奥秩父(両神)/広河原沢左岸/重石(ワフー) 主稜トラバース
2026年4月25日
ナベ(記)、東
9:00 広河原沢林道ゲート 09:30 林道、ワフー下 14:00 8P目終了点、下降開始 15:30林道
下写真の、篤さんがプロットした黄色ラインがワフー側稜東壁の登攀ライン(2025年7月26~27日の記録および2026年3月28日のライン)だが、今回はこの「側稜」を末端から縦走したいと考えた。

今年3月末に丸ちゃんと黄色ライン(下部は若干左から取りついた)を登った際、「岩は硬いが、クラックが少なく、最終ピッチは傾斜が強いため、古典的アルパインクライミングの人気ルートになるにはボールド過ぎる、篤志家向け」「かといって人気ルートとするためにラッペルボルトするのもちょっと違う」と思ったのだが、壁を登り終わった後の側稜トラバース部分は3+程度の領域に収まり、眺めがよく、高度感もある。むしろ岩稜登りの方が人気が得やすいのではないかと思い、縦走(岩稜トラバース))を企画した。何度も行ってる東くんが同行してくれることとなり百人力だ。少なくともルートを間違えることは無いだろうと思ったのだが…
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林道を約30分歩き、いつもの石垣下でガチャを装着。石垣を越えて、いつもなら右手の植林帯から小規模な岩尾根を越えて側稜東壁基部に出るが、今回は岩稜登りなので、すぐ左の側稜(とのこの時は思っていた)を目指し左上。リッジの側面に生えている巨木(240cmスリングでもギリギリ)でビレイ点を作成し登攀開始。
1P目 4+ ナベ 45m
リッジの頂点(正面)は急すぎるので、右側の、リッジの端を行くがまあまあ厳しい。時々浮いている岩があるのでチェックは欠かせないもの、岩自体はまあまあ硬くそこは安心感がある。が、なかなかカムが決まらず、落ちたら折れそうなゴボウくらいの木でしかランニングが取れない。ところが苦し紛れに草付きを掘ったら0.5番サイズのクラックが出てきて脳汁が出た。勇気百倍で側面からリッジの上に出る。するとすっきりした3+くらいのリッジが出てくるが、ここで切ると、どう見てもプロテクションが取れそうになく、次のリードが危険と考えさらにザイルを伸ばす。ザイルが重くて難儀した。

1P目後半をフォローする東くん
2P目 3- 東 45m
歩きと登りの境界線上の登り。(こういうのがずっと続くと思ってた…)
左側にはブッ立った岩稜が見え、東くんとは「アレが主稜だろう」「ということはこれは側稜だろう」「あっちは部分的にマジブッ立ってるね」などと会話したが全部間違っていた(笑)

左手に見えた岩稜。えげつないハングがある。間にある沢は岩盤が露出してスラブ状になっており下降には不向きに見えた。

2P目下部フォロー中。こういうのが続けば人気ルートになるぞ!とかなり期待感が高まったのだが…

2P目上部 ほぼ歩きっぽくなるが十分楽しい。
3P目 ほぼ歩き ナベ 20m
5mほど登ると正面に岩峰が立ちはだかるが、汚くて登る気がしない。基部を右トラバース。なお、右手には巨大なカンテが見え、カンテの側壁と言うか、ルンゼのどん詰まりの岩壁にはスズメバチの巣が見える。
4P目 3+ ナベ 45m
引き続き岩峰を右巻き。ワンポイント悪いが、それを越えたら急な樹林のルンゼを登るだけ。さらに奥にも岩峰があり、この岩峰は右側からの巨大なカンテとこのリッジとの合流点のようだ。リッジに出ると自然と岩峰の左正面に出た。右上するバンドが見えるがザイルが屈曲しそうだ。なお左手は、左の岩稜との中間沢の源流になっている模様。
5P目 3+~4- 東 20m
5mほど樹林を登って右折し、右手の岩峰のバンドに入って右トラバース。脆い!とか叫んでいるがフォローするとその通りでちょっと怖かった。

5P目フォロー中。一旦左上してから右折してバンドトラバース。大きな浮石があり怖い。
6P目 3+ ナベ 30m
弱点を木登りで登っていくと高度感のあるリッジに出て、クライミングっぽくなってくる。しかしビレイ点はリッジの中のルンゼの立ち木。

