■西上州/碧岩北西壁下降[フリー]

2020/05/30 ナベ、高橋


コロナ緊急事態宣言が一応解除され、とはいえ山岳団体が自粛を求める中、自家用車で他者との接触を避けつつ、安全確実にラッペルするならば事故って救助関係者にウイルスをばらまく恐れもなかろう。

ということで、ACC-J茨城のHPにある「碧岩北西壁」初登記録

「我々はA0、A1を多用したがこのルートは岩の弱点をついているため、以外にホールド、スタンスが多く、衝立岩もフリーで登られる現在、このルートもオールフリーでリードされるのもそう遠い事ではないであろう。」との記述から、「ラッペルダウンで要所にボルトぶち込んでおけば、フリーで登れるかも」という淡い期待もあり、高橋さんと下降することになった。

実は2月にも単独で下降したのだが、この時は壁のあまりの傾斜にほとんど何もできず、4P目終了点にボルト2本設置してそこから空懸45mで1P目終了点に立ち、ここでもボルト2本ぶち込んで沢の藪の中に降り立った。

今回はいろいろタクティクスを考えてきたのだが…


2020/05/29

高橋車にピックアップしてもらい一路西上州へ。下仁田のコンビニでササっとビールを買った以外は他者との接触なし。

2020/05/30

07:20駐車場発~08:00三段の滝~09:40碧岩頂上~10:00下降開始~14:30北西壁基部~16:40居合沢(三段の滝の下の梯子場の下)~17:15駐車場


去年の台風で登山道が滅茶苦茶に荒れているので、絶対に誰も来ないと思っていたら、なんと寝ている間に1台いらっしゃって先行していた。物好きがいるもんだ。

登山道は2月に来た時同様荒れており、渡渉が何回かあるが、2月と違い飛び石が設置してあるためハイキングシューズでもそれほど苦労しない(フエルト底や沢用ゴム底の靴を持っているならそちらの方が安心だが)。途中でジャケットを着たカメラ紳士とすれ違う。

 

ボッカにあえぎながらなんとか頂上へ。西稜を少し下って、顕著な大木からラッペルダウン開始。

最初は急な草付きで悪そうだが、下はすっきりした凹角。ここぞというところにボルト1本設置し、さらに下って藪の中を突きっきり草付きバンドへ。

バンドを右へ3mトラバースすると、2月に設置したビレイ点。高橋さんが下りてくるのを迎え、かなり斜めだが無理やりトップロープトライ。

出だし、ビレイ点真上のスラブを左にトラバースしてボルトを設置した凹角に入るが、フィンガーサイズのクラックが土に覆われ、ホールドもコケに覆われていて難しい。そして何より傾斜が急。

ボルトのチョイ手前でテンション。

 

高橋さんに交代し、高橋さんもボルト周辺で何回かテンション入れるもトップアウト。さすが。

「岩が信用ならない」とのこと。ちなみにオリジナルラインは、今回登った凹角のもう一本右の湿った凹角と思われる(ビレイ点からは見えず、左トラバースしないと見えない)。

 

前回はビレイ点から真下に下降したら完全空懸となり、「ザイルがテラスとかに届いてなかったらどないしよか」と超ビビったが、今回はルート沿い下降にチャレンジ。

ビレイ点から左にバンドを伝ってラッペル。ものすごい振られるので、苦しい体制でマキタの6A18Vバッテリーパワーによるハンマードリルにてドリリングしボルト1本設置。

なお、今回導入した「サンコーテクノ・トルコンアンカー」は、妙に下穴に入れづらく、ぶったたきまくったせいでねじ山がつぶれてしまったため、この箇所は中途半端に入ったボルトアンカーというゴミを増やしてしまった。

 

振られ止めを経由して下降するが、薄被りの傾斜で腹筋がつらい。外傾したレッジにて残置のリングボルトに体を固定し、ビレイ点作成にかかるが、またしても「トルコンアンカー」が入らない。

コイツ本当に10mmなのか?製造管理が甘くて実は10.1mmなんじゃないのか?それとも俺の下穴掃除が悪いのか?

ちなみに、さっき悪い態勢でドリリングしたため押し付ける力が足りずドリルの刃が空回りして焼けてしまい、切れ味低下でさらに効率が悪くなった。

超浅打ち1本とまあまあのが1本設置できたので、残置のリングボルトと合わせてビレイ点作成し高橋さんを迎える。これだけ屈曲しているとトップロープは無理。というかそもそも懸垂のザイルを回収できるのか不安なレベル。幸い、なんとか回収できた。

 

ルートは、ハングに沿って右トラバース(ハーケン・スリング残置あり)ののち、凹角を下にたどっているように思われるが、このトラバース部分はホールドが見当たらずフリーでは相当な高難度が予想され、かつ凹角はすごい傾斜なのにシダが茂っていて大掃除しないと登れそうにない。今回は大人しくさっさと下降することにする。

途中、ここしかないという弱点を縫った残置を目にしつつ、60mダブルでなんとか壁基部まで下降。ここからシングル懸垂を都合7回くらいと急な斜面の下りで居合沢まで下降。

 


○岩は風化したチャートと思われる。

○岩自体は固いのだが、ところどころ風化して浮いた岩があり、信用がおけない。

○それなのに、傾斜は垂直~薄被り。

○おまけに西上州名物「たどん」(岩の中に埋まった岩みたいなやつ、時々もげるが、いいホールドになる)がないのでガバもあまりない。

 

これをグラウンドアップしたACC-J茨城の男たちには、ビビるしかない。というか、全然リスに見えないところにぶち込まれたハーケンを見て、ハーケンワークのレベル差を思い知った。昔のクライマーは凄いなあ…

 


帰りに、壁の中からよく見えた集落から壁を眺めてみようということになり、熊倉集落に立ち寄るが、完全な廃村となっていた。う~む。

夏は涼しくていいところだろうけど、平らな土地がほぼなく、畑作が難しそうなこの土地で、逆になんでこんなに家があるんだろうと思ってたけど、今は相当な空き家率になってるんだろうな…。

山登りは貴族の遊びか…とかいろいろ考えてしまった。

ちなみに下山したら、駐車場には別に2台。1台はバーベキュー。もう一台は登山で、我々とは入れ違いの模様。


脆い、立ってる、ガバが無い。三拍子揃ってます。

あの五輪岩よりは固いが、全体の傾斜は五輪岩以上。

スポーツ的困難度はこちらの方が高いだろう。ただ、傾斜が強い分、1983年にACC-J茨城によってぶち込まれたハーケンやリングボルトは雨があまり当たらない&北西壁のため日差しにも痛めつけられず、現在でも静荷重ならばなんとか耐えてくれるもの多数なので、冒険的には、落ちたら死ぬのに菊みたいな植物でハング越えしないといけない五輪の方がヤバい。

 

前回および今回ぶち込んだのはステンレス製ウエッジアンカー10×80ミリと、ペツルのステンレスハンガー。一部にヒルティの10×90ミリ、ユニカの10×70ミリも使用している。

 

(記:ナベ)


 

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