アメリカ カリフォルニア シェラネバダ山脈/ハイシェラ
インクレディブル・ハルク(The Incredible Hulk) "Venturi Effects"(11P、5.12c)

期間:2025/09/02,04,05
メンバー:イサミ・ハガリ(記)
8:00PV取付-11:00VE上部合流-13:00P9-14:30P10-休憩-16:00P11-17:00トップアウト-19:00取付戻

Red Dihedralから3日後、今回の最大のobjectif をやるため再びHulkに戻ってきた。前回の反省もあり、今回は食料をたっぷり積んで。笑
アプローチは火曜日。天気予報は午後雷雨、明日も夕方かは雷予報だ、、本当に今行くのがいいのか憂鬱になりながらも週末に向けて好転予報を信じて入山することにした。
Venturi Effects (VE)は11P中5Pが5.12代で出だしからいきなり12で始まる。話し合いの結果、前半と後半を2日に分けて登る作戦に決定(そりゃあ、ワンプッシュで登れたら最高なんだけども…)

お昼にはテン場に到着した私たちは、まだ天気が持ちそうだったためさっそく1P目をやることにした。


P1(5.12a/イサミン)
コーナーフィンガーから始まり、アンダートラバース後、フェイスムーブをこなして終了点まで。なんとかOS。トポの表記をゆうに超えて50m近くロープが出ていた、、なんとパワフルなピッチ!(オリジナルグレードは5.11cだったらしい。確かに12はあると頷ける)


P1 とにかくパワフルで長い!

テントに戻ると夕方から予報通り雷雨が来た。この夜は轟と共に眠りにつく。
翌日は先に行ったクライマーから「岩がウェット」で登れない、とのこと。テン場からもはっきり染み出しが見えたため諦め別の岩場で登る。

そんなことで3日目、今日こそは、と意気込んで取付きに向かう。
初日RPしたP1。岩の形状的に染み出しがひどくとても登れる感じではなかった。初日に隙をついて登っておいて良かったね、と話す。

P2(5.10a/ハガリ)
PVとの共通テラスまで

P3(5.11d/イサミン)
ボルト1本のボルダリームーブからトポに”insecure”とあるクラック。確かにクラックが閉じてカムが決められない箇所が続いた。最後はフレアードフィンガーにトーテムが活躍。


P3 ハンガーボルトに掛けてボルダームーブ


P3 クラックは”insecure”でカムが効かせづらい

P4(5.12c/イサミン)
核心”The Book of Secrets”
素晴らしいフィンガーのコーナークラックが30m続く。Peter Croftの動画でも何回も観たピッチだ。OSトライ、登り切るか、、というところで足がツブからスリップしたようで惜しくもフォール。イサミン、ロワーして来て、「上に行こう」と。次のトライで彼なら絶対登れると確信していた私は「もう一回やらなくていいの?」と聞いた。一瞬迷った末、2回目のトライ。
ビレイの私からも疲労は感じられたが、それでも初回よりも迷いなく登っていくのがわかった!見事RP!!


P4 ルート最大の核心”The Book of Secrets”をRP

P5(5.11d/イサミン)
トポのlbの文字にリードを迷っていると、行くわとイサミン。まずい、フォローばっかしているとメンタルがついていかない、、苦笑
lb後のフィンガー足が悪く難しかったが、フォロー含めノーフォールで超える。


P5 核心越えてもまだまだ続く

このピッチ終わると再び隣のPVとのジャンクション。後半は明日と話していたけどとりあえず触っておこうと、もう2ピッチ疲れた中触りこの日は懸垂でテン場に戻った。
前半を全てチームRPした、という意味では今日の目標は達成。
けど、イサミンの登りを見てたら、明日はもっと自分もRPしたいな、と心に誓う。笑



翌日、今日は後半ヘッドウォールをトライするために数日前に登ったPositive Vibrationsを4ピッチ登り、VEに繋げる。


P6 (5.10a/イサミン)
PVからVEへのジャンクションピッチ

P7 (5.12a/ハガリ)
ここは前日にイサミンRPしたのもあり、今日は私に行かせてもらう。
核心は1箇所だけ、集中してムーブを起こせば登れる。核心を問題なく超えた、あとは目の前のクラックに手足を捩じ込む。”Wooow”気分は最高だ!
このP7&その次P8は”The Headwall Splitters”と呼ばれる。遠くから見るとまっさらな壁だか、ピッチ取付きに立つと息を呑む美しい1本のクラックが走っているのが見える。クラック好きにはたまらない、ピッチだった。


P7 集中、周りが静かになった。最高の時間!


P8取付、隣を登るエイドリアンが撮ってくれた!

P8 (5.12b/イサミン)
昨日宿題になったピッチ、今日は問題なく回収。荷上げしてもらってフォローもトライするも、昨日と同じポイントで惜しくもフォール。悔しかったけどフォローなのでそのまま上に進む


P8 ”The Headwall Splitters”に相応しい内容!!

