■頚城山塊/焼山北面・早川支流一ノ倉川遡行~水無谷・焼山川下降[沢]


頚城山塊/焼山北面 早川支流一ノ倉川遡行~水無谷・焼山川下降

2022年9月17~18日(前夜発1泊2日)

メンバー:ナベ(L・記)、イサミ、丸ちゃん

形態:沢登り

 

例によって地形図スクロールしていると面白そうな沢発見。

幸い(?)無雪期の遡行記録は見当たらず(山スキーはたくさんあった)、こりゃそのうちやらないとなリストに追加。

今年の秋は朝日の沢をやろうと思っていたが朝日スーパーラインが水害で閉鎖され、少なくとも今年中の復旧はないとのことでこちらに決定。

なお、後で分かったことだが、18日は全国的に天気が悪く、天気が良かったのは新潟だけだったようでツイていた。

ネット上記録未見なのがもったいないくらいナイスな沢。帰りの名立食堂下山飯も完璧だった。


9/16 夜北朝霞駅集合~関越道~上信越道~北陸道~能生IC~某P

 

高速をかっとばし、事前に調べておいたビバークポイントへ。

釣り人やそのほかの人たちが車中泊していたがなんとか駐車できたので公園の東屋でビバーク。風が強い。かっ飛ばしたせいで燃費が悪く、ガソリンがなくなりそうだ。


9/17 晴れ

6:50 焼山(新潟側)登山道第二ゲート駐車場発→7:40焼山川堰堤→8:00焼山川・一ノ倉川出合→8:40最初の滝→9:15 10m斜瀑→11:10激シャワー滝→12:30イサミが泳いで右のルンゼ登った滝(最初の連続ゴルジュ終了)→13:00核心CSハング滝→14:50ごろ 1230m付近にて幕営

 

駐車場に車を止めて身づくろいしていると、ナベが担当することになっていたカム一式を自宅に忘れていることに気付く…

まあどうせ海谷の界隈だから集塊岩系の、粘土みたいな土に岩がボコボコ埋まっているタイプでカムなんか効かないだろうからいっか、ということで出発。

 

焼山に降りる林道は半分自然に還っており最初は気付かずに登山道を行き過ぎてしまいちょっとタイムロスした。

焼山川は異常に冷たく「一ノ倉川もこの調子だったら泳ぎとかシャワークライミングは無理やな…」と思ったが、一ノ倉川に入ると、フツーの冷たさで安心。平べったい土地を川が蛇行して流れており、大昔に「隠し田」とかやってそうな地形である。

河原を適当に歩いてさかのぼっていくとやがて最初の滝。ここから実質遡行開始。

簡単に巻けそうだな、と思って草付きに取り付くと1mも上がれない。まず草の大半が貧弱なイタドリで、かつ、土の層が薄すぎて足が決まらない。

 

以降、2回くらいゴルジュが緩むものの、基本的には標高1000m(両岸ゴルジュ記号が終わって少し進んだところ)くらいまでずっとV字谷のゴルジュ。先述の通り巻きが極めて悪いので、ほぼ全部直登気味に登った。

ちなみにヌメリが半端ない。岩質が多様で、基本的には水流中はヌメリが少なく、飛沫が当たるところはヌメるという王道ぬめり沢パターンなのだが、岩によっては全然ぬめって無かったり、逆に乾いているのにフリクションが全くなかったりして、フェルトがお勧めなのかゴム底がお勧めなのか本当に微妙。いずれにせよタワシはマスト。(今回我々は全員ゴム底)

 

序盤。規模は大きくないが、岩盤の発達したいい渓相。

 

 

最初にザイル出した10m斜瀑はゴム底がビタビタに効いた(マルちゃん曰く、フェルトでも登れそうとのことだが)。ここは核心のトラバース前にハーケン打っていたが、カムがあればカムで時短できたかもしれない(フレア気味だったので決まらないかも知れない)。その後も小滝や釜持ち滝がバンバン出てきて楽しい。

 

左のコーナー→水流左を登る丸ちゃん。トラバースはゴム底がビタビタに決まった。

 

超絶ヌメる小滝。丸ちゃんがクリーニング&ハーケンA0で突破。

釜の手前で見ていたイサミの発案で、倒木を切って橋にしようと土木工事したが、釜が思ったより深く立てかけられなかった。

 

