■上信越/戸隠連峰「西岳P5尾根(P5稜)」[雪山登山(雪稜)]


2022年1月10~11日(前夜発1泊2日)

形態:雪山登山(雪稜)

メンバー:ナベ・山崎


2022/01/10 曇り時々晴れ

08:00 品沢高原→12:00ごろ 1,600m付近(急な雪稜)→13:20ごろ 1,750m付近テントスペース着→偵察して終了

 

初日は前泊地・道の駅しなのから出発、戸隠にドライブ、品沢高原の奥の方の広場(雪捨て場と思われるので雪の日は停めないほうがいいかも)に駐車し出発。

上に上がる細い車道を辿ると貯水タンクがあり、その裏を歩くと右手下方に林道ゲートがあったので以降は林道を辿る。なんとトレースがある。

 

やがてP5尾根。丸山のコルに上がると大変みたいな記録を読んでいたので、沢の右岸側一段上をトラバース気味に進み、樹林の濃い枝尾根からP5稜(P5尾根)に上がる。そこからはだらだらラッセル。なお、トレースは林道から上がってすぐ不明瞭となったため、林道だけトレース利用と言う最もオイシイ結果となった。

 

平地では脛、斜面では腰くらいのわかんラッセルで着々と高度を挙げていくと、標高1600m付近で急峻な雪稜となる。ボケっとしてノーザイルで登ってしまった。

 

尾根に上がるまでのラッセル。

 

尾根上のラッセル

 

1600m付近の急な雪稜

 

やがて正面に迫力のあるピークが見え、どっから登るの?って感じ。あれを今日中に越えるのか~とか思ってたらスマホ起動し確認すると既に1750m、てことは今日はここまででOKじゃん!

 

手前のピークの緩い所にテントを張った。

 

テントを早速張るが、ポールのゴムが何故か伸びきっており、切断して結び直して、など一苦労。おまけに一回落としてボブスレーのように滑りながら雪面に埋まり「終わった」と思ったが幸い発見できた。

 

テンバ(1750m)にデポして偵察。

登山大系では「ピナクル」と書かれている顕著な岩峰の基部に上がるが、細いバンドが左に続いておりちょっとワカンでは行く気がしない。一段降りて右側をのぞき込むと登れそうなルンゼがある。

 

テンバに戻って酒と飯。

ナベは飲みすぎて、水造り中何度も居眠りこいて危険極まりなかった。


2022/01/11  曇り時々晴れ 

03:00 起床/05:00発→08:00 1P目終了点→10:20 3P目終了点→10:50 P5(西岳第3峰)→12:35 テントスぺ―ス→15:40 品沢高原P

 

3時起きして5時出。ワカンは担いでアイゼンで出発。ヘッドライトで昨日つけたトレースを追う。とりあえず左トラバースの正規ルートを見てみる。ザイルつけてトラバースするがすぐに傾斜の強いルンゼ。え?これ登るの?ヘッドライトで照らせる範囲ではピンがとれなさそうなんですけど…

向こう側に渡れば木が生えているが足場がなく渡るのも無理。イボイノシシをぶちこんでからしばし迷うが、無理と判断し交代。山崎さんも即座に無理と判断。あの波勝崎赤壁でエイド用エイリアンでの墜落を繰り返しても諦めなかった山崎さんがどうしたのか?と思ったが、「冬はスピード命やからな」とのこと。

昨日つけたトレースを辿り、基部から一段降りて右トラバースし右手のルンゼから登ることに(要は、無理と判断したルンゼを裏側から登るような形)。

気持ち悪い急な斜面を20メートルほど登ると、雪面の途中で岩が露出していたのでそこでバケツ掘ってロープつける。

 

1P目】ナベ 30メートル Ⅴ・A0 (5級A0)

ルンゼまで5メートルほどだが入り口が悪い。なんとか乗り越して左の灌木で支点をとり一安心。次の木が遠くめげそうになるが、覚悟を決めて草付きにガンガンアックスを叩き込む。岩も叩きまくり。途中からステミングが決まるようになり楽になるが、一回アックスの流れ止めヒモが引っ掛かって詰みかけた。最後の抜け口は小雪庇になっており右に寄って立木にマントル数回と垂直ラッセル。体力が果てかけたところで、尾根上の立木の残置スリングにアックスが届いたので迷わずA0。このピッチに2時間近くかかった。

