2021年屋久島・鹿児島ツアー 第1弾(瀬切橋~平瀬まで)[沢]


2021年10月5日~6日 ナベ(L記)・Y崎 形態:沢登り


【ナベ】

長い休暇を取れることになり、今風に言うとFIREを達成しているY崎さんと10月頭から遠征に行こうぜと色々相談。

Y崎さんは屋久島に行きたいという。私は宮之浦川・小楊子川・永田川を終えており、宮之浦岳頂上も20回くらい踏んでいるのでもういいや感があったのだが、Y崎さんも特に稜線や頂上にこだわりはないとのことだったので、屋久島という山域についてはY崎さんの意向を尊重、内容については私のワガママを通させてもらい、ゴルジュ突破やろうぜ!的な沢登り(フリークライミングにおける岩のように、ゴルジュそのものを目的とした沢登り、例えば奥多摩の川乗谷や海沢谷)を屋久島に持ち込んでみようと思った。

ヒントとなったのはこちらの記録で、屋久島と言えば上まで抜けるイメージだったところ、そーか、途中打ち切りもありだな、と思い直し、だったらもっと遡行内容にこだわりたいなということで屋久島でゴルジュ突破やろうぜ!となった。

ゴルジュ用装備で稜線に抜けるのは大変なので、基本的に山奥ではなく、山の浅い所にゴルジュを持つ下記3本の沢をチョイスし、Y崎さんも基本同意してくれた。

①瀬切川(「せぎれかわ」と読むとの事)

②黒味川

③湯川

 

Y崎】~屋久島雑感~

屋久島の沢に入っての最初の感想は「石がでっかい」。

車サイズなんてありきたりで、小屋、へたすると一戸建てぐらいの石がごろごろしている。

その石を回り込まないと先行きの判断がつかない。

見える範囲で最適なルートを即断して遡行する、という本州のやりくちが全く使えない。

それに石がでかいので登ったり降りたりに手間がかかる。膝もお尻もすり切れる。

 

次の感想が「どこもかしこもつるつる」。

もちろん極端な物言いで、普通に登れる所の方が多いのだが、滝身、特にゴルジュのそれはみごとに磨かれたスラブばかりである。深い釜の奥にある3mほどの小滝に取り付けず、登れないなどざらである。とにかく弱点が少ない。

まあこんだけつるつるだと逆に諦めもつくのだが。

 

三つ目が「後退滝のゴルジュは異世界」。

おそらく豊富な水量に削られ、深く急峻な地形になったのだろう。水は硬い花崗岩を削り磨くだけではなく、切り開いて(時に)数十メートルのゴルジュを形作っている。何万年(何百万年?)にわたる侵食で出来た後退滝は人知や技術でどうにかなる、というレベルをはるかに超えている。

ほんとに。

 

最後が「根っこは友達」。

東北のニラみたいな草付は論外にしても本州の沢は岩壁が出てくると終了!の場合が多いが、屋久島では縦横に根が張り巡らされ、それをしがんで登れることが多い。少ない弱点ややばすぎる高巻きを補完してくれるのがこの根っこ。

ありがたい。

ただし、いったん枯れるとあっという間に朽ちていくので、チェックは欠かせない。


10/3 鹿児島溝辺空港~天文館~鹿児島南ふ頭

溝辺空港で集結し、リムジンバスで鹿児島天文館へ。二人とも夜に着いたのでガス缶がない。屋久島で買うことにする。

フェリーの出港する南ふ頭でビバーク。蚊が出てうっとうしいが暴走族とかは来なくて安心。


10/4 晴れ 鹿児島南ふ頭~屋久島宮之浦港~安房~屋久島青少年旅行村(栗生集落)

事前に全然調べてないのでどこでガス缶が買えるか知らなかった。ネットでドタバタしながら調べたら安房では確実に買えるようなので、安房でいったん下車し「山岳太郎」にてガス購入。

ここは立派な登山用具店で忘れ物しても安心。

 

なお、ガスだけなら、レンタルショップが宮之浦・安房を中心としてたくさんあり、たぶん買える(事前に電話して聞いておけばいい。ネット情報だけだとダメ、コロナ禍で臨時休業しているところ多し)。

ついでに安房のAコープで食料買い出しして栗生行のバスに乗り、終点栗生橋から1km歩いて屋久島青少年旅行村へ。2人+持ち込みテントで一人頭約500円と破格。それでいてトイレあり、ゴミ出しOK。

シャワー・コインランドリーまである(別途有料)。※詳細は下の方に記載。重要情報です!


