてもらったが、案の定コウモリが飛んできてビビる。

 

雑穀谷には多少アブがいたものの気にならないレベル。花崗岩の岩と緑のコケにまみれた凝灰岩の岩がごろごろしており、さながら雑穀米のような感じ。

ややしんどい雑穀谷を1時間少々登ると、ザクロ谷が現れる。異様に鋭く切れ込む谷は去年と変わりなくなかなかの威圧感を放っている。

若干ビビりながらもニヤニヤが止まらない。ウェットスーツやカッパを着込みライフジャケットを身に着けて身支度を整え入っていった。

 

F1は何となく去年よりも高さが出ているような気がしなくもないが、問題なく超えられる。

問題はF2である。朝一なので、とにかく水が冷たい。金玉が縮む。なるべくつかりたくないので、淵が狭まりステミングできる場所の左壁にペッカーを打ち込んでビレイ点を構築し、とりあえず去年スタックして残置したはずのロープがあると思って取り付いてみる。が、あれ?ない。。(笑)

まぁしょうがないと流心に入って登ろうと試みるが、水圧がすごくて体を上げるとはじかれてしまう。てか、さむい。

たまらなくなって、ナベさんにバトンタッチ。

 

 

F2・1段目をリードするナベ

 

 

 

ナベさんが難なくクリアし1段目に上った。さすが!

事前にショートで荷揚げすることを打ち合わせていたので、声の通りはイマイチでも問題なく荷揚げを行えた。基本的に荷揚げはバタフライを作っていってこいでやった。

俺も登らねばと、今度は流心から体を出すことを意識して左足をつっぱって右のホールドを頼りに体を上げたら簡単に登れた。くやしい笑

 

2段目はショルダー。上がったはいいけど何もなくて荷物も置いておけないしビレイも体勢的に結構厳しく、リングボルトを打たせてもらった。申し訳ない。

 

3段目はナベさんがステミングで登っていく。左からゴオゴオと水が振ってくるのでかなりのプレッシャーだが、まぁ落ちても死にはしなそうなので思い切って登った。

 

4段目、F3は因縁のセクションである。

今回はイデがリード。真ん中のくぼみにある流木からビレイ点を取り、ショルダーとカムアブミで体を上げと奥に流木が出っ張っており、これにスリングをひっかけてランニングを取り、体をずりずりと上げて登った。

 

登るとF4が見える。もう既にめちゃくちゃうれしい。

F4はサクッと一撃した。写真撮影スポットなので、お決まりのポーズで撮ってもらった。楽しい。

 

F4でスタコラさっさとステミングに入る。

映っているロープが手元を離れ、この後スタック。

 

 

 

核心は超えたものの、これ以降もザクロは厳しい。ショルダーしたり、投げハンマーしたり、ペッカーぶち込んだりしながら登っていく。

トポなどでは特に触れられていないよう箇所であっても、水量が多いせいなのかFナンバーが付いてない滝でもかなり難しかったものも結構あった。

ボイルしているようなところでも、とりあえず取り付いてみると意外と立てたり、ホールドが見つかったりすることが多かった。

基本的に側壁を無理に登って巻くよりは、頑張って登った方がリスクは小さいように感じた。

 

ひたすらに続く緑の廊下が非日常でしかなく、たまらなく美しい。

 

牛の首周辺の河原につく頃にはだいぶ疲れており、早くテン場を見つけて休みたかった。

良さそうな場所を見つけ、焚火を起こして酒を飲み、食事を済ませて横になった。

シュラフカバーに穴が開いており若干寒かったが熟睡した。

 

 

翌日5時に起き、再び焚火を起こす。

少し遅くなってしまったが、体を温めて身支度を整え出発。

 

しばらく行くとすぐにてまり滝が現れる。

右岸から髙巻くと早乙女沢出会い。開けておりナメの沢床が癒し系だが、またすぐにゴルゴルしてくる。

 

元・口無しの釜の滝は水が流れているのでそれと分かるまでに、あれ?これかな?って感じだった。

釜は深いが落ち口の真下の水中に立てる場所があるのでムーブは起こしやすい。リップも甘く水流もあってフリーでは厳しく、ハンマー投げでかけたロープを補助に使って越えた。

 