P9 (5.12c/イサミン)
これまで垂直で登って来たけど、ここは被ったflared thin handで始まり、後半はテクニカルなスラブのトラバース。
イサミンも「ここはやばいかも」と言い残してスタート。
前半のハングを順調に超えレストした後、ビレイヤーからは姿が見えなくなった、、
ジリジリ、ロープが伸びて行く、、
突然、「フォーーーー!!!」すごい声がした。落ちた?
ん、待てよ、テンションは掛かってない。
、、一瞬間を置いて、
「落ちなかったー」と声が掛かった。
良かった、「ナイスー!!」
このピッチフォローの私は早々にユマール。私がトライするには早い、とすぐ納得できる内容だった。いつかはこんなピッチ登れるように、いや、登る意欲が湧くのか謎だ、、笑


P9 ビレイしてるこちらも緊張した

P10 (5.10d/ハガリ)
このピッチ、最初10dグレードのダイクを右にクライムダウンし、細いクラックをlbで上がり、上部の”The Venturi”を登る。
トポで見ると、出だし右上にボルトが3本、そっからクライムダウンしてクラックを上り返す記載。ハッキリ言って「?」だったのだが、目の前にしてやっと理解。要はクライムダウン&lbがやばいから先にボルトに掛けて登るのだ。笑
クライムダウンにビビりながらスタートするも、あっさりフォール。完全に弱気、、スタートに戻り、なんとか集中して再トライ。
今度はうまく行きクラックに手が届いた。これで一安心。lbを超えて、アンダークラックを左にトラバースで戻り、フレアハンド?最後は大ハングをバチバチハンドで大胆に超えた。


P10 アンダークラックを左にトラバース

P11 (5.11d/イサミン)
さて、ラストは42mのロングピッチ。PVから懸垂でここを降りる時に見たけど、フレア&閉じ気味のクラックにプロテクションが決まるのか、不安だった。
オリジナルは右の階段状から抜けるようで少し迷ったが、やはりこの直上ラインを行くことにする。
このピッチ先に言っておくがVEのラストにふさわしい、スプリッター。間違いなくこちらを登るべきだ。
前半フィンガーで始まり、後半はハンドジャムが効かずダブルクラックをひたすら挟み込む、、めちゃくちゃパワフルなクライミングだ。フォローはただただ楽しいけど、リードは大変だっただろうなぁ。
最後にトーテム黒でlbし、一気に上のフレアードハンドに手を突っ込んだ時は思わず声が漏れる。後はレッジに這い上がるだけ、完全に出し切った!!


P11 出し切った極上ラストピッチ笑

トップアウトは17時。写真を撮って急いで懸垂で降りる。もうこのルートを降りるのは3回目だと言うのに、風が強かったからか、、いや疲労のせいか2回もロープスタックさせて登り返す羽目になったのは滑稽だった(笑いですんで良かった、、)

※イサミの書いた記録はこちら

【Incredible Hulk周辺情報】



アプローチのlittele slide cyanionトレイルから見えるIncredible Hulk


【どこにある?】
CA のSierra Nevada 山脈(YosemiteVallyより80キロ北西)
日本からだと、ZIPAIRで成田?サンノゼ空港→Sonora Passを車で4?5時間ドライブ→玄関口のBridgeportへ

【玄関口はBridgeport】
標高1970メートルに位置する人口500人ほどの小さな行政区
到着した雨の平日はゴーストタウンのようだったが、週末になると登山や釣り、キャンプなどアウトドア客で賑わう

〇Travertine hot spring
街から車で5分の天然温泉。いくつか釜があるので好みで。平日朝が空いていておすすめ。水着持参のこと


朝の貸切タイム


自然に熱いお湯が釜に流れている

〇Albert’s Meat Market &Deli
街に唯一ある肉屋でサンドイッチ、パニーニなど注文できる($10?15)アメリカンサイズとアメリカンジョークが苦手な人には向かない


ヘラジカのホットドッグ


具材をチョイスしてオーダーするサンドイッチ

(これで半分)
〇Bridgeport Library
小さいが静かで雨の日に過ごすのにもってこい。WiFiあり




【どんな場所?】
Twin Lakesのモノビレッジキャンプ場から3-4時間のアプローチ。
ハルク周辺にはテントを張れる場所が随所にあり小川も流れている
うんち持ち帰りは徹底しており携帯トイレ必携
熊対策のbear canister(食料ボックス)が必要。私たちはREIで購入して持っていった。実際には熊よりもリス被害が多く、臭いのついた食器類も取られるので注意!


モノビレッジキャンプ場の駐車場


Robinson Creekの渡渉点


Hulkの下にはこんな素敵な岩小屋も


テン場=ボルダー笑


テン場で翌日のギア準備中


気持ちいい水場


水場で遊ぶマーモット


REIで購入したBear Canister



【買出し&レストはMammoth Lakesへ】
ブリッジポートから車で1時間のところにマンモスレイクという街がある。
グロッサリーアウトレット、24hスーパーなどあり、食材の買出しに◎
ガソリンもここが安い。町周辺にボルダリングエリアもあるので、アクティブレストもできる


グロッサリーアウトレット安っ!

〇Mammoth mountaineering Supply
クライミング&スキー用品豊富なアウトドアショップ。ボルダーマット$10/1日でレンタル可能


なんでも揃うマンモスのアウトドアショップ


もちろんトポも豊富!



〇ボルダリングエリア
街の近くにいくらでもボルダーエリアがあるらしく、アクティブレストにもってこい


トレッキングするだけでも気持ちいい


結構本格的なボルダーがごろごろ


私も軽く遊ぶ

【さいごに、、、】
ハルクまで60Lのザックを背負って、4時間標高にして1,000m登ってアプローチする。ここにやってくるクライマーはクライミング好きの前に、山が好きだ。
私もこういう山でのクライミングがやっぱり好きだなぁ。
アプローチや下山の不便さが逆に好きというのか。

今回Hulkのルートを3本登ったが、登っている時に向かい側にキラキラ光る湖が見えていた。気になって、私たちは最終日下山前にこの湖まで散策に行った。
Ice Lakeという名前のついたこの湖は静かで、少し風が吹いていて気持ちよかった。ちょっとのつもりで来たので、食べ物もなにも持っていなかったのが悔やまれる。きっとここでピクニックしたら最高だっただろうな!


Ice Lakeへハイキング


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