10/5 晴れ

07:00屋久島青少年旅行村発→08:25瀬切橋→16:00瀬切滝下→17:20瀬切滝上→17:35標高440m付近にて幕

西部林道を歩いて瀬切橋まで。橋から降りて入渓し遡行開始。

早速の斜瀑10m。釜から斜瀑が落ち込んでおり両岸浅いゴルジュ、こいつは登れる形状ではなく左側から小さく巻く(屋久島沢登りのバイブル「屋久島の山岳」のF4と思われる)。

以降も次々と小滝が現れるが、いずれも直登する必要が無いくらい簡単に小さく巻けるので巻く。

やがてF8のゴーロ状大滝。こいつも左側から巻く。沢に戻るがF9・F10も登れず巻いたものと記憶している。

 

斜瀑(おそらくF4)

 

ゴーロ状大滝。左側から高巻いた。

 

F11から本格的ゴルジュとなり、巻くと結構大きく巻くことになりそうなので突破モードに。

泳いだり、大岩のトンネル潜ったり、カム決めてきわどいフリーで側壁を越えたり、ゴジラの背みたいな大岩を這いずって登ったりで越えた。

その先は記憶が定かでないが、左岸側の沢の側壁のすぐ上をトラバースするなどして越え、最小限の巻きで越える。

 

ここは珍しく右壁にカムが決まりスッキリと登れた

 

 

大岩の上を這いずるY崎さん。写真からは伝わらないが、どっちに落ちてもヤバい。

 

こんなことやっててだいぶ時間が押してしまったが、やがて瀬切滝。

一瞬「藪と藪をつないで、バンド使えば右壁を登れそう…」と思ったが、危険すぎると思い、右岸側からの巻きを提案したところ、Y崎さんから「右壁やけど、バンド伝えばイケるんちゃう」と逆提案される。

マジ?

しかしああいうのをやるために重装備で来ているのである。行くしかない。

 

瀬切滝

 

左岸のルンゼから目標のバンドに到達しザイルをつける。

 

<瀬切滝右壁1P目> 10m ナベ 3+

下がり気味のバンドを途中の木まで左トラバース。案外安定している。

ザックを2個とも「荷下げ」するがY崎さんのザックは荷揚げ用のループが無くクソやりづらい。

 

1P目の下りトラバース、ビレイするY崎さん

 

<瀬切滝右壁2P目> 10m Y崎 4-

滝身近くの樹林まで左下へトラバース。こっちの方が悪かった。

 

<瀬切滝右壁3P目> 10m ナベ 4+

ここから藪を伝えば終わりやろ‥と思ったらそうは問屋が卸さず、藪を頼りに一段上がったら、傾斜の強いスラブが露出している。

無理だとY崎さんに伝え、右トラバース。ビレイ点から一段上のバンドはそこで途切れているため、クライムダウン気味にトラバースするが足が無く、仕方なく、途切れている先のバンドのゴボウくらいの木を頼りにマントル。こえ~。てかこの木がなかったらここトラバースできんわ…。

そのまま10mくらいバンドを辿って右上トラバースして木でビレイ。

 

<瀬切滝右壁4P目> 10m Y崎 3

念のためザイルを出して凹角を左上。少し藪をこぐと落ち口だった。

 

なお、落ち口にはなんとラッペル用のスリングとリングが…

ここキャニオリングしてるやつがいるのか…

(下山後検索したら、おそらくこれでしょう(これの0:20秒目くらいから。0:55くらいの、竜王の滝1段目水線ラッペルがイカれてる…2:20は竜王の滝の2段目か?)。

 

瀬切滝右壁登攀ライン

 

落ち口からは小さい淵&小滝が続いているがいい加減時間が押しているのと、簡単に巻いてしまえるため、そのまま左岸から巻き、沢床に降りる。

左岸にビバークによさそうな平らな大岩があったのでここで幕とし、川沿いのやや斜めった岩盤でちょっと盛大な焚き火。

 

幕場(翌朝撮影)

 


10/6 晴れ

07:00幕場(440m付近)発→14:10平瀬(840m二俣付近)→17:40西部林道→18:05栗生 山下商店 

本日も元気にイケそうなところは突撃。滝が多すぎて屋久島の山岳と対照できない、というか、屋久島の山岳も結構適当。

宮之浦川と永田川の遡行図が正確無比だったので、今回私が遡行図作成する必要はないだろうと思っていたのだが、メモを持ってくればよかったか…。

(記録を見ると、雨の中遡行しているようで、そりゃ適当になるわ)

全然箸にも棒にもかからない感じのゴルジュは2か所ほど短い区間があっただけで、あとは大体攻めたラインで登れた。

 

平瀬の手前のF37~39は左壁と藪の際をザイル出すが、結局藪に追いやられた。

 

攻めれるところはなるべく攻めた。

 

 

 

 

本流側が滝として出会う珍しい地形のF37

 

 

右岸側のスラブをなるべく藪に入らないように攻めた

 

平瀬の二俣に出るとたくさんテープがついていたので、それを辿ったらあっという間に林道に出た。

長い林道を歩く。途中猿に威嚇されたりした。

西部林道に出てから、山下商店(Sマート)の刺身を目指して、ザックを置いてナベが激走するが5分差で間に合わず。

19時まで開いている大迫商店で酒と野菜(高い)とトビウオのすり身の冷凍を買い、青少年村でささやかに祝勝会を開いた。


【ナベ感想】

今回、可能な限り巻きを小さくしほぼ全ての滝の落ち口に立ち、また、分かりやすい成果として瀬切滝の右壁登攀に成功した。

通常の沢登りの範疇ではかなり攻撃的な遡行ができたとは思うが、当初の思惑は外れてしまったが、かなり遊べた。

とはいえ、改めて分かったことは、屋久島の沢は全体に

 