6P目リード中。
7P目 4+ 東 40m
高度感のあるリッジを登っていって視界から消えたら、ロープが停まり、その後東くんの叫び声が聞こえ、あれっ、難しいのかな、と心配になる。フォローすると、何んことは無い、いきなりコーナークラックが出てきて、ナメてギアを持って行っていなかったのでランナウト勝負になったようだ(赤キャメがあれば全然問題なかっただろう)。ただその上のスラビーな2mほども悪く、しかもレストスタンスにしていたイワヒバが剥げたらしい(笑)。ナイスクライミングでした。なお、このコーナークラック、一段下の左側にも同様のスッキリしたコーナークラックがあり、横じゃなく縦にあればとてもカッコいいルートになったのにもったいない。

7P目出だし。

7P目、東くんが吠えてたクラックとスラブ。クラックは1番持って行けば何ら問題なかったのに…上のスラブは確かに怖かった(右のリッジを行っても良さそうだ)
8P目 3- ナベ 50m
2P目より若干簡単な岩稜をサクサク登っていると、右手に見覚えのあるピンクテープが見えてびっくりする。 ロープ一杯で立木に支点を取りビレイし、合流して
「あれが見えるってことは…あっちが側稜!?てことは今いるのは主稜!?じゃあ左手に見えてるのは3本目の岩稜ってコト?」「こんな岩稜が3本も?」「横(林道)から見たら全部重なっているだろうから、訳わかんないな」
などと興奮と混乱の混じった会話ののち、ピンクテープの位置からおそらくこの岩稜はもう1~2Pで側稜と合流する地点に出ると思われたが、14時となっていたことからこのまま中間の沢にラッペルし帰ることのする。少し右手に移動して、ダブル懸垂を用意。懸垂一発で沢床に届いた。
※なお、南天山から撮った写真(冒頭の写真)でも、三本目の岩稜、ちゃんと映ってますね…
【下降】
主稜と側稜の中間の沢は歩けるけど、ガレが酷く閉口。落石で仲間にケガさせるのも怖いため、ラッペル。シングルラッペル2発+少々の歩きで、巨木が横向きに生えている滝の上に出たので、ダブル懸垂。降り立つと、3P目のビレイ点から見えた巨大カンテ、そこに食い込む細いルンゼの枯れ滝を降りた形だったようだ。相当な細密地形で面白い。
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降り立った沢床。

対岸の岩壁。アクセスが良ければラッペルボルトでスポートルートが開拓できそうだが、アプローチ何時間?

シングル2回で写真奥の横に生えている木の近くまで降り、ダブルロープ懸垂で滝を降りた。

滝を下から。
そこからさらに歩きを交えつつシングル懸垂2回で植林帯の近くに出た。
下から見ると、石垣を越えてちょっと上ったところの左手にある枯れかけた沢が、主稜・側稜中間ルンゼとしてここに出会っていた。なんと枯れかけた滝には古い三つ撚りロープの残置があった。このショボいルンゼが中間の沢であることを分かっている人たちがここに残置したとした思えない。

このショボい沢の上にあんなのが…
あとは植林に入って、林道に戻った。
林道に戻って「第3稜」を確認する。林道の奥には濡れた岩があり、これが多分今登ってきた主稜と第3稜の中間沢から流れてきている水だろうから、その奥が第3稜ということになりそうだ。今後の課題か?
帰りに、前から気になってた林道わきの岩塔も偵察、岩自体はいいが、アプローチのガレが短いもの悪く、下りではロープを林道に置いてきたことを若干後悔するレベルだった。
使用ギア カム0.3~2番 ダブルロープ(50×2、厳密には50と60だったが50×2で十分)
※ハーケン、ナッツ、カム3~4も持参したが使わなかった、立木から支点が取れるのでスリング多めで
【感想】
<ナベ>
高橋さんのメールにあった謎のコメント「ワフーとニッチツもありますよ」から始まった奥秩父探求、まさか会員が入れ替わり立ち替わり入山して延べ6日も関わっているのに、3本目の岩稜に気付かなかったとは…「謎の岩稜」と呼んだのは正しかった。
<東>
およそ1年ぶりのワフー。
久々に訪れると、前回とは違った視点で、あるいは環境そのものが変化していて色々なことに気づく。重石は2枚岩壁ではなく、3枚岩壁であった。アプローチの途中にあるニッチツの回転灯は光らなくなっていた。大木に巻きつけた目印のピンクテープは少し色褪せていた。整備されたルートではなく、生の自然の中でクライミングをすることは、たとえルートが易しくても危険を伴う。世の中には、危険な行為だ、良い迷惑だと批判する人もいる。しかし、自分の身を自然の中に晒すことでしか見えない何かがあるし、この精神をつなげていくこともまた私に課せられた責務なのだ。そして私はまたここに来たいと思うのだろう。
何故爾砕伎志身曾登人問婆 其禮登答牟日本玉之譬 (谷川士清)

東くんがドローンで撮ったワフー
アプローチ概念図
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