 

2P目】山崎 50メートル Ⅳ- X (4-級)

立木から右→左に続く雪稜を辿り、階段状岩壁(P8)基部。直上は無理なので左トラバースか右トラバースなのだがめずらしく山さん迷い、左を選択。2メートルほどのトラバースはビレイ点から見ると簡単そうなのに非常に遅く見えたので、無情にも急いで的声援を飛ばす(山崎さん的には「うっせえわ」状態だったらしい。当たり前か)。

上の段の立木にしがみついて一安心だが、そこからの雪壁&藪も時間がかかり、全体で1時間くらいかかった。

そしてフォローしてみて分かったが、1P目終了点と左トラバースの間には深さ100メートルくらいのルンゼがありめちゃくちゃ恐ろしい。しかも壁面の集塊凝灰岩は脆いだけじゃなくガバが無い(多分先人たちが全部剥がした)。こりゃ躊躇うわ。

直前の支点が、10mランナウトしたあとで掘り出した割り箸のようなブッシュの束。

立木にしがみついてからの藪&雪壁は、前ピッチの最後の方と同様、非常に奮闘的。

 

3P目】ナベ 20m Ⅲ+(3+級)

相変わらずの奮闘的な藪&雪壁。

雪を払う→枝を掴む→頑張って引き上げ→雪を払いつつ木の幹にしがみついて脇に抱え込む→(スリングで支点)→雪を払いつつマントル

ひたすらこの繰り返しで腕力と時間を消耗。

20mほど上がるとようやく目の前が普通の尾根になり立木でビレイ。

 

スマホGPSで確認すると頂上まであと標高差80~90mくらいを残しており、引き返しリミットの11時まで時間が1Hを切っているため、ここで休憩したのちワカンに履き替え全装備デポしてアタック。

空身はさすがに早く、リミット内で登頂できた。

下降は懸垂二回で階段状岩壁基部、雪稜を下り1ピッチ目のルンゼを懸垂二回でピナクル基部右の安全地帯まで。

 

テンバに戻ってパッキングし下降開始するが、山さんのネパールエボ(10年使用)のソールが剥離しかけているのが発覚。

コバは活きているのでアイゼンで押さえつける形なら保存できそうなので、二人ともアイゼンで下降する。

 

山さんのネパールエボのソールが剥離

 

踏み跡は残っており問題なかった。

1600m付近の急な雪稜は二段に分かれており、一段目は立木があるので問題なく懸垂、次の段は支点が何もなく、少し掘ってみたが支点が取れなかったので、上でナベがスタンディングアックスビレイして山さんがザック担いで下降(安全地帯まで60メートル一杯)、登り返して今度はナベのザックリ担いで下降。最後にナベが下からビレイされつつ空身で下降。この下降はなかなか痺れる。

 

以降は踏み跡たどってあっという間に駐車場へ。

なお、下山中は「戸隠まで来たんだからそばにするか、それとも長野市で適当な定食屋に入りかつ丼にするか、それが問題だ」と二人で悩んでいたが、そもそも戸隠の飯屋は16時くらいで終わるので問答無用だった。飯綱高原を経由して長野に出ると途中にドライブイン的な飯屋もなく、結局打ち上げないまま長野駅で解散。若干画竜点睛を欠く山行となったが、1人で東京までドライブするナベとしてはあんまり満腹になると眠くなるので致し方なし。無念である。

 

なお、出発時、相模ナンバーの車が品沢高原の広場に停車しており同業他社と思われたが最後まで影すら踏めなかった(山の中ではトレースはほぼ消えていた)。全装備担いで縦走して我々より早く車を回収して帰京しており、スピード差=レベル差を感じた。


PⅦ(ピナクル)

 

PⅦ迂回&登攀ルート

 

PⅧ(階段状岩壁)

 

PⅧ写真解説

 

頂上


 

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