この後は、上部のハイライト、緑の回廊である。奥にF25が見え、段々と小滝が続くまるで緑のベルベットで覆われたような廊下が続く。とても日本とは思えないような光景である。個人的にこれを一番見たかった。実に綺麗でたまらない景色だ。

 

 

緑の回廊

 

 

 

F25は右岸を髙巻きとなる。残地のリングボルトはリッジ状のところを2,3歩トラバースで簡単にクリップできた。ここからコケがかなり繁茂しており、スリッピーできわどい。実際に2回くらいスリップしてフォールしかけたが、なんとか持ちこたえて草付きまで登り木があるところでピッチを切る。たしかに上部の核心というべき難しいピッチであると思うが、尾白川の方が命の危険を感じたのでまぁなんとかなる。

 

それから1ピッチトラバースして沢床に降りるとF26のソーメン滝である。右岸をトラバースして左壁を登る。ペッカーで一段上がり残置ハーケンにクリップし、左の欠けそうなフレーク状のカチにスカイフックを掛けて、落ち口の付近のカチにタロンを掛けて登る。この際、完全に乗り移る前にタロンが外れてひやっとした。掛けた箇所が甘かったのもあるが、後々調べたらタロンの紐の通し方が間違っていて掛かりが悪かったのも原因の一つであろう。予めギアの状態はよく確認せねば。

 

F31はナベさんがへつってクリア。フォローでもきわどいスタンスでジャンプするのは気が引ける。ここまで来てコケて怪我したくない笑

申し訳ないがハーケンとスリングを残置させていただく。

 

その次くらいだったかな?F34の前に出てきた2,3mほどの水線突破の滝がマジでやばかった。流心に頭を突っ込んでそのままずりずりと上がって強引に突破することになったが、3回くらいはじかれて心が折れそうになる。ナベさんが突破。すげぇ!フォローでナベさんの腰がらみビレイで登る。正直ロープフィックスするかアブミくれよと思ったが、まぁ登れない方が悪い。なんとか気合で登った。死ななくてよかった。。。

 

F34は完全な人工登攀。

取りつきは、かなり深くて水中ショルダーは厳しい。やっぱり水量が多いのだろう。ナベさんがハーケンを泳ぎ打ちしてくれたので、そこを起点にスモールカム、ペッカーを使って高度を上げる。せっかくなので、チョンボ棒を使って残置にアブミを掛けて登った。残置のピンは5個で、4個目にスリングを掛けて登ったので、5ピン目が遠くてかなり無理な体制でクリップしたため、逆向きで掛けざるを得なかった。ナベさんフォロー中に抜けてしまった。申し訳ない。まぁ、ハーケンでも行けるし、新たに打ってもいいしなんとなるだろう。落ち口へのトラバースは若干スリルがあるものの良く踏めるところがあり、安定してトラバースできた。やっと終わりが見えてきた。

 

もうすでにいい時間であり、下山の時間が心配になってくるが、ザクロは最後まで容赦がない。

F37のような滝はなぜか2個出てくる(笑)。登ったり巻いたりしながら頑張って進めていく。

 

F40は釜が深く、ハンマーも厳しそう。右岸のリッジを登って巻くことにする。

ナベさんが行き詰っているので、ワンチャン狙いでハンマー投げを試みるがかからない。数回試したがダメで、巻きで行くことに決定。

割と低い位置に良い木が生えているのでどっかでピンが取れれば危なげなく登れる。ハーケンの重ね打ちは初めてだったけどなかなかしっかり決まっていた。

もうかなり高度も上がっていることもあり、植生にハイマツも交じってくる。

安心感のある植生を掴んで尾根に巻き上がる。尾根沿いに沢床へ降りると山小屋のものと思われる水道管が右俣に渡っている分岐に出る。

ここで装備を解除して、右俣を少し行くと登山道に出た。短くも長いザクロ谷もここで終了。

 

夕日に照らされた大日平は綺麗で穏やかだった。とてもあの険しいザクロ谷を抱えているようには思えない。

 

 

夕日に照らされる大日平

 

 

雄大な立山の山々を眺めながら木道を快適に歩き、下山を開始した。ヘッデン下山となり、非常にしんどかった。何度もあ~疲れたな~と口にしながら淡々と下って行った。

 

この記録を書く前から、最後に記す言葉は決まっている。

 

『俺も沢ヤだ!』


 

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