ヌメヌメ滝図解。せめてもう1人下にいて水中で土台にならないと、滝上に木をかけるのは無理でした。

なお、先に上がった丸ちゃんから「そもそも人間が持ち上げられるくらいの重さの木では浮いて流されると思います」と突っ込みが…

 

A0ヌメヌメ滝の後も、ショート泳ぎ・へつり・シャワークライム・側壁登りを駆使して次々突破

 

 

次にザイル出した6mくらいの滝は激シャワー・右のハング下から左の水流沿いに這い上がるのだが、どうしてもこなせずイサミに交代。イサミはサクッと一撃。くっそう…

ここはイサミの肩の柔軟さでナベの取れなかったCSを掴んだらしいのだが、カムがあれば余裕でA0してあがれたところ。カムを持ってきていればワイにも見せ場となったのに…なお思いっきり水を浴びるので増水していたら話にならないと思われる。

これを越えてさらに小滝をいくつか越え、直登不能の滝の釜を泳いで右手ルンゼから小さく巻くと一旦河原となり、地形図上の核心帯はクリア。

 

ナベ敗退→イサミが突破。

 

フォローする丸ちゃん。水量多かったら無理と思われる。

 

楽しいゴルジュが続く

 

 

 

これを泳いで右手奥のルンゼから巻いたら一旦河原になった。

 

1000~1150mくらいの等高線が密になっている箇所で(予想通り)滝が出てきた。特に6mCSハング滝は、右の被ったチムニーからイサミが痺れるクライミングで突破。抜け口は甘いハンドと垂れ下がっている流木のフル活用。カムがあってもここは難しいと思う(カムでランナーは取れるので安全度は段違いに上がるが)。何しろハングなのでスタンスがなく、今にも折れそうな流木に足を絡めるような感じで下半身の体重を殺してハンドジャムとホールドで体を引き上げたが、頼りにした流木は指2本分くらいの皮だけでつながっており、とにかくこれをほぼノーピンで登ったイサミはマジですごい(一応ハング下にハーケンを打ったが、とても簡単に抜けた)。

サードでフォローした丸ちゃんも「マジ!?」「ヤッバ!」と若者らしく驚いていた。

 

核心のCS滝。このあと全員CS下に集合。

 

ハングに突っ込むイサミ。ナベはフォロー時、この段にすらフリーで上がれずA0する始末。

 

フォローする丸ちゃん。

ザイル右の木が下までぶら下がっていて、スタンスにしたりホールドにしたりしたが、一番細い部分では8ミリザイルよりちょっと太いくらい。

それがてこの原理でギシギシと

 

連瀑を振り返る。

 

やがて右岸に崩壊地が出てきて、これを過ぎて簡単な連瀑を登って右に折れ、右手(左岸)から流入する枝沢を見送ると、右手の低い尾根(枝沢との中間尾根)に、イタドリの群生の中になぜかちょうどいい平らな砂地が見えたので幕場とする。イタドリをぶった切って軽く整地したら余裕で3人寝られるスペース完成。ここなら増水しても安心。

左岸側にはいい河原が無いので、対岸の河原で焚き火とし、大量の薪を集めて盛大にやる。なんとSB携帯の電波が入ったため、丸ちゃんが航空写真などで研究。ナベは事前に航空写真でこの水無谷と焼山川を「ただのガレ沢」と考えていたが、丸ちゃんがよく見るとおそらく秋の写真なのに、焼山川のゴルジュに雪渓が詰まっており、明日雪渓出てきたらどうするかね~と飲みながら検討。

 

快適&安全なテンバ。


9/18 晴れ

6:45幕場発→7:05 1330m付近(右岸の支流に入る)→8:20高松山南西のコル(標高約1700m)→8:50尾根を下りきって沢床に到着(水無谷)→9:35 15m枯滝(クライムダウン)→9:45 20m枯滝(左岸より懸垂)→10:10焼山川本流25m大滝(シャワー懸垂)→11:00林道→11:55起点駐車場

 

朝から焚き火して煮炊きし出発。詰めあがる予定の支沢まで特段問題なく標高を稼ぐ。1330m付近は地形図通り若干なだらかとなっており、昨日の幕場ほど安全ではないが、十分幕営出来そうな感じだった。

ここから支沢に入り高松山南西のコルを目指す。スマホGPSとにらめっこしながら順調に高度を稼ぐ。ヌメリは激しいがそれ以外特段問題ない。水流が完全に涸れてからも、少しでも藪こぎを避けようと沢型を追うが、深追いしすぎて草付き斜面に入ってしまい大変苦労した。岩登りも交えて草付きをなんとか突破し尾根に出るが、尾根はまあまあ濃密な灌木帯で全然問題ない。沢が枯れたら、割と早めに上がれるところで尾根に上がった方が安全だった。

稜線に出ると、今までの尾根と違って、風雪に耐えている灌木たちは密集していて強い。コルまで下りだったので問題なかったが、この藪密度は登りだとちょっと大変そう。

 

コルにて。

 

コルからすぐ沢に入りたいところだが草付きが悪そうだったので右岸の尾根を下る。最後尾根を外してしまいちょっと頑張って岩をクライムダウンする羽目になったが30分ほどで水無谷の平和な沢床に降り立った。草原感があって素晴らしいテント場だが水が無い。

(丸ちゃんが一本南の沢に水が流れているのが見えた気がするとは言っていたが…)

 

降り立つ。

 

水無谷はその名の通り水が無く、したがってヌメリも無いのでガンガン進める。両岸の崩壊スケールがだんだん大きくなってきて、グランドキャニオン感が出てくる。

もうそろそろ焼山川・水無谷出合というところで枯滝15mが出現。両岸一段上に灌木はあるが、例によって草付きが悪く、上がるのは大変だなあ…とか思っていたらイサミがクライムダウンしてしまった。マジかよ。

やむを得ず追いかけるが、突き出た岩がポロっといったらと思うとなかなか怖かった。

またすぐに今度はクライムダウンできそうもない20m滝が出現。これは左岸の灌木まで簡単に上がれたので懸垂。50mのダブルで降りたが1本でもギリギリ行けそう。

 

15m枯滝。先に降りてのんびり読図するイサミと、まだクライムダウン中の丸ちゃん。

 

20m枯滝上。こえ~。

 

これを降りると水流が出現。伏流していたようでいきなりそこそこの水量となっており、地下水なので冷たい。やがて両岸にちょこっと雪渓が残っている、両岸崩壊壁のゴルジュとなる。

昨日の入渓時の水温から、焼山川の標高1250m付近には巨大雪渓が残っている可能性があるので、場合によっては焼山川・水無谷二俣でから焼山川遡行に入り、登山道が接近する1440m付近から登山道に入るという案も昨日から検討していたが、気が付くとそのゴルジュまで下ってしまっていた。(焼山川は水が流れる普通の沢として出合っており、てっきり巨大な崩壊沢として出合うものだと思っていたのでスルーしてしまった。崩壊沢としては水無谷が本流という感じ)

幸い雪渓は残りカス程度で全然問題なかったが、ゴルジュの奥が、やたら見晴らしがよくなっている…のぞき込むと2m滝の下にテラスがあり、そこからド迫力の大滝が…

 

イサミ・丸ちゃん「どこがタダのガレ沢なんすか?」

ナベ「ごめん…」

 

なんとテラスに残置ハーケンがあったので、上の大岩基部からバックアップを取って懸垂。ハーケンがボロいのと、なにしろ滝身の中を降りるので結構痺れる。降り始めると思いっきり水を浴びるので躊躇せずさっさと下降。

上から見ると50mはあるのではないかと思ったが、降りてみるとちょうど25m程度だった。水量が多い時はカッパ等着込んでさっさと下降しないと危険だろうし、本当に増水していたら無理と思われる。

 

水流が復活。大崩壊地形でなかなかの迫力。

 

25m滝落ち口。崩壊璧の大伽藍。逃げ場なし。ビビる。

 

残置ハーケン&バックアップ。かなり痺れた。

 

水流中を懸垂下降。

 

このあとも大崩壊ゴルジュが続く。側壁から水が「シミ出す」のではなくジャンジャン流れ出ていていて異形。しかし幸い滝はもう出てこなかった。

徐々に両岸が普通の沢になり、二段堰堤(脇にコの字型の樹脂コーティング梯子が打ち込んである)を3つくらい下降すると電源が活きている機器(おそらく土石流監視用のカメラ)があったので、そこから左岸に上がると林道に出た。林道を下り、途中河原が近づいているところで水浴びして休憩し、のんびり車へ。