・滝の手前の釜や淵が長く深いうえ、側壁がぶったってるorスラブつるつるでリスやクラックも少なく、泳いでも上陸できない。

・よって、小滝でも足の立たない淵20mとかだったりして、タイプは違うが、例えば称名川ザクロ谷核心のF2とかF34より難しい。そんなに難しいのがバンバン出てくる。しかも割と簡単に巻けるので、突破に合理性がない。

・たまに側壁ブッ立ってて巻くのも大変みたいなゴルジュも出てくるが、こういうのは大西さん・佐藤さんペアでも困難そうな迫力があり、突っ込む気がしない(彼らなら片付けられる?)

 

という特徴があり、ゲレンデ的にゴルジュを遊ぶのには向かないということだ。特に瀬切はその傾向が強かった。

全装備担いだり、時間的制約がある状態では突破は厳しい。(かなり時間に余裕がある状況でないと厳しい)。

言い換えれば、林道からすぐ取り付けるような短いゴルジュの突破をまさにフリークライミング的感覚で挑むならまだ遊ぶ余地があると思う。

また、今回は急遽遠征を決めたこともあり、細かい点が適当だったが、本来こういった突破系をやるなら、1泊2日であっても二人とも30~40Lクラスのザックに収めるべきだし、ザイルは荷揚げ用に2本あった方が良かった。

今回40mシングル1本で行ったが、30mシングルと荷揚げ用30mがベストと思われる。そういった点を改善すればもう少し突破系遊びができるかも…

 

余談かもしれないが、だいぶ昔に、「岳人」にて、新日本百名谷を選定しようという会議があり、その紙上に、瀬切川を含め屋久島の渓谷に「高巻きを中心とした遡行内容には疑問を覚える」といったコメントがあったが、高巻くか突破するかは登る側の問題だ。

もちろん、高巻く余地のないゴルジュの突破ができるような沢が「ゴルジュ突破沢として名渓」なのは間違いないが、人間が普通に登れるレベルでそんな都合のいい沢は沢山はないんだから、登る側が工夫する必要があるのではないだろうか。

工夫をすれば日本のゴルジュはまだまだ遊べる。


Y崎感想】

この沢での最大の収穫は瀬切滝を登れたこと。

一見「どうにもならない。これは右岸から大きめに巻くしかない」と思わされるが、じーっと眺めているうちに見えてきたルートが大正解。

へっぴり腰で渡ったバンドから木にしがみつつ登りあがる泥臭いラインだが、それでこそ沢登りである。

滝のみごとさ巨大さと相まって、何年かたっても思い返せるいい登攀ができた。

(写真は瀬切滝にあらず)

 

 


【ベースについて】

栗生の外れにある屋久島青少年旅行村をベースとした。

今回は瀬切川(前半のみ)・黒味川(ケヅメゴルジュ)・湯川下部、大川の滝を登ったが、小楊子川遡行にもベースとして最高なのでお勧めしたい。

 

テント持ち込みと人間二人で1日1000円ちょっと、一人頭約500円少々。

シャワーとランドリーは別途有料。色々相談に乗ってくれるので、管理員さんとコミュニケーションを取るべし。

なお、キャンプ泊者も充電可能なコンセントがあるが、壁面の床から約1.5mくらいの所に取り付けられている屋外用防滴型コンセントなので、スマホ充電用のACアダプタのような横幅のある形状のものはカバーと干渉してしまい刺さらない。シンプルな延長コードが1.5mほどあるといい。

コスパ、ロケーション的には最高だが、売店まで片道1キロあるのが難点。

 

なお、栗生の売店は以下の通り。

 

●大迫商店(酒・食品・生鮮品)

19時まで、何もなさそうで探すと色々あり非常に助かった。冷凍の飛び魚すり身はビールの保冷剤にもなる。ぱっと見営業しているようには見えないが開いています。

実は生ビールサーバーもある模様で、ご近所のご隠居が楽しんでらっしゃいました。我々よそ者は大人しく缶ビール買ってキャンプ場で飲みましょう。

●月野商店(日用品・食品)

→営業時間不明、大迫商店より遅くまでやっている模様。こちらも営業しているようには見えづらく、入りにくいが、20時頃にツマミを買わせてもらってとても助かった。

●山下商店(Sマート)(酒・食品・生鮮品・弁当惣菜・日用品)

→自動扉採用で前二者より入店のハードルが低い。なんとPayPayが使える。こんなところまでPayPayの営業マンがやってきたのかと思うと味わい深い。

6時~18時、飛び魚のつけあげや刺身ほかおいしい弁当や総菜が売っていて、開いている時間に下山できると大宴会できる。

 

なお、大迫商店と月野商店は値札が張っておらず、山下商店も刺身と総菜以外はあんまり貼ってないが、細かいこと考えずガンガン買って地元に還元しましょう。


 

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