 

側壁からいきなり湧き出る水。

 

堰堤の下降

 

笹倉温泉で垢を落とし、国道に出てすぐ給油し、イサミがググってくれた名立駅近くの食堂(徳一)へ向かうがなんと臨時閉店。急遽転進し、名立谷浜IC近くの「名立食堂」(名立ドライブイン)へ。

ギリギリオーダーストップに間に合い、イサミ・丸ちゃんは煮魚定食(タラ煮)ご飯大盛。ナベはタラ汁定食を食べて、完☆全☆優☆勝をキメた。


【テクニカルコメント】

 

・草付きが激悪なので基本全部直登。シャワークライムや流れに逆らってショートの泳ぎで張り付くところが多々あるため、増水しているとまず登れないと思われる。

・我々は全員ゴム底で遡行した。ヌメリが激しくフェルトの方がよさそうだが、ゴム底の方が有利な場面もあり、本当に何とも言えない。いずれにせよタワシはマストアイテム。

1100m付近の連瀑帯のCS滝はイサミがサクッと登ってしまったが、常人ではカムがあっても相当厳しい。(安全度は段違いに上がるが)

 ナベでもフリーでフォローできたんだからそんなに難しくないんじゃね?って意見もあるが、ハンドジャムを決めたいところにカムを決めざるを得ない形状に見えた。

・なお、今ある流木はそのうちなくなるだろうから、さらに足が厳しくなるが(アブミ必要?)、ひょっとしてその分ワイドムーブが繰り出しやすくなるかもしれない。

・幕場が少ない。我々が泊まった1230m付近の左岸尾根上が最高で、次に高松山南西のコルに上がる沢との出会い1330m付近が幕営可能。

 ほか、1000~1050m間にも1か所くらいあったと丸ちゃんが言っていた。

・ザイルは水無谷・焼山川下降も含めると30mザイル×2がベストと思われる。50m×1本でもなんとかなりそうだがちょっと下降時に足りるか心配。

・最後に一回河原に降りて水浴びしたあたりには、おそらく土石流をモニターしていると思われる電線が張ってあった。触れないように注意のこと。


【アプロ―チ・下山飯・温泉】

 

・最終コンビニ:ローソン糸魚川中宿店

・笹倉温泉から先の橋渡ったところに第一ゲートがあり、土日祝のみ開放、平日は閉鎖されている。土日祝の最後の17時に閉鎖するので、土日で計画して下山が遅れると第二ゲートから出られなくなる。

 詳細は糸魚川市HP参照(林道焼山線の一般開放のお知らせ

・笹倉温泉は日帰り入浴をやっており、広々として気持ちいい。

 (温泉を掘った時のドリルや、地層の解説をした掲示物があるが、肝心の岩石見本がないのが残念)

・名立食堂のタラ汁定食は今まで飲んだスープの中でナベ的にはベストスリーに入る。

 イサミたちが食べていた煮魚もふっくらして美味そう。次行く時は可能であれば煮魚定食にタラ汁を付けたい。

 


【感想】

 

カム忘れという大失態をやらかし、さらに事前研究が甘くて焼山川では両岸の崩壊璧と大滝に度肝を抜かれたが、最終兵器イサミ&ホープ丸ちゃんが全部何とかしてくれた。ありがとう。

楽しい沢だったが今回も見せ場を作れず、いちプレイヤーとして末期に入りつつあるなあと思った。まあでも、あのCSハングはフツー無理よ…(ナベ)

 

個人的にはナベさんのルートチョイスと丸ちゃんの沢経験様々でしたので、感謝感謝でした。

登りに来る価値のある良い沢でした。

冷たい滝の水に丸ちゃんが嬉々として突っ込んでくれるので、リードのプレッシャーが減って助かりました。

焼山川がガレ沢じゃない!ってのはラッキーって意味です(^_^;)

大滝下りた後の水漏れ帯も感動的でした。(イサミ)

 

なんも無かったらどうしよう…という不安もなんのその、美しいV字谷に小難しい滝がまぶされていて楽しめました(下降した焼山沢の異世界的渓相もパンチ効いてた)それにしても、高頻度でアタリを引いてくる、ナベさんの目利きがパナいっす!(丸ちゃん